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2008年3月12日 (水)

微生物遺伝学の巨星墜つ

大腸菌などの細菌にもオスとメスがあるということを、故広田幸敬先生の講義で聴いてびっくりしたのはいつのことだったでしょうか・・・。オスの細菌はセックスするとき、まず自分の体くらいの長い毛を作ってメスの体に接触し、メスとつながります。それからDNA移送用パイプを作って、自らのDNAをずるずるとメスに移送して交尾するわけです。

移送するのに1時間以上かかったりするわけですが、DNAはある決まった部分から移転するので、さっさと早く移転する遺伝子と、ゆっくり後で移転する遺伝子があるわけです。ジョシュア・レーダーバーグは細菌に性があることを発見しただけでなく、その移転の早い・遅いの差を利用してDNA上にならぶ遺伝子の順番(遺伝子地図)を決めることに成功しました。20世紀中頃の話です。さらに大学院生や(最初の)奥さんと共に、オスにはF因子という特別なDNAがあることを発見しました。そのDNAの中に前記した毛のタンパク質の遺伝子も含まれているわけです。

F因子以外にも薬剤耐性因子など、本来ホストが持つゲノムDNA以外のDNA断片を細菌はいろいろ含んでおり、これらをまとめてプラスミドといいますが、ヒトなどの動物もミトコンドリアDNAという似たようなDNAを持っています。植物はさらに葉緑体DNAという特別なものを持っています。それぞれ生物の生存や進化に大きな役割を果たしていますが、今ではさらにそのプラスミドのDNAに、人為的に遺伝子を組み込んで細胞に入れるという、遺伝子工学の基本的なツールとしても重宝されています。

現代の遺伝子工学にも大きな影響を与える発見をした、そのレーダーバーグが2月に亡くなりました。また大学で遺伝学を教わった飯野徹雄先生も2月に亡くなりました。飯野先生はタバコを吸いながら講義をされるという超ヘビースモーカーでした。細菌の操作などはクリーンベンチという無菌空間で行うのですが、先生はその中に灰皿を置いてぷかぷかとやりながら実験なさったそうです。いまではそんな剛の者はいないでしょう。それでも80才近くまで要職でご活躍なさっていたわけですから驚きです。  

・・・・・<合掌>

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