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2025年2月27日 (木)

悪性リンパ腫の異常な増加

高倉健さん、松方弘樹さん、石ノ森章太郎さんらが罹患して亡くなった病気が悪性リンパ腫(1、2)ですが、近年この悪性リンパ腫が爆発的に増えていて、この現象は高齢化では説明できません。最近では今月21日に、青山学院大の陸上競技部の皆渡星七(みなわたりせな)さんの死亡が公表されました。最近話題になっている高額医療費の自己負担の問題も、継続的な治療が必要なこの病気の患者には、モロに引っかかってくると思われます。

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図は国立がんセンターの統計ですが、これが不備です。情けないことに、Ⅹ軸およびY軸の数字が部分的に消えていて、私がY軸は元の表記を全部消して書き換え、X軸は元の表記と私が書き換えた表記を併記しました。国立がんセンターはもっとまじめにやってほしいと思います。もっとまじめにやってほしい点は他にもあって、図の茶色の線は罹患数なのですが、2016年までしかグラフがありません。データはあるに違いないのにグラフ化されていないと思われます。これはあまりにひどいじゃありませんか?

ともかく爆発的に増加していることは確かなのですが、何が原因なのかはさっぱりわかっていないようです。ただもともとは欧米では多く日本ではまれな病気だったことは確かなので、生活の欧米化が原因とは言われています。EBウィルス、ピロリ菌、メトトレキセートなどの関与も疑われていますが、これらでは近年の爆発的増加は説明できないと思います。

成人になっても激しく増殖している細胞は何種類かあって、それらの多くは癌化しないような対策がほどこされています。赤血球は脱核し、皮膚・毛髪細胞はケラチン化し、顆粒球は多型核化し、それぞれ細胞分裂が不可能な状態にすることによって癌化は防がれています。リンパ球は常時増殖している細胞ではないので、そのような特殊化はおこなわれていません。しかし負傷や感染など異常な事態になると増殖します。細胞が増殖すると癌化のリスクは増加します。それはDNAをコピーする際にエラーが発生するためです。

日本の研究者のグループは、患者のDNAを解析しBRCA1, BRCA2, ATM, TP53 の変異が悪性リンパ腫の発症に関係していることを報告しています(3)。

生活の欧米化で癌化のリスクは増すと言われていますが、リンパ球との関連はよくわかりません。ただワクチンを頻繁に接種すると、そのたびごとにリンパ球が増殖するので癌化のリスクは増加します。とはいってもワクチンを打つことのメリットもあるので、メリット―デメリットを数値化することができない現状では打つか打たないかの科学的判断は無理でしょう。

昨今はコメの値上げがとまらず、食生活の欧米化がますます進みそうで、これはさらに悪性リンパ腫を後押しすることになりそうです。本当に困ったものです。

参照

1)塚崎邦弘(がんプラス) 悪性リンパ腫 病型や悪性度、腫瘤の部位や大きさに応じた治療選択
https://cancer.qlife.jp/blood/blood_feature/article6523.html

2)山口素子 悪性リンパ腫 治療の進歩 日本内科学会雑誌 110 巻 9 号 pp.1939-1944 (2021)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/110/9/110_1939/_article/-char/ja/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/110/9/110_1939/_pdf/-char/ja

3)国立がんセンター プレスリリース 2022年
悪性リンパ腫の大規模ゲノム解析~単一遺伝子疾患型が存在する可能性~
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2022/0906/index.html

 

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2025年2月24日 (月)

続・生物学茶話262:脳の不思議な世界(一色出版)について 後半

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第6章は脊椎動物に近縁な生物群の中枢神経系について述べられています。対象の動物(ギボシムシ、ホヤ、ナメクジウオなど)はみな非常に興味深く、この本の中心的課題を取り扱う章と言えます。しかしこの章のライターは調子に乗って話をどんどん進め、読者のわかりやすさを顧みないという悪癖があり、エディターがもっと手を入れて文章を整理し、わかりやすくするという努力をすべきだったと思います。異論はあると思いますが、個人的にはホヤは変異が著しいグループなので概ね省いて、ギボシムシとナメクジウオをメインに構成した方が良かったように思います。230ページの図14をみてもホヤの異様さはよくわかります。

