「原発はいらない」 小出裕章著
「原発はいらない」小出裕章著 幻冬舎ルネッサンス新書 2011年刊
小出さんは3月11日以降非常に忙しくなって、体が10個ほしいような状態だそうで、この本も編集者の方が著者の発言を文字に落として、それを著者と編集者がチェックするという形で制作されたそうです。そのわりには多くの情報が非常に良くまとめられていて、著者だけでなく、峯晴子さんという編集者の能力が素晴らしいことが感じられます。
福島第一原発は津波が来る前にもうパイプの破損で冷却水が漏れていて、メルトダウンへの道を歩んでいたこと、地震が発生すればもっと危険な原発があちこちにあること、プルサーマル発電が極度に危険であること、六ヶ所再処理工場は閉鎖すべきであることなどが、きちんと論理的に説明されています。さらに「もんじゅ」でドブに捨てられた1兆円の責任は、著者の言うように誰かが(一人ではない)とらなければならないと思います。
私が初めて知って驚いたのは、原子力安全委員会は議事録がない会議をしばしば開いていたということで、国家の安全に責任がある委員会としては信じられない話だと思いました。197ページの図をみると、原発が決してエコではなく、著者の言うように「究極の毒物製造装置」であることがわかります。
著者の提案で賛成できるのは、食べ物にR指定を導入すること(子供は放射線感受性が高い)、汚染したがれきや放射性廃棄物を福島第一原発周辺に集積することです。政府もようやく原発周辺への住民の帰還が困難であることを認めたので、実現の可能性が出てきました。また著者の「地球は人間だけのものではなく、すべての生物のものである」という考え方には共感しました。著者は本書2ページ目ではやくもペットや牛の悲惨な状況に言及しています。
地球が原発事故で安全な食べ物がなくなったり、エネルギー争奪戦で血みどろになったりするまえに、日本の企業や政府がクリーン・無害な発電のモデルを日本に実現してくださいとお願いしたいです。私が今不安に感じているのは民主党代表候補の中に、明確に核燃料サイクルを廃止すると発言している人がいないことです。菅総理は自分のキャリアの最後に、植物党という政党を作って活動したいと述べていましたが、冗談ではなく新政党が必要な時が来ているのかもしれません。
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