2025年6月22日 (日)
2025年6月21日 (土)
My Name is Buddy: Ry Cooder
うちらの親はこの農場の周りの景色しか知らない。
一生ここを出なかったから当然だ。
だからアメリカがどんな国なのかも知らない。
でも俺は貨物列車に飛び乗って、アメリカ全土を放浪するんだ。
スーツケースがひとつあれば、その中で寝ればいいだろう。
そんな人生だってあっていいだろう。
古き良きアメリカ。だけど出版されたのは2007年。
それにしてもなんて素晴らしいジャケットなんだろう。
決然とした意思と未来への不安。持ち物はスーツケースひとつだ。
ライ・クーダーは今のアメリカをみて、どう思っているのだろうか?
Ry Cooder The Concert for New Orleans
https://www.youtube.com/watch?v=NvG5sWjmtts
ウィキペディア: マイ・ネーム・イズ・バディ
2025年6月19日 (木)
グレン・グールドは誰に演奏を聴いてもらいたかったのか
私が住んでいた学生寮にクラシック好きの先輩がいて、あるとき凄いレコードがあるからということで部屋に誘われて聴かされた・・・それがグレン・グールドが弾くバッハのゴールドベルク変奏曲でした。バッハの音楽に抱いていた既成観念が破壊され、非常にインスパイアされた記憶があります。
当時の音楽大学では、彼の演奏は極端に低い椅子での演奏姿勢も含めて、語ることがタブーになっていたそうです。
彼はあまりショパンを弾きませんが、ピアノソナタ第3番ロ短調はCDがあって、私も所有しています。これを聴いていてふと思ったのですが、彼は自分が楽しむためとか聴衆やCD購入者のために演奏しているのではなくて、死んだ飼い犬のニック君のために演奏しているのではないかと思いました。特に第3楽章の優しく語り掛けるような演奏にはそれを強く感じました。
幸いにしてYouTubeで全曲聴けます。
Glenn Gould plays Chopin Piano Sonata No. 3 in B minor Op.58
https://www.youtube.com/watch?v=NAHE8PTR8tE&t=22s
若き日のグールド このころは普通の姿勢で演奏していたようです
ニック君は楽譜を見て鍵盤をおさえています✨
参照
グールドのやさしい音 なりたピアノ教室
https://narita-piano-hapi.amebaownd.com/posts/4104527/
グールドのこと 坂本龍一
https://www.gggathering.com/aboutgould/
なぜ人はグレン・グールドに惹かれるのか。音楽家・原摩利彦が解説
https://brutus.jp/pianist_glenn/
2025年6月15日 (日)
続・生物学茶話272:基底核 5. 線条体
線条体には行動を行うか行わないかのスイッチがあり、意思決定の中枢としての役割があります。情報の通路として生まれた神経細胞が時を経て行動の制御を行うツールとして進化するために、線条体はキーとなるパーツであったと言えます。
線条体は外側は終脳、内側は淡蒼球と接しています。終脳にも淡蒼球にもほとんどアセチルコリン作動性のニューロンはありませんが、線条体には少数ですがアセチルコリン作動性のニューロンがあります(1)。したがってチロシン水酸化酵素の免疫組織化学を利用して線条体を特異的に染色することができます(2、図272-1)。ただし側坐核(腹側線条体とよばれることもある)にはアセチルコリン作動性ニューロンがあるので(3)、この部分と識別することはできません。
図272-1 免疫組織化学による線条体領域の同定
図272-2は蛍光イメージング法で線条体のアセチルコリン作動性の介在ニューロン(緑)と、GABA作動性の投射ニューロン(赤)とを染め分けた研究結果です(4)。線条体の投射ニューロンには、細胞1個当たり1万個程度のシナプスがあり、そのほとんどは大脳(終脳)と視床からの入力です。これらから総和として強力な入力があったときだけに線条体の投射ニューロンは興奮します(5)。線条体における投射ニューロンの存在は圧倒的で、特にげっ歯類では全細胞数の90~95%を占めています(6)。
図272-2 蛍光イメージング法による線条体細胞の識別 緑:アセチルコリン作動性介在ニューロン 赤:GABA作動性投射ニューロン
線条体へは終脳皮質や視床から強力な投射がありますが、線条体からは基底核内の淡蒼球や黒質に投射されるだけで、基底核外には直接の投射は行われていないとされています(5-7、図272-3)。終脳皮質や視床以外では黒質緻密部から線条体へのドーパミン系投射があり、これは線条体の活性に大きな影響を与えるとされていますが、このブログでも黒質について述べるときにとりあげたいと考えています。あともうひとつ淡蒼球外節からのフィードバックがありますが、これは271で述べたものです(8)。
図272-3 線条体への入出力
