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2007年5月 5日 (土)

ことば 日本語 英語

Photo_142科学の世界では、言葉は英語が標準になっています。ですからへたくそでも何でも英語の使用は必須で、頭は日本語と英語を堂々巡りする毎日です。でもちゃんと言いたいことを、両方の言葉で表現できるとは限りません。

例えば日本語の「は」と「が」の使い分けは難しい問題です。I go とか I will go はどう翻訳しましょう? 「あなたは行きますか?」という問いに対して、「私は行きます」と答えれば、『他の人はどうあれ私は行きます』という意味になり、「私が行きます」と答えれば、『私が行くのだから、他の人は遠慮して欲しい』という意味にとれるでしょう。

「は」や「が」を削除して「私、行きます」と言うのは、さっきまでは迷っていたが、今決断しましたというニュアンスになってしまいます。最もニュートラルな表現は主語なしの「行きます」かもしれません。ところが I will go on the next race というのは、次のレースに金をかけてみようという意味だったりします。こんな単純な文章にすら、正確な翻訳というのは絶望的な作業であることを思い知らされます。

「あの人はちょっと配慮がなさすぎる」というような表現になると、さらに難易度は上がります。日本語の「ない」には、英語の no とか without と違って程度が存在するので、すぎる・・・という修飾が成立します。全く・・・という修飾とはかなりニュアンスが異なり、英語には翻訳しにくい感じです。しかも「ちょっと」という抑制的な修飾までついているのが混乱を拡大します。

言葉のニュアンスは一種の大切な文化であり、外国人には計り知れない表現があります。ですから地球全体が英語的な表現で満たされていくことには大きなデメリットがあります。ハリウッド映画を見て、マクドナルドで昼食をとり、シドニー・シェルダンの小説を読み、衛星放送で大リーグの野球中継を楽しむ。仕事はウィンドウズとオフィスとグーグルでOK。世界中の人々が、そういう生活をすることがベストなのでしょうか?

結局世界がアメリカ化されると、IBMが互換機に敗北して中国の1企業になったように、アメリカの存在意義も失われるでしょう。本当は科学的記述はもちろん、一般の国際コミュニケーションも、歴史と手垢にまみれた言葉でなされるべきでなく、エスペラント語のような、誰もがネイティヴでない言葉がつかわれるのがベストだと思います。EUが標準語をエスペラント語に指定すると面白いんですがねえ。

ひとりで内容を考えて英文を書ける場合は、普通翻訳という意識は持たないものですが、一緒に仕事をした人がいて、その人の意見も書かなければいけない場合などは、まさしく翻訳作業に直面せざるを得ません。これは特別に訓練を受けた人や、それを職業にしている人以外にとっては難行苦行です。

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