シベールの日曜日
フランス映画「Les dimanches de ville d'Avray 」(Sundays in Ville d'Avray) が原題。Ville d'Avray はパリ郊外の町だそうです。
英語のタイトルは「Sundays and Cybele」。これは実はおかしなタイトルです。Cybele というのは映画のクライマックスで少女から明かされる本当の名前で、タイトルがネタばれになっているというのは、英語版の翻訳者(プロデューサー?)がどういうつもりだったのか不思議です。日本語版は英語版に近く「シベールの日曜日」というタイトルになっています。
原作はベルナール・エシャスリオーの「ビル・ダヴレイの日曜日」。監督はセルジュ・ブールギニョン。上映時間 116分。モノクロの古い映画で、私も映画館で見たわけではなくNHKTVの再放映で見たのと、英語版のVHSテープで見ました。VHSは現在販売されていないのでオークションなどで入手するしかありません。日本語版は一応ヤフオクなどに出ていますが非常に高価(2万円くらい)で、米国のオークションで、業者を介して英語版を手に入れる方がずっと安価です。落札しても日本には送ってくれない出品者が多いので、米国の知人か業者を介することになると思います。子供の言葉がメインなのでやさしい英語です。英語版といっても、言葉はフランス語で字幕が英語という意味です。
ストーリー上反社会的な部分はありますが、決して低俗なロリコン映画などではありません。1962年度アカデミー外国語映画賞 1962年度ヴェネチア国際映画祭特別表彰 など数々の映画賞に輝くすばらしい芸術作品です。実際何度見ても落涙なしではみられません。
有名な映画なのにDVDが出版されていないのは残念ですが、出版しようと活動している方はいらっしゃるようです。日本にもこの映画やパトリシア・ゴッジのファンは多く、例えば西島三重子さんは「シベールの日曜日」というこの映画にちなんだ歌を出版しています --- ENCORE-西島三重子ベストセレクション16(ワーナー・パイオニア 32XL-129)。このCDについては次のコンテンツで解説します。
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あらすじ
ピエール(ハーディ・クリューガー)はフランス軍のパイロットで、ベトナムで戦闘中に現地の少女を銃撃したような記憶だけを残して墜落し、他のすべての記憶を失ってしまう。退役してパリに帰ってきた彼は、呆然と地下鉄の駅をさまよっていたが、そこで父親に連れられたひとりの少女(パトリシア・ゴッジ)と出会う。
父親はピエールに修道院の場所を尋ねるが、ピエールは答えられない。少女はその場所には行きたくないようで泣いているが、父親はいさいかまわず少女を修道院に預けて立ち去る。ピエールは少女のあとをつけて修道院まで行く。そこで父親が落とした書類入れをひろう。
ピエールは看護婦のマドレーヌと暮らしていて、マドレーヌは彼を愛しているが、ピエールは記憶がもどらず、彼女のことも思い出せない。芸術家のカルロスはそんなピエールに救いの手を差し伸べ、仕事を手伝わせている。
日曜日に少女のことが気になって、ピエールは修道院をたずねる。修道院では彼は少女の父親と見なされる。本当の父親は来ない。どうやら少女は捨てられたようだった。ピエールは少女を自宅まで連れて行って書類入れを渡す。少女はもう修道院に帰りたくないと言うが、ここに引き取るわけにはいかない。そのかわり、日曜日には修道院に来て、遊びに連れ出してくれるよう約束してくれという少女の願いを認める。
ふたりはそれから日曜日ごとに会って、デイトのような交流を続ける。ふたりがいつも散歩する湖の景色は冬枯れだが、なぜか本当に美しい。少女は12歳だが、18歳になったら36歳のピエールと結婚しようと言う。途中で乗馬した男が通り過ぎるが、実はその男が監督のブールギニョンだ。ピエールは少女と会っていると、何かを思い出しそうな気がする。
少女は、フランソワーズと呼ばれているが、ギリシアの女神の名がキリスト教的でないというので修道院で変えられたのだと言う。そして、教会の屋根の風見鶏を取ってくれたら本当の名を教えてあげるとピエールに告げる。ところが、ピエールは記憶を失ったときの後遺症か、高いところにあがるとめまいに襲われる
当然ピエールとマドレーヌとの間はぎくしゃくする。ピエールもマドレーヌもどうしたらいいかわからない。ピエールは友人達と談笑しているときに、まぼろしを見て突然叫び出したりする奇矯な行動に出たりする。マドレーヌは日曜日にピエールを遊園地に連れ出すが、そこはピエールにとっては騒がしすぎた。ピエールは興奮して暴れ、暴力をふるってしまう。
一方少女は日曜日に来るという約束をピエールが破ったためふさぎこんでしまう。それを埋め合わせるため、クリスマスの夜を二人は一緒に過ごす。カルロスの家からツリーを持ち出したピエールと、寄宿舎を抜け出した少女の、二人だけのささやかで暖かいクリスマスの夜。いたずらっぽくほほえんだ少女がピエールに渡した小箱。その中の紙切れに、一言「Cybele(=シベール)」と書かれている。初めてピエールに明かした名前シベール。これが、少女の心からのプレゼントだった。Cybele は tree や earth の神様の名前とのこと。
カルロスはよく理解していて、少女と会っているときはピエールも子供なのだなどと言葉をつくして、心配するなと説得するが、マドレーヌはピエールのあとをつけて、少女とのデイトの現場を確かめる。マドレーヌが不安のあまり同僚の医者ベルナールにピエールのことを相談する。ベルナールはおそらくマドレーヌに気があるのでピエールは邪魔だ。修道院と警察に連絡がいって大騒ぎになり、警察が少女の行方をさがして捜索を開始していた。マドレーヌが後悔したのも後の祭りだった。ピエールは危険人物とみなされたわけだ。
少女との約束をはたそうとしたピエールは、クリスマスの日ナイフを片手に教会の屋根によじ登って、風見鶏を取り外す。その時、突然ピエールは、以前自分を悩ませていためまいなどの発作が治っていることに気がつく。そして風見鶏をシベールにプレゼントしようと戻りかけたとき、警官に発見され、ロリコン変質者とみなされて射殺されてしまう。警官は「危ないところでした。彼はナイフを持っており、あと2秒で少女と接触するところでした」とマドレーヌに報告する。
警官達に起こされ「君の名前は?」と聞かれたシベールは、あたりの状況を見てピエールが殺されたことを悟り、「もう、私には名前なんかないの。誰でもなくなったの!」と泣きながら叫ぶ。
(FIN)
参照: http://www5b.biglobe.ne.jp/~sasuraib/sub5_zatsu/eiga/cybele.htm
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