« 2024年6月 | トップページ | 2024年8月 »

2024年7月30日 (火)

続・生物学茶話242:脚橋被蓋核

前回は基底核がエディアカラ紀から存在したということを述べました(1)。プランクトンであっても触手を動かして水流を起こしたり、エサを捕獲したり、消化器官を動かしたりする生物は存在します。しかしそのような生物は基底核とか脳幹とか脊髄は持っていません。私たちとヤツメウナギの共通祖先はなぜ基底核-脳幹-脊髄というシステムを必要としたのでしょう?

それはおそらく姿勢制御・左右のバランスがとれた運動のためだったのではないでしょうか。左右相称のネクトンやベントスの場合、空間の座標軸を決めてその中で活動するために基底核-脳幹-脊髄というシステムが必要だったのではないかと推測されます。今生きている私たちの基底核は非常に多くの役割をになっていますが、現在でも歩くことや姿勢を正しく保つことは無意識のうちにこの基底核-脳幹-脊髄が行っています(2)。これはエディアカラ紀から現代まで受け継がれているシステムです。

しかし左右相称動物が最初からこのシステムをもっていたわけではなく、当初はナメクジウオのように基底核を持たない生物であったことは確かでしょう。ただナメクジウオも姿勢は制御しているし、多少は泳ぐので、その程度の運動制御なら脊髄だけで制御できると思われます(3)。ただナメクジウオもそのエディアカラ紀の祖先から数億年の進化を経て現代に至っているので、彼らなりに姿勢制御や運動制御をスムースに行うための進化を遂げてきたとも考えられます。

基底核が私たちの脳の端緒であったということ、それはエディアカラ紀に準備されたということは信じるべきことだと思います(4、5)。ここで以前に示した基底核システムの概要図とほぼ同じ図を再掲します(1、図242-1)。

2421a

図242-1 私たちの脳のシステム

しかし図242-1を眺めていると、ひとつ大きな疑問がわいてきます。それは基底核から下方(posterior)に出ているシグナルがGABA系の [not go] シグナルだけだということです。このことは基底核はすでに完成されていた [go] シグナルに基づいた体を動かす神経-筋メカニズムを制御するためのシステムなのではないかということを思わせます。そしてその [go] システムは脳幹-脊髄に追加して基底核が誕生する前からあったとしても不思議ではありません。

1936年に出版された著書の中で、クロスビーらは橋に存在する脚橋被蓋核が多くの生物で共通の構造と連結パターンを持つことを報告しました(図242-2、6)。私はこの本を読んだわけではなくて、Gut と Winn の総説(7)に書いてあったことを受け売りしているだけですが、この本はなんとアマゾンで販売していて、325ドル99セントで買えます(8)。ご興味のある方はどうぞと言いたいところですが、なんと1845ページもあるので抱えるだけでも大変そうです。

2422a

図242-2 脚橋被蓋核のユニバーサリティ

脚橋被蓋核は英語では Pedunculopontine Tegmental Nucleus で (Tegmental が省略されることもあります)、ヒトではこのブログですでに取り上げた青斑核より少し上部 (anterior) の橋 (pons)領域 に存在します(図242-3、9)。この部域はアセチルコリン作動性ニューロンが豊富に存在することが知られており、その他にグルタミン酸作動性、GABA作動性ニューロンも存在します(9、10)。同じニューロンにアセチルコリンとグルタミン酸が混在する場合があることも知られています(10)。このことは脚橋被蓋核が基本的に [go] のシグナルを出すことを意味します。またこのようなニューロンの混在、神経伝達物質の混在は始原的な神経系の状況を想像させてくれます。

2423a

図242-3 脚橋被蓋核の位置

脳が基本的に前方に新組織を形成して進化してしてきたこと(11)、基底核のなかでも脳幹に近い淡蒼球や黒質網様部は [not go] のシグナルを常時出していること(1)を考えると、基底核ができる前の生物は脳幹の最前部にあった脚橋被蓋核が行動や姿勢制御(さわる・食べる・動く)のコントロールセンターであり、その活動は内部のGABA作動性ニューロンや青斑核ニューロンの活動レベルによって制御されていたのではないかという推測が成り立ちます(図242-4)。