ギボシムシ(半索動物)が脊索・神経管・下垂体・甲状腺とそれぞれ相同の組織を持つことがはるか昔から知られていたとは驚きでした。また運動ニューロンの軸索が交差するというのも興味深いお話です。軸索交差は私は合理的ではなく、進化過程の事情でやむなくそうなってしまったのではないかと思いますがどうでしょうか。

ナメクジウオが保有している4つの目のうち2つが前口動物型だというのは非常に興味深く、この動物が後口動物が分岐する前の始原的左右相称動物の特徴を保持していることを思わせます。体型的にも竹輪型です。

第7章はいよいよ脊椎動物の登場です。

260ページから261ページにかけて非常に重要なことが述べられています。従来脊椎動物の脳と無脊椎動物の脳は起源を異にするものであり、相同ではないと考えられていたのですが、近年の分子発生学の進展によって、両者を作る遺伝子の組み合わせがよく似ていることから、前口動物と後口動物の共通祖先の段階から始原的な脳が準備されていたことが明らかになったということです。

ロンボメア形成と脳の機能は、脳の形成過程を知る上で非常に重要であり、私も「続・生物学茶話212:ロンボメア」で取り上げました。興味のある方はご覧ください
https://morph.way-nifty.com/grey/2023/05/post-9ee757.html

私がこの本を購入した一つの理由は両生類の脳についてまとまった知識が欲しいと思ったからですが、それは空振りに終わりました。特にどうして両生類の小脳が魚類に比べて著しく退化しているように見えるのはなぜか知りたかったのですが、全く記載がなく、そもそも小脳に関する記載が非常にプアなのにはがっかりしました。おそらく著者が得意ではない領域だからだと思いますが、両生類の件については論文が非常に少ないのかもしれません。推察するに両生類は非常に限られた極限環境に生きる魚類から進化したため、その誕生の原点から小脳が退化した状態だったのでしょう。カエルやイモリより動きが鈍い爬虫類や哺乳類はいくらでもいますが、彼らは本来小脳がやるべき仕事を脳の他の部分で代替しているのかもしれません。

視床下部が終脳より前方という新しい考え方は興味深いものがありました。また円口類の終脳が非常に進化した構造を持つことにも驚かされました(多分収斂の結果だと思われます)。

第8章は魚類について。脊椎動物の繁栄の基盤は魚類によって作られました。魚類以外の脊椎動物は海から追い出されたいわば負け組の子孫です。脊椎動物成立直後の始原的イメージを継承する円口類と別れて顎を持つ魚類が生まれた後、初期に分岐した軟骨魚類(サメ・エイ)、普通に魚と呼ばれている条鰭類、私たちと条鰭類の中間にある肉鰭類(シーラカンス・ハイギョ)などが魚類に相当しますが、えこひいきなくフラットな分類学の目で見ると、私たち四肢動物を魚類に含めても不思議ではありません。

魚類の脳の構造は私たちの脳と非常によく似ています。特に橋・小脳・中脳・間脳・終脳という並びは同じです。延髄の構造は私たちより複雑で、終脳の前に臭葉があるなどの相違点はあります。ただ基本構造は同じでも各パーツの大きさには大きな違いがあり、環境に適応して脳のパーツのサイズを変えることによって、特に条鰭類は大繁栄してきたと言えます。この章を読むことによって私たちの脳についての基本的な知識を得ることができます。出発点は293ページの脳の俯瞰図です。でもこの図を見ていると、ヒトの脳は本当に奇形だなあと感じます。

ただこの章のタイトル「水生に最適化した脳の多様化」には違和感があります。魚類およびその祖先はすべて水生なのですから、水の中以外の環境はなかったわけですからこのタイトルの意味はよくわかりません。それに最適化したのに多様化するのはなぜと言いたくなります。ところで私たちの脳は陸生に最適化されているのでしょうか?

