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2015年6月30日 (火)

カエターニ:ショスタコーヴィチ交響曲第11番 - 都響@東京文化会館2015年6月29日

Imgaあと一息で病状が回復しそうだったのですが、今日の演奏会を欠席するわけにはいかないということで、咳止めの薬(リンコデ)を2錠飲んで臨場。またもや月曜日夜のコンサートという暴挙。都響も困ったものです。とはいえなかなか聴ける曲ではないので、そこそこ人は集まります。指揮者:オレグ・カエターニ、コンマス:矢部ちゃん、サイド:シノトモ。コンマスが譜めくりやっているのには違和感がありました。シノトモがやるべき仕事ではないでしょうか?

ブリテンの「ロシアの葬送」はメインの曲と同じ素材(同士は斃れぬ)を用いていたからの選曲だと思いますが、どうということはない曲でした。演奏者の小手調べにはよかったかもしれません。2曲目のタンスマン「フレスコバルディの主題による変奏曲」はなかなか聴き応えのある曲でした。弦楽パートだけで演奏するバロック風の変奏曲ですが、都響の弦楽の素晴らしさを満喫出来たと思います。

後半はショスタコーヴィチの「交響曲第11番 1905年」。1905年とは言わずと知れた血の日曜日事件のあった年です。ブログ「Langsamer Satz」の管理人の方などはこの曲のCDを39枚も所有しておられるそうで(http://nailsweet.jugem.jp/?eid=822)、熱狂的なファンが存在する曲です。ショスタコーヴィチは交響曲第1番などを聴いていると、モーツァルトのような天衣無縫な音楽で、もし彼が20世紀前半の人類最悪の戦争と圧政の時代に生きていなかったすると、多分全く違う音楽家になったような気がしてなりません。どんな天才も時代の背景には逆らえません。

ショスタコーヴィチは戦争によって生命を脅かされ、政治によって自分の音楽を否定され、権力に迎合したと西側の音楽家に批判されという3重苦のなかで、よくもたくさんの音楽を作曲したものだと思います。この交響曲第11番などはロシアの歴史自体の付随音楽のような曲だと思います。

第1楽章の冒頭、冬の宮殿前の不気味な静寂の表現が素晴らしい。異様に矢部ちゃんの気合いが入っている様子にこちらも気合いがはいります。そのせいかどうかわかりませんが、指揮者がなぜか棒を落としてしまいます。チェロの田中さんがすぐひろってわたしてあげたので事なきを得ましたが、びっくりしました。インバルはあらかじめ予備を田中さんにわたしてあるので大丈夫なのですがね。

第2楽章の宮殿前虐殺の恐ろしい音楽も全力展開。そしてその後の静寂がまた恐ろしい。そう、ショスタコーヴィチはもし平和な時代に生まれていたら、映画・ミュージカル・演劇などの付随音楽をたくさん作曲したのではないかと思います。実際この楽章の音楽はエイゼンシュテイン監督の「オデッサの階段」という名場面の付随音楽として使われているそうです(私は見たことがありませんが)。

第3楽章はヴィオラによる「同士は斃れぬ」の長い陰鬱なメロディからはじまります。ここでも都響の弱奏の素晴らしさが際立って、レクィエムの雰囲気を盛り上げてくれます。そして第4楽章。イングリッシュホルン(最近貫禄がついてきた南方=なんぽー)のソロがあまりに美しく、ずっと続いてくれと祈りたくなりました。最後にシロホンたたいていた男が、急にチャイムに対面して立ったので、胸で叩かれた金属板を受け止めるのかと思ったら、指揮者の方を向いた瞬間に板が来たので素通りするという失態。なんでよそ見するの?

いろいろありましたが、ともかく都響の実力を見せつけた、心に残る場面がたくさんある美演でした。帰りにカエターニさんが指揮したショスタコーヴィチ交響曲全集(10CD)が3,000円で売っていたので、購入して帰途につきました。ロシアやドイツの楽団でなく、イタリアの楽団を使っての収録というのが彼の趣味をあらわしているようです。

☆ 引用されている音楽

夜は暗い
https://www.youtube.com/watch?v=E5tdvbRtSgY

同士は斃れぬ
https://www.youtube.com/watch?v=fa6BswG-dU8

おお皇帝 吾等が父よ
https://www.youtube.com/watch?v=JR-nG_ecsZo

ワルシャワ労働者の歌
https://www.youtube.com/watch?v=qtslGbYKMoQ

☆ 第2楽章

https://www.youtube.com/watch?v=JycVywv5myU

https://www.youtube.com/watch?v=4Pudaf862qM

https://www.youtube.com/watch?v=S-dpVISqPy4

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