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2026年4月20日 (月)

後藤泰代 雪の降る夜は

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後藤泰代さんは旧姓平山で赤い鳥のメンバーでした。赤い鳥は1969年に結成された5人のフォークグループで、1970年代にはヒット曲を連発して大変人気がありました。ただ後藤悦治郎と平山康代の日本民謡をベースにしたユニットと山本俊彦・新居潤子の欧米的フォークをベースにしたユニットに、当初から分かれていて、結局それぞれのユニットが結婚して分裂しました。前者は紙ふうせん、後者はハイファイセットを結成することになりました。

あとひとりの大川茂氏ですが、この人はとても穏やかなベースマンとみえていたのですが、なんと後にバール強盗をやって、この時の衝撃は今でも強烈に残っています。あの人がそうなら、自分もいつかそうなってしまうかもしれないという恐怖に震撼しました。

赤い鳥のメインボーカルは新居潤子氏だったので、当時平山さんはどちらかといえば鍵盤担当であまり目立たなかったのですが、その声の素晴らしさは印象に残りました。

この曲「雪の降る夜は」は後藤泰代さんが作詞・作曲で、自分の声の美点が最大限生かされています。1974年といえばまだCDがない時代でした。このCDは後に(1995年)音蔵というプロジェクトでCD化されたものです。

雪の降る夜は 作詞・作曲・歌 後藤泰代(赤い鳥)
こちら

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冬が来る前に(71歳でこの声!)
https://www.youtube.com/watch?v=t51Xk7wogEI&list=RDt51Xk7wogEI&start_radio=1
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翼をください
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誰に告げようか
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白い画用紙
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竹田の子守唄
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オープリーズ
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わが町宝塚
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2026年4月16日 (木)

続・生物学茶話299:神経細胞のアクチンとその周辺 7:PSD95

PSD95のPSDは postsynaptic density protein の意味で、分子量約95,000ダルトンのタンパク質です。脳のシナプス後細胞にほぼ特異的に存在します。英語版のウィキペディアには項目がなく、遺伝子名DLG4の項目に記載があります(1)。ノックアウトマウスは特にグルタミン酸受容体との関連で脳のさまざまな不具合が発生するようですが、機能を部分的に代替するようなタンパク質もあり、なかなか一筋縄ではいかないようです(2)。

このタンパク質はグルタミン酸受容体をはじめとして様々な物質と結合してシナプス後細胞のシナプス後膜肥厚部(postsynaptic density)に存在しますが、最近の考え方としてはそのような特異的結合だけではなく、結合をしていないフリーな分子を含めて疎水的な物質の集合による液-液相分離によって、ある分子群がシナプス後膜肥厚部に集積するとされています(3、図299-1)。

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図299-1 シナプス後膜肥厚とPSD95 PSD95はCの部分に存在する

PSD95の構造的特徴は3つのPDZドメインと、それぞれひとつのSH3ドメインおよびGKドメインを持つことです(2、図299-2)。SH3ドメインは Src homology を意味し、様々なタンパク質と相互作用を持ちます。GKはグアニル酸キナーゼの略号ですが、酵素活性はなくやはり他の因子と相互作用を行うサイトとして利用されているようです(2)。このようなドメインを持つタンパク質群をMAGUK( membrane-associated guanylate kinases)ファミリーと呼んでいます。しかしグアニル酸キナーゼの活性は持たないわけですから、このようなネーミングは適切とは言えません。

PDZドメインは真核細胞が外界から得た情報を細胞骨格につなぐ、それによって動いたり形態変化を行ったりするうえで非常に重要なサイトであり、図299-2のメアリー・ケネディによって発見されました(4)。PDZはこのドメインを持つことが最初に発見された3つのタンパク質、PSD95、DLG1、ZO-1の3種のたんぱく質の頭文字をとったものです。これらはすべて分子の中にPDZ1、2、3の3つのPDZドメインを保有しています(5、図299-2)。

