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2016年5月26日 (木)

やぶにらみ生物論20: ペルム紀の生物1

Photoペルム紀の話を始める前に、ひとつ紹介しておきたい本があります。それは「哺乳類型爬虫類 ヒトの知られざる祖先」 金子隆一著 朝日新聞社 1998年 (図1)です。

少し古くなって修正が必要な部分が出てきましたが、私はこの本によって古生物への興味をかき立てられました。単弓類についてこれほど詳しく解説した本はありません。残念ながら、現在ではおそらく中古本しか入手できないと思います。

一節だけ引用しておくと「哺乳類型爬虫類は、われわれヒトを含むすべての哺乳類の祖先である。そして、恐竜王朝が地上を支配するよりも前、古生代石炭紀後期から中生代三畳紀中期まで、彼らはまぎれもなく地上でもっとも繁栄した生き物たちだった。しかし、にもかかわらず、われわれは自らのご先祖様を地球の王座から追い落としたライバルである恐竜ばかりをスター扱いしているのである。これは実に、理不尽な仕打ちと言わなければなるまい」

私は哺乳類型爬虫類という言葉はそんなに嫌いじゃないのですが、現在の考古学者達はお気に召さないらしく、あまり使われなくなりました。爬虫類じゃないのに爬虫類とはおかしいというわけですが、では虫じゃないのに爬虫類というのはおかしいでしょう。これだけでなく、特に化石生物を含む爬虫類の分類は5年経ったらどうなっているかわからないという難しい分野ですから、専門家以外はあまり神経質に考えなくてもいいと思います。

とりあえず

無弓類 (両生類から分岐したばかりの陸生の四肢動物で、側頭窓がない生物)
単弓類 (盤竜類:ペルム紀に絶滅した諸系統の初期単弓類、獣弓類、哺乳類)
双弓類 (首長竜、ムカシトカゲ、カメ、ワニ、恐竜、鳥類など)
中竜類 (メソサウルスなど)

とでもわけておきましょう。

さて石炭紀に続くのは古生代最後のペルム紀(2億9,900万年前から約2億5,100万年前まで)です。ペルム紀の初頭には超大陸パンゲアが完成しており、気候は寒冷でした。多くの湿地帯が凍結して、両生類は一部の温暖な地域にしか住めなくなり、陸上で生活できる爬虫類のなかでも特に単弓類(単弓綱)が適応放散しました。

寒冷期の生存競争に勝つためのひとつの方法として、単弓類はエダフォサウルスやスフェナコドンという背中に帆を持つグループを生み出しました。背骨を変形させて突起を出し、その間の皮膚に血管を通して体温を調節するというシステムです。内温性(内熱性)動物がいない時代には、この方法は圧倒的に有利で、スフェナコドン類を代表するディメトロドンは食物連鎖の頂点に立っていたと思われます。なぜなら帆を日光であたためて、朝早くからすばやく活動できるので、肉食動物としては動きの鈍い動物をエサにしやすいからです。体長が3メートル以上あった Dimetrodon grandis は下図のような生物です(図2 以下化石生物の図はウィキペディアより借用しました)。

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このスフェナコドンのなかから、獣弓類(獣弓目=テラプシダ)に進化した種が生まれたと考えられています。ウィキペディアによると、現在知られうる最古の獣弓類は、2億6,880万年~2億5,970万年前に生息したテトラケラトプスとしています(図3)。体長50~60cmで顔に4本の角があります。白亜紀にトリケラトプスという恐竜がいましたが、これとは全く関係ありません。

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獣弓類には大別して異歯亜目(ディキノドン類・ディノケファルス類)と獣歯亜目に分類されます。ディキノドン(図4)は異歯亜目を代表する生物の一つで、体長1.2mくらいの植物食の生き物でした。ペルム紀最後の大絶滅で姿を消しましたが、大絶滅後近縁のリストロサウルスが繁栄し、中生代三畳紀を代表する生物となりました。ディノケファルスの例としては、モスコプス(図5)が有名です。彼らも植物食で体長は最大5mくらいある巨大な生物で、頭骨が分厚い(~10cm)のが特徴です。ディノケファルス類はペルム紀最後の大絶滅で、すべて姿を消しました。

異歯とは歯が1種類ではなく、用途に応じて分化していることを示します。たとえばディキノドンは2本の犬歯を持っています。獣歯類はさらに哺乳類に近い歯を持っていました。つまりエサを殺戮するための牙、切り裂くための切歯、かみ砕くための臼歯などを備えていて、肉食に便利な歯の分化がおこったわけです。

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獣歯類を代表する生物としては、ゴルゴノプス(図6)とテロケファルス(図7 Moschorhinus kitchingi)、そして哺乳類の直近の祖先と考えられているサイノドン(キノドン)があげられます。ゴルゴノプスは体長2mくらいの、ペルム紀後期を代表する肉食獣でしたが、ペルム紀末の大絶滅時代を生き延びることができませんでした。

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ゴルゴノプスでひとつ注目したいのは、あごの骨に多くのくぼみがあり、これが洞毛(ひげ)の毛根を収納するためのものだったのではないかと考えられることです。そのような観点から頭部を復元した図がウィキペディアにでています(図8)。

洞毛は哺乳類の場合1)栄養を供給するための血洞で毛根を囲む 2)感覚神経が毛の動きを検出できるよう接触する 3)任意に動かせるように随意筋がくっついているなどの特徴がありますが、毛の構造自体は体毛と同じなので、洞毛があると言うことは体毛もあると考えてよいと思います。

したがって、ゴルゴノプスには体毛があり、内温動物だったと想像できるということです。体毛は熱を逃がさないためにあるので、内温動物ならではの器官だと考えられます。

テロケファルスには図7のような肉食性の者以外に、草食性の生物もいたようです。彼らおよびサイノドンについては次回に譲ります。

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