マウス脳基底核原基は胎生11日目頃にはその形態がはっきり認められるようになり、LGE(lateral ganglionic eminence, 外側基底核原基)、MGE(medial ganglionic eminence, 内側基底核原基)、CGE(cordal ganglionic eminence 尾側基底核原基)という3つの部分に分かれます。それぞれの部分で細胞は増殖するとともに将来の運命を定められ、出生数日前から移動を開始しして出生する頃までには順次あるべき場所に落ち着きます。出生後は周辺の細胞とシナプスを作り、アポトーシスによって整理も行われて、生後10日目くらいにはそれぞれ組織として機能するようになります(9、図272-4)。乳離れまでにネットワークが完成して、脳がとりあえず機能するようになります。
図272-4 マウス脳基底核の発生スケジュール
線条体の投射ニューロンは前述のように組織の90~95%を占めますが、これらはすべてLGEに起源を持つGABAergicな細胞です(9、図272-5)。LGEはこのほかに嗅球の細胞も産生します(10)。線条体の介在ニューロンはさまざまな出自を持つ細胞の寄せ集めで、おそらくそれぞれの生まれ故郷に関係した役割分担があるものと思われます。
線条体のニューロンの一部はMGEに起源をもちますが、淡蒼球は基本的にMGEに起源をもつものの一部はLGEに起源をもっているということで、線条体とはレシプロカルな関係にあり、かつそれらの少数細胞が異なる機能を持つそれぞれの細胞群を形成するということを考えると(11)、生まれた場所がその後の細胞運命の決定について非常に重要な意味を持っていることがわかります。それはもちろん生まれた場所に存在する分化誘導因子の種類と濃度が重要であることを意味します。
図272-5 線条体神経細胞の出自
最後に線条体を構成する細胞の種類をリストにしておきます。文献12の記述にしたがって記しました。詳細な機能については文献をご覧ください。
参照文献
1)ウィキペディア: 線条体
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%9A%E6%9D%A1%E4%BD%93
2)Anton Reiner, Loreta Medina, C. Leo Veenman, Structural and functional evolution of the basal ganglia in vertebrates.,
Brain Research Reviews vol.28 pp.235?285 (1998) DOI: 10.1016/s0165-0173(98)00016-2
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9858740/
3)ウィキペディア: 側坐核
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%B4%E5%9D%90%E6%A0%B8
4)沖縄科学技術大学院大学プレスリリース 2018
https://www.oist.jp/ja/news-center/photos/32705
5)嘉戸直樹 大脳基底核の機能 関西理学 vol.5: pp.73–75 (2005)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkpt/5/0/5_0_73/_article/-char/ja/
6)青崎敏彦 線条体ニューロンの局所回路とその働き (2004)
https://jnns.org/wp-content/uploads/previouspages/By2013Oct/niss/2003/text/textAosaki.pdf
7)続・生物学茶話268:基底核 1:イントロダクション
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/05/post-56976e.html
8)続・生物学茶話271:基底核 4: 淡蒼球
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/06/post-cbc07c.html
9)Rhys Knowles, Nathalie Dehorter and Tommas Ellender, From Progenitors to Progeny: Shaping Striatal Circuit Development and Function., Journal of Neuroscience 17 N, 41 (46) 9483-9502 (2021)
https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.0620-21.2021
https://www.jneurosci.org/content/41/46/9483.abstract