第9章は両生類かと思いきや、スキップして爬虫類。とはいえ爬虫類の脳についてはほとんど何も知らなかったので、いろいろ学ぶことができました。特にDVR領域についてのカルテンとブエイエスの論争は興味深く読みました。コラムのマムシは赤外線を感知するピット器官というのを持っていて、この情報は視覚の一部として認識されているという話は、全く知らなかったのでびっくりしました。若い頃に沢を歩いていると、周りに昼寝しているマムシがいっぱいいたことがあり、恐ろしい記憶が蘇りました。

第10章は鳥類の脳です。これは各部位がほとんど英語の3文字略語で表記されているので慣れるまでが大変です。例えば図6は日本語で表記してあるのは「大脳基底核」だけで、RA・NCM・HVC・CMM・LMAN・AreaX・DLMなどと並べられると、この本は一体どんな読者を想定しているのだろうと首をかしげます。最低でもどこかに略さないフルネームと略号の対照表を示すべきでしょう。

とはいえ鳥のさえずりを制御する脳の部位についての記述はとても興味深いものがありました。仲間のさえずりを模倣するための部位と、自分の独自性を加味するための部位が異なることなどがわかっているようです。鳥の鼻の穴の形から、いつ恒温化がはじまったかを推定するというお話にはちょっと感動しました。

第11章は脳研究のコアともいうべき哺乳類の脳についてです。膨大な知識がコンパクトにまとめられていて素晴らしい章です。さらに哺乳類の祖先動物にもふれられていて、ジュラ紀のハドロコディウムには立派な大脳皮質があったが、三畳紀のモルガノコドンの大脳皮質は非常に小さく、哺乳類に特異的な6層構造はできていなかったという情報は新知識でした。

ただ全体的な情報量としてはやや物足りないものがありました。なにしろクジラについてのモノグラフである次の12章よりもページ数が少ないのです。クジラの脳については全く知らなかったのであとでじっくり読んでみようと思っていますが、この本の構成として、両生類についての章がないのにクジラについて1章を割くというのはいかにもアンバランスで奇形的です。これがこの本の最大の欠点です。

フィナーレは第12章で人類に関するものですが、小難しい話はあまりなくて気軽に読める内容です。ただ私は毛の研究をしていたことがあるので、ケラチン遺伝子の周辺にネアンデルタール人由来の遺伝子が多いというお話にはびっくりしました。

人類の歴史は700万年前頃からはじまっているそうですが、400万年前頃に生きていたとされるアウスロラピテクスまであまり脳の進化はなく、250万年前のホモ・ハビリスから急速に進化したそうです。

最近スペインのマルトラヴィエソ洞窟で、ホモ・サピエンスがヨーロッパに現れるはるか以前に描かれた手形が発見されて研究されています(1)。これはもちろんネアンデルタール人によるものです。

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1)Christopher D. Standish et al., The age of hand stencils in Maltravieso cave (Extremadura, Spain) established by U-Th dating, and its implications for the early development of art., J.Archael.Sci., vol.61 (2025)
https://doi.org/10.1016/j.jasrep.2024.104891
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352409X24005194

 

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2025年2月22日 (土)

続・生物学茶話261:脳の不思議な世界(一色出版)について 前半

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脳の研究史からはじまって、脳の起源からあらゆる生物の脳について言及するという、まさしく動物の脳について知られていることを全面展開した内容豊富な本です。しかも学術的にきちんと書いてあるので気持ちいいですが、それだけにタイトルから想像できるような一般向けの本ではなく、生物学・医学を学ぼうとする学生あるいはマニア向けと言えます。

第1章はイントロダクションで、カハールとゴルジの論争などが書いてあります。ただ「心の研究」についての著者の意見や立場は明らかにされていません。

第2章で動物系統樹に沿った説明がされていますが、ここで「らせん卵割動物」とされている分類群が出版後大幅にリニューアルされたので改訂が必要かもしれません。腸管神経系について触れられていないのはやや不満があります。腸管神経系は腸を外界として認識し、運動機関として使用する、という脳のプロトタイプとして利用していた先カンブリア時代の動物群がいて、脊椎動物はそこにルーツがあると思うからです。

