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2025年5月31日 (土)

まきちゃんぐ ニューアルバム「逆光」リリース

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6月1日に8年ぶりのアルバム「逆光」リリースされます。
私はアマゾンで予約しましたが、さていつ届くでしょうか?
http://makichang.info/newalbum-gyakkou/

コロナ騒ぎですっかり予定が狂ってしまったのでしょう。8年かかりました。
それでも期間限定のFCは結構楽しかったし、「愛が消えないように」は
コロナあっての曲ということで、悪いことばかりじゃありませんでした。

本日は王子ミュージックラウンジで発売記念のライブもあるようです。
(私は諸般の事情で不参加 (T‐T))

http://oji-music-lounge.tokyo/

曲目:

Photo_20250531111101

愛が消えないように(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=-PJlrmWwOiw

ライブのリハーサル
https://x.com/makichang_info/status/1926612225571070386

ハレルヤ(cover)
https://www.youtube.com/watch?v=BGcAnyruops


HP: http://makichang.info/

X: https://x.com/makichang_info

 

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2025年5月28日 (水)

続・生物学茶話270:基底核 3. 終脳と基底核 哺乳類・爬虫類・鳥類

両生類のある種が羊膜を生み出し完全に陸上で生活できるようになって、しばらくすると単弓類と双弓類というグループに分かれて進化することになりました。ペルム紀になると酸素濃度が大幅に減少し、単弓類は横隔膜、双弓類は気嚢でこれに対応するように進化しました(1)。なぜ酸素濃度が減少したかは参照文献1および7をご覧ください。

ペルム紀末の大絶滅時代を経て、両系統ともわずかな種が生き残り、三畳紀から再出発することになりました。その後単弓類は単孔類・有袋類・哺乳類(学術的には単孔類・有袋類も哺乳類に含まれる)という現存グループを生み出し、双弓類は爬虫類・鳥類という現存グループを生み出しました(2、図270-1)。

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図270-1 有羊膜類における終脳の構造と進化 日本語はすべて管理人がつけたものです。図の哺乳類というのは便宜的で、正しくは有袋類も単孔類も哺乳類に含まれます。

現存する単弓類の子孫と双弓類の子孫の2つのグループの終脳における神経細胞の分布は、それぞれ大きく異なります。単弓類を祖先とする生物群では神経細胞の細胞体は脳の辺縁に層状の構造を形成して集積し(灰白質)、内側に向かって軸索を伸ばすような構造をとっています。これに対して、双弓類を祖先とする生物群ではそのような特殊な構造はありません(3、図270-2)。

哺乳類では層ごとに類似した神経細胞が集積し、爬虫類・鳥類では類似した神経細胞は集塊を形成しています(3、図270-2)。なぜこのような差異が発生したのかはわかりませんが、終脳-視床-脳基底核のネットワークがエディアカラ時代から保存されていることを考えると(4、5)、終脳の基本的な機能とは別の派生的な分化だと思われます。しかしそれによってヒトという異常に知能が高い生物が生み出されたという事実があります。

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図270-2 有羊膜類終脳における興奮性神経細胞の分布(野村ら 2020)

単弓類子孫の終脳皮質に特異的な層状構造が形成されるようになったのがいつからかは興味深い課題です。現存のこの系統の生物の中では単孔類が最も原始的な形態と考えられますが、彼らの終脳皮質は層状構造をとっています。しかし東工大(現東京科学大学)のプレスリリースによりますと、単孔類が分岐したのは1億8760万年前のジュラ紀となっています(6)。もっと古い時代三畳紀末のハドロコディウムが終脳皮質の層状構造を保有していたかもしれません(2、図270-3)。

三畳紀からジュラ紀にかけては特に酸素濃度が低く(12~15%、7)、効率的な呼吸補助器官である気嚢を持つ恐竜が台頭し、持たない生物たちはサイズや身体能力が劣るため、彼らから隠れてひっそりと生きなければならなくなりました。おそらくそのために知能を発達させなければ生き残れないような状況だったと推測されます。このための進化が終脳皮質の層状構造だったのではないでしょうか。

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図270-3 哺乳類独特の終脳皮質はいつの時代にはじまったのか? (野村ら 2014 とウィキペディアより)

図270-4は哺乳類(ラット)と鳥類(ハト)・爬虫類(カメ)の終脳領域垂直断面図です。相対的に線条体と淡蒼球が非常に大きく見えます。これらのまわりを新皮質(ヒトにおける大脳皮質に相当する)が取り囲んでいるような構造です。一方ハトやカメではDVR(背側脳室隆起)というふくらみが新皮質に相当する構造で層状にはなっていません。彼らの終脳は線条体と淡蒼球の上にDVRが乗っているような構造になっています(8、図270-4)。鳥類には特にWULSTという隆起がありますが、これもマウスの新皮質に相当するような機能を持っています。ただしやはり層状構造ではありません。

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図270-4 終脳における線条体と淡蒼球(ラット、ハト、カメ)

カエル・ハイギョ・硬骨魚類のような歴史の古い動物においても、終脳に線条体と淡蒼球は大きな存在感を持って存在します(図270-4)。ただ両生類は食物連鎖が確立していた海洋からドロップアウトに成功し、当初は捕食を免れるための運動機能はあまり必要ではなく、陸上という新環境に耐えることが生存の条件だったと考えられるので、淡蒼球はむしろ退化したのではないかと思われます。小脳も退化しています。彼らはその後おそらく舌での捕食と跳躍能力などの運動機能を集中単純化して、現代まで生き延びてきたのではないかと思います。

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図270-5 終脳における線条体と淡蒼球(カエル、ハイギョ、硬骨魚類)

新皮質あるいはDVR、線条体、淡蒼球を構成する神経細胞は先カンブリア時代からそれぞれ機能が定められており、発生過程での細胞移動も一定の規則性をもって行われていると考えられます。マリンとルビンシュタインはマウス終脳の発生過程での細胞移動を観察し、まず増殖によって必要な細胞が作られた後、新皮質へ向かう細胞は放射状に、線条体や嗅葉にむかう細胞は表層に平行に(tangential)移動することを示しました(9、図270-6)。このような移動を正しく行うことが、ここまで述べてきたような脳の構造を正常に構築する上で重要です。

