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2007年8月13日 (月)

成体での毛包新生

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創傷治癒部位(傷が治った部位)からの毛包新生。

トカゲのしっぽは切っても再生しますが、哺乳類の足は切ったら二度と生えてきません。しかしどんな臓器も再生しないかというと、肝臓や皮膚のように再生することが可能な臓器もないわけではありません。

毛も再生することができる臓器のひとつです。例えばヒトの頭髪の寿命は4-5年で、寿命が尽きると抜け落ちますが、また同じ毛包から新しい毛が生えてきます。ただしその皮膚の深部に隠されている毛包が破壊されると、再生は不可能とされていました。実際毛包の再生が可能ならハゲの治療も簡単にできるはずでしょう。

毛包ができるのは生まれる前後の短い期間だけで、たとえばマウスやラットなら生まれる数日前から数日後に形成され、それ以降は形成されません。しかし最近ペンシルベニア大学医学部の M.Ito 博士らは、背中の皮膚を傷つけたマウスが治癒するときに、新しい毛包が形成されることを発見しました(文献1)。しかもそれは胎仔・新生仔のときと同様、真皮の細胞の誘導によって表皮の幹細胞からできることを彼女らは示しました。

重要なのは傷のサイズがある程度以上大きいことが必要だということです。傷が小さいと周りのアダルト組織の影響を受けて、胎仔・新生仔のような幼若な環境が作り出されないと考えられます。ヒトの場合大きな傷だと縫合したり、薬を塗ったり、ガーゼや包帯で覆ったりして、この実験のような環境がつくりだされることはまれだったので、なかなか発見できなかったものと思われます。現在彼女たちはヒトでも研究を進めていますが、未発表ながらマウスと同様な結果が得られそうらしいです。

このような研究結果は、成体にある幹細胞が条件さえ整えば、今まであり得ないと思われていたような臓器をつくることができることを示しており、今後の幹細胞の応用研究に勇気を与えるものです。その意味で Ito 博士らの研究は価値あるもので、Nature 誌に顔写真入りで紹介記事が掲載されています(文献2)。ポストドクの日本人としては大変な快挙でしょう。ちなみに白鳥英美子似の美人。次世代毛髪研究のリーダーの誕生です。

1) Ito et al. : Wnt-dependent de novo hair follicle regeneration in adult mouse skin after wounding. Nature 447, pp.316-320 (2007)
2) Making the paper. G. Cotsarelis and Mayumi Ito. Hairs in wounds after hope for organ regeneration. Nature 447, no.7142 p.xiii (2007)

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