第3章はプラナリアの脳を中心としたお話で、この生物は栄養吸収を必ずしも腸に頼らないタイプの生物で、腸管神経系を発達させたグループとは別系統だと思いますが、脳を独自に発展させていったようです。体細胞の15%がニューロンだそうでちょっと驚きました。ここでは専門用語がバンバン出てくるので、かなりの知識がないと理解できないと思います。少なくともオプシンとイオンチャネルの関係については図を使って説明すべきだと思いました。

第4章は昆虫の脳についてです。まずこの章の執筆者である上川内あづさ氏・石川由希氏の文章の素晴らしさに舌を巻きました。わかりやすく退屈させません。必要な場所にわかりやすい図が配置されているところにも感心します。ハエの求愛歌の話とか、ハエは交尾したときに精液の味がわかるとか、ミツバチの連合学習とか、シロアリではカーストによって脳の構造が異なるとか、内容的にも興味深いお話が満載です。

第5章はほぼタコの脳についてのモノグラフです。現生動物で最大サイズの脳を持つのはダイオウイカだそうですが、タコの脳もあなどれません。マダコの視覚情報を処理するアマクリン細胞は2500万個あり、それに何しろ足(腕)は8本あってそれぞれの吸盤を制御できるというわけですから、人間には想像不可能なような運動・感覚神経の複雑な制御が行われているに違いありません。それに足には18万個の化学受容細胞があり、何に触ったかがわかるようです。

専門的になりますが、脊椎動物では最も原始的なナメクジウオから哺乳類に至るまでに2回の全ゲノム重複があり、たとえば体の構造を基本的に規定するHоx遺伝子も4倍になっているのですから、様々なバリエーションを作る上で有利でした。それに対して軟体動物ではそのような全ゲノム重複はおこらなかったそうです。にもかかわらずタコと貝では非常に形態が異なります。私たちの体の構造は基本的に魚のヒレを手足に変えると似たようなものなのですが、タコと貝にそのような類似性はありません。

タコのHоx遺伝子はなんとクラスターを形成せず分離して存在することがわかりました(下図)。一度も全ゲノム重複なく進化を成し遂げた理由としてトランスポゾンの作用と、RNA編集によってバラエティに富んだタンパク質がつくられたことが挙げられています。これはホヤについても同様です。ホヤのHox遺伝子もクラスターを形成しておらず、これによって他の脊索動物とはかけ離れた形態をとるようになったと思われます。

QRコードのリンクが切れていたのは残念。軟体動物は私たちとはかけ離れた体の構成を持つ動物なので、研究する意義などないのではないかという考えもあるかもしれませんが、アメフラシの神経やイカの巨大軸索が脳神経系の機能を知る上で果たした巨大な貢献を考えると、このような考えが愚かであることがわかるでしょう。ハエや線虫についても同様です。

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2025年2月20日 (木)

竹田理琴乃 Eテレ クラシックTVに出演

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今日のクラシックTV、竹田理琴乃(りこの)はやっぱり変な奴でしたが、司会が何しろ同じピアニストの清塚なので緊張したことでしょう。

はばたけ!若き音楽家2025 Eテレ 2025年2月20日 
再放送 2月24日(月) 午後2:00~午後2:30
https://www.nhk.jp/p/classictv/ts/14LJN694JR/episode/te/167PV3WNVV/ 

前世は鳥使いということで、選曲はモーリス・ラヴェルの「悲しい鳥たち」 なるほどね。
お見事な演奏でした。

動物たちと共に生きる人生ということで、私は彼女にはシンパシーがあります。

Chopin Piano Competition 2015
https://www.youtube.com/watch?v=YCKFM8BzIso&t=326s 

18th Chopin Competition
https://www.youtube.com/watch?v=aFqjPfnhtRY 

自己紹介
https://www.youtube.com/watch?v=imqVkVVeHIU 

X
https://x.com/rikono_takeda

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私の過去記事

2015 ショパンコンクール
https://morph.way-nifty.com/grey/2015/10/post-35ea.html 

竹田理琴乃(たけだりこの)ランチタイムコンサート@カワイ表参道コンサートサロン
https://morph.way-nifty.com/grey/2016/05/post-d2b6.html 