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図270-6 胎生15.5日目マウス終脳における細胞の移動

 

参照文献

1)ウィキペディア:単弓類
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%98%E5%BC%93%E9%A1%9E

2)Tadashi Nomura, Yasunori Murakami, Hitoshi Gotoh, Katsuhiko Ono, Reconstruction of ancestral brains: Exploring the evolutionary process of encephalization in amniotes.,
Neuroscience Research vol.86, pp.25-36 (2014) DOI: 10.1016/j.neures.2014.03.004
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24671134/

3)野村真 羊膜類の脳進化機構の解明??遺伝子発現機構の可塑性と細胞型の相同性 J.Biochem., vol.92, pp.200-209 (2020)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2020.920200
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2020.920200/data/index.html

4)Marcus Stephenson-Jones, Ebba Samuelsson, Jesper Ericsson, Brita Robertson, and Sten Grillner, Evolutionary Conservation of the Basal Ganglia as a Common Vertebrate Mechanism for Action Selection., Current Biology vol.21, pp.1081?1091, (2011)
DOI 10.1016/j.cub.2011.05.001
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21700460/

5)続・生物学茶話269:基底核 2:進化
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/05/post-246d6d.html

6)東工大ニュース(東工大は現在は東京科学大学になっています)
カモノハシとハリモグラの全ゲノム解読に成功!
https://www.titech.ac.jp/news/2021/048809

7)長谷川政美 進化の目で見る生き物たち 第14話 酸素濃度の極端な増減
https://kagakubar.com/creature/14.html

8)Anton Reiner, Loreta Medina, C. Leo Veenman, Structural and functional evolution of the basal ganglia in vertebrates.,Brain Research Reviews vol.28 pp.235–285 (1998)
DOI: 10.1016/s0165-0173(98)00016-2
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9858740/

9)Oscar Marín and John L. R. Rubenstein、A long remarkable journey : Tangential migration in the telencephalon., Nat Rev Neurosci 2, 780–790 (2001). https://doi.org/10.1038/35097509
https://www.nature.com/articles/35097509

 

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2025年5月25日 (日)

マンション管理の空洞化

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マンション管理が空洞化しています。
私たちの団地の管理人も1年くらいみつかりません。
管理会社との契約はあるので、アルバイト(派遣)の管理人がくるのですが
必要書類の発行すらできないような「ど素人」でまともな仕事ができません。

総会では文句の嵐で、管理会社の担当者がボコボコになって見るからに不快そうな顔になりますが、それだけで何か解決策があるかというと、それはありません。
ともかく人がいないのでどうしようもありません。
こんなボロボロの日本になるまで、政権交代すらままならないのですからあきれます。

だんだん世の中がディストピアしてくる足音が聞こえます。
市役所がアルバイトばかりになったら、もうそれはディストピアですよ。

マンションの管理人不足が深刻化、いないとどうなるの?
https://ielove-cloud.jp/blog/entry-03429/ 

ある日突然マンション管理員が消える!? 明日は我が身かもしれない問題とは?
https://uragawa-note.jpn.panasonic.com/n/n9d3f50861239 

こんなに人が少なくなったのは、女性も働くのが当たり前という風潮が蔓延することによって、専業主婦で結構という人まで世の中に引きずり出してしまったため子育てができなくなったという側面が大きい、と私は思います。子供は社会で育てるなどという政党もありますが、それは危険な社会実験です。哺乳類は母親が子供を育てるように遺伝子や脳が進化してきた動物ですから。

憲法に違反しても(国家の存立が危うくなるような状況では憲法に違反するような政治が行われても、それはやむを得ないと思います)、子だくさん家庭の消費税・所得税を免除するような政策が緊急に必要だと私は思います。

 

 

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2025年5月23日 (金)

ハーバード大学の弾圧に反対します

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管理人:私はトランプ政権によるハーバード大学の弾圧に反対します。

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ハーバード大学の衰亡は、米国の科学のみならず世界の科学の衰亡を招き、
世界はカルトと陰謀とSNS(=流言飛語)のるつぼとなってディストピア化するでしょう。

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アレクサンドリア・オカシオ=コルテスよ 今こそ立ち上がれ

JIJI.COM
ハーバード大への留学認めず トランプ米政権、圧力強化―日本人学生にも影響
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025052300181&g=int 

Courrier
サンダースとオカシオ・コルテスの反トランプ政治集会が全米各地で盛況
https://courrier.jp/news/archives/398175/ 

GQ japan
アレクサンドリア・オカシオ=コルテス 未来への戦い
https://www.gqjapan.jp/culture/article/20221101-alexandria-ocasio-cortez-october-cover-profile

 

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2025年5月22日 (木)

相貌失認(ショートショート)

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「人の顔が識別できなくなったということですが、専門的には相貌失認といいます。識別できなくなったのは最近ですか?」

私は「最近です」と答えた。

「では最近後頭部をどこかにぶつけたとか、たたかれたとかはありますか?」

「ないです」

「念のためMRI検査をしたいのですが いいですか」

「お願いします」

ということでMRI検査を受けることになった。

MRI検査は痛くもかゆくもないが、工事現場のような騒音の中で頭を固定されて しばらく同じ姿勢でがまんしなければならない。

結果はすぐにわかって、医師はMRIの写真を見せながら「ここに脳内の出血があって、脳が圧迫されて機能不全になったんですね」と診断結果を話した。「それで治療なんですが、出た血液をドレインして外に出します。1週間位の入院になりますがいいですか」

私は否応なくそのまま入院することになった。

私は妻に先立たれ子供も居ないので、もう勤めは辞めたし人の顔が識別できなくても特に不都合は無い・・・と思うのは早計だ。私の家はいわゆる団地なんだが、週に一度市と契約している見回り人が来て私の状態を確認することになっている。いわゆる孤独死のまま放置されるのを防ぐためだ。もちろん本人のためではなく、市や管理者の便宜のためだ。実際身寄りのない老人が孤独死したまま放置されると、市や管理人は大量の余計な仕事を抱え込むことになる。また週に2回家事手伝いの人を頼んでいるので、やはり人の顔を記憶できない識別できないということは、頼んでいる人の代わりに泥棒が来てもわからないということなので致命的だ。

