二期会イル・トロヴァトーレ@東京文化会館
学生時代はよく上野の東京文化会館の5F席のチケットを買って、オペラを見に行きました。
当時の藤原歌劇団の公演などは人気が無くて、1Fもガラガラだったので、5Fのチケットでも堂々とS席で見ることができました。ただ人気が無いので、舞台装置などほとんどないも同然で、椿姫でも花瓶一つなどということも普通でした。しかも言語は日本語で、たまにイタリア人歌手が来ると、ゲストはイタリア語、日本人は日本語で公演なんてこともありました。
会場で使える電光掲示板がなかったので、こういうことになったのでしょう(字幕を使い始めたのは1986年以降だそうです)。藤原歌劇団は現在でも名前は残されています(https://www.jof.or.jp/)。
オペラの人気が出てきてからは、あまりにチケット料金が高騰して、敷居が高くなったのでご無沙汰していましたが、最近は安価な公演をさがして、たまにのぞいてみます。そういう意味では、今回の二期会「イル・トロヴァトーレ」(http://www.nikikai.net/lineup/iltrovatore2016)はコスパ抜群の公演でした。
会場に着いてみると、なんと救急車がやってきて館内から若い女性が搬送されていきました。それとは関係なかったようですが、中に入ると出演者変更のお知らせが2枚も掲示されていました(写真参照)。レオノーラの石原→松井の変更はプログラムに出ていましたが、マンリーコの小原→城の変更は急だったらしく、ウェブサイトでも告知されていませんでした。まあ私としてはアズチェーナの中島郁子さんを聴きにきたので、多少の不安はあってもそんなに気になりませんでしたが。中島郁子さんは最近都響の年末第九でアルトのパートを歌っているメゾで、私はその声の素晴らしさに圧倒されて、是非オペラでも聴いてみたいと思ったのです。
成田さんのルーナ伯爵はさすがの貫禄で、悪役もおまかせです。城さんは突然の代役で大変だったと思いますが、無事にお役目を果たせて良かったですね。二期会公演のデビューだそうでおめでとうございます。中島さんのアズチェーナには本当に感動しました。見た目のほほんとしているような感じなので、この愛と怨念と復讐ではちきれそうな役柄ができるのかと思いましたが、意外にも芸達者で雰囲気を醸し出していました。声は決してヒステリックにならないで、深々とした迫力でじわじわ押してくるのが素晴らしい。是非都響の公演で、マーラー交響曲第3番のソリストで出演して欲しいと思いました。
演出は予算が(きっと)少ない割には、雰囲気を盛り上げていて、特にアズチェーナを両側から縄でひっぱるというシーンにはドキドキでした。棍を使ったダンスはちょっと練習不足でバタバタしていました。
そして指揮バッティストーニの都響(コンマスは山本さん)は、指揮者の激しいアクションはそこそこ流して、歌手達を盛り上げる脇役に徹していました。とはいってもアンサンブルはきっちりと、そしていくところはいくという絶妙の好サポートでした。ちょっと面白かったのは、コーラスから指揮者が見えないせいか、制御室から誰かがビームライトで指揮していました(ちょっと笑える)。
バッティストーニは欧州でも期待されている若手指揮者ですが、日本に来てよかったと思いますよ。なにしろ新譜をどんどん出版出来ているわけですから。
https://www.youtube.com/watch?v=DmHVgHXO6E0
https://www.youtube.com/watch?v=S1cWnp2ByHA
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