Bon Courage by 西島三重子&弥勒
「Bon Courage」・・・フランス語で「元気を出してね」というような意味らしいです。西島三重子の30周年記念盤で、アオイスタジオから出版されています。長い間彼女の音楽を聴いてきた者にとっても30年という時間はずっしりときます。
「池上線」以外のすべての歌詞を弥勒が手がけているのがポイントです。彼女のポリシーはおそらく、聴き手の感情をブローアップして、感動の渦に巻き込んでやろうというものだろうと思います。ひとつひとつの曲をとってみれば、それぞれ名作なんですが、つぎつぎ羊羹、饅頭、ケーキと出てくると、全体的には座右のCDとしては「願い」や「思い」が満載で重すぎるのが難点です。ベートーベンの第九も大好きな曲ではありますが、年末に1回聴くだけです。
みーちゃんも弥勒ワールドにはまって感情込めすぎで、「たんぽぽ」などの軽いはずの曲(この曲はこのアルバムの中では一番好きな曲です)まであまりにディープな感触になっています。こういうのが好きな人はいると思いますが・・・。アクセント・息抜きになるべき「青春のシュプレヒコール」や「マイ・ホームタウン」はちょっと昭和っぽすぎてエンシェントな感じです。やっぱりアルバムの半分くらいは、いろいろなタイプの作詞家に委嘱したほうが、いろんなオーディエンスの趣味に対応できてよかったのではないかと思います。
「古池や蛙飛び込む水のをと」という芭蕉の句があります。ドビュッシーの「月の光」、セザンヌの静物画、西島三重子の「Imagination Canvas」みんな熱い思いとかはこもっていないけれど、すばらしい作品です。
つまるところCDの感想を書くということは、書き手の音楽への接し方をあらためて考えることにほかなりません。そうしてみると結局自分が音楽に求めるものは、「ひんやりとした鉱石」、「ふんわりと浮遊する空間」、「静かに漂う香り」、「さわやかな風」、「ほのかな色」、「かすかな思い出」、「やわらかな光」、「すべてを包み込む水」、「何かを期待させる夜明けの空」、「かすかな不安のなかの夜の船出」、「ちょっと暴れてみたい午前0時」など思いつくままに書いてみましたが、要するにある種の感触や感覚に浸りたいのではないかと思いました。結局私は永遠の「テイチク派」なのかもしれません。テイチク派としては「Spell ~呪文~」をおすすめします。
CD:西島三重子「Bon Courage」 aoi-0602 (アオイスタジオ);
西島三重子「Spell ~呪文~」 TECN 35856-57(テイチクエンタテインメント)
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