10)Stenman J, Toresson H, Campbell K., Identification of two distinct pro-
genitor populations in the lateral ganglionic eminence: implications for
striatal and olfactory bulb neurogenesis. J Neurosci 23:167–174 (2003)
https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.23-01-00167.2003
https://www.jneurosci.org/content/23/1/167.short
11)続・生物学茶話271:基底核 4: 淡蒼球
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/06/post-cbc07c.html
12)青崎敏彦 線条体ニューロンの局所回路とその働き
file:///C:/Users/Owner/Desktop/272/%E7%B7%9A%E6%9D%A1%E4%BD%93%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%B1%80%E6%89%80%E5%9B%9E%E8%B7%AF%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D.pdf
2025年6月14日 (土)
都響 ハルサイ
雨模様の中洋酒会館に出かけました。銀座線の乗客にクリスチャン・ディオールのミディシャツドレスを着ている方がいて、それがまたとってもお似合いでびっくりしました。頭からつま先まで全くスキがないのですが、それがとても清楚な感じで統一されていたので心洗われる感じです。このタイプです(*)。柄はこんな派手なのではなく、小さな濃茶色のスクエアが散らしてある薄茶系の地味なものですが、それがいいのです。自分の替えられない顔にふさわしいファッションをみつけることは素晴らしいことです。別世界のお話ですが。
* こちら
都響コンマスは雨の日なのでやっぱり矢部様。「牧神」は松木さんのフルートが素晴らしく、感服しました。プーランクのダブル・コンチェルトは私にはよくわからない音楽でした。務川&ブラレイの師弟コンビは楽しそうにやっていましたが。結局プーランクの音楽はプロが楽しむための音楽であって、聴衆はいらないのだろうと思います。「ハルサイ」はプロ演奏家が必死のパッチでやる音楽のはずですが、沖澤‐都響はこの破壊的な音楽をまとまりよく聴かせてくれて、あまりにうますぎてとまどうくらいでした。なんかマエストロ大野の系譜みたいで嫌な予感がします。
指揮者アンコールのマエストラ沖澤
2025年6月12日 (木)
団地鳥事情 June 2025
フィルとベティはどうやら繁殖が終わると団地を離れたようです。彼らも生まれたはずの子供たちも全く見かけることはなくなりました。また冬が始まるころに来てくれることを期待します。
団地は3月ころからずっとシジュウカラがいてにぎやかです。5月にイワツバメがやってきましたが、すぐに移動してしまいました。
ここ十数年団地にはずっとキジバト(turtledove)がいて、昨年子供が2羽生まれてうろついていたのですが、冬に入るころにいなくなって、親も含めて数か月間全くキジバトをみかけないという日々が続きました。親は寿命だったのかもしれません。
キジバトのいない団地というのは、ここに来てから初めての経験です。デデポポーというお馴染みの声が聞こえないのは寂しいものです。それが春になってまた見かけるようになりました。多分ここで生まれた個体がメスを連れてUターンしてきたのではないかと想像します。
そのメスの写真を撮影しました。
これは何の上にいるかというと、実は街灯です。
オスと一緒にいるところの写真。とても親密な感じです。
2025年6月 9日 (月)
2025年6月 7日 (土)
World music collection 26: Jack & Daisy
Jack & Daisy はUKのフォークデュオです。ジャックの滋味深い声とデイジーのさわやかな美声のスリリングな組み合わせが魅力です。サイモンとガーファンクルの関係に似ていますが、実際カバーもしていて、これが素晴らしい。私は若い頃にサイモンとガーファンクルを結構聞いていたので懐かしくもあります。
ジャックの歌声は余人に代えがたい深みがあって引き込まれます。デイジーの美声をどう使うかがこのデュオのテーマ。サイモンとガーファンクルも同じ問題を抱えていました。
America - Simon & Garfunkel
https://www.youtube.com/watch?v=nq3SOK5-IQk
グレイハウンドに乗って二人で自分探しの旅に出ますが、結局何もみつからない。煙草も切れてしまった。歌詞に出てくるミセス・ワグナーのパイは1960年代までUSA東部で販売されていたそうです。グレイハウンドはUSA最大のバス会社ですが、ドイツの企業に買収されたそうでびっくり。日本でいえばJRが外国に買収されたようなものですから、そりゃトランプも怒るわ。