私は早速頭蓋骨に穴をあけられ 血液のドレインをやることになった。しばらく病院生活を送らなければならない。毎日CT検査もやった。その間友人がひとりだけ見舞いに来てくれた。昔勤めていた会社の同僚だ。彼の顔を覚えていて本当に良かったと思う。

入院している間、担当の看護師とはいろいろな話をした。ハリウッド俳優のブラッド・ピットも相貌失認の病気を持っていることなども教えてくれた。彼女はまだ仕事をはじめて2年目だったが、なんでも手際よくやっていた。それに私と同じFCバルセロナ(スペインのプロサッカーチーム)のファンだったのでつい盛り上がってしまって、同室の患者の顰蹙を買ったこともあった。考えてみるとFCバルセロナのファンと親しくお話しするのは生まれてはじめてだったし、今後の私の人生でもありそうになかった。

ある意味自宅にいるより楽しい入院生活だったが それも終わる時が来た。症状は数日のうちに改善し、少なくとも医師や看護師の顔を忘れることはない状態となった。識別のテストをやって合格し、入院1週間で退院することになった。迎えに来る人はいないが、朝のさわやかな空気の中で、担当看護師が私を送り出してくれた。「長い間有り難うございました」と彼女に丁重にお礼を言って、私は自動ドアから外に出た。

ドアのそばの花壇には夏のバラが咲いていた。ガラス越しにまだこちらを見ていた看護師に手を振って、私はバス停に向かって歩き出した。両側に高く鬱蒼と成長した木々が並ぶ真っ直ぐな並木道だ。私は以前にこの近傍で仕事をしていたことがあったので土地勘があって、この並木道は良く知っている。昔よりも樹木は明らかに生長していた。セミがうるさく鳴いていた。

退院の開放感に浸りながら私はゆっくりと病院名のバス停まで歩いた。ちょうどバスがやってきたので何の疑問もなく乗り込んだ。ただ昔と違って小型のバスだった。人口が減ってこんなところにも影響が出ているのかと少し驚いた。駅は確か5つめの停留所のすぐ近くだ。ちょっと考え事をしていて、そろそろだなと窓からあたりの景色をみると、おやっ、知らない景色だ。私はあわてて電光掲示板を見た。全く記憶にない名前の停留所が並んでいた。

私は慌てて次で降りて、病院までもどらなくてはと道路を横断して道路の反対側にあるはずの停留所を探したが、どこにも停留所は見当たらなかった。どうも循環型のコミュニティーバスだったらしい。病院前の停留所に別経路のコミュニティーバスがくるようになったらしい。迂闊だった。

見知らぬ停留所の時刻表を見ると、次のバスは3時間後だ。夕方には見回り人が自宅に来る手はずになっていて退院の報告をしなければならないので、それでは間に合わない。

仕方がないのでスマホを取り出して、タクシーを呼ぼうとした。ところがなんとしたことかスマホをうまく操作できない。指の動きが不安定でなかなか思い通りにいかなくなっていた。病院では相貌失認のテストしかしていなかったので、まさかスマホの操作がうまくできなくなるなんて思ってもみなかった。全身から血が引いていくような感覚の中で、私は道路に座りこんだ。

私の病んだ脳はそれでも私を叱咤激励する機能は保持していた。私は立ち上がった。そう、頑張って道でタクシーを捕まえよう。タクシーを捕まえて駅に行かなければならない。しかし見知らぬ街でどこにいればタクシーを捕まえられるかわからない。最近はランダムに道でタクシーをつかまえるなんて奇跡に近い。10分くらい待ったが空タクシーは1台も通らなかった。少し周辺をうろうろして大通りがどこにあるか探したが、交通量の多い道はみつからなかった。

タクシー会社の電話番号を誰かに訊くしかないかもしれない。うろついているうちにようやくカフェ併設の洋菓子屋をみつけて一休みすることにした。窓際に席を取ると年配の婦人がすぐにやってきて「いらっしゃいませ。うちはモーニングはやってないけど、今の時間だとケーキをつけるとコーヒー半額になります」というので、私はチーズケーキとコーヒーを注文してやっと落ち着いた気分になった。

勘定をすませてから、ようやく私の本題を切り出した。「ところでこのあたりのタクシー会社の電話番号をご存じありませんか」と尋ねると、婦人は「タクシーはあまり使わないからわからないけど、調べてあげましょうか」と言ったので、私は渡りに舟でスマホを取り出し、「手が不自由でうまくつかえないので、お願いします」と彼女にスマホを手渡した。婦人は首尾良くタクシー会社と連絡ができたようだ。「5~6分で来るらしいから、席で待っててください」と元の席を指さした。有難い・・・助かった。

タクシーに乗り込んでほっとしたが、運転手に「どちらまで」と訊かれて、私はまた奈落の底に突き落とされた。駅の名前を思い出せないのだ。仕方なく「ここから一番近い電車の駅までお願いします」と言った。運転手は無言で5分くらい走って見知らぬ駅の前で私を降ろした。

幸いにして自宅の最寄りの駅の名前は覚えていたので、駅員にその駅までどうやって行ったらいいかを訊いた。駅員は事務室にいた別の駅員を呼んで、私はその別の駅員に事務室で説明してもらった。結局紙に書いてもらってそれを渡してもらうことになった。有難い。

看護師、ケーキ屋、駅員、生身の人間は少なくとも仕事にかかわることには親切なのだ。電車のなかで私はそんな人々の顔を思い出し、社会の一員として私を遇してくれた好意の人々に心から感謝して、ようやく帰途についた。

 

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2025年5月17日 (土)

幸福を感じる日

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暴風雨の日(もちろんコンマスは矢部) こんな日にはるばる溜池山王まででかける酔狂。しかし会場はビデオカメラとマイクが林立してオペレーターも待機していました。

