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2010年5月16日 (日)

地獄の日本兵 by 飯田進

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帝国陸軍歩兵第二百二十一連隊は私が現在住んでいる北総で組織された部隊で、太平洋戦争においてニューギニアで米軍に占拠されたサンサポールという町の奪還作戦をおこないました。この本の著者飯田進氏は現地語ができるということで、海軍の情報要員であったにもかかわらず、陸軍が行う作戦にこの部隊に加わって参加することになりました。

飯田氏は現地人の部落で食料運搬係として、4人の女性と子供を安全を保証して徴用しましたが、これが痛恨の結果を招くことになります。抗議もむなしく、彼らが部隊長の指示で処刑されてしまうのです。またそれとは別に現地人の処刑を実行させられたこともあったようです。飯田氏はそれによって戦犯として戦地で逮捕され、その後スガモプリズンに収容されています(幸運にも死刑は免れました)。このようなこともあって、飯田氏は80才を越えるまで口をつぐんでいたのでしょう。

ニューギニア戦線での出来事については、生き残った兵士の従軍記や指揮官としての立場でみた戦記などいろいろ出版されていますが、戦争を知らない我々の世代にもわかりやすくコンパクトにまとめた本はありませんでした。飯田氏は80才を越えてから国会図書館に通い、膨大な資料に目を通して、自分だけの経験ではなく、戦争の全実像を俯瞰しようと試みました。そしてその結果を85才にしてこの新潮新書にまとめ、世に問うこととなりました。

著者が書きたかったのは「勇敢戦闘したある兵士の物語ではなく、飢えて野垂れ死にしなければならなかった大勢の兵士(太平洋戦争全体でいえば100万人以上)たちの実態」です。ニューギニアの日本軍は、ほとんどの部隊が戦闘を行う前に食料がなくなり、疲労・マラリヤ・飢餓で行軍の途中にバタバタと倒れてウジのエサになってしまったという事実を、現代に生きる我々にきちんと知ってもらいたいというのが著者の執筆動機です。

人類の歴史上最低の戦争を指導した職業軍人の中に、何のおとがめもなく自衛隊の指揮官として再就職した人が多いというのが著者にとっては腹立たしく、「恥を知れ」と言いたくなるのはよく分かります。日本人は太平洋戦争の総括を全く行っていないのです。日本の戦争指導者だけではなく、日本各都市の絨毯爆撃を立案指揮したカーチス・ルメイという戦争犯罪者である米軍の指揮官に、日本政府が勲一等旭日大綬賞を授与したことにも著者の憤りは爆発しています。原爆投下の責任者への抗議・告発も行っていません。上官の命令で捕虜を処刑した日本人兵士のなかには、戦犯として死刑に処せられた人も多いのです。

新書というコンパクトなボリュームのなかで、要領よくニューギニア全土(日本の2倍もある)の戦闘を記述した本で、編集者の力もあったと思いますが、実にわかりやすくまとめられています。これまで出版された従軍記とは一戦を画する良書だと思います。こういう本を学校で読ませたらどうでしょうか。

飯田進 著: 「地獄の日本兵 ニューギニア戦線の真相」 新潮新書 (2008年刊行)

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コメント

 非合理、独善的な太平洋戦争敗戦の本質的な原因、責任を不問のまま大日本帝國から象徴天皇制へと看板を書き替え、その本質をあいまいなままにしてきた、万世一系の天皇制の欺瞞が古田武彦氏によりようやく白日の下にさらされました。現在の近畿天皇家は前王朝である九州王朝を抹殺し7世紀以前の倭国を乗っ取り、その痕跡を消し去りました。現在のアカデミズム史学、国語学、菊の万葉学他すべてがこの虚偽の歴史に立っております。この欺瞞を国民が共有しないかぎり未来の日本はありません。
http://www.furutasigaku.jp/jfuruta/jfuruta.html

投稿: H.Asuka10 | 2011年6月23日 (木) 00:42

 非合理、独善的な太平洋戦争敗戦の本質的な原因、責任を不問のまま大日本帝國から象徴天皇制へと看板を書き替え、その本質をあいまいなままにしてきた、万世一系の天皇制の欺瞞が古田武彦氏によりようやく白日の下にさらされました。現在の近畿天皇家は前王朝である九州王朝を抹殺し7世紀以前の倭国を乗っ取り、その痕跡を消し去りました。現在のアカデミズム史学、国語学、菊の万葉学他すべてがこの虚偽の歴史に立っております。この欺瞞を国民が共有しないかぎり未来の日本はありません。
http://www.furutasigaku.jp/jfuruta/jfuruta.html

投稿: H.Asuka10 | 2011年6月23日 (木) 00:44

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