The Boxer - Simon & Garfunkel
https://www.youtube.com/watch?v=kLewCMNx268
田舎からニューヨークに出てきて苦闘するという歌。
日本にも井沢八郎の「あゝ上野駅」という歌がありますが、内容は真逆です。ポール・サイモンにはポジティブ=嘘という信念があったのかな
Mrs. Robinson - Simon & Garfunkel
https://www.youtube.com/watch?v=N6O81BLf2HI
ミセス・ロビンソンは一見良き妻であり、敬虔なクリスチャンのようにみえますが、実際には子供に知られてはいけない秘密や心の孤独を抱えている。 そしてUSAもそういった偽善やヒーローの喪失による寂しさにあふれた国である。
Don't Think Twice It's All Right - Bob Dylan
https://www.youtube.com/watch?v=AHIU-ZJIx-k
俺はお前が眠っているうちに出ていくが、自分がした冷たい仕打ちのことを考えて、あきらめてくれ。俺はもう帰らない。デイジーって胡坐をかけるのね。
The Times They Are A-Changin’ - Bob Dylan
https://www.youtube.com/watch?v=XIJ-rPGhD1I
もし時間が大切だと思うなら泳ぎ始めたほうがいい、さもなければ石のように沈むことになるだろう。なぜなら、時代は変わりつつあるから。中島みゆきの「時代」はこれと正反対で、時代は変わっても結局同じことだと歌っています。ボブ・ディランを意識してディスったのでしょうか。
Harvest Moon - Neil Young
https://www.youtube.com/watch?v=_BaYzARtTtY
中年夫婦のラブソング リラックスする
Wicked Game - Chris Isaak
https://www.youtube.com/watch?v=e6E0gmekmqM
失恋ソング
Call it home
https://www.youtube.com/watch?v=8R7duCgkNMM
スペインのライブハウスでの演奏を収録
他にも YouTube に多数のアップロードあり
Landslide - Fleetwood Mac
https://www.youtube.com/watch?v=yZikHmHfvUs
Linger - The Cranberries
https://www.youtube.com/watch?v=8Kev_NwjA5E
Graceland - Paul Simon
https://www.youtube.com/watch?v=75ArbMXneT8
I’m On Fire - Bruce Springsteen
https://www.youtube.com/watch?v=MhQ6yM0IKXw
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Jack and Daisy HP:
https://jackanddaisymusic.com/
2025年6月 5日 (木)
続・生物学茶話271:基底核 4. 淡蒼球
線条体や淡蒼球はおそらく脊椎動物が地球に出現したときから存在する組織で、脳全体の形が進化によって変化しても、ずっと保守的に存在して機能を保持してきたと思われます(1)。Stephenson-Jones らは円口類・肉鰭類・条鰭類・軟骨魚類のすべてに線条体と淡蒼球が存在することを示しました(2、3)。線条体と淡蒼球はともに背側は運動に、腹側はモチベーションにかかわっていると言われています。さらにそれらのサイズが変わったりアンバランスが発生したりすると脳の機能に重大な影響があり、統合失調症などを発生させると言われています(4)。ただ線条体・淡蒼球の機能はまだまだ未知な部分が多く、アプローチも難しい状況だと思います。
まずマウスでの基底核発生の状況をみていきましょう。胎生期13.5日目において、基底核原基は Islet1 をつくるLGE(外側基底核原基)と Nkx2.1/Lhx6 をつくるMGE(内側基底核原基)からなっていますが、線条体(尾状核・被殻)は主に前者、淡蒼球は主に後者から発生します(5、図271-1)。後者は視床下核・黒質網様部・マイネルト基底核などの細胞のソースにもなっているようで、より多様な可能性を包含しているように思われます(図271-1)。
図271-1 出生前(a)と出生後(b)のマウス脳基底核周辺図(水平断面)
