虚像の砦 by 真山仁
「マグマ」が面白かったので、本作「虚像の砦」も読んでみました。1日で一気に読めたと言うことは、内容が面白くて文章もあまり凝らない読みやすい小説ってことでしょう。
マグマ→
https://morph.way-nifty.com/grey/2007/02/post_2f0f.html
どうみてもTBSのニュース23を舞台にした、政治とテレビ報道の暗闘を描いたドキュメントのようにみえます。実際綿密な取材に基づいて書かれたものであることが巻頭の謝辞などからもうかがえます。しかしドキュメントにしてしまうといろいろ支障があるので、設定を多少変えて無理矢理小説にしたという感じです。
イラク日本人拉致事件を縦糸として、横糸は政府、議員、銀行、放送局、広告会社、検察、公安などが絡み合い、政府の情報操作によって国民の感情誘導が行われていくプロセスと、衝突や失敗を重ねながらもそれに抵抗するディレクターをはじめ、いろいろな立場で苦悩する放送局の取締役・現場スタッフ達が生き生きと描かれていて、飽きることなく最後まで読ませてくれます。
放送局というのは許認可事業なので、総務省をはじめとして政府に遠慮しながら仕事をしなければならない上に、広告代理店(事実上○通一社)の意向を受け入れなければいけない、銀行には逆らえない、株主の意向も無視できないなどのしがらみの多い仕事だと痛感しました。この小説のはじめの方でも、政府にとって都合の悪い情報はスクープでも放送しにくく、NHKが報道するのをみてからスーパーテロップを流すなどの場面があります。
ロシアのように政府に批判的な放送局・局員を露骨に弾圧するというのは論外ですが、日本でもいろいろな形で放送局には重しがのっかっているということが、具体的にわかりました。実際ニュース(News)23は最初から比べるとどんどん縮小され、TBS上層部の遠慮が感じられます。山本モナが密会写真を公表されたのも、番組に打撃を与える絶好のタイミングというのが示唆的です。出演者もいろいろな形で監視されているのではないかと疑われます。
私たちも無批判にニュースショーを受け入れて、マインドコントロールされてはいけません。さて現在のニュース23は後藤謙次らが中心でやっているわけですが、記者の世界にどっぷりとつかってきた昔気質のおやじという感じで、インパクトにも面白みにも欠けますね。池田裕行をもどせないのでしょうか?暴走しそうで危ないのでしょうかねえ。その方がスリリングで面白そうなのですが・・・。膳場貴子という人も生硬な雰囲気で、女性らしい柔らかさが感じられないところが草野満代に比べてバツです。全くショーとしての面白みが感じられない番組になってしまいました。私がプロデューサーなら山本モナとボンバー高野を中心に、池田やセルジオ越後でやらせたいですね。
虚像の砦(メディアのとりで) 真山仁 著 角川書店
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