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図299-2 PDZドメインとMAGUKファミリー

PDZドメインは通常4つのβシートと2つのαヘリックス構造を含んでいます(図299-2)。この構造は真核生物のみならず、細菌にも広汎に分布していることがわかっています(6)。おそらく外界の変化に対して生物が何らかのレスポンスを起こすためにこのドメインが必要で、それは生物の進化に伴って機能に変化はあっても、数十億年にわたって現在まで伝承されてきたものと思われます。

図299-3はPDZドメイン1、2、3の真核生物の進化に伴っての変化を追跡した研究です(7)。これによると1、2、3は少なくとも脊椎動物の全ゲノム重複などによってできたものではなく、後生動物が登場する以前から準備されていたものであることがわかります。PDZ3が最初にできて、その後PDZ2、PDZ1が順次N末側につけたされていったことがわかります。とはいってもPDZ1が海綿(A.queenslandica)にすでにあるので、いわゆる動物(後生動物)の進化に伴って付け足されていったのではなく、多細胞生物が生まれた頃にはすでに3つのドメインが存在していたことが示唆されています(図299-3)。

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図299-3 PDZドメインの進化的歴史

PSD95のドメイン構造はN末から順にPDZ1、PDZ2、PDZ3、SH3、GKとなっています。立体構造を見るとひょうたん型で、N末側のPartAとC末側のPartBとに分かれている構造であることがわかります。AにはPDZ1とPDZ2が、BにはPDZ3・SH3・GKが含まれています(7、図299-4)。

このような2分された構造は、おそらくSH3やGKの領域にタンパク質が結合したり修飾したりする場合に、PDZ領域に何かが結合していることの影響を受けやすい場合(PDZ3)と受けにくい場合(PDZ1、PDZ2)の両者に対応できるようにするためだと思われます。図299-3が示すように、このような構造はオピストコンタが生まれた時点で確立されていたと考えられます。

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図299-4 PSD95のドメイン構造とリボンモデル

PSD95には選択的スプライシングによってN末にL27というドメインがあるものとないものの2つのアイソフォームがあり、重要なのはそのL27ドメインがない分子はN末近傍(3番目と5番目)のセリン残基がパルミトイル化されることです(8、図299-5)。このことによってPSD95の疎水性が高まり、細胞膜・細胞膜貫通受容体との結合やシナプス後膜肥厚への集積が促進されると思われます。PSD95は膜に係留されるだけで埋め込まれないので、PDZ・SH3・GKなどすべてのドメインは有効なまま活用されます。

SAP97やCASKというそれがなければ致死という重要なタンパク質もPSD95と同じグループ(MAGUKファミリー)に属し、シナプス活動の維持に貢献しています。

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図299-5 PSD95アイソフォームと関連タンパク質

ディストラーらはマウス海馬シナプス後膜肥厚(PSD)を高純度に精製し、そこから49491種類のペプチドを検出しました(9、図299-5)。そしてアルカースらはそのプロテオームデータをもとに、ひとつのシナプス後膜肥厚に存在する各タンパク質の分子数を計算しました(10)。その分子数の多い順にベストテンのタンパク質を図299-6に示しました。

グルタミン酸受容体(NMDA型およびAMPA型)が多くを占めますが、それ以外はカムキナーゼ関連とPSD95関連タンパク質によって占められています(図299-6)。このことはこれらの分子が中心となってシナプス後膜直下の構造・機能を担っていることを示唆しています。

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図299-6 マウス海馬シナプス後膜肥厚におけるタンパク質分子数

ウィキペディアのPDZドメインの項目(11)には図299-7のような模式図が掲載されていました。PSD95はN末がスパイン先端の細胞膜に結合していて、これを利用してPDZドメインがNMDA受容体と結合し、一方C末はGKAPを介してコータクチンと結合し、コータクチンがアクチンと結合しているというスキームです。GKAPも図299-6のベスト10に顔を出しています。これは1例ですが、類似したさまざまなシステムによって細胞骨格と神経伝達物質受容体が連結され、記憶の調節すなわちスパインの調節が行われていると思われます。