ペンデレツキの音楽は酔狂。

しかしツィブレヴァが真っ赤なスカートで登場し、曲(ショスタコーヴィチ ピアノ協奏曲第2番)はチャーミングだけれどピアノはきれきれで瑞々しく、また第2楽章は深い情緒の音楽を聴かせてくれました。シューマンの子供の情景に突然世紀の名曲トロイメライが出現するような感じ。まあそこまではいきませんが。ドイツ音楽にはないリズムも感じました。

ショスタコーヴィチ交響曲第5番は第3楽章までは大変な名演だと思いましたが、ロシアの歴史を学びに来ているわけでもないので、ウルバンスキの意図が納得できなかった部分も第4楽章にはあります。

繰り返し聴くのはこちらかな ⤵

https://www.youtube.com/watch?v=34tCtfa9JIk 
https://www.youtube.com/watch?v=9UvhAL81yLg

Img_1152 

指揮者アンコールで歓呼にこたえるウルバンスキ

ウルバンスキの指揮には独特なエレガンスがあります 指をよく動かします。
ときどき左足だけ内股になります。

都響も彼の意図を実に忠実に表現していたように思います さすがです。

 

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2025年5月16日 (金)

続・生物学茶話269:基底核 2.進化

脳基底核のなかで黒質はそこに障害(黒質緻密部ニューロンの変性)がおきることによって、パーキンソン病などがひきおこされるとが昔から知られており、医師・医学者には深い関心を持たれています(1、2)。それでは黒質は脳のどの位置にあるのでしょうか? その存在位置を見て驚きます。図269-1(ウィキペディアの図をもとに作成)の断面図は左側の図のように、橋のすぐ上の中脳の断面を示したものです。大脳からはとても遠い位置にあります。にもかかわらず多くの教科書・文献には大脳基底核の主要構成要素と書かれています。神経連絡をみていくとそうなるということでしょう。

図269-1の白点線の上側が緻密部、下側が網様部になります。緻密部は主としてドーパミン作動性ニューロンからなり、網様部は主としてGABA作動性ニューロンからなります。268では単純化のため記してありませんが、緻密部のドーパミン作動性ニューロンは線条体のほか、黒質網様部、淡蒼球、視床下核などにも投射しています。またGABA作動性の入力を線条体や黒質網様部から受けています。網様部のGABA作動性ニューロンは脳基底核の主要な投射ニューロンであり、視床・脚橋被蓋核などに投射することによって運動が開始されると考えられています(1、3)。

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図269-1 ヒト脳における黒質の位置

脳基底核は魚類はもちろん、円口類であるヤツメウナギにも存在することが証明されています(4-6)。ヤツメウナギと魚類が分岐したのは5億6千万年前とされているので、この研究結果からみて脳基底核はそれ以前から存在していたと思われます(図269-2)。つまり脳基底核の進化についてはあまりにも古い時代の話なので研究は難しいですが、ただヌタウナギの脳基底核を調べることはできるので、もう少し知識は得られるかもしれません(7)。

諸般の状況を考慮して行動を開始するかどうか決める必要性は、弱肉強食の世界となったカンブリア紀には敵との遭遇や闘争を避けるために大いに必要だったとおもいますが。5億6千万年前といえばそれ以前の平和なエディアカラ紀です。円口類は脳基底核を持っていないナメクジウオなどとくらべると動きが活発でエレガントなので、もちろん姿勢制御などのために脳基底核が役立つのかもしれませんが、当時でも後に述べるように「諸般の状況」を考慮してから行動する個体に生存のアドバンテージがあったと思われます。「諸般の状況」についての情報が集まる場所が今も昔も脳基底核なのでしょう。黒質に相当する部分もおそらくエディアカラ紀から存在して、その後の時代になって脳が前方に進化発達するにつれて脳幹の近傍(中脳の最後部)に取り残されたのだと思います。

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図269-2 ヤツメウナギの進化上の位置

黒質のニューロンが変性するとパーキンソン病が発生することは定性的には昔からわかっていますが、これを定量化することはなかなか困難です。玉利らは3次元神経メラニン画からコンピュータプログラムを用いてその定量化を試み、2017年に発表しています(8、9)。もちろん彼らの独自基準に基づくものですが、結果は明快です(図269-3)。

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図269-3 パーキンソン病患者と健常人の黒質体積比較

哺乳類の行動に黒質が深くかかわっていることは明らかですが、では5億6千万年前に分岐したといわれるヤツメウナギの行動には脳基底核とりわけ黒質はどのようにかかわっているのでしょうか? カロリンスカ研究所のグループはこのことに関心を持って長らく研究を続け、現在では「ヤツメウナギと哺乳類の終脳・視床・基底核のネットワークは類似しており、全体的な構造、連絡網、伝達物質、受容体、ニューロペプチド、イオンチャネルの開閉などは共通である」という結論に達しました(10)。

脳基底核のシステム、あるいは終脳皮質-視床-脳基底核のシステムが5億6千万年より前から存在したということは、ひとつにはおそらく生物が餌に接近し食べようとしたときに、経験や状況を配慮していったんやめるという必要があったということだと思います。食物連鎖がない先カンブリア時代であっても、自分より強力なライバルが近傍にいる場合はいったんやめた方がアドバンテージがあったのでしょう。これは配偶者を争奪する場合にも言えます。ライバルとは関係なく、餌がそこに接近すると危険な場所にある場合、たとえば地形的に危険だったり、周りに生えている植物によって怪我をする恐れがあったりという場合などにも「やめる」ことにはメリットがあります。ですから先カンブリア時代から脳基底核のシステムがあることは、そんなに不思議なことではないと思います。ヤツメウナギにおける基底核の位置は図269-4に示しました(10)。

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図269-4 ヤツメウナギ脳基底核の位置 Figure 4-6 were made based on the figures of Suryanarayana et al (ref.10)

ヤツメウナギの終脳皮質-視床-脳基底核の信号伝達経路を示したのが図269-5です。哺乳類と同様直接路・間接路・ハイパー直接路が存在し、これらの信号伝達がグルタミン酸とGABAによって行われていることも含めて、全く哺乳類と同じです。

黒質の場合はドーパミンを用いた信号伝達を行っており、これを受け取る線条体にはD1系およびD2系の受容体があります。これらのシステムについても私たちとヤツメウナギは全く同じで、実に5億6千万年以上前に完成したものをほぼそのままの形で現在も使っていることを意味します。したがってあらゆる脊椎動物はパーキンソン病を患う可能性があります。

