ミジンコのゲノム
今日は長らく待ち望んでいたミジンコのゲノムがサイエンス誌に出版された日です。何がそんなにめでたいかというと、なにしろうちの研究室から4人も共著者が出たのよ! 仕事はそこそこ切り上げてビールで乾杯ね。あそうそう大事なことを忘れちゃ駄目よ。ミジンコは毒物の検定にも使われてるし、環境の変化に対する生物の反応を見る上で重要なモデル生物なの。そりゃ多細胞生物で最初にゲノムが解析されたのは線虫だけど、だいたい線虫なんて土の中で生活しているんだから誰も出会ったことなんてないでしょう。ミジンコはそこらの池や水たまりにいくらでもいるからおなじみよね。金魚のエサだし。あと甲殻類ではミジンコが最初ってこともつけくわえておかないとね。
でそのミジンコのゲノムなんだけど、たった2億ベースペア(1ベースペア=2x[糖+リン酸+プリンまたはピリミジン])のゲノムに3万2千個の遺伝子が組み込まれているという、ものすごいゲノムだということがわかったのよ。なにしろヒトのゲノムなんかは30億ベースペアの巨大なサイズのなかにたった2万1千個くらいしか遺伝子がのっていないんだから、どんなにすごいかわかるでしょう。ゲノムのサイズがばかでかいだけの生物はいくらもいるのよ。特に植物なんかはね。でもヒトより多数の遺伝子を持っている生物がいるなんてファンタスティックじゃない。
どうしてミジンコがそんなにたくさんの遺伝子を持っているのか? それは進化の過程で多くの部分が複製されてコピーができたの。そしてその片方が環境の変化などに応じて細かく変化していろいろな遺伝子ができたのね。例えばみんな黒い靴は何足か持っていると思うけど、おしゃれな靴は夜のバーでデートするときに必要だし、ババくさいのはお仕事のときに履くでしょう。そういうこと。ただミジンコの遺伝子にはユニークなものが多くて、昆虫など他の節足類とも人やマウスと同じくらい似ていないというのもすごいわね。
詳しくは下記の雑誌で見てね。
John K. Colbourne, et al. (2011) The Ecoresponsive Genome of Daphnia pulex. Science 331: 555-561. DOI: 10.1126/science.1197761
あ そうそうそんな小難しいものは読めないって人にはもっと簡単なサイトも紹介しておくわね
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