2424a

図242-4 エディアカラ紀における原始脳の進化仮説

すなわちエディアカラ紀において、まだ基底核が形成されていない生物では脳幹特に現在橋の一部とされている脚橋被蓋核の原型が当時の脳そのものであり、全神経・筋肉の統御を行っていたのではないかと思われます。中には当時からメモリーを担当する細胞をその近辺に持っている生物がいて、その部域が小脳に進化したのかもしれません(5)。そのような状況が図424-4の左図であり、カンブリア紀を迎える前におそらく脚橋被蓋核の上部構造である基底核が形成され、さらにメモリーシステムをになうニューロンの数が増えたのではないかと思われます(図242-4 右図)。エディアカラ紀において、どんな理由で図242-4左図のシステムから右図のシステムに進化したのかは謎です。

もちろん最初に基底核ができたときには、図242-1のような複雑な構造であるはずはなく、直接路だけだったと思われますが、線条体→ not go → 淡蒼球・黒質網様部 → not go → 脚橋被蓋核 → go というシステムがカンブリア紀には機敏な行動を行うために急速に発展したのだろうということは理解できます。

参照

1)続・生物学茶話241:基底核1 ヤツメウナギの場合
https://morph.way-nifty.com/grey/2024/07/post-35ba6c.html

2)高草木薫 大脳基底核による運動の制御 臨床神経学 49巻 6号 325-244頁 (2009)
https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/049060325.pdf

3)山田格 脊椎動物四肢の変遷一四肢の確立一 Journal of Fossil Research, Vol.23, pp.10-18 (1990)
https://www.kasekiken.jp/kaishi/kaishi_23(1)/kasekiken_23(1)_10-18.pdf

4)Marcus Stephenson-Jones, Ebba Samuelsson, Jesper Ericsson, Brita Robertson, and Sten Grillner, Evolutionary Conservation of the Basal Ganglia as a Common Vertebrate Mechanism for Action Selection., Current Biology vol.21, pp.1081–1091, (2011)
DOI 10.1016/j.cub.2011.05.001
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21700460/

5)Fumiaki Sugahara, Juan Pascual-Anaya, Yasuhiro Oisi, Shigehiro Kuraku, Shin-ichi Aota, Noritaka Adachi, Wataru Takagi, Tamami Hirai, Noboru Sato, Yasunori Murakami, Shigeru Kuratani, Evidence from cyclostomes for complex regionalization of the ancestral vertebrate brain., Nature, vol.531, pp.97-100 (2016) DOI: 10.7875/first.author.2016.015
https://first.lifesciencedb.jp/archives/12168

6)C. U. Ariens Kappers, G. Carl Huber, and Elizabeth Caroline Crosby, The Comparative Anatomy of the Nervous System of Vertebrates, Including Man., Macmillan (1936)

7)Nadine K. Gut and Philip Winn, The Pedunculopontine Tegmental Nucleus—A Functional
Hypothesis From the Comparative Literature., Movement Disorders, Vol. 31, No. 5, pp.615-624, (2016) DOI: 10.1002/mds.26556
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26880095/

8)https://www.amazon.com/Comparative-Anatomy-Nervous-Vertebrates-Including/dp/B000MIAMJ4

9)Wikipedia: peduncuropontine nucleus
https://en.wikipedia.org/wiki/Pedunculopontine_nucleus

10)脳科学辞典:脚橋被蓋核
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%84%9A%E6%A9%8B%E8%A2%AB%E8%93%8B%E6%A0%B8

 

 

 

| | | コメント (0)

2024年7月29日 (月)

パリオリンピック:なでしこジャパン2

Tanikawa_momoko

なでしこジャパン 谷川萌々子の機転の一発でブラジルに勝利

ピッチに出てきた選手の髪は、ブラジルがほぼ全員ロングヘヤーなのに対して、日本はほぼ全員が体育会系のショートカットでどうかと思いましたが、まあ自分が選手だったとしてもショートカットにするだろうなとも思いました。

ブラジルはスペインのチーム一体のティキタカフットボルとは違って、個人技の集積です。その個人技が半端じゃなくて、スペインとは違った理由でなでしこは球を保持できません。PK機会を得ましたが、田中美南の不可解なキックで得点ならず。前半はそれでも耐えきりましたが、後半ついに失点。

