シロアリの階級
私は小学生の頃はずっと「生き物係」をやっていたため、中学に入学すると、とりあえずその手のサークルにはいりました。すると、早速先輩から山に入ってシロアリを採集してこいとのリクエスト。これにはびっくりしました。ともかく山にはいり朽ち木の根元に巣を発見し採集に成功したのはいいのですが、その女王蟻の巨大でおぞましい姿態には、いろんな昆虫にはなれていた私ですが、さすがに気分が悪くなりました。
とはいえ、どうして同じ種で、あるものは小さな働き蟻に、あるものは巨大な女王になるのかというのはビッグ・クウェスチョンとして心に残りました。ミツバチなどではローヤルゼリーとフェロモンで決まっていることがわかっているようですが、いろいろな生物種で明らかになっているわけではありません。真正社会性昆虫といわれる生物には生物学的な階級があり、それぞれの階級が分業することにより、効率の良い社会を形成して繁栄しています。インドにはバラモンやクシャトリアなどの階級があるようですが、これは生物学的に規定された階級ではないので、人間は真正社会性生物ではありません。
シロアリには羽があって繁殖できる貴族階級(ニンフ)と羽がなく繁殖できない労働者階級(ワーカー)のふたつの階級があります。労働者階級は通常は生殖能力を持たないのですが、巣から女王蟻がいなくなると、繁殖できる個体が発生します。この場合繁殖はできますが、羽はやはり生えません。というわけで条件によって、貴族階級の♂♀、労働者階級の♂♀を相互に交配させることができます。この結果北出博士らは階級の決定が栄養やフェロモンだけでなく、遺伝因子もかんでいることを示しました。
この遺伝因子は性染色体上にあり、したがって♀は2個、♂は1個の因子を持っています。結果を図示しました。不思議なことに♀はAAだと貴族、ABだと労働者になり、オスはAだと労働者、Bだと貴族になります。もっと研究が進まないと、これがなぜかを説明することはできません。
面白いのは、貴族のオスと貴族のメスを交配すると、子供はすべて労働者になるということです。さらに不思議なことにBBという組み合わせになってしまうと、なんとその個体は死んでしまいます。したがって貴族のオスと労働者のメスが交配した場合、性比は1:1にならず、オス:メス=2:1となります。謎は深いぞ。
参照:Y Hayashi, N Lo, H Miyata, O Kitade: Sex-linked genetic influence on caste determination in a termite. Science 318, pp.985-987 (2007)
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