Chopin Piano Competition 2021
https://morph.way-nifty.com/grey/2021/10/post-4f2c45.html 

 

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2025年2月19日 (水)

特濃ミルク8.2 カフェオレ

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ここのタイトルが「渋めのダージリンはいかが」なので、さぞかし管理人も右京のように紅茶ばかり飲んでいる偏屈と思われるかもしれませんが、私はコーヒーも好きです。ただインスタントコーヒーのような苦味ばかりが感じられるものはあまり好きではありません。

このキャンディーはとてもまろやかな味で万人向けだと思います。ただびっくりするのは1日4粒までと書いてあることです(爆)。表には1日4粒目安としか書いてありませんが、裏には1日摂取目安量を守ってくださいと書いてあります。その理由が4粒当たり28mgのGABAを含んでいるからだそうです。GABAは脳血液関門を通らないので脳に影響はないと思いますが、なぜ4粒制限なのかは書いてありません。調べたところ、腸のGABA受容体が反応して腸の変調をきたす可能性があるようです。あと血圧が下がる可能性があります。

個人的には20粒くらい食べたことがありますが、何も起こりませんでした。なので4粒制限は自己責任で全く気にしていません。私の読んだ論文では1日3gを1か月摂取しても副作用は認められなかったそうです(1)。1日400粒食べても大丈夫ってことです。ただ砂糖がはいっているので、それはおすすめできません。

1)佐々木泰弘・河野元信   美味技術研究会誌 No.15:pp.32-37,(2010)
ギャバ(GABA)の効能と有効摂取量に関する文献的考察

https://www.jstage.jst.go.jp/article/bimi2002/2010/15/2010_32/_pdf

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2025年2月11日 (火)

お知らせ

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サラ 「これからぐっすり眠るんだから 静かにね」

私事のため1週間ほどお休みします。

 

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2025年2月 8日 (土)

逆さであること

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ミーナは逆さの私を認識できるのでしょうか?

逆さと言えば「サカサクラゲ」を思い浮かべます。クラゲは生物学では刺胞動物といいますが、私たちとは最も体の構造が異なる生物群のひとつです。なにしろ脳に相当する神経細胞の集合体が、まるでダブルサークルのシーリングライトみたいな構造になっています。

サカサクラゲはその中でも変わり者で、学名はなんとカシオペア・アンドロメダという天空の名前です。傘を下にして逆さの状態で生きています。まあコウモリみたいなのもいるので、彼らだけというわけではありませんが。

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(藻類に住居を提供し、仕事をさせて安楽に暮らすサカサクラゲ Wikimedia commons)

サカサクラゲが逆さなのにはわけがあって、傘の裏側に藻類を飼っていて、藻類に光合成をさせてそのエネルギーをもらって生きているので、藻類が太陽の光を受けやすいように逆さになっているそうです。これはある意味究極の進化です。これができれば餌を探さなくてよいので一生遊んで暮らすことができます。泳ぐ必要がないのでエネルギーもあまりいりません。たまに泳ぐときには傘を上にして泳ぎます。

クラゲの刺胞は餌に毒を注入して食べやすくするためにあるのですが、サカサクラゲは餌はいらないので刺胞はないのかというと、なんと彼らは自分たちの安楽な生活を脅かす敵を追い払うために、毒針を周りにまき散らすというエグい武器として使っているようです。

クラゲに比べるとタコはずっと私たちと近い生物です。特に眼は私たちとそっくりで、私たちより優れている部分もあります。

Beatles: Octopus garden
https://www.youtube.com/watch?v=A7coEcXjd7Q 

Cover: Reina del Cid, Toni Lindgren, and Travis Worth
https://www.youtube.com/watch?v=A9U0g-5r4P0 

 

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2025年2月 7日 (金)

石破政権 多子世帯への就学支援策を策定

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すごいニュースが入ってきました。

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政府は7日の閣議で、3人以上の子どもがいる多子世帯について大学授業料を無償化するなどとした大学等修学支援法改正案を決定した。今国会に提出し、成立すれば4月から施行する。所得制限を撤廃することで、支援対象は約41万人になる見通し。

