玉川児童百科大辞典
図書館の廃棄処分本をあさっていて、素晴らしい本に遭遇しました。それは「玉川児童百科大辞典 8動物」というもので、児童というからには小学生を対象とした書物のはずですが、どうしてどうして大人の、しかも生物の専門家にすら興味をひかれる内容なのです。
出版されたのは昭和43年で、いまから30年ほど前になります。もちろん分類学の考え方は大いに進歩して、この本が書かれた当時とは異なりますが、個々の生物が変わったわけではないので、個別の記述にはそんなに大きく訂正しなければいけないところはないでしょう。玉川大学と当時の全国の生物学者が協力し、執筆担当者は相当苦心して書きあげたものと思われます。図に条虫の部分の1頁を示しましたが、これを見てもわかるように大変詳しく記載してあり、漢字にふりがながふってあることを除けば「児童」という肩書きを削除しても十分通用します。
この百科辞典の特色は、あいうえお順というような機械的な知識の羅列ではなく、学問の体系に沿って組織的に記述してあるという点です。もちろん索引は各巻末にきちんと整備されています。今このような辞典を制作しようとしても、おそらく出版社は赤字になる可能性が大きいでしょうし、第一執筆者が集まらないでしょう。欧米では、ちゃんとファンドをもらって基礎的な動物分類学をやっている人は今でもそこそこいるのですが、日本ではいまや絶滅危惧種です(多分北大・高知大・博物館にわずかに生存するのみ)。古い学問領域を守ることが、あたかも罪であるかのような行き過ぎた改革の嵐が大学に吹き荒れた結果です。
30年前の本で絶版ですが、このシリーズはほとんどアマゾンなどで古本を買うことができます。8動物は1995円で売っていました。
「玉川児童百科大辞典」玉川大学出版部編集、誠文堂新光社 418頁
| 固定リンク | 0
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 横井庄一著「明日への道 -全報告 グァム島孤独の28年」(2011.11.16)
- 「僕の音楽物語 (1972-2011)」 by 平野肇(2011.09.27)
- 「原発はいらない」 小出裕章著 (2011.08.21)
- Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment (Annals of the New York Academy of Sciences)(2011.07.17)
- 「Chemical and physical behavior of human hair 4th edition」 by Clarence R, Robbins なんじゃこれは!(2011.07.15)
「生物学・科学(biology/science)」カテゴリの記事
- 続・生物学茶話264:マウス脳のアトラス(2025.03.18)
- 続・生物学茶話263:半索動物の神経系(2025.03.07)
- 続・生物学茶話262:脳の不思議な世界(一色出版)について 後半(2025.02.24)
- 続・生物学茶話261:脳の不思議な世界(一色出版)について 前半(2025.02.22)
- 続・生物学茶話260:筋層間神経叢のストライプ構造(2025.02.03)
「動物(animals)」カテゴリの記事
- Erratum: ベティはひよどりじゃなかった(2025.03.16)
- ユリカモメ(2025.03.01)
- 逆さであること(2025.02.08)
- ヒヨドリのベティ(2025.02.06)
- 配電盤(2025.01.19)
コメント
太っってしっまたハムスターを
やせさせるならどうすればいいですか?
投稿: | 2008年5月29日 (木) 15:51
こんばんわ はじめまして。
昔ハムスターを飼っていました。
半年くらい飼っていますか? そのくらいたつと人間の中年太りと同じなのか、結構太るやつもいますね。
配合飼料とキャベツだけでも2年くらいは生きるので、もしおやつなどをよく食べさせているのなら、やめてみてはどうでしょう?
投稿: monchan | 2008年5月29日 (木) 21:26