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図269-5 ヤツメウナギの終脳皮質・基底核・視床のネットワークシステム

黒質緻密部に着目して詳細にその作用を示したのが図269-6です。黒質緻密部からのドーパミンによる信号経路は、報酬が得られる場合には活発化し、得られなくなると不活化します。したがってそのアクティビティーは生物の活動全体に大きな影響を与えます。黒質緻密部はヤツメウナギにおいても、図269-6に示したように、終脳皮質・線条体・視床下核・感覚器官・外側手綱核・脚橋被蓋核・中脳蓋などから多くの情報を集めるとともに、線条体・視床下核・黒質網様部・間脳運動制御領域・中脳運動制御領域・中脳蓋など多くの運動制御領域に投射して、生物の運動プログラム全体に影響を及ぼしています(図269-6)。

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図269-6 ヤツメウナギにおける黒質緻密部の機能

 

参照文献

1)ウィキペディア:黒質
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E8%B3%AA

2)高草木薫 大脳基底核の機能;パーキンソン病との関連において
日本生理学会誌 Vol. 65,No. 4・5 pp.113-129 2003
http://physiology.jp/wp-content/uploads/2014/01/065040113.pdf

3)脳科学辞典:脚橋被蓋核
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%84%9A%E6%A9%8B%E8%A2%AB%E8%93%8B%E6%A0%B8

4)続・生物学茶話241:基底核の起源 ヤツメウナギの場合
https://morph.way-nifty.com/grey/2024/07/post-35ba6c.html

5)Yuki Tanimoto, Hisaya Kakinuma, Ryo Aoki, Toshiyuki Shiraki, Shin-ichi Higashijima, Hitoshi Okamoto, "Transgenic tools targeting the basal ganglia reveal both evolutionary conservation and specialization of neural circuits in zebrafish", Cell Reports 43, 113916 (2024)
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2024.113916
https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S2211-1247%2824%2900244-4

6)Marcus Stephenson-Jones, Ebba Samuelsson, Jesper Ericsson, Brita Robertson, and Sten Grillner, Evolutionary Conservation of the Basal Ganglia as a Common Vertebrate Mechanism for Action Selection., Current Biology vol.21, pp.1081?1091, (2011)
DOI 10.1016/j.cub.2011.05.001
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21700460/

7)菅原文昭・倉谷滋 円口類から解き明かされる脳の領域化の進化的な起源
ライフサイエンス新着論文レビュー
DOI: 10.7875/first.author.2016.015
https://first.lifesciencedb.jp/archives/12168

8)玉利誠 国際医療福祉大学博士論文 神経メラニン画像を用いたパーキンソン病患者の黒質体積測定プログラムの開発と解析
file:///C:/Users/Owner/Downloads/32206AS262.pdf

9)玉利誠, 宇都宮英綱, 永良裕也 理学療法学 SupplementVol.44 Suppl. No.2 (2017)
MRI画像を用いたパーキンソン病患者の黒質緻密部の定量解析とHoehn & Yahr重症度との関係 
第52回日本理学療法学術大会 抄録集
https://doi.org/10.14900/cjpt.2016.1027
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2016/0/2016_1027/_article/-char/ja/

10)Shreyas M. Suryanarayana, Juan Pérez-Fernández, Brita Robertson, Sten Grillner, The Lamprey Forebrain – Evolutionary Implications., Brain Behav Evol., vol.96: pp.318–333 (2021)
DOI: 10.1159/000517492
https://karger.com/bbe/article/96/4-6/318/821601/The-Lamprey-Forebrain-Evolutionary-Implications

 

 

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2025年5月13日 (火)

2024-2025 シーズンのバルサ

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印西郵便局前のメタセコイヤ並木道

今年のFCバルセロナ(バルサ)はまれにみる強さでエル・クラシコを全勝し、スペイン国王杯のタイトルを獲得し、欧州チャンピオンズリーグはベスト4、そしてリーガ・エスパニョーラも優勝目前です。これはもちろんフリック監督、選手たち、フロントの努力によるものですが、私が感じたことはやはり素晴らしい選手達がいたことです。

GK:大黒柱のテア・シュテーゲンが長期故障欠場という危機の中で、いったん引退を決意していたシュチェスニーが代役を引き受けてくれたことは幸運でした。有難いことです。ラ・マシアから急遽引き上げられたイニャキ・ペーニャもきちんと重責を果たしていたと思います。

DF:DFは一番大変でした。本来はアラウホがリーダーとなって統率しなければいけなかったのですが、故障欠場が多くてそれができませんでした。クリステンセンもほとんど故障のため出場できませんでした。イニゴ・マルティネスはずっとバスクのチームで活躍してきたバスク人で、ビルバオのリーダーだったベテラン選手です。そんな選手をバルサが採用したときには物議をかもしましたが、ちょうど契約満了だったのでタイミングよく獲得できたことが幸運でした。彼はセンターバックとして出場し続けバルサを救いました。2007年生まれのクバルシも破格の頑張りで、バルサのCBを、大きな故障もなくシーズン通して勤めきりました。サイドバックのバルデとクンデも同じく大きな故障もなく無事に勤め切りました。ふたりとも突破力と守備力を兼ね備えた素晴らしい選手だと思います。ベンチにはエリック・ガルシアとラ・マシア引き上げしかいないというなかで、猛烈なハードスケジュールをこなしたディフェンダーの功績はすごいものがあります。

MF:バルサの中核です。今シーズンはガビやデ・ヨングが故障であまり出場できなかった中で、ダニ・オルモを獲得したのが大きかったです。非常に攻撃的なMFで、その突破力は異常です。あとはもっと長い時間ピッチで頑張れる体力ですね。ペドリは往年のチャビをバージョンアップしたようなゲームコントローラーで、多くの評論家が褒めたたえます。カサドもガビのいない穴をきっちり埋める活躍でした。フェルミンとパブロ・トーレは来シーズンの成長に期待します。