対象となるのは、扶養する子が3人以上で、大学、短大、高専、専門学校に通う学生がいる世帯。支援の上限額は、年間の授業料については国公立大が54万円、私立大が70万円。入学金は国公立大28万円、私立大26万円とした。これにより、授業料と入学金の家計負担が国公立は原則ゼロとなり、私立も大幅に減少する。 

【時事通信社】
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私ははるか昔からこのブログで、「少子化を克服するには多子家庭を差別的に優遇しなければならない」と言ってきましたが、わが国が崩壊の瀬戸際に追い詰められて政府がようやく重い腰を上げました。本来なら30年前からやっておくべき政策とはいえ、これは石破政権の大ヒットだと思います。野党も協力してこの法案を成立させるべきです。さらに子供3人以上の家庭は食料品の消費税をゼロにするべきです。そうするだけで、ひょっとすると出生率が大幅に上昇するかもしれません。

さらに会社には社宅や社員寮があり、役所には公務員宿舎があり、大学には学生寮があるのが当たり前の社会に戻すことができれば、人口は+に転じるに違いありません。ちなみに私が学生だった頃には、某銀行の青山の社宅(5LDK)に家庭教師のバイトで毎週お邪魔していました。

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2025年2月 6日 (木)

ヒヨドリのベティ

うちのベランダには2022年まで長い間ずっと、冬になるとヒヨドリが遊びに来ていました。ジョージI世~ジョージⅢ世と名付けていましたが、おそらく親子で3代にわたって文化が伝承されていたと思います。

https://morph.way-nifty.com/grey/2022/02/post-26685e.html

ところが2023年の長期修繕で建物全体がメッシュで覆われてしまい、せっかくの伝承が破壊されてしまいました。それで2024年の冬には全くヒヨドリをみかけることはなくなりました。

とことが2025年になって、なぜか毎日またみかけるようになりました。2022年までは雄主導で、ときどき雌をつれてくるかんじでしたが、今年はどうも主に雌が来ていて、ときどき雄もつきあっているといるという風に見えます。雄雌は生物学的には判定できていないので推測にすぎませんが、とりあえずベティと名付けました。ベティは頭の毛が全く立っておらず、ヒヨドリらしい顔貌ではありません。

ベティとはまだ網戸越しにしか対面していませんが(写真がぼけているのはそのせい)、こちらを正面向いてじっと見ていることもありますし、口笛で多少のコミュニケーションはできていると思います。

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2025年2月 3日 (月)

続・生物学茶話260:筋層間神経叢のストライプ構造

解剖学は医学・生物学の基本ですが、その教科書はほとんどの内容が昔から知られていることというカビ臭いものです。しかし神経の配列はその中で例外的に知られてないことがまだまだ存在するというめずらしい領域です。腸管神経の構造もそのひとつで、2021年にパリ大学のシュヴァリエらのグループが腸管筋・筋層間神経叢(アウエルバッハ神経叢)のマクロな配列が、ニワトリではハニカム構造で、マウスでは格子構造であることを発表してから注目されるようになりました(1、図260-1、図260-2)。

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図260-1 筋層間神経叢の特殊な配列を解明した研究者たち

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図260-2 ニワトリとマウスの違い

スタンフォード大学のハムネットらは特に、マウスの腸管筋・筋層間神経叢が腸管が伸びている方向と垂直な方向にガングリオンが整列し縞模様を形成していることに注目しました(図260-1、図260-3、2)。シュバリエらも同じものを見ていたはずなのですが、このストライプ構造に気が付きませんでした。ミクロに見ているとわかりにくいのですが、ハムネットらは広い領域にわたって免疫組織化学による観察を行い、小腸及び大腸の全域にわたってあまねくガングリオンのつながりがストライプ構造になっていることに気が付きました。これは筋層間神経叢に限って見られる現象で、粘膜下神経叢(マイスナー神経叢)ではガングリオンの分布はランダムで、ストライプ構造は見られません(2、図260-3)。

