やぶにらみ生物論10: オピストコンタ
やぶにらみ生物論8では簡略化して、真核生物は動物・植物・菌類・原生生物としましたが、正確にはもう少しきちんと、図に示したように分類がおこなわれています。

まず真核生物というドメインを3つのスーパーグループ(上界)に分類します。オピストコンタは私たち動物とカビ・キノコ・酵母を含む分類群。アメーボゾアはアメーバ類。バイコンタは植物・原生生物などを含みます。バイコンタには非常に多数の種が含まれるので、このように1本の線とボックスでひとまとめにして表現するべきかどうかは議論のあるところです。

オピストコンタとはギリシャ語でオピスト(=後方)+コンタ(鞭毛)だそうです(私はギリシャ語は知りませんが)。つまり進行方向の後方に1本の鞭毛があり、それをくねらせて泳ぐ生物という意味です。これは手を使わないでバタフライで泳ぐという、やってみるとかなり難しい泳法ですが、ウナギやウミヘビのようにマスターしている生物もいないわけではありません。私たちだって精子の頃にはこうやって泳いでいたわけで(上図 精子が卵子と遭遇したところ)、現在でもオピストコンタという名前にふさわしい形態が残っていると言えます。

多くの生物はバイコンタに所属します。バイコンタとはギリシャ語の2が bi なので、2本の鞭毛を持つ生物ということになります。2本持っているので平泳ぎ的な泳ぎ方で便利だろうと思うのですが、なかにはせっかく2本あるのに、1本を細くて短い毛に退化させて、エサを口にかきいれるのに使っているミドリムシのような生物もいるというのは進化の妙です。
アメーバはオピストコンタと同じルーツをもつ系統の生物ですが、鞭毛はもたないという生き方を選択した生物です。そのかわり伸縮自在な偽足を出して移動するという術を身につけました。不思議なのはオピストコンタである私たちの血液などに含まれるマクロファージ系の細胞は、アメーバのように偽足を使って移動します。マクロファージに限らず、私たちオピストコンタは昔アメーバと近縁な生物だったという記憶が、分子や細胞のレベルに残されていると思われます。
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