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図299-7 PSD95が仲介する細胞膜受容体とFアクチンとの連携

 

参照文献

1)Wikipedia: DLG4
https://en.wikipedia.org/wiki/DLG4

2)脳科学辞典:PSD95
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/PSD-95

3)細川智永 シナプス伝達と可塑性を担うタンパク質の集合と区画化 生化学 第94巻 第4号,pp. 523?528 (2022) doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940523
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2022.940523/data/index.html

4)Wikipedia: Mary B. Kennedy
https://en.wikipedia.org/wiki/Mary_B._Kennedy

5)Liu X, Fuentes EJ. Emerging Themes in PDZ Domain Signaling: Structure, Function, and Inhibition., Int Rev Cell Mol Biol., vol.343: pp.129-218 (2019)
doi: 10.1016/bs.ircmb.2018.05.013.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7185565/

6)Muley VY, Akhter Y, Galande S. PDZ Domains Across the Microbial World: Molecular Link to the Proteases, Stress Response, and Protein Synthesis., Genome Biol Evol., vol.11(3): pp.644-659. (2019) doi: 10.1093/gbe/evz023.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6411480/

7)Synaptic PSD-95 biology: from localization and interactors to N-terminus function
Atta Alkaas, Prajwal Kurup, Sai Kanuru, Adalia Von Rommel, Taran Singh, Meera J. Patel, and Jary Y. Delgado, Journal of Neurophysiology., vol.134:5, pp.1588-1606 (2025)
https://doi.org/10.1152/jn.00272.2025
https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/jn.00272.2025

8)平田哲也,深田優子,深田正紀 パルミトイル化修飾酵素を軸とした神経機能研究
Journal of Japanese Biochemical Society vol.90(2): pp.125-137 (2018)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2018.900125
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2018.900125/data/index.html

9)Distler, U., Schmeisser, M.J., Pelosi, A., Reim, D., Kuharev, J., Weiczner, R., Baumgart, J., Boeckers, T.M., Nitsch, R., Vogt, J. and Tenzer, S., In-depth protein profiling of the postsynaptic density from mouse hippocampus using data-independent acquisition proteomics. Proteomics, vol.14: pp.2607-2613. (2014)
https://doi.org/10.1002/pmic.201300520
https://analyticalsciencejournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/pmic.201300520

10)Atta Alkaas, Prajwal Kurup, Sai Kanuru, Adalia Von Rommel, Taran Singh, Meera J. Patel, and Jary Y. Delgado,Synaptic PSD-95 biology: from localization and interactors to N-terminus function., Journal of Neurophysiology., vol.134:5, pp.1588-1606 (2025)
https://doi.org/10.1152/jn.00272.2025
https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/jn.00272.2025

11)ウィキペディア: PDZドメイン  
https://ja.wikipedia.org/wiki/PDZ%E3%83%89%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3

 

 

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2026年4月15日 (水)

You raise me up

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先日電車で移動していたら、隣席の学生らしい女性が「You raise me up」の楽譜を一心不乱にみていました。きっと近日中に歌う予定があるのでしょう。わたしはルーシー・トーマスの歌でおなじみだったので、ちょっと親しみがわきました。

最近ヴァニーの歌を聴いて、これはすごいと思ったので。この曲はヴァニーの実力が圧倒的に発揮されて相性の良い曲だと思います。オリジナルはアイルランド/ノルウェーのミュージシャン「シークレット・ガーデン」が2002年に発表した楽曲です。

ヴァニー・ヴァビオラはインドネシアの歌姫です

Vany Vabiola sings "You raise me up"
https://www.youtube.com/watch?v=THS6Am0ZiDY&list=RDjWlWqrfiUJA&index=2

Who is Vanny Vabiola
https://www.newsinbollywood.com/wiki/vanny-vabiola/

World music collection 9: Vanny Vabiola
https://morph.way-nifty.com/grey/2024/02/post-80cb19.html

