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2008年11月 1日 (土)

PLoS の衝撃

学術雑誌の御三家といえば Science, Nature, Cell ということになっていますが、今モンスタージャーナルが成長しつつあります。それは PLoS ONE という雑誌なのですが、紙の実態があるわけではなく、完全なウェブジャーナルです。しかも誰でも無料でアクセスし、読むことができます。 毎日数編以上の論文が発表されており、年間にすると3000編近くのボリュームになります。間違いなく史上最大級の科学雑誌になりました。しかも PLoS グループの姉妹誌も数多く発行されており、これらも含めてますます拡大の一途をたどることになると思います。おそらく一般週刊誌なども含めた中で、人類の歴史上最大の雑誌になると思います。いやもうなっているかもしれません。

学術雑誌の中には年間200万円以上の購読料をとる雑誌もあり、図書館や購読者は大変です。図書館の予算は多くの場合年々減らされており、必要な本もないしウェブ購読権もないので、論文を読むにはお金を払い、個別に業者に注文してコピーをとりよせなければいけません。このお金が馬鹿になりません。無料で雑誌が読めるのは研究者にとって、誠に有難いことです。

それではこれですべて万々歳かというと、それがそうじゃないのです。PLoS ONE に論文を発表するには、著者は1300ドル支払わなければいけません。これは結構な金額です。つまり研究者にこれが支払える富豪と支払えない貧民の明らかな階層分化が発生することになりました。
注:PLoS のために言っておきますが、絶対に1300ドル必要なわけではなく、どうしてもお金がない場合は応相談ということにはなっています。あと今は異常な円高で少し楽になりました。

もうひとつの問題点は、このような雑誌の発展により、まあお高い雑誌がやっていけなくなって、えげつない出版社が倒産するのは仕方がないにしても、学会が発行している学術雑誌の運営が非常に困難になっていくのは、誠にやるせない気持ちです。それでも PLoS や BMC シリーズの雑誌に論文が吸い寄せられる傾向は避けられないと思います。これからどんどん雑誌を発行できない学会が増えていくことでしょう。

考えてみれば、研究費というのは一種のギャンブル的投資であり(そうでなければならない)、一方論文出版費はもう成果が大なり小なりはっきりと上がっている仕事の仕上げのプロセスに必要なお金なので、研究費の配分を減らしてでも、すべて国で面倒見てもいいのではないかと思います。各国政府が共同で、公営のウェブジャーナルを運営して、そこで研究成果の発表をさせるようにしてくれるのが一番なのですが・・・。

PLoS ONE のHP: http://www.plosone.org/home.action

PLoS のHP: http://www.plos.org/

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