女房逃ゲレバ猫マデモ by 喜多條忠
みなみこうせつとかぐや姫の「神田川」「妹」や柏原よしえの「ハロー・グッバイ」などの作詞でおなじみの喜多條忠氏が自伝を出版しました。芸能人はファンがいるわけで、自伝を出すのも悪くないと思いますが、この「女房逃ゲレバ猫マデモ」という本は、彼のファンではない一般人が読んでも面白いと思います。
やはりドキュメンタリーは小説と比べて無条件に現実がずっしりと迫ってきます。出生の秘密、子供の頃の思い出、夫婦の亀裂、家庭崩壊、男親ひとりでの二人の子育て、再婚(赤坂の作詞教室・・・ってアオイスタジオ?・・・に来ていた自分の生徒を取り込んだ)、猫との交流、母の死、妻の病気などてんこもりです。ニセモノが現れて、1億円の取り込み詐欺を働いたという話もあって、芸能人というのは本当に大変だと思いました。芸能人を人とも思っていないようなテレビのディレクターがいるのには驚きました(中身はネタバレになるので書きませんが)。
読み終わった後、別の人生を経験したような錯覚に陥りました。文章に気合いと重みが感じられて、ズシンズシンと胸に突き刺さる感触でした。直前に夏石鈴子氏の軽ーいリズムの文章を読んでいたので、ちょうど対照的なのがおもしろかったですね。
タマムシはなぜあんなに美しいのかという話がでてきて、考え込んでしまいました。一応鳥の目をくらますなどという説もありますが、牛糞の中に住んでいるセンチコガネの中にも美しいものがあるので(昔淀川の河原の牧場で、センチコガネを探して糞をつついてこわして歩いたことがあります。結構見つかるのですが、びっくりするくらいキラキラと美しい虫が糞の中から出てくるのです)、これはますます謎です。
「女房逃ゲレバ猫マデモ」喜多條忠(きたじょうまこと)幻戯書房 ¥1,800
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