しかしアディショナルタイムに再度得たPKで、今度はキャプテンの熊谷紗希が蹴って冷静なゴール。引き分けで終了かとほっとしていたら、なんとオリンピック初出場の谷川萌々子が、GKが前に出てきているのを冷静に見逃さず、ロングループを決めてくれました。スウェーデンのチームでプレーする19才の選手だそうです。

(画像はJFAのサイトより)

谷川萌々子さんのインスタグラム
https://www.instagram.com/momoko.tanikawa/?locale=de&hl=am-et

インスタグラムを見ると、FCバイエルンが保有権をもったままスウェーデンのチームに期限付き移籍しているようです。

サラも目を丸くしてびっくり

Imga-2

| | | コメント (0)

2024年7月27日 (土)

パリオリンピック:なでしこジャパン1

Photo_20240727091301

バルサファンにとってオリンピックでスペインと対戦したなでしこジャパンの試合は、とても複雑な気持ちになるものでした。なでしこは完全にバルサスタイルのサッカーにはめられて、身動きがとれないまま敗れてしまいました。

もともとバルサスタイルとは、体格やフィジカルに劣るスペイン人がその欠点を補うために、ポゼッションによって相手の攻撃時間を減らすために考案された作戦ですが、現在のスペイン女子は体格・フィジカルも一流で、そんな人たちが完成されたバルサスタイルでやっているわけですからたまりません。現在のバルサトップチーム(FCバルセロナ)はボランチもトップも外国で育った選手の場合が多いので、必ずしもバルサスタイルのサッカーをやっているわけではなく、むしろこの女子チームの方に伝統のスタイルを感じます。

なでしこはよくスペインの田舎のチームがやるようにファイブバックで守備を固めてカウンターを狙うという作戦でしたが、これは中盤で自由に回せるのでバルサスタイルにとって思う壺で、手慣れた感じであしらわれてしまいました。

バルサスタイルを破壊するには、相手のサイドバック(SB)より走力が勝るSBを配置して、必ず前に出てくるSBの裏を狙うというのが定石です。そのための選手を選出して長谷川からのパスで走らせるという作戦をとるべきでした。

そもそも高倉監督時代から長谷川は軽視されていて、その天才を利用しようとせず、ベンチを温めるケースすら多かったように思います。池田監督になってから出られるようにはなりましたが、チーム全体として彼女を司令塔としてプレーしようという雰囲気は全く感じられず、それはなでしこの伝統ともいえます。

Yui_hasegawa_20240228tokyo

長谷川唯 (画像はウィキペディアより)

 

| | | コメント (0)

2024年7月25日 (木)

都響 これはヤバい

2024

サマーミューザ2024ですが、東響・読響・新日本フィルが完売なのに、都響は売れ残っています。

プログラムに問題はないと思いますが、オーケストラも間断なく新機軸を打ち出していかないと、演奏自体の完成度が高くても飽きられるということを考えないとね。

https://www.kawasaki-sym-hall.jp/festa/calendar/

 

| | | コメント (0)

2024年7月24日 (水)

炎暑に涼を求めて

A_20240724113001

霧が深くなって、道を見失った
しだいに寒さがおそいかかってくる
夕暮れは近く、今日は野宿するしかない

野宿する場所をさがして彷徨っていると
突然霧の中から子犬を連れた少女が現れた

震えている私を見て、少女は
「寒いの? うちに来ればサモワールがあるわよ」
と言った

私「熱い紅茶を飲ませてくれるのかい」
少女「ついていらっしゃい」

霧の中を少女と子犬についていくと、森の入口に
小さなログハウスがあった

少女がドアを開けると、なかから父親らしき
長いあごひげの男があらわれた

少女「寒いみたい 震えているの」
私「道に迷った旅人です」
男「はいれ」

少女:オーボエ
子犬:フルート
男:ホルン
私:チェロ

==========

チャイコフスキー 交響曲第1番「冬の日の幻想」
第2楽章「陰気な土地、霧の土地」
Adagio cantabile ma non tanto - Pochissimo piu mosso

https://www.youtube.com/watch?v=THT5PjadpIc

https://www.youtube.com/watch?v=9w4cNAXUii8

 

| | | コメント (0)