 

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2026年4月13日 (月)

USAの子分をなんとかやめたい

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菅野完(すがのたもつ)氏はしゃべり方がいやな感じ(偉人がバカ者どもに教えを垂れるという姿勢)の奴ですが、我慢して聞いていると言ってることは割とまともだと思います。トランプや高市についての感想は見事。「まあこんなに国土やお金を吸い上げられて、挙句の果ては戦争に参加させようだなんて、とてもアメリカの子分はやってられない。中国とつきあったほうがよっぽどまし」というのも同感ではあります。しかし・・・

菅野氏は日本人がアメリカにくっついていく根底には「白人礼賛、黄色人種蔑視」の心があると言っていますが、私の意見としてはやはり中国には借り、すなわち南京事件・人体実験・アヘンの暗黒の歴史があって付き合うのは重いものがあるのです。その点ロシアには貸し、すなわち日ソ不可侵条約違反、英米との裏取引での北方領土獲得、捕虜虐待などがあるので堂々と付き合えます。

なんとか早くウクライナに線を引いて戦争をやめさせ、アメリカへの投資をロシアに振り向けて石油と天然ガスを安価に手に入れたいと思います。日本がいくら物品を売っても、その分エネルギーを買えば貿易不均衡にはなりませんし。日本がマグマ発電に成功し、エネルギーが不要になったとしても、アメリカ人や中国人よりロシア人と付き合う方が楽で、日本人とは相性が良いような気がします。日本と同じで政府は嫌な感じですけどね。

https://www.youtube.com/watch?v=XwgC2v5fubs

https://www.youtube.com/watch?v=Yt-k5dByH4g

ボケてる日本
https://www.youtube.com/watch?v=hA8jiU-bpto

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Otta orchestra を聴こう
https://morph.way-nifty.com/grey/2024/02/post-b6d2e5.html

 

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2026年4月11日 (土)

カメムシとサボテン

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キマダラカメムシ(学名: Erthesina fullo

最近非常に増えているそうです。

半日くらいベランダのサボテンにとまっています。
棘はまったく気にしていないようです。
体長は2cmくらい。日本最大のカメムシだそうです。
特ににおいはありませんでした。
毒もないそうです。

実に美しい。

サボテンの頂点にあるへこみに吻をつっこんで、液体を吸おうとしていましたが、
たぶんうまくいかなかったんじゃないかな。

 

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2026年4月 9日 (木)

ガジュマル再建

うちに20年以上棲みついていて盆栽化しているガジュマルですが、そんなに強風でもない日に倒れてしまいました。変だなと思って土を掘ってみると、なんと体長2cmくらいの根切り虫がいるじゃありませんか。さらに調べるとでるはでるはで10匹くらいいて根が崩壊しています。

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根切り虫はヤガの幼虫で、ウィキペディアによると、ヤガは日本だけでも1300種もいる大ファミリーだそうです。ともかく土は全部廃棄して入れ替えなければなりません。そして農薬も撒きます。デナポン5%ベイトというやつです。

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とりあえず治療はおこないましたが、さて生き返ってくれるのでしょうか?

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北総の桜も満開となりました。中にはもう葉を出している木もあります。

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桜の歌は数多いですが、マイフェイバリットは
Love letter ~桜~(熊木杏里)
こちら

 

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2026年4月 6日 (月)

続・生物学茶話298:神経細胞のアクチンとその周辺 6:コータクチン

ラウスザルコーマウィルス(RSV)は、感染すると 60 kDa のチロシンプロテインキナーゼを発現します。またこのホモログは細胞自体にも遺伝子が存在します。コータクチンはもともとはこのプロテインキナーゼの目立ったターゲット(基質)p80/85 として報告されました(1)。報告した Wu らは2年後、このタンパク質がアクチンに結合する性質があることをみつけ、さらに細胞膜の裏側に多いこと(cortical)からコータクチン(cortactin)と命名し発表しました(2)。

