生物の起源をもとめて
地球は46億年前にできたと考えられています。それでは生物はいつ頃生まれたのか? オーストラリアの西部には35億年前の地層があるそうで、微生物の化石は報告されていますが、これは三葉虫やアンモナイトのように一目瞭然というわけにはいかないので、もっと明確な証拠が欲しいところです。
ここで石油採掘業界では有名な12Cと13Cを比較するという手法が威力を発揮しました。12Cは普通の炭素で、13Cは中性子がひとつ多く7個の炭素です。生物が空気中の炭酸ガスを利用するとき、13Cは利用困難で、主に12Cを利用します。その結果生物が放出するメタンガスなどの炭素化合物は13Cのパーセントが著しく低くなります。
オーストラリア西部の35億年前の地層に含まれる石英のなかには当時の水が閉じ込められている場合があり、さらにその水に泡がみられることがあります(上図 上野博士らの発見・・・下記URLを参照)。その泡を分析して、中に含まれる気体の13Cの12Cに対する割合を調べれば、その炭素化合物が生物由来かどうかということがわかります。
結果は明らかに13Cの割合が低く、この気体は生物由来のものだということが判明しました。おそらく下図のような過程で生成されたメタンガス(CH4)などが閉じ込められたものなのでしょう。この石英は熱水性シリカ岩脈といって、海底温泉近傍で形成されたものであることが知られています。当時の生物は硫黄化合物を利用してエネルギーをつくっていたので、温泉から離れることができなかったと考えられます。温泉から離れるには、水と炭酸ガスから光合成によって有機物を生成する機構が必要で、この完成はシアノバクテリア(下図)が繁栄するまで待たなければなりません。
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