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2007年3月24日 (土)

昼は雲の柱

Photo_105 ハワイ島のマウナケアに登り、さらに真山仁の「マグマ」を読んでからちょっと火山づいていて、今度は石黒耀(いしぐろあきら)の「昼は雲の柱」を読んでみました。文学の香り・・・というよりあきらかに理系人間の書いた小説という感じですが、それなりにストーリーもうまく書いてあるので、電車で降りる駅を忘れるくらいすっかり没入してしまいました。

石黒さんは宮崎医科大学(現宮崎大学医学部)出身の勤務医だそうですが、地質学や火山についても専門家顔負けの知識をほこり、また御殿場や富士山の歴史についても綿密に調査して、単なる火山パニック小説とはひと味違うシリアスな雰囲気を盛り上げています。彼の処女作「死都日本」はメフィスト賞を受賞していますが、この小説は3作目になります。

例えば御殿場市の南方に富智神社というのがあるそうですが、これはなぜ富士神社ではないのでしょうか? 実はポリネシアの伝説では、火山はマウイという神様が海から釣り上げたものということになっているそうなのですが、フチとはポリネシア語で釣り上げるという意味だそうです。またアイヌ語では火の神のことを「アベ・フチ・カムイ」というそうで、大和朝廷時代より前から歴史があるこの神社が「フチ」神社であることも不思議ではありません。

タイトルの「昼は雲の柱」というのは聖書からの引用で、著者によればキリスト教もルーツは火山信仰で、神が火山噴火の煙を目印に信徒を導いたという意味です。ただ小説の後半でアクションが盛り上がるべきところで、火山神の解説がくどくど語られるのはいただけませんでした。ここはとばして読んでもいいと思いますね。

最後に付け加えますが、巻末の解説を小山真人静岡大学教授が書いているのも興味深いです。地学の専門家があらさがしをして、なんとか記述の学問的誤りにケチをつけてやろうとしたそうですが、ついにみつからなかったそうです。

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