コータクチンは様々な細胞に存在し、細胞膜をアクチンの重合と解離を利用して動かそうとするとき、具体的にはラメリポディアの生成および細胞の移動、細胞分化、エンドサイトーシス、がんの浸潤などの場合に、コータクチンはArp2/3複合体とともにアクチンの活動をサポートする役割を持つことがわかってきました(3、4)。神経細胞においても、その移動・軸索形成・樹状突起スパイン形成などに関与すると考えられています。

アイソフォームであるp80とp85の違いは、p80ではN末の10残基が欠けていることによります。これは Alternative initiation (AUG 以外の開始コドンによって翻訳が開始される)によるとされています(5、図298-1)。

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図298-1 コータクチンのアミノ酸配列

哺乳類のコータクチン遺伝子(CTTN)の構造を図298-2に示します(6)。mRNAは長い3’非翻訳領域を保有していて、マイクロRNAによる翻訳制御を受けていると考えられています。タンパク質はN末に Arp2/3 と結合する領域があり(NTA:アミノ端末酸性領域)、続いてアクチンと結合する領域があります。アクチンと結合する領域はコータクチンリピートと呼ばれ、哺乳類では6.5回の反復領域があるとされています。実際の配列を図298-3に示します(7)。

反復配列といっても厳密に同じ配列が反復しているわけではなく、図298-3のようにアバウトなところもありますが、この37アミノ酸残基が6.5回反復する構造は哺乳類では保存性が高い領域とされています。この領域を使ってコータクチンはアクチンと結合します(6)。

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図298-2 コータクチンの遺伝子(CTTN)、mRNA、タンパク質・ドメイン構造


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図298-3 コータクチンの6.5回反復配列(コータクチンリピート)

6.5回の反復配列のC末側にαヘリックスを作る領域があり、さらにプロリンリッチ領域があって、ここに Src によってリン酸化されるサイトがあります。C末にはSH-3ドメインがあり、ここに図298-2に示された様々な制御因子や酵素がアクセスします。ここにアクセスする因子の一つである Shank2 の遺伝子はCTTNの下流に隣接しています(図298-2)。

脊椎動物にはコータクチンのホモログであるHS-1というタンパク質が存在することが知られています。HS-1は主として血液細胞に発現していますが、その機能はよくわかっていません。おそらく血液細胞においてコータクチンと同様な役割を果たすとともに、他の機能もあると思われます。特にチロシンがリン酸化されると核に移行するというコータクチンとははっきりと異なる性質が知られています(8)。核に移行することにどういう意味があるかについては、アポトーシスを誘導するという説が有力なようです(9、10)。ただこれらの研究は30年前のものであり、B細胞以外ではどうなのかということがよくわかりません。

コータクチンとHS-1のエクソンとタンパク質の比較を図298-4に示します(11)。図298-3に示した37アミノ酸残基の繰り返しが、コータクチンでは6.5回なのに対して、HS-1では3.5回になっています。血液細胞は基本血流で運ばれるので、自主的にラメリポディアをつくって動く必要はないのですが、貪食など細胞膜を使った活動を行うことはあるのでHS-1がコータクチンに類似した機能を全く失っているとは思えません。

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図298-4 コータクチンとHS-1 遺伝子(エクソン)とタンパク質の構造の比較

私は昔赤芽細胞を扱っていたことがあるので、HS-1の Lyn によるリン酸化が赤芽球の分化に重要な役割を果たしているという古い論文には強く興味を惹かれました(12、13)。しかしその後、特に正常な赤芽細胞の分化においてHS-1がどのような役割を果たしているかを調べた研究がないのが残念ですが、私の調査不足かもしれません。脊椎動物に進化する直前から分岐した尾索動物(ホヤなど)は赤血球を持っていませんし、HS-1もありません(11、14)。このことはHS-1が赤血球への分化に関与することを示唆するものと思います。ただHS-1ノックアウトマウスは生存可能だそうです(15)。