基底核の分化について述べる前に、基底核原基を形成するために必要なホメオボックス遺伝子について触れておくと、重要なのはLGEおよびMGEの両者に発現する DLX1/DLX2 で、これらがつくる転写因子は DLX5およびDLX6 両ホメオボックス遺伝子の中間の位置にあるエンハンサーに結合し、両遺伝子の発現をサポートすることによって基底核の分化を促進しているようです(図271-2)。DLX1/DLX2 のダブルノックアウトマウスは基底核の形成に失敗し致死となります(6)。これらの遺伝子は基底核原基が分化する以前のおおもとの細胞クラスターが形成されるために必要だと思われます。
図271-2 Dlx遺伝子群について
LGEおよびMGEを特徴づける各遺伝子についてリストアップしたのが図271-3です。特徴づけるとはいっても、例えばPax6が線条体原基に発現しているからと言って、Pax6は眼や膵臓の発生にもかかわっているわけで、この遺伝子のプロダクトがどのように線条体の発生にかかわっているかというのはわかりません。
Parvalbumin や Enkephalin は転写因子ではないので、直接的にニューロンの機能にかかわっている物質です。ただ例えば Parvalbumin を発現しているニューロンがどのような機能を持つかということについては非常に多くの研究がありますが(7)、では Parvalbumin が機能にどうかかわっているかのプロセスについてはまだまだ不明な点が多いと思います。このたんぱく質にはカルシウムと結合する性質があるので、フリーなカルシウムの濃度を低下させ、ニューロンを発火させやすくするという効果はあるようです。
図271-3 基底核原基に関する重要因子の一覧表
ここまではマウスの基底核原基について述べてきましたが、では他の動物ではどうなのでしょう。Medinaらはさまざまな脊椎動物の淡蒼球ついて総説でまとめています(5)。この一部を図271-4に示します。
図271-4からわかるように、どの生物も硬骨魚類を除き少なくとも Nkx2.1系とIslet1系(爬虫類はPax6)に導かれて分化した2系統の細胞群が混在する組織であることがわかります。硬骨魚類の場合もLxh7誘導ではありますが、他のグループと同様 Enkephakin を発現する細胞群を持っています。このリストから考えて、淡蒼球は少なくとも2~3種類の異なる細胞群がそれぞれ別の仕事をしていると思われます。そしてそれはおそらく先カンブリア時代から引き継がれて来たメカニズムなのでしょう。
図271-4 様々な脊椎動物脳基底核淡蒼球に発現する転写因子とマーカーからみた淡蒼球 (参照文献5に基づくリスト)
Islet1系の細胞は淡蒼球全細胞の1/3位を占めますが、これはが一体何をやっているかというと Medina らによると線条体に投射しているそうです(5)。このことは彼らの実験から明らかですが、まだ多くの教科書にはかいてありませんし、私も基底核1の図には勉強不足で書きませんでした(8)。実際には図271-5のようになっているようです。
もし線条体から終脳皮質へ投射する経路がないのなら、淡蒼球から線条体への投射経路があることは、線条体が独自に行動するかしないかを決定する役割を持つことを意味するかもしれないので、線条体の脳における地位は今考えられているより高い可能性があります。
図271-5 線条体と淡蒼球の関係
Medinaらがまとめたさまざまな脊椎動物の脳基底核原基の縦断面によるマップを図271-6に示します。脳基底核原基の基本的なボディプランは主な脊椎動物すべてにおいて大きな変化はないことが示されています。
彼らは視床下部の一部とされている視索前野(赤の部分)が、発生学的には淡蒼球と近縁であることを示しています。淡蒼球と視索前野の境界を終脳と間脳の境界とするのは議論があるように思います。淡蒼球と視索前野との関係についてはまだまだ研究が必要なのではないかと思います。
図271ー6 様々な脊椎動物における脳基底核原基
私が驚いたのは、脳科学辞典に淡蒼球という項目がないことでした。業界の事情はよくわかりませんが、何を書いても反論が多く出そうで書きにくいということでしょうか? 困ったものです。
参照文献
1)続・生物学茶話270:基底核 3: 終脳と基底核 哺乳類・爬虫類・鳥類
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/05/post-0ecc28.html
2)Stephenson-Jones M, Ericsson J, Robertson B, Grillner S., Evolution of the basal ganglia: dual-output pathways conserved throughout vertebrate phylogeny. J Comp Neurol vol.520: pp.2957-2973 (2012) DOI: 10.1002/cne.23087
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22351244/
