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2007年1月22日 (月)

コレステロールを下げる-失敗の巻

Photo_3コレステロールは生体膜などに含まれる生体構成成分として欠かせないだけでなく、ホルモンや胆汁酸の前駆体として重要な物質です。通常食事から得られる量は限られているので、足りない分は肝臓で合成しています。

コレステロールは脂質なので水には溶けにくく、生体内ではリン脂質やリポタンパクの形になっています。コレステロールは俗に善玉コレステロールとか悪玉コレステロールとかに分類されますが、コレステロール分子自体に善玉と悪玉があるわけではなく、リポタンパクの種類に善玉と悪玉があるのです。

しかしその悪玉といっても、有害なだけの物質ではありません。LDLと呼ばれるこのリポタンパクは、肝臓で合成されたコレステロールを、必要とする体の各部域に運搬するという役