2024年7月22日 (月)

エアコンつけざるを得ず

Img_1041a

ミーナ「こんなに暑い日は、エアコン効かせて昼寝が一番」

サラ「そんなに押すなよ 座布団からずり落ちてしまう」

私「外で用があるから留守番頼むよ」

サラ ミーナ「これから熟睡だから知らないよ 💤」

 

| | | コメント (0)

2024年7月20日 (土)

高関-東京シティ・フィル カルミナ・ブラーナ 2024/07/20 @ティアラ江東

炎暑の中、住吉駅からティアラ江東へ。この異常な暑さの中で咲き乱れる薔薇(品種はフランクリー・スカーレット)を発見。変わり者はどの世界にもいます。

Img_0876a

今日のチケットは何ヶ月か前に完売しています。それもそのはず、高関-シティフィルの「カルミナ・ブラーナ」です。

Img_0881b

前半のニールセン:アラジン組曲というのは初めて聴く曲でしたが、これがなかなか楽しい曲で、ニールセンってこんな親しみ深い曲も書いているんだと驚きました。しかもコーラス付きの原典版というのはほんとに珍しいそうです。コーラスの効果は大いにありました。

後半のオルフ作曲世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」は東京シティ・フィルグループが総力を挙げて取り組んだ今シーズンの目玉です。カルミナ・ブラーナは中世の修道院に保管されていた作者不明の古い歌を、シュメラーという人が編集して1847年に出版した歌集だそうです。カール・オルフはこの詩に自作の曲をつけて壮大なカンタータを制作して1936年に完成し、1937年にフランクフルト歌劇場で初演が行われました。

ウィキペディアをみると現代においてもドラマ・映画・バラエティ・ゲームなどで使われており、なかでも驚いたのは「ももいろクローバーZ」がカバーしていることです。これが結構すごい。

Momoiro Clover Z - Neo Stargate ZZ
https://www.youtube.com/watch?v=7SK0C874CcM

この曲は冒頭 O Fortuna という女神への呼びかけから始まります。フォーチュンの語源になっている女神だそうで、バランスボールに乗って現れるというのがなんとも・・・
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%83%8A

途中で藤木(カウンターテナー)が寝てるので何やってるんだろうと?だったのですが、考えてみると第12曲に備えて焼き魚の体勢になっていたんですね(爆)。バリトンの萩原氏は大熱演、森麻季さんは後半からの登場でしたが相変わらずの美声とテクニックで魅せてくれました。コンマスは戸澤さん。

このクラッシック音楽のなかでもヘビメタといわれるカルミナ・ブラーナ、きっちり制御されているのに激しく突き刺さってくるというこの感覚はたまりません。シティフィル・コーアも大熱演でした。ティアラ江東の広すぎないサイズ&響きすぎない音響もよくて、音の洪水と興奮に包まれて圧倒されたコンサートでした✨

 

| | | コメント (0)

2024年7月14日 (日)

成田空港にて

Narita

ここのところ成田空港に行く機会が多くなりました。でもそれは海外旅行のためではなく、電車の乗り換えのためですが💦。

最近はキャリーを楽々と動かせる、キックボード付きや電動アシストのものが発売されているようです。

【革命】まさかのキックボード付きキャリーケースが誕生!
https://kakakumag.com/houseware/?id=8620

スマートだけどちょっと恥ずかしい? 荷物と一緒に乗って移動できる“スマートキャリー”がいよいよ発売
https://time-space.kddi.com/digicul-column/world/20170314.html

でも私が見たその人(30才台くらいの外国人の女性)は、そんなたった1台のキャリーを楽に動かそうと言うようなケチなアイテムなんて吹っ飛ばすような迫力でした。

彼女は大型キャリー2個と中型キャリーを1個もっていて、その中型キャリ-の上に座って両手に大型キャリーをもち、地面を足でキックしながら移動していたのです。手慣れた感じで、大型キャリーの中身は商品かもしれません。その迫力には圧倒されました。

多忙にて1週間ほど更新をお休みします。7月22日からの週には復活する予定です。

では皆様 ごきげんよう

| | | コメント (0)

2024年7月12日 (金)

