スノーデン 日本への警告
スノーデン氏については様々な報道がなされていますし、映画やDVDもあります。映画「スノーデン」はなかなかスリリングで面白い映画でしたし、記事を書いたこともあります。
https://morph.way-nifty.com/grey/2017/02/post-5ccb.html
スノーデン氏自身が登場するドキュメンタリーも大変興味深いものです。映画よりも厳しい緊迫を感じました。私たちが住んでいるこの世界を、「監視社会」という全く異なる凶悪な閉塞社会へと変質させようとする巨大な勢力に、ひとりで反旗を翻したヒーローは静かで控えめな青年でした。
監視社会に誘導しているのは既得権益者のグループです。なぜなら彼らと一般人の間に貧富の差が出来れば出来るほど刺されるのが心配になるからです。とはいえ彼らの「社会はどんどん危険になってきている。犯罪を防ぐには監視するしかない」というプロパガンダに乗って、監視社会を推進する政党に投票する私たち市民の心の中にも闇はあるのでしょう。
安心・安全な社会というのは、貧富の差が巨大であればあるほど実現しないものだと思いますが、なんとか徹底的な監視社会によって安心・安全を実現しようと思う人々はいるのです。秘密保護法や共謀罪はそのために便利なツールです。
この本「スノーデン 日本への警告」エドワード・スノーデン他著 集英社新書 2017年刊 は、2016年に公益社団法人自由人権協会がスノーデン氏を招いて、東京大学本郷キャンパスで開催したシンポジウムの記録です。
いろいろ面白い話が満載なのですが、決定的な話をひとつ紹介しますと、米国政府は「プログラムで国民を監視しているということは国家機密なので、ジャーナリストであれ市民団体であれ自らが監視の対象であるという事実を立証することは許されない」という立場で、最高裁判所も「政府の主張通り監視プログラムが現に実施されているか否かを立証することが禁止されている」と判断したそうです。これは日本でもそういうことになりそうです。
このような事態をひっくり返すには、最終的には憲法も最高裁も無力で、政権をひっくりかえすしかないということです。もし選挙結果がソフトで操作されているとすると革命しかないわけですが、それは監視と共謀罪でほぼ不可能でしょう。監視社会は永遠不滅になります。
監視システムの全貌を図にまとめましたが、私たちに直接関係があるのはマスサーベイランスです。スマホ・PC・電話・カード・監視カメラなどを使って監視されるのが監視社会です。特にスマホは危険で、ドキュメンタリーのなかでスノーデン氏がスマホで自室の特定や画像が撮影されるのを恐れて、使わないときは電子レンジの中にしまうというシーンは印象的でした。
誰か1人マークされている人がいたとして、同じ時間に同じ場所にいた人はすぐにわかるので、その人とコンサートで隣の席にいたというだけで、当局に追尾されるということもあり得ます。
ささやかな抵抗をするとすれば、この本に書いてあるように情報を暗号化することでしょうが、それもイタチごっこでしょう。あとはマスコミのふんばりでしょうが、政権側には逮捕や暗殺という手もあります。だいたい個人のプライバシーも無限に犯されているわけですから、ささいな違法行為や浮気などをネタに脅迫することもできます。それを作り出すことさえ可能でしょう。
監視システムを用いたメタデータは巨大なので、人力で検索するのはそのうち不可能になり、ロボットが検索して容疑者を自動的にしぼりこむということになるのでしょう。これは恐ろしい社会です。人為的に作り出された犯罪をロボットがとがめて起訴されてしまうという可能性もあります。
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