盲腸に近い一部の大腸(proximal colon)では、ストライプが強く斜めに傾いている部分があります(図260-3D)。それでも類似する非連続性構造が存在することには変わりがありません。

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図260-3 マウス筋層間神経叢はストライプ構造をとる

ハムネットらはさらに発生のいつの時期からこのようなストライプ構造ができてくるのかをマウスで調べました。その結果小腸では胎生14日目(E14.5)ではまだランダムですが、16日目(E16.5)になるとストライプ構造が形成されてくること、大腸では16日目ではまだランダムですが、18日目にはストライプ構造が形成されてくることなどが明らかになりました(図260-4)。これはストライプの間にある細胞がプログラム細胞死したためではないという研究結果も得ました(2)。出生後は小腸・大腸ともに急速に伸長するので、それに伴って神経節同士の距離は拡大し、それはストライプの幅が拡大するという形で現れます(図260-4)。

ハムネットらが所属するスタンフォード大学の神経外科研究室では、引き続きヒトについても研究を行い、マウスと同様ヒト胎生期において小腸でも大腸でも筋層間神経叢のストライプ構造が形成されることが確認されました(3)。ヒトの場合小腸では胎生14週目、大腸では胎生21週目くらいにストライプが形成されます(3)。マウスでもヒトでも小腸に比べて大腸の整列は遅れるので、ストライプ化の情報は前→後の方向に伝搬するものと思われます。

粘膜下神経叢ではこのようなストライプはみられないことから、ストライプはおそらく腸管筋の収縮にかかわっていることが予想されます。弱いシグナルがメリハリなく移動するより、同期によって強いシグナルが飛び飛びに発生しながら移動する方が腸の筋収縮には有利だと思われます。ストライプと言うのは2次元的な表現ですが、3次元的に言えば、腸管を中心として円盤が重なっているイメージになります。

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図260-4 筋層間神経叢のストライプ構造は胎仔のうちに用意される

ストライプということで生物学者がすぐ思い浮かべるのはペアルール遺伝子でしょう。この遺伝子はショウジョウバエでみつかりましたが、体にストライプすなわち3Dでは円盤状の遺伝子発現をABABABというかたちで交互に行うことができます(4)。このようなホメオティック遺伝子はほとんどの生物が持っており、私たちの背骨もこの種の遺伝子によって各椎骨が正確に配置され(椎骨・椎間板・椎骨・椎間板というABAB構造)、末梢神経もそれにしたがって配置されます。したがって神経叢のストライプ構造もホメオティック系の遺伝子がかかわっているのではないかと予想されます。

先天的な神経叢の不良形成によって消化管の蠕動運動がうまくいかなくなるヒルシュプルング病という腸の病気があり、重篤な場合指定難病となっています(5)。ダーショウィッツとカルシュミットはこの病気が従来考えられていたような神経細胞が減少するだけでなく配置・ストライプ形成がうまくいかないために腸管筋の収縮に支障をきたす場合があるのではないかという仮説をたてました(図260-5、6)。

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図260-5 ヒルシュプルング病の新しいモデル

実際にHOX11遺伝子の欠損により筋層間神経叢がうまくできないという報告があります(7)。 また RET遺伝子(チロシンキナーゼ活性を持つ受容体をコードする)とIHH遺伝子(インディアンヘッジホッグ)の両者に変異があり、ヒルシュプルング病または慢性の便秘患者を生ずる家系が報告されています(8)。IHH遺伝子をノックアウトしたマウスでは腸管神経叢のパターニングに異常が発生するという報告もあります(9)。

参照

1) Nicolas R. Chevalier, Richard J. Amedzrovi Agbesi, Richard J. Amedzrovi Agbesi, Yanis Ammouche, Sylvie Dufour, How Smooth Muscle Contractions Shape the Developing Enteric Nervous System., Front. Cell Dev. Biol., vol.9, article 678975 (2021)
https://doi.org/10.3389/fcell.2021.678975
https://www.frontiersin.org/journals/cell-and-developmental-biology/articles/10.3389/fcell.2021.678975/full

