「僕の音楽物語 (1972-2011)」 by 平野肇
平野肇さんは、私のイメージとしては西島三重子のライヴでパーカッションを担当しているややダンディなおじさんという人なのですが、三浦友和扮する昆虫巡査の作者でもあります。
彼が今度本を出版しました。「僕の音楽物語 (1972-2011)」祥伝社刊(2011) という自伝なのですが、なんと自伝がそのままJPOPの歴史を語るという内容になってしまうという、彼はとんでもない偉大な人物だったのです。彼が演奏活動や、人生のいろいろな場面でかかわった、この本に登場する人々は帯に連記してありますが、その名前を見れば納得していただけるでしょう。
初期のユーミンのレコーディングはキャラメルママが担当していましたが、ライヴ活動をサポートしていたのは彼のバンド「パパレモン」や「ダディーオー」だったそうです。ユーミンは「ルージュの伝言」でブレイクしましたが、そのバックはダディーオーが担当したそうです。
この本で最もショッキングなエピソードは、その「ルージュの伝言」を含むユーミンのサードアルバム「コバルトアワー」の制作です。ライヴでの実績を認められ、大ヒットが期待されるこのアルバムのバックをダディーオーが担当することになり、上々のできあがりで完成した後、社長の鶴の一声で全ボツになったというお話で、ライヴ色が出すぎたのが問題だったそうです。
ちなみに私の棚からコバルトアワーを出して、制作メンバーをみてみると、あまりにも見にくい印刷で(誰がこんなものを作ったのでしょう)、虫眼鏡でも字が判別しにくいというものでしたが、拡大してみると、確かに矢印で示すように Daddy Oh という文字が判別できます。最終的に「ルージュの伝言」と「何もきかないで」だけはOKが出たようです。
この本は暴露本ではなく、結構まじめにポピュラー音楽の本質を探求した本だと思います。特にユーミンや岡林信康のひととなりや考え方は詳しく述べられていて、面白く感じました。平野さんが慶応大学経済学部を出ていることをかわれて、鈴木キサブロー氏のマネージャーをやっていたというくだりには、申し訳ないけど笑ってしまいました。さらに私的には西島三重子のテイチク時代のアルバムで唯一CD化されている 「Bye-Bye」 のサウンドプロデューサーである今泉敏郎氏が亡くなっていることがショックでした。
平野肇さんのウェブサイト:http://homepage2.nifty.com/kf-studio/top.htm
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