3)Stephenson-Jones M, Samuelsson E, Ericsson J, Robertson B, Grillner S., Evolutionary conservation of the basal ganglia as a common vertebrate mechanism for action selection. Curr Biol vol.21: pp.1081-1091 (2011)
https://doi.org/10.1016/j.cub.2011.05.001
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982211005288
4)日本医療研究開発機構 プレスリリース
統合失調症の大脳皮質下領域の特徴を発見―淡蒼球の体積に左右差がある―
https://www.amed.go.jp/news/release_20160119.html
5)Loreta Medina Antonio Abellán Alba Vicario Ester Desfilis, Evolutionary and Developmental Contributions for Understanding the Organization of the Basal Ganglia., Brain Behav Evol vol.83: pp.112–125 (2014) DOI: 10.1159/000357832
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24776992/
6)Qing-Ping Zhou et al., IdentiÆcation of a direct Dlx homeodomain target in the developing mouse forebrain and retina by optimization of chromatin immunoprecipitation., Nucleic Acids Research, Vol. 32, No. 3, pp.884-892 (2004) DOI: 10.1093/nar/gkh233
https://europepmc.org/article/med/14769946
7)橋本隆紀,金田礼三,坪本真 大脳皮質パルブアルブミン陽性ニューロンと統合失調症の認知機能障害 Japanese Journal of Biological Psychiatry Vol.28, No.1, pp.32-40 (2017)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbpjjpp/28/1/28_32/_pdf
8)続・生物学茶話268:基底核 1:イントロダクション
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/05/post-56976e.html
2025年6月 2日 (月)
サボテンの花 2025
このサボテンは私ともう30年くらい共に過ごしています。主幹を切断したのですが支幹が生き残り今に至ります。ただ支幹だけになってからは満開になることはなく、ポツンポツンと咲きます。
「サボテンの花」という昔のチューリップのヒット曲がありますが、50年たった今でもびっくりするくらいの人がカバーしてウェブにアップしているのをみると、これはもうクラシック音楽ですね。
私のチョイス
オリジナル:サボテンの花(チューリップ)
https://www.youtube.com/watch?v=VaxbB-DBPPo
https://www.youtube.com/watch?v=Qqzt7U6lO3g
残念ながら昔の映像はみつかりませんでした
財津和夫のセルフカバー
https://www.youtube.com/watch?v=NQqzxcZxdPI
中澤卓也(感情たっぷり)
https://www.youtube.com/watch?v=KqwMtu2X3ck
山根かずきバンド(素朴な味わい)
https://www.youtube.com/watch?v=E4V2JYMd7RE
GOOD BYE APRIL(この時代にも受け入れられている)
https://www.youtube.com/watch?v=bS40XDlPKqE
Yukina 女性が歌う(ああこういう歌だったのかと納得)
https://www.youtube.com/watch?v=U891zmbqDFk
新宮由理 クラシック音楽としての「サボテンの花」
https://www.youtube.com/watch?v=n4MnVFrnp4k
あい混声合唱団
https://www.youtube.com/watch?v=-7MwSZWMkQ8
Ruby(中国人によるサックス演奏)
https://www.youtube.com/watch?v=iM7FesmcnCE
ところで、歌詞のサボテンはその後どうなったのか気になります
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