全盛期のバルサと日産スタジアム

WOWOWを解約したのでユーロ2024は見ていませんが、バルサのヤマルが最年少ゴール(16才)を決めたとかで盛り上がっているようです。これ報道ステーションでもゴールシーンを放映していました。スペインはオランダを破り、7月15日(月)4:00からイングランドとの決勝戦に臨みます。

ヤマル
https://sports.yahoo.co.jp/video/player/15414566

でもいいことばかりじゃなくて、ペドリがクロースに潰されて負傷というバルサにとっては痛い悪夢もあったようです。

https://web.gekisaka.jp/news/euro/detail/?410830-410830-fl

バルサは若い力が台頭し、2~3年後には下のような黄金時代の到来を期待したい。この写真は日産スタジアムで撮影しました。

A_20240712092901

ところで写真の頃は、日産スタジアムで試合をするバルサを見に行くのに、品川駅から新幹線に乗って新横浜からバスという径路でしたが、最近たまたま久しぶりに南北線に乗る機会があって、なんと南北線でスタジアムに直行できることに気がつきました(遅い)。南北線は相鉄線にまで乗り入れてるんですね。びっくりしました。

A_20240712093001

 

| | | コメント (0)

2024年7月 9日 (火)

もはや盛夏

Img_0816a

やたらと私事関係の所用が多い忙しい夏です。そんなときに限って盛夏が早くやってきます。

今日も吹雪のようにケサランパサランが舞うなか出かけました。まだ7月初旬だというのに盛大に蝉の鳴き声が聞こえます。

蝉を注視するサラとミーナ。

 

| | | コメント (0)

2024年7月 8日 (月)

Walk down the memory lane 9: Ishikawa Yuko (石川優子)

Imgisikawayuko

One of the gifted singer song writers in 20th century. Sometimes I hear (auditory hallucination?) her footsteps dancing on the street.

石川優子さんは1979年デビューのシンガーソングライターで、同じ姓の石川ひとみさんがその1年前にデビューし、さらにその前に石川さゆりさんがデビューしていたので混乱を招きました。皆さんほぼ同じ年齢のようです。優子さんはヤマハポプコンがデビューのきっかけだったようで、これは当時のエリートコースでした。

-----------------------------------

Fly away  作詞・作曲 石川優子

https://www.youtube.com/watch?v=VEMl-rf03m4
https://www.youtube.com/watch?v=diBpxEOJHfo

初期の傑作。自身で作詞・作曲を行っていて、アイドルじゃありませんよと宣言しました。
クリスタルボイスでスローバラードを歌う。歌詞の内容は「復讐」なので驚いた覚えがあります。

-----------------------------------

雨の降る日曜日 作詞・作曲 石川優子

https://www.youtube.com/watch?v=_0a9D6lv2HE
https://www.youtube.com/watch?v=TVAgEFpg2dI

若い頃はこんな暗いメランコリックな曲が歌いたかったのだと思う。そういうタイプのシンガーソングライターは結構多いと思います。

-----------------------------------

シンデレラサマー 作詞・作曲:石川優子

https://www.youtube.com/watch?v=4pF57iIvdWI
https://www.youtube.com/watch?v=LxW0_XwKnKo

アップテンポの曲ももちろんやりますよ ってこと。

-----------------------------------

涙のソリティア 作詞・作曲:石川優子

https://www.youtube.com/watch?v=dhPpiIV35gs
https://www.youtube.com/watch?v=nmzc9_B_GT0

美しいメロディは昭和歌謡を超越した感じがします。

-----------------------------------

春でも夏でもない季節 作詞:秋元康作 作曲:石川優子

https://www.youtube.com/watch?v=NagL2ZwotfA
https://www.youtube.com/watch?v=LvPuWC3kOFA

5分でsunset 作詞:秋元康作 作曲:石川優子

https://www.youtube.com/watch?v=nSPXwfoAV-E
https://www.youtube.com/watch?v=HF02ci7icXc