2)Hamnett R, Dershowitz LB, Sampathkumar V, Wang Z, Gomez-Frittelli J, De Andrade V, Kasthuri N, Druckmann S, Kaltschmidt JA., Regional cytoarchitecture of the adult and developing mouse enteric nervous system., Curr Biol. vol.32(20): pp.4483-4492. (2022)
doi: 10.1016/j.cub.2022.08.030.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36070775/

3)Dershowitz, L.B., Li, L., Pasca, A.M. et al. Anatomical and functional maturation of the mid-gestation human enteric nervous system. Nat Commun vol.14, no.2680 (2023).
https://doi.org/10.1038/s41467-023-38293-z
https://www.nature.com/articles/s41467-023-38293-z

4)wikipedia: pair-rule gene
https://en.wikipedia.org/wiki/Pair-rule_gene

5)難病情報センター ヒルシュスプルング病(全結腸型又は小腸型)(指定難病291)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/4699

6)Lori B. Dershowitz and Julia A. Kaltschmidt, Enteric Nervous System Striped Patterning and Disease: Unexplored Pathophysiology, Cell Mol Gastroenterol Hepatol., vol.18, no.2, no.191332 (2024)
doi: 10.1016/j.jcmgh.2024.03.004.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11176954/

7)Shirasawa S., Yunker AMR, Roth, KA. et al., Enx(HOX11L1)-deficient mice develop myenteric neuronal heperplasia and megacolon., Nature Med., vol.3, pp.646-650 (1997)
doi: 10.1038/nm0697-646.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9176491/

8) Sribudiani Y, Chauhan RK, Alves MM, et al., Identification of variants in RET and IHH pathway members in a large family with history of Hirschsprung disease. Gastroenterology vol.155: pp.118–129. (2018)
DOI: 10.1053/j.gastro.2018.03.034
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29601828/

9) Ramalho-Santos M, Melton DA, McMahon AP. Hedgehog signals regulate multiple aspects of gastrointestinal development. Development vol.127: pp.2763–2772 (2000)
DOI: 10.1242/dev.127.12.2763
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10821773/

 

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2025年2月 1日 (土)

Walk down the memory lane 14: darcy117117

Img_1387a

Sarah and Mina(calico) on the comforter.
ミーナの肩を抱くサラ

darcy117117って、117117はまあ「いいないいな」だろうとは思いますが、darcy がわかりません。

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画像は多分猫の祭壇で、骨壺もみえます。私の家にもこの種のものがあります。こういうちょっぴりハスキーで沈潜するアルトシンガーが最近はあまり見当たらない気がします。

The movie is probabpy a kind of the altar for her cats. There is a similar one also in my house. Her alto voice is slightly husky and has a feeling of grief.

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雨の街を 荒井由実

ユーミンが自分が制作した曲の中で最も気に入っているそうです。
It'a a rainy early morning. I walk down the street of silent city. The street lights are turned off one by one. Now, I feel I can walk to the far distance if someone may embrace my shoulders.

https://www.youtube.com/watch?v=fQk_UmIaDCw

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ためらい 増田恵子

中年にならないとわからない曲
A song for an affair of middle-aged lovers.

https://www.youtube.com/watch?v=MYug_NkrJyA

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鳥になって 中島みゆき

自殺をテーマにした曲
The theme of this song is the suicide

https://www.youtube.com/watch?v=AkgEVwtVINA

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黄昏のビギン 水原弘

ちあきなおみの曲だと思っていたら、オリジナルは水原弘
A love song in the age just after the world war II.

https://www.youtube.com/watch?v=c9AELpwjy_M

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涙そうそう BEGIN

Memories for the dead.

https://www.youtube.com/watch?v=cQpwzIpQYnI

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家族写真 森山良子

An old photograph of the family, with a cat movie.

https://www.youtube.com/watch?v=CgHMNu6lzmw

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わが麗しき恋物語 バルバラ

A song of a French singer, Barbara.
"Ma plus belle histoire d'amour"

https://www.youtube.com/watch?v=b9d9mjFkybQ

 

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