ナメクジウオと脊索動物の進化
ナメクジウオはウオという名がついていますが魚類ではなく、魚類の祖先の生きた化石と考えられている生物です。古生代カンブリア紀には、ナメクジウオとよく似たピカイアという化石生物が生きていたので、極めつきの古い時代(5億年以上前)からあまり姿をかえずに生きてきた生物です。最近の研究では、カンブリア紀よりもさらに古く、化石も非常に少ないエディアカラ紀に、似たような生物がすでに生きていた可能性も指摘されています。
昔は三浦半島の油壺あたりにもいたようですが、いまや絶滅危惧種です。しかし水族館では結構出会えるようです(グーグルなどでも簡単に探せます)。私も水族館でしか見たことがありません。ナメクジという名ですが、写真にみられるような、全身半透明でイノセントな感じの美しい生物です。
今年になってこのナメクジウオの全遺伝子配列が Putnam 博士らにより解明され(1)、脊索動物の進化の系譜に新しい知見が追加されました(系統図参照)。これによると「固着生活を送っていたホヤの祖先が、遊泳性の魚類に進化する途中でナメクジウオが分岐した」といういままでの考えは誤りで、「遊泳生活を送っていたナメクジウオの祖先が、魚類に進化する途中で、ホヤが固着生活をはじめて分岐した」という考え方が正しいということになりました。
1) Putman et al: The amphioxus genome and the evolution of the chordate karyotype. Nature 453, pp.1064-1071 (2008)
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