様々な脊椎動物におけるHS-1の違いをみると、魚類→両生類→鳥類→哺乳類の順に37アミノ酸残基のリピート回数が減って、特殊化していることがわかります(図298-5)。哺乳類の場合リピート回数は3.5回です。

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図298-5 脊椎動物におけるHS-1の進化的変遷

コータクチンが細胞膜を変形させることによる細胞移動に関与しているといっても、アメーバがコータクチンを利用しているわけではなく、この物質が登場するのは多細胞生物の登場以降のようです。現存の多細胞生物の中では最も始原的といわれる海綿動物にはコータクチンが存在します(図298-6)。昆虫や尾索類にも存在するので、多細胞生物が標準的に保有する遺伝子・タンパク質と考えてよいようです(11、図298-6)。

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図298-6 コータクチン(Cort)とHS-1の分子進化系統図 脊椎動物のコータクチンについては省略したので、文献(11)を参照してください

コータクチン分子のN末酸性領域とコータクチンリピートの機能は、Arp2/3複合体とFアクチンによって形成された分枝アクチンを安定化させることにあると考えられています。図298-7はクライオ電子顕微鏡による観察から推定された分枝部位の構造です(16)。コータクチンは分枝部位において、Arp2/3複合体とFアクチンの両者に外側から結合しています。

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図298-7 コータクチンはArp2/3複合体によって形成されたFアクチン枝分かれ構造を安定化する

一般的に言えば、Fアクチンが分枝をつくって仕事をするときは常にコータクチンが関与している可能性があります。ラメリポディウム(葉状仮足)、細胞膜の波うち構造、エンドサイトーシス、細胞の結合(アドヒアレンスジャンクション、タイトジャンクション)、癌細胞の浸潤などが例としてあげられます(6)。神経細胞においても軸索伸長の際のラメリポディアの形成とか、樹状突起スパインの発達や安定化にも当然寄与していると考えられます。

問題はコータクチン分子のC末側で、こちらは様々なタンパク質・酵素とかかわりあっており、非常に多くの生化学的プロセスに関与している可能性があります。Dalyが例として挙げている図(17)を図298-8に示します。

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図298-8 コータクチンの多彩な機能

コータクチンはその分子のN末側でFアクチンの分枝部位に結合しているので、C末側に結合する物質ならなんでも細胞骨格を形成するFアクチンに係留できますし、リン酸化などを通じて結合の調節も可能です。たとえば神経伝達物質の受容体をシナプス内部の細胞骨格に固定するにはうってつけです。また受容体媒介エンドサイトーシスが行われた際に、GTPaseと協力してアクチン骨格を再編成する機能があるとされています(17、図298-8)。

最後に前回(18)述べたように、Fアクチンが伸長する方向に細胞を移動するためのシステムの中で(Fアクチン-コータクチン-シューティン-L1CAM-細胞外基質)、コータクチンがクラッチの役割を果たしているのではないかという説(19)があるというのも興味深いと思います。

 

参照文献

1)Wu H, Reynolds AB, Kanner SB, Vines RR, Parsons JT. Identification and characterization of a novel cytoskeleton-associated pp60src substrate. Mol Cell Biol. vol.11(10): pp.5113-5124.(1991) doi: 10.1128/mcb.11.10.5113-5124.1991.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC361526/

2)Wu H, Parsons JT. Cortactin, an 80/85-kilodalton pp60src substrate, is a filamentous actin-binding protein enriched in the cell cortex. J Cell Biol. vol.120(6): pp.1417-1426. (1993) doi: 10.1083/jcb.120.6.1417.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2119758/

3)Kaksonen M, Peng HB, Rauvala H., Association of cortactin with dynamic actin in lamellipodia and on endosomal vesicles. J Cell Sci., vol.113, pp.4421-4426. (2000)
doi: 10.1242/jcs.113.24.4421.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11082035/

4)Wikipedia: Cortactin
https://en.wikipedia.org/wiki/Cortactin

5)UniPlot:Src substrate protein p85
https://www.uniprot.org/uniprotkb/Q01406/entry

