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2012年3月 8日 (木)

新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか by 上杉隆

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もうすぐあの3.11から1年が経過しようとしています。その後いろいろなことが私たちにも明らかになってきました。私たちの業界関係で言えば、原発事故前・事故後いかに多くの学者がでたらめな発言を行っていたかということが明らかになり、大変なショックを受けました。魑魅魍魎の原子力村のなかではかなりの好人物だとは思いますが、最も重要なポジションにあった班目春樹氏に至っては、総理に水素爆発はないと言ったとたんに水素爆発して、「あーっ」とうなって頭を抱え込んだという醜態で言葉を失います。彼らはアカデミズムに対する国民の信頼を著しく毀損したという意味でも罪は大きいでしょう。国民の生活にはほとんど関係のない論文のデータをいじったというカドで首になった学者がいることを考えると、彼らのウソや不明のせいで被曝した人もいるという実害を与えた人々が何のおとがめもなしというのは割り切れない気持ちです。

もうひとつショックだったのは、マスコミが正しい報道をせず歩調をそろえて何かを隠蔽しているという印象を受けたことです。放射線に関係する仕事を少しでもした経験のある者なら、ヘリコプターで水をまいているのを見て、これはメルトダウン間近だと背筋が寒くなったと思いますが、そのときでもマスコミと学者は「安全だ、大丈夫だ、メルトダウンなんてあり得ない」の大合唱でした。レントゲンなら○○シーベルト、CTなら○○シーベルト、アメリカにジェット機で飛んだら○○シーベルトなどと外部被曝だけを議論して、内部被曝については意図的に触れないようにするという姿勢にもあきれました。こういう状況をみると、さすがに私もウェブサイトで本当の情報を集めようとパソコンのキーをたたきました。この本の著者である上杉隆氏を知ったのはそんな時でした。ユーストリームや2chなどの非記者クラブメディアが原発事故報道で果たした役割は非常に大きいと思います。

テレビ番組が津波被害や原発事故報道中心になってから、ほとんどのスポンサーがテレビから逃げてしまい、代わりに登場したのが「ACジャパンという東電も深くかかわってる組織」というのはまさしくブラックジョークでした。博報堂の知人に「博報堂が情報をコントロールしているんじゃないか」と詰め寄ると「そんなことはない」と否定しましたが、一方でその後に「東電には本当にお世話になっているんでね~」というため息まじりの発言が続きました。そういうことで、当初はもっと簡単な構図で情報統制が行われていると思いましたが、この上杉氏の本を読むと、もっと深い部分に根があることがわかります。

この本によると、記者クラブのルーツは明治時代にあって、その頃は記者が団結して政府に立ち向かうという意図でつくられたものだったそうです。それが太平洋戦争時代に情報統制のツールとして使われるようになり、GHQ支配の時代にいったん自由になったのですが、GHQが去ってからは徐々に元に戻り、故後藤田正晴氏が官房長官時代に、彼の采配で官房機密費を使うことによって自在に記者クラブが操られるという構図が確立したそうです。今では記者があちこちで取材した情報を官邸に持ち込んで、見返りに便宜供与や官房機密費を手に入れていると著者は考えています。ですからCIAがなくても、議員をはじめ学者・文化人などがどんな思想をもっているかなどは官邸に筒抜けになっているわけです。フリージャーナリストや外国人記者にはこんな仕事危なくてやらせられません。

最近占い師によるマインドコントロールがマスコミで話題になっていますが、昨年の3.11から4月にかけて国民全体をニセ情報で必死にマインドコントロールしようとしていたのは記者クラブ=マスコミじゃないのかと言いたいですね。

私がふと思ったのは、なぜあれほど菅総理がマスコミにバッシングを受けたのかの理由は、ひょっとすると官房機密費の支払いが渋かったからではないかということです。ヘリコプターで現場に飛んだことがよく批判されますが、原発の状況がどこからも情報入手不可なら誰だって現場を直接見たくなりますし、原発安全担当の最高責任者が班目さん、保安院の院長は「私は文科系」と言って出てこない、経産大臣はあの泣きの海江田さん、東電は社長も会長も不在で大混乱では誰も信用できなくなるのは当然です。

上杉氏は原発容認派だそうで、かえってそれだけに言っていることに信憑性が増します。原発容認の思想には共感できませんが、上杉さんには今後ともご活躍なさることを祈念します。

新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか 上杉隆著 2012年 PHP新書

上杉隆氏のHP: http://uesugitakashi.com/

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