この頃ダンスミュージックに凝っていました。

米国西海岸でレーザーディスク(LPサイズのDVDのようなもの)を作ったのですが、そのとき当地で雇用したダンサー4人がなんと全員お釜でびっくりしたという発言をきいたことがあります。多分そのレーザーディスクを私は持っていて見た記憶があります。アマゾンなどでDVD版を売ってないので、多分DVD化されなかったのだと思います。LPレコードと違ってハードウェアが絶滅したため、素晴らしい映像作品が多数消えてしまいました。

https://www.youtube.com/watch?v=5Bw3luWZ154

高級オーディオで鳴らして空気録音。

-----------------------------------

よそゆきのSmilin' Face  作詞:小林和子 作曲:伊丹哲也

個人的に一番好きな曲です

https://www.youtube.com/watch?v=wLUlXDacXk4

https://www.youtube.com/watch?v=IYWEISnko_E

コーラス、ドラムス、ベース、エコー、ペーソスのある歌詞、みんな素晴らしい。

-----------------------------------

雑踏 作詞・作曲 石川優子

https://www.youtube.com/watch?v=jNih9xaAtn4

ビジュアルはレアですが音割れがあります 音質は下の方がベター

https://www.youtube.com/watch?v=wYyg-33hmRI
https://www.youtube.com/watch?v=6O4qBPpmCoo

-----------------------------------

ふたりの愛ランド 作詞:チャゲ・松井五郎 作曲:チャゲ

多分最大のヒット曲

https://www.youtube.com/watch?v=7dC0idgd6bQ
https://www.youtube.com/watch?v=mKanR_QJTKM

-----------------------------------

HP: https://www.sonymusic.co.jp/artist/YukoIshikawa/

ヤマハのサイト: https://www.yamahamusic.co.jp/s/ymc/artist/114?ima=0000&link=ROBO004

 

 

| | | コメント (0)

2024年7月 5日 (金)

フルシャ-都響@サントリーホール 2024/07/05

Imghrusa

本日のコンマスはボス矢部(サイドは水谷氏)にもかかわらず、そして梅雨中にもかかわらず、お天気はなんと快晴。しかも異常な暑さです。かなり久しぶりのサントリーホールですが無事帰れるか!?

数ヶ月ぶりで森ビル2Fの水内庵(みのちあん)に行ったら数人表に並んでいました。私も後ろについていたら入店する前に注文をとりにきましたので玉丼を注文。ここの味はとても家庭でだせるものではありません。夜の営業は予約で満席だそうです。

カラヤン広場に降りていくと、さすがに滝が稼働していました。

Img_0844a

この滝 昔はこうでした

Img_2926a

水は流しているので、ここをケチったわけではありませんが、滝の裏側にあった数台以上のテーブルと椅子は撤去されました。多分管理の問題なのでしょうが、最近はなんでもプロバイダー・カンパニ-の都合で事が運ばれ、カスタマー・市民の便益は無視される傾向にあります(駅から時計を撤去する、健康保険証を廃止するなどその典型)。政権交代したら是非ここは改善して欲しいと思います。

前半のプログラムのソリストは五明佳廉さんです。前に聴いたときは若手のバリバリでしたが、とんがることなくロマンチックな演奏を聴かせてくれました(1)。今回はさらにそれが進化して自信を持って大胆に演奏しているようで、大家っぽくなってきました。興に乗るとものすごく背中をそらせて演奏するのが気になりましたが・・・。ソリストアンコールのピアソラもすごい技巧で聴かせてくれました。

フルシャは電話帳みたいな分厚いスコアを譜面台において、5秒おきくらいにページをめくりますが、それが全く気にならないくらい音楽に没入させてくれます。じっくりとかみしめるような演奏で、それはそれで素晴らしいのですが、カラヤンの演奏ではじめてブルックナーに目覚めた私としてはかなり違和感はありましたね。

指揮者のソロアンコールでボス矢部をつれて現れたフルシャ。

Img1a_20240705201701

 

1)https://morph.way-nifty.com/grey/2022/10/post-0ce609.html

 

 

| | | コメント (0)

2024年7月 2日 (火)