6)Schnoor M, Stradal TE, Rottner K. Cortactin: Cell Functions of A Multifaceted Actin-Binding Protein. Trends Cell Biol., vol.28(2): pp.79-98, (2018)
doi: 10.1016/j.tcb.2017.10.009.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29162307/

7)Li, X., Tao, Y., Murphy, J.W. et al. The repeat region of cortactin is intrinsically disordered in solution. Sci Rep 7, 16696 (2017).
https://doi.org/10.1038/s41598-017-16959-1
https://www.nature.com/articles/s41598-017-16959-1#citeas

8)Kitamura D, Kaneko H, Taniuchi I, Akagi K, Yamamura K, WatanabeT., Molecular cloning and characterization of mouse HS1. Biochem Biophys Res Commun., vol.208:1137-1146., (1995)
https://doi.org/10.1006/bbrc.1995.1452
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006291X85714520

9)Yamanashi Y, Fukuda T, Nishizumi H, Inazu T, Higashi K, Kitamura D, Ishida T, Yamamura H, Watanabe T, Yamamoto T. Role of tyrosine phosphorylation of HS1 in B cell antigen receptor-mediated apoptosis. J Exp Med., vol.185(7): pp.1387-92., (1997) doi: 10.1084/jem.185.7.1387.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9104825/

10)Taniuchi I, Kitamura D, Maekawa Y, Fukuda T, Kishi H, Watanabe T. Antigen-receptor induced clonal expansion and deletion of lymphocytes are impaired in mice lacking HS1 protein, a substrate of the antigen-receptor-coupled tyrosine kinases. EMBO J., vol.14(15): pp.3664-3678. (1995) doi: 10.1002/j.1460-2075.1995.tb00036.x.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7641686/

11)van Rossum AG, Schuuring-Scholtes E, van Buuren-van Seggelen V, Kluin PM, Schuuring E. Comparative genome analysis of cortactin and HS1: the significance of the F-actin binding repeat domain. BMC Genomics., vol.6: no.15. (2005) doi: 10.1186/1471-2164-6-15.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC554100/

12)Ingley E, Sarna MK, Beaumont JG, Tilbrook PA, Tsai S, Takemoto Y, Williams JH, Klinken SP. HS1 interacts with Lyn and is critical for erythropoietin-induced differentiation of erythroid cells. J Biol Chem. 2000 Mar 17;275(11):7887-93. doi: 10.1074/jbc.275.11.7887.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10713104/

13)Samuels AL, Klinken SP, Ingley E. Liar, a novel Lyn-binding nuclear/cytoplasmic shuttling protein that influences erythropoietin-induced differentiation. Blood., vol.113(16): pp.3845-3856. (2009) doi: 10.1182/blood-2008-04-153452.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19064729/

14)長畑洋佑他 血液細胞の先祖が判明:それはアメーバ様単細胞生物だった
京都大学プレスリリース 2022年
https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2022-12/221215_Kawamoto-c31a524170a541abb82c577fa3957772.pdf

15)Thomas SG, Calaminus SD, Auger JM, Watson SP, Machesky LM. Studies on the actin-binding protein HS1 in platelets. BMC Cell Biol., vol.8: no.46. (2007) doi: 10.1186/1471-2121-8-46.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17996076/

16)Liu, T., Cao, L., Mladenov, M. et al. Cortactin stabilizes actin branches by bridging activated Arp2/3 to its nucleated actin filament. Nat Struct Mol Biol 31, 801–809 (2024). https://doi.org/10.1038/s41594-023-01205-2
https://www.nature.com/articles/s41594-023-01205-2

17)Daly RJ. Cortactin signalling and dynamic actin networks. Biochem J. 2004 Aug 15;382(Pt 1):13-25. (2004) doi: 10.1042/BJ20040737.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1133910/

18)続・生物学茶話297:神経細胞のアクチンとその周辺 5:シューティン
https://morph.way-nifty.com/grey/2026/03/post-7bd2c0.html

