アカデミズム
日本という国ではもともとアカデミズムが認められていません。はじめてのノーベル賞受賞者である湯川秀樹ではなく、さしたる業績もない野口英世をお札の肖像に使うというのが象徴的です。理学系の大学院博士課程を終了した場合、1970年代から今日までずっと就職率は50%くらいです(1)。それも期限付き1年などの怪しい就職も含めての話ですから悲惨です。
1)http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2008/08/pdf/098-115.pdf
2)http://science6.2ch.net/test/read.cgi/life/1149333967/l50
就職できなくてもどうしても研究を続けたい人は米国に仕事を求めて行くしかありません。文系ではアルバイトで生活費を稼いで、暇な時間に大学に出かけて研究するという人生もあるようですが、理系ではそれは許されません。
3)http://science6.2ch.net/test/read.cgi/rikei/1207325086/l50
4)http://blog.goo.ne.jp/rebellion_2006/e/ab04d2afc6c7ca9c8f85b4c122121243
結局何十年たっても日本にアカデミズムを擁護する雰囲気は醸成されません。それどころか、財政逼迫と新自由主義の嵐が吹き荒れる中で、大学の独立行政法人化が強行され、事態は圧倒的に悪化しました。大学が拝金主義に席巻されて、みかけの業績やいかがわしい特許などがやたらと増える一方、実質的な学術の進歩は、ごく一部の大学や理研のみに頼る状況です。まもなく民主党が政権をとろうとしていますが、彼らにこの事態をひっくり返すだけの底力があるでしょうか? 私は悲観的です。
1)の文献で驚いたのは、70年代には80%くらいあった工学系大学院博士課程修了者の就職率が、現在60%まで落ち込んでいることです。そこまで日本の大学が崩壊してきているとは!大学+大学院=9年間の予算の40%が紙くずになってしまったということです。大学院生を受け入れなくなった企業も次第に劣化してきたのでしょう。このような状況でポストドクを増やしても(一部の金満ボスは、安くて首を切りやすい労働力がノドから手が出るほど欲しいのです)、パーマネントの仕事がなければ40歳でみんな失職です。却って問題を深刻化するだけでしょう。いつも生活苦と先が見えない不安、さらに世間の偏見に追い詰められて、よい仕事ができるかというと、それは難しいことでしょう。
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