FW:レバンドフスキーは年齢的に11月位までしか持つまいと思っていたのですが、なんとピチーチを争うような大活躍で春まで出場できたのはびっくり。やはりバルサ優勝の最大の貢献は彼でしょう。ヤマルは2007年生まれ次の時代のフットボル界をしょって立つ大物テクニシャンで、まだ高校生の年で本当に華のある選手です。一瞬のタイミングに放つ左足のミドルシュートはメッシを凌駕するものがあります。彼が観衆を魅了するのはその意外感です。とても心配な問題は、彼に支払うサラリーとリーガが定めたチーム上限との折り合いがつくかどうかです。フェラン・トーレスは昨シーズンまでは絶好のチャンスにGK正面にしかシュートを打たない??FWだったのですが、なんと今年は信じられない大変身で得点が取れるFWになりました。本人は精神的なものだと言っているようです。ラフィーニャはもともとすごい実力のある選手で、チャビ監督との相性がわるかった(右サイドで起用してもダメな選手)だけで、今シーズンの活躍は当然です。ファティはようやく故障が癒えましたが、今シーズンは活躍できませんでした。彼の独特のリズムのシュートに期待しているので、来シーズンもチームに残ってほしいと思います。

最後にフリック監督のドイツ人にもかかわらず、バルサ伝統の高い最終ラインのオフサイドトラップ、中盤の回収力、隙間の突破などを重視するなかで、特に縦パスからの切込みを徹底した戦略は素晴らしいと思いました。

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1.

声を あげよう

われら ブラウグラナ

地の涯からも 集いし友よ

掲げる旗のもと 拳(こぶし)を合わせよう

ブラウグラナは 嵐を呼ぶ

叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ


2.

嬉しい日 悲しい日

どんなときも

心ひとつに 合わせし友よ

掲げる旗のもと 勝利を信じよう

ブラウグラナは 嵐を呼ぶ

叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

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Visca el Barca 🎀

Visca Catalunya 🎀

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2025年5月10日 (土)

フィルそして雨上がりの住吉

イソヒヨドリのベティが4月10日にオス(フィルと命名)をうちに連れてきて、翌日からしばらく姿を見せませんでしたが。5月6日にしばらくぶりでやってきました。ということは多分近所で抱卵して雛がかえったと思われます。そして5月10日にはフィルをみかけました。団地の自転車置き場で写真を撮らせてくれました。ベティとともに子育て中なのでしょうか。月末には子供を連れて遊びに来てくれるのでしょうか。それとも巣立った子供たちはすぐに遠くに行ってしまうのでしょうか。

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住吉に出かけました。地下鉄の出口にある美容室の看板が いいね! 評判の良い店らしい。

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住吉の猿江恩賜公園入口には薔薇が咲き誇っていました。私が好きなのはバラ色の薔薇です。品種は確認できませんでしたが、多分GDルイーズでしょうか。雨上がりで水滴が光っていました。

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それにしても多久和怜子氏のフルートはマニアックです。「管弦楽のためのラプソディ」では尺八風の音を出していました。ソアーレスさんの指揮はまるで糊がビシっと効いた真っ白なYシャツみたいで、ソリストの壺阪さんもラプソディー・イン・ブルーでそんな雰囲気の音を出していました。満場の拍手にこたえてのソリストアンコールは、デサフィナード(アントニオ・カルロス・ジョビン)。「新世界より」も清新で折り目正しく、かつ細部はやわらかい音楽をやっていました。シティフィルは大健闘、客席の興奮もすごかったです。

ビート・タケシが「これからの日本は何で飯を食っていくのか」と嘆いていましたが、音楽の実力は十分なので、あとは政府が世界に売り出すためにどんな手助けができるかにかかっています。

 

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2025年5月 9日 (金)

続・生物学茶話268:基底核 1.イントロダクション

ヒトの大脳に相当する脳のパートは魚類では主として臭いの判別に用いられていましたが、進化するにつれて大脳は多くの仕事を受け持つようになりました。なぜそうなったかはよくわかりませんが、脊椎動物は進化によって新しい仕事ができると、それを脳の前の方(ヒトの場合は上の方)の部分に細胞をつくってやらせるというのが標準となっています。魚類はヒトより高速で泳いだり、方向転換したり、転回したりできますが、餌を鰓でつかんで口に運んだり、寄生虫を鰓で払い落したりすることはできません。ヒトでは言葉を覚えたり、キーボードをたたいたり、編み物をしたりという複雑な作業を進化した脳にやらせています。

そういうわけでヒトでは大脳は巨大になり、その制御システムも複雑になりました。それを最も簡略に模式化した図で示すと図268-1のようになります。しかし言葉の定義にはいろいろ問題があります。大脳辺縁系というのは言葉のイメージとしては大脳の外側にあるような感じですが、なぜか内側にあります。英語では limbic system ですが、名詞の limbo は物事が決まらないこと、忘れられていた状況、どっちつかずの場所などを言いますが、天国と地獄の間の場所という意味もあり、誰かがこれを「辺獄」と訳したことに関係があるようです。本当は間脳と大脳の間のどっちつかずの組織という意味でしょう。

それを踏まえると、大脳基底核というのはあまりにも不適切な言葉になります。英語では basal gannglia であり、どこにも大脳という言葉はありません。中間(リンボ)より間脳寄りなのですから、大脳基底核というのは無理でしょう。脳基底核か単に基底核とするほうが妥当だと思います。さらに言えば「核」という言葉にも問題があります。普通、核=神経核は組織未満のニューロンの集合体を指しますが、たとえば線条体などは臓器と言ってもいいくらいのまとまりがあって、これを核と称するのは失礼でしょう。

視床という言葉も変です。まるで視覚だけに関係しているような印象を与えます。そもそも生物学の立場から言えば、大脳が大きいのは霊長類だけで、脊椎動物全体から見ればごくごくわずかな生物を基準にして言葉を決めるのはおかしいわけで、一般的な意味では終脳ということを生物学者達は推奨しています。ただ確かにヒトでは大脳は大きいので、ここでは大脳という言葉を使います。