続・生物学茶話241:基底核の起源 ヤツメウナギの場合

大脳基底核は大脳の最深部にありますが英語では basal ganglia であり、大脳の一部というわけではありません。ウィキペディアでは「大脳基質と視床、脳幹を結びつけている神経核の集まり」と定義されています(1)。したがって大脳をはずして「基底核」または「脳基底核」と呼ぶのがベターだと思います。主な構成要素は「線条体 corpus striatum または単に striatum、被殻と尾状核で構成される」「淡蒼球 globus pallidus、内節と外節で構成される」「視床下核 subthalamic nucleus」「黒質 substantia nigra、緻密部と網様部で構成される」の4つのパーツですが、左右にあるので脳全体では8つです。このほか図241-1のように側座核・嗅結節・腹側淡蒼球、図には示されていませんがマイネルト基底核などを含めることもあるようです。英語版のウィキペディアではこれらを大脳基底核に含めてあります(2)。日本語版のウィキペディア大脳基底核では全く触れられていませんが(1)、アミグダラ(扁桃体)を基底核に含めることもあるようです(3)。

このようにどこを基底核に含めるかについては研究者によってさまざま異なる見解があるようで、注意を要します。国立生理学研究所によれば最初に示した4つのパーツということになっているので、とりあえずこの定義でここでは話を進めることとします(4)。

2411a

図241-1 ヒト大脳基底核の構成要素および関連構造の位置

エサがある方向に向かって移動するというのは従属栄養生物にとって圧倒的に生存に有利な機能であり、細菌ですら繊毛という精密機械のような移動用パーツを保有しています。真核生物に進化した単細胞生物は主に鞭毛を使って移動します。しかし多細胞生物が生まれたばかりの時代には、個々の細胞が保有している移動用の細胞器官をどのように統合制御してめざした方向に移動するのかという問題が発生し、これが解決するまで彼らは海底にへばりついてあるいは固着して生活するか、海流に依存して漂流するかしかなく、運動機能の観点からはある意味退化した時代があったと思われます。そのような問題を解決するために中枢神経系が生まれたに違いありません。

海底を這うベントスや遊泳するネクトンに進化する生物にとっては、神経系の重要性はプランクトンよりもずっと大きいことは間違いないでしょう。目のない時代でも自らの意志で移動することが可能な従属栄養生物は、ケミカルセンサーによってエサがある方向を特定し、神経によって筋肉などの動きを統御してある方向に進むというシステムを進化させて生活してきたのでしょう。そしてこのようなシステムを効率的に稼働させるには、次のステップとしてある部位のニューロンが「進むか進まないか」「どの方向に進むか(左右のバランスなど)」という指令を体全体に出すという方向で進化が進行しました。その指令を出す「ニューロン」はおそらく基底核のプロトタイプだと考えられます。

時代は進みカンブリアになると、そこは弱肉強食の世界だったので、食べられても平気なくらい旺盛な繁殖力を持つ生物や、食べられないように体を守る強固な装甲を持つ生物以外は、捕食者を認識して逃げなければいけません。私たちの祖先である魚類も逃げなければいけない生物で、当然逃げることを決断し、逃げる方向を決定し、逃げ切ったことを判断して行動を停止する・・・という活動を日常的に行わなければいけない生活をしていたに違いないので、脳の中に行動を決断して体全体に指令を出すシステムはその頃から存在したに違いなく、実際現存の魚類にも基底核が存在することは報告されています(5、6)。

では脊椎動物のルーツに近いところで分岐した円口類(ヤツメウナギ・ヌタウナギ)はどうなのでしょうか。彼らの祖先が魚類の祖先と分岐したのは約5億6千万年前のエディアカラ紀とされています(7、8、図241-2)。

2412a

図241-2 脊椎動物の進化系統図

哺乳類の基底核システムはかなり研究されていて、図241-3のような径路が明らかになっています(1、4)。中脳・脳幹・脊髄などに運動の go, not go のシグナルを直接投射しているのは淡蒼球内接・黒質網様部・腹側淡蒼球で、これらのニューロンは主にGABAを投射に使う抑制性なので、デフォルトは not go なのですが、線条体によってこれらのニューロンを抑制するシグナルが出されると、抑制が解除されて結果的に go のシグナルに変わることになります。線条体と情報出口(淡蒼球内接・黒質網様部・腹側淡蒼球)が直接つながっている径路を直接路、淡蒼球外節を経由する径路を関接路、大脳皮質から視床下核を通じて情報出口につながっている径路をハイパー直接路と呼びます(4、図241-3)。

