オオタカの危機
名古屋市立大学の村瀬教授のグループは22年間北関東エリアのオオタカの生態を調査しているそうですが、福島第一原発事故前後で繁殖にどのような影響があったかを比較し、Scientific Reports 誌に発表しました。
Effects of the Fukushima Daiichi nuclear accident on goshawk reproduction
Kaori Murase,Joe Murase,Reiko Horie & Koichi Endo
Scientific Reports 5, Article number: 9405 doi:10.1038/srep09405 Received 21 November 2014 Accepted 03 March 2015 Published 24 March 2015
http://www.nature.com/srep/2015/150324/srep09405/full/srep09405.html
彼らのデータによると、抱卵から巣立ちに至る繁殖成功率が、1992~2010年の平均が78%だったのに比べて、2011年は75%、2012年は55%、2013年は50%と著しく低下していることがわかりました。他の環境要因の変化は少ないそうで、これは原発から放出された放射性物質の影響だと彼らは考えています。2011年に低下が少ないのは、オオタカは森では食物連鎖のトップに位置するため、内部被曝が蓄積するのに時間がかかったからと考えられます。もちろん長時間の低線量外部被曝の影響も無視出来るわけではありません。
村瀬教授らのグループは巣周辺の空間線量が 0.1μSv/hr 上昇すると、最大10%繁殖成功率が低下するとの試算もしています(サプリメント図S5)。人もオオタカと同様食物連鎖の頂点に位置する生物なので、この結果を無視するわけにはいきません。内部被曝は蓄積効果が高い上位の捕食者ほど危険なので、ヒトも間違いなく放射性物質の影響をうけると思われます。もちろんDNAへの影響など詳しい分析を今後行う必要があります。
(画像は wikipedia より)
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