どうしてこんなに脳科学の基本用語が不適切用語のオンパレードになっているのか不可解です。脳科学というのは医学・医療と深くかかわっているので用語を使う人の裾野が広大なために、一度決めるとなかなか変えられないという事情があるのかもしれません。前置きが長くなりました。御託はこの辺にして、図268-1は巨大化した大脳皮質を制御するための4層構造を示しています。実際の立体配置もこれに近い構造になっています。視床は間脳の一部ですが、特に大脳と深くかかわっています。この構造はヒエラルキーを意味しません。むしろネットワークです。

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図268-1 脳の最も簡略な模式図

図268-2も模式図ですが、図268-1よりずっと実際の配置に近く描かれています。今回の話題は基底核(脳基底核)ですので、その位置がわかるように描いてあります。基底核は見た目脳の中心周辺に位置しています。ただしこれは脳を左側から見た図で同じ構造が右側にもあります。全体の立体構造を把握するには図268-3のような水平断面図も合わせて把握することが必要です。

基底核は脊椎動物が地球上に出現した頃に近い形態のままのヤツメウナギにも存在します(1、2)。おそらく脊椎動物においては、進化の早い時期から大脳(終脳)+基底核+視床はセットで機能していたと思われます。ナメクジウオにはこのようなセットはありません。扁桃体は構造的に尾状核と連結していますが、現在の脳科学では基底核ではなく大脳辺縁系に含まれることになっています。

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図268-2 脳基底核の位置

図268-3はヒト脳を水平に切ってみた1断面ですが、これをみると脳の中心は視床で、そのまわりを基底核と脳室が取り囲む構造が見えます。模式図でなくMRIで実際に水平断面を見た構造は、例えば参照文献3に便利な画像が提供されています(3)。

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図268-3 脳の水平断面

大脳皮質と基底核、そして両者と深い関係にある視床がどのような神経回路でつながっているかは古くから研究されていて、大まかには解明されています。それをまとめたのが図268-4です。一つの神経細胞ができることは2つしかありません。それは連絡先の細胞を興奮させるか興奮を抑制するかです。そういう意味では神経系はデジタル的なシステムです。

基底核からの出力は黒質網様部と淡蒼球内節から行われますが、両者ともGABAによる抑制性の情報出力で、これは常時行われています。このことは私たちが手足を動かしていないなどのデフォルト状態のときには常に抑制性のシグナルが出ていて、その抑制性のシグナルが抑制されることによって行動が開始されるという私たちの体の基本的なメカニズムと深い関係があります(4)。

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図268-4 脳基底核・大脳皮質・視床のネットワーク

大脳皮質・基底核・視床にかかわる神経伝達については、直接路・関節路・ハイパー直接路という伝統的な分類が行われています。ウィキペディアの記述によれば(5)、下記のようになります。図268-4で赤のグルタミン酸が伝達物質となる経路は興奮、青のGABAが伝達物質となる経路は抑制行います。ピンクのドーパミンが伝達物質となる場合は受容体によって興奮・抑制の両者の場合があります。

1.直接路:
大脳皮質→線条体→淡蒼球内節・黒質網様部→運動性視床核→大脳皮質運動野

2.関接路:
大脳皮質→線条体→淡蒼球外節→視床下核→淡蒼球内節・黒質網様部→運動性視床核→大脳皮質運動野

3.ハイパー直接路:
大脳皮質→視床下核→淡蒼球内節・黒質網様部→運動性視床核→大脳皮質運動野

基底核から直接脳幹経由の運動指令が出されるケースは非常にマイナーですが、視床からは直接脳幹に投射する経路もあります(4)。多くの場合大脳皮質から脳幹に運動指令が出されます。ただ正しい運動指令を出すためには大脳皮質-基底核-視床のネットワークが必須です。

基底核は運動に関するいわば奥の院なので、ここに不具合が起こるとさまざまな病気が発生します。たとえば黒質緻密部のニューロンに不具合がおきると、線条体への興奮刺激が低下し、線条体からのGABAによる抑制シグナルが低下するため、黒質網様部や淡蒼球内節による視床への抑制シグナルをおさえられなくなり、常に運動を行わないような指示が出ている状態になります(図268-4)。このためパーキンソン病のような運動障害が発生してしまいます(6、図268-5)。逆に黒質網様部や淡蒼球内節のニューロンに不具合がおきると、視床への抑制が効かなくなり、不随意で持続的な筋収縮がおきてジストニアを発病します(7、図268-5)。またハンチントン病は尾状核のニューロンに不具合が起きた時に罹患する病気として知られています(8)。

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図268-5 脳基底核の不調によって発生する病気

ここでは運動に注目して述べてきましたが、基底核は認知機能、感情、動機づけ、学習など様々な機能に関わっているため(5)、その不具合は様々な症状を引き起こします。まだ十分に解明されていない部分も多いと思われます。

参照文献

1)Sten Grillner and Brita Robertson, The Basal Ganglia Over 500 Million Years., Current Biology 26, R1088–R1100, (2016) doi: 10.1016/j.cub.2016.06.041.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27780050/

2)続・生物学茶話241:基底核の起源 ヤツメウナギの場合
https://morph.way-nifty.com/grey/2024/07/post-35ba6c.html

3)病気が見える 7:脳・神経
https://www.byomie.com/gallery/vol7/mri_axial/index.html

4)国立生理学研究所 生体システム部門HP
https://www.nips.ac.jp/sysnp/ganglia.html

5)ウィキペディア:大脳基底核
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%84%B3%E5%9F%BA%E5%BA%95%E6%A0%B8

6)ウィキペディア:パーキンソン病
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3%E7%97%85

7)ウィキペディア:ジストニア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%A2

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2025年5月 5日 (月)

World music collection 26: Sohma Hiroko

Cd

CDs of Sohma Hiroko

Sohma Hiroko is a female singer of Japan born 1970 at Nagoya. She has published 12 albums. Among them, "Eve" and "Adam" are self-cover specials arranged acoustically and I recommend for you. Though they were published 2007 and 2006, uploaded to YouTube just recently.

She was deeply affected by the music of Mary Black and she visited Ireland in her young days and met her. Based on it, she constructed her original music.