19)Laura Pulido Cifuentes , Athamneh Athamneh, Efremov Y, Raman A, Kim T, Suter DM. A modified motor-clutch model reveals that neuronal growth cones respond faster to soft substrates. Mol Biol Cell., vol.35(4):ar47. (2024) doi: 10.1091/mbc.E23-09-0364.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38354034/

 

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2026年4月 3日 (金)

トランプさん さよなら

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全米国民に向けたテレビ演説で何か重要なメッセージを出すのかと思っていたら、なんと意味不明なむにゃむにゃでした。トランプはもう終了だということですね。

「選択」の記事(高市総理がイラン戦争に自衛隊を参加させようとしたのを、今井秘書官が羽交い絞めにして阻止したと)はともかく、高市総理が自衛隊をなんとかイラン戦争に参加させたいと思っていたというのは、彼女の日頃の言動をみるとかなりあり得る話だと思います。

私はもちろんそれには反対ですが、たとえ参加させたいと思っていてもそれは不可能なんですよ。自衛隊は軍隊ではないので、もし捕虜になったら一般の犯罪者として処理され、人を殺していれば殺人、お情けがあっても業務上過失致死で起訴されます。どうするんですか? 

ベトナムもタイもフィリピンもとても困っています。日本ももちろんです。日本の低所得者は東南アジアや中国の製品で日々の生活を送っているのです。彼らが製造する製品がはいってこなくなったら干上がりますよ。高市総理が何もできない愚か者でなければ(抱きついたり踊ったりしてホワイトハウスをキャバクラ化する能力だけはあることはよくわかった)、直ちにイランとホルムズ海峡通過について交渉すべきです。おみやげはこれから日本はイスラエルと距離をおくというメッセージです。

ちょっと大げさに言えば、これからはG7なんてどうでもいいのです。東南アジア・ロシア・オセアニア・南米・中東が肝です。トランプはもう見捨てましょう。アメリカは次の政権ができたときに考えればいいです。

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国連平和維持活動要員の3人の兵士がイスラエルに殺害されました。

哀悼の意を表したいと思います

Yahoo News
https://news.yahoo.co.jp/articles/b1fd0a1e7574848a5c654b840b4c0c89667c0f9c

 

 

 

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2026年4月 1日 (水)

TCPO 50周年記念特別演奏会 マーラー交響曲第2番「復活」

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昨日風雨の中 TCPO50周年記念の演奏会をやるというのでサントリーホールに行きました。水内庵で玉子丼と海苔の早い夕食をすませてから突入。チケット完売で大盛況でした。

例のごとく高関さんがプレトークに出てきて、第1楽章終了後に指揮者の指示通り(少なくとも5分間の休憩をとる)休憩をとると表明。さらにマーラーはこの曲を指揮するときに、最初の数回は休憩を5分とっていたのが、その後より長くなる場合もあったなどとマニアックな説明をしました。実際に今回の場合は休憩20分でした。トイレの列が異常に長かったので、5分だとパニックになっていたに違いありません。

演奏は弦が非常に気合の入った激演で高揚しました。多久和さんのフルートはいつもながら魔法のように軽やかで素晴らしく、オーボエの本多さんも緻密で落ち着いた演奏がオケに安定感を与えていました。フルートの正木さんが外国に拠点を移すために退団されるそうで、多久和さんの相方を探さなければなりません。

特に素晴らしかったのはシティフィルコーアのコーラスです。今までYouTubeのマーク・ウィグルスワースが指揮したオランダの Nationaal Jeugdorkest en Nederlands のコーラスが、その静謐で神聖な雰囲気がピカイチだと思っていたのですが(*)、それを凌駕するような素晴らしさでした。

https://www.youtube.com/watch?v=BQmmrp_MH7Y&list=RDBQmmrp_MH7Y&start_radio=1

Tcpo2

Tcpo3

帰り道の夜桜@六本木

 

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