バルサ: 私のサムエル
リアソールでの最終戦。サムエル・エトオ(1981~)は今期最後の素晴らしいゴールを決めました。残念ながらピチーチ(得点王)はアトレチコのフォルランにもっていかれてしまいましたが、なにしろ3冠を獲得したチームのエースストライカーになったわけですから、大満足の1年だったことでしょう。最終戦で30点目を入れて、バルサ在籍トータルで130点をとったということも素晴らしいチームへの貢献です。
彼がいつも心配しているのは、カンテラ上がりのプレイヤーたちが、仲間内でのプレイを優先して、外様に冷たくするんじゃないかということです。ですから、チャビ・イニエスタ、そして最終戦でのボヤンなどがラスト・パスをくれると、とても安心するのだと思います。まあメッシのパスは、たいてい自分に返ってくることを前提としたワンツーなのですが、これは子供の頃からの習性だと思うので、その点はエトオも理解していると思います。ただロナウジーニョ(現ACミラン)はほとんどの場合「さあ シュート打ってくださいよ」というパスをくれたのに比べると、メッシはエトオにとって非常にやりにくいパートナーではあるでしょう。しかし遠慮なくやりあったりもした同年代のロナウジーニョと違って、メッシに対しては年齢差もあるしカンテラ上がりでもあるということで、エトオもかなり遠慮しながら接しているという感じがうかがえます。
エトオがピチーチを獲得できなかったひとつの理由は、PKをメッシと折半していることにあります。しかしこうなったのも、エトオの精神的な弱さがひとつの要因なので、あまり文句も言えません。実際ワールドカップ予選でPKを躊躇して、結局ウォメに譲ることになったという前科もあります(ウォメがはずして、カメルーンは出場を逸した)。私の意見としては、エトオはPK蹴るのはやめて、全部メッシに譲ったほうがいいんじゃないかと思います。ピチーチはあまり意識しない方が、彼自身のためにもチームのためにも良いのではないかと思います。バルサは3トップのチームなので、時にはアンリにおいしいシュートを譲ってあげることも重要でしょう。
エトオはMFとしてのテクニックは普通で、名人イニエスタやチャビとは比較できませんが、FWとしてのテクニックには、瞬時の突進、ボディバランス、切り返し、体の反転、GKのタイミングをはずす頭脳的プレイ、スペースを作るためのフェイク、キックの多彩さなど、なかには地味で目立たないものもありますが、総合的に素晴らしいものがあります。あと前線のDFとしても、体力の温存を要しないときは、激しく動き回って相手のパスをディスターブするという能力もあります。
でも私がエトオを応援したくなるのは、むしろ彼の精神的な弱さのせいですね。ちょっとしたことですぐ折れてしまいそうになる繊細な精神構造が、いつも彼の目に現れていてドキドキします。ピッチ外ではかなり子供っぽいところもあります。「くそマドリーは王者に敬礼せよ」などとマイクでまくしたてて物議をかもしたり、故障で入院したときに、チームメイトが誰もお見舞いに来てくれなかったので、がっくり落ち込んでしまったということもあるそうです。彼が最も必要としているのは、ピチーチやバロン・ド・オルの栄光ではなく、チームメイトやファンの母親のような愛情なのです。
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