黒質緻密部と腹側被蓋野にはドーパミンを放出するニューロンが多く、線条体をコントロールする機能を持ち、脳から発出される情報の源流のような機能を持っていると思われます。情報出口(淡蒼球内接・黒質網様部・腹側淡蒼球)の活動は視床にも投射され、その結果を大脳皮質の運動野に報告したり、線条体とのコラボによって情報出口の活動を制御することができます(図241-3)。

2413a

図241-3 哺乳類の基底核の構成要素と相関概略図

Marcus Stephenson-Jones らは哺乳類の祖先と5億6千万年前に分岐し、現代に至るまで命を繋いでいるヤツメウナギの基底核について研究しました(9)。まず一般的な脊椎動物において淡蒼球などGABAを伝達物質として使用しているニューロンに特異的なパルブアルブミン、線条体のマーカーとなるエンケファリンやサブスタンスPなどをマーカーとして形態学的な検討を行った結果が図241-4です。これらのマーカーによって識別できる部位は確かに存在します。ここでパルブアルブミン+の領域の細胞を調べると19個の細胞のうち13個が自発的に発火しており(シナプスインプットを阻害しても影響を受けない)、ここが情報出口(淡蒼球内接・黒質網様部・腹側淡蒼球)に相当する部位であることが示唆されました(9、図231-4F、G)。この部位の下側に線条体に相当するとみられるエンケファリンやサブスタンスP陽性の領域がみられます(図231-4H、I)。

2414a

図241-4 ヤツメウナギ基底核の免疫組織化学

Marcus Stephenson-Jones らは電気生理学的なデータも採取して、線条体による情報出口の制御なども確認し、線条体および淡蒼球に相当する領域を推定して図241-5を発表しました(9)。さらに調べれば調べるほど、5億6千万年前に分岐したヤツメウナギ(円口類)の基底核システムと私たちのシステムが類似していることが明らかになってきました。黒質や視床下核に相当する部位も論文に記載されていますので、興味のある方は原著をご覧下さい(9)。グリルナー研究室のより新しい成果をまとめた総説も出版されています(10)。

2415a

図241-5 ヤツメウナギで推定される線条体と淡蒼球の位置

 

参照文献

1)ウィキペディア:大脳基底核
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%84%B3%E5%9F%BA%E5%BA%95%E6%A0%B8

2)Wikipedia: basal ganglia
https://en.wikipedia.org/wiki/Basal_ganglia

3)ウィキペディア:扁桃体
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%81%E6%A1%83%E4%BD%93

4)国立生理学研究所 生体システム研究部門 大脳基底核とは
https://www.nips.ac.jp/sysnp/ganglia.html

5)理化学研究所 プレスリリース ヒトと魚の賢さの共通基盤の発見-魚の進化的に保存された大脳皮質-基底核回路の全貌を解明-
https://www.riken.jp/press/2024/20240314_1/index.html

6)Yuki Tanimoto, Hisaya Kakinuma, Ryo Aoki, Toshiyuki Shiraki, Shin-ichi Higashijima, Hitoshi Okamoto, "Transgenic tools targeting the basal ganglia reveal both evolutionary conservation and specialization of neural circuits in zebrafish", Cell Reports 43, 113916 (2024) https://doi.org/10.1016/j.celrep.2024.113916
https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S2211-1247%2824%2900244-4

7)続・生物学茶話195:円口類の源流
https://morph.way-nifty.com/grey/2022/11/post-1f4cf6.html

8)Kumar,S., and Hedges,S.B., A molecular time scale for vertebrate evolution. Nature vol.392, pp.917–920 (1998)
https://bip.weizmann.ac.il/education/course/evogen/Clocks/Kumar_Nature_1998.pdf

9)Marcus Stephenson-Jones, Ebba Samuelsson, Jesper Ericsson, Brita Robertson, and Sten Grillner, Evolutionary Conservation of the Basal Ganglia as a Common Vertebrate Mechanism for Action Selection., Current Biology vol.21, pp.1081–1091, (2011)
DOI 10.1016/j.cub.2011.05.001
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21700460/

10)Sten Grillner and Brita Robertson, The Basal Ganglia Over 500 Million Years., Current Biology 26, R1088–R1100, (2016) doi: 10.1016/j.cub.2016.06.041.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27780050/

 

| | | コメント (0)

« 2024年6月 | トップページ | 2024年8月 »