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夕なぎ Yu-nagi means evening calm (in Adam)
https://www.youtube.com/watch?v=wNj65ADmiuQ 

An old photograph, put between the sheets of the address note, slipped off to the sand of the beech, that reminds me of my old boy friend and young days. Soon it gave me a shock while everything around me is not changed and calm. I pick up the photograph and sand off. I wait for a bus at the seaside bus stop in the evening calm, while I do not know when it comes.

The song starts by vocal and guitar, but soon an oboe joins impressively. I love this arrangement very much.

この曲を聴くと、学生の頃三浦半島の油壷に行くために引橋のバス停でぼーっと何時間もバスを待っていたことを思い出します。マリンパークが消滅して、油壷は寂しい場所になっているのでしょうね。

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リフレイン Refrain (in Adam)
https://www.youtube.com/watch?v=TGBLz1-0-Hs 

A pure and sincere love song.

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愛が教えてくれたもの  The love left me something reliable (in Adam)
https://www.youtube.com/watch?v=zSYLdTygb1k 

This is the garden that I played in my childhood. Now the house disappeared and it changed to the field of dandelion. The things and people I loved have disappeared now. But the love left me something reliable.

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永遠を探しに To explore the eternity (in Eve)
https://www.youtube.com/watch?v=Aj-YuUv53DE 

Let's jump out the home town, and aim for the horizon.

Live performance
https://www.youtube.com/watch?v=H4C4g_JIPOM 

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風の祭日 The day of wind festival
https://www.youtube.com/watch?v=8mqBGnRXLTM&list=PL_JPyZ1-dS7MwoXgbZpe12Py3ShxnP6cP 

You may become aware of the irish taste easily.

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Lion in the zoo
https://www.youtube.com/watch?v=efurnDrGkEI 

Zoo means the established society.

I love this music and lyrics.

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Live performances

The place where the sky encounters with the sea.
https://www.youtube.com/watch?v=4YHg_tjdWmM&t=401s 

1%
https://www.youtube.com/watch?v=uKXaHf4dEHg 

The sky of Tokyo
https://www.youtube.com/watch?v=Bfj7TvrOkKw 

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Promotion video

https://www.youtube.com/watch?v=64w74hRE2dw

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HP:

http://www.hirokosohma.com/

Her picture (Hiroko is also a painter) .

She loves cats (me too💕).

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2025年5月 4日 (日)

明日でブログ開設20年目になります 読者の皆様に深謝

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なんと明日でブログ開設20年目に突入します。

ご閲読賜りまして有難うございます。これが生きがいというより、私のなかではこのブログが私という存在の過半です。

最近はクローラーがよく来ていて、無生物に見て回られるというのも不気味ではあります。AIにとりこまれて利用されるのでしょうか? うーん なんだかなあ・・・。

それはそれとして、今年も例年通り記事を書くつもりなので何卒よろしくお願い申し上げます。人様に見ていただけるのが何よりの励みになります。

管理人 monchan より

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この19年間に耐えがたい困難な事態が何度かありましたが、なんとかまだ生き延びてこのブログを続けています。ただブログを開設した19年前は、いま改めて記事を見てみると、わりと平穏な年だったようです。

私の最初のブログ記事に添えられていた電子顕微鏡写真です。筋細胞がアクトミオシンを蓄積しつつある私が撮影した写真です。

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<ブログ開設の年に書いたお気に入りの記事>

19年前の南青山曼荼羅ライブの記録です ↓ 。
以下当時に書いたままをコピペしました。

2006.12.09 西島三重子
南青山マンダラライヴ

前半は70年代フォーク特集

1)愛と風のように(小出さん) --- スカイラインは高級車で手がでません。
2)サルビアの花
3)なごり雪
4)海を見ていた午後
5)22才の別れ
6)池上線
7)いちご白書をもう一度
8)酒と涙と男と女
9)異邦人
ユーミンの曲を2曲(4と7)やったのにはびっくりしました。
ユーミンには作曲家としてライバル心メラメラと思っていましたので。
(小声で)2曲ともホントいい曲ですねえ。
異邦人(オリジナルは久保田早紀)はなんかはまってましたね。
すっかり乗せられてしまいました。

Break

後半はオリジナル曲

1)ミッドナイトララバイ --- 今日この曲がきけるとは!
2)ジンライム
3)シベールの日曜日 --- 小生のリクエスト hime の好意に感謝します
4)青春のシュプレヒコール
5)DearMyFriend
6)おひさまのたね --- 仏日版って結構好きです
7)プレゼント
8)BonCourage(ボン・クラージュ)
9)星屑のララバイ

アンコール

1)やさしくなれる季節だから --- 今日のオリジナル曲のなかでは1番だと思う
2)ホワイトクリスマス

それにしても、リクエストした人間の面がみんな割れてしまうという仕掛けには
お手上げでした(ヤマガラのカレンダーいただきました 謝謝)

 

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2025年5月 2日 (金)

豪雨の南青山

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南青山曼荼羅・西島三重子ライブに行ってきました。青山通りと外苑西通りの交差点あたりは外資系の会社がいっぱいで、ここが日本かと思います。みーちゃんは昨年十二月に生死をさまようような交通事故にあって、なんとドクターヘリで病院に運ばれたそうです。すっかり回復し、お元気そうで何よりでした。

なんと今回は3曲も初めての曲がありました。古い曲ですがライブでは今までやったことがなかったみたいです。

セルフカバー曲

あざやかな微笑(石川ひとみ)
https://www.youtube.com/watch?v=_S7nODjPRVE 

風の中のさよなら(桜田淳子)
https://www.youtube.com/watch?v=a92HOv6B-go 

オリジナル曲

ムーン・リバー(西島三重子)

石川ひとみさんのために作曲した曲としては「にわか雨」がお気に入りだそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=IioJr7LqKVg

今年もまたバースデイライブ(8月17日)は開催されるようです。

今日は来場者に自家製はがきのプレゼントがありました ↓。 

有難うございます。

西島家のアビ子ちゃんはネズミの死体をプレゼントしてくれるそうです(爆)。

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最後に曼荼羅では曼荼羅弁当(名物)とカレーライスがメニューから消えていました。コメはあきらめたようです。政治のミスはこんなところにも影響を及ぼしています。

 

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