赤血球の脱核
↑図1
哺乳類が他の脊椎動物(鳥類・爬虫類・魚類)とはっきり異なる点のひとつに、赤血球に核がないことがあげられます。ただし発生は進化を繰り返すということで、例えば人も胎児の頃には血液中に核を持つ赤血球がみつかります。
成人では特殊な貧血などの病気でない限り、血液中に有核赤血球はみられませんが、血液細胞を製造している骨髄などでには有核赤血球があります。これはある意味当然で、赤血球だってもともとは核のある普通の細胞からできるわけです。核がなくなると細胞分裂もなくなります。
↑図2
細胞分裂はなくなるのですが、核を細胞の外に出す必要はあります。細胞を生かしたままで核を放出するにはどうするのでしょうか? 図1はラットの胎仔赤血球の脱核の際のミオシン(筋肉の主要タンパク質)の存在を焦げ茶色に可視化したものです。青っぽい色の核をつつむように存在します。ここには示してありませんが、ミオシンと共に筋収縮の担い手であるアクチンも同様なパターンを示します。 細胞分裂の際にはアクチンとミオシンは分裂のくびれた部分に局在し、ゴム輪を絞るように細胞をくびりきる感じになることが知られていますが(図2 分裂リング)、脱核の場合は核をつかむように分布しています(図2 脱核カプセル)。つまり細胞が二つに分割される場合に、細胞分裂型と脱核型があるということが示唆されています。
なぜ脱核が必要なのかということはよく分かっていませんが、多分赤血球の直径より細い血管を通過する際に、核があると自由に変形できないので詰まってしまう恐れがあるからなのでしょう。哺乳類は脳などに非常に細い毛細血管が多数分布しています。
参考文献:H Takano-Ohmuro, M. Mukaida, K. Morioka: Cell Motil & Cyteskel 34, 95-107 (1996) 上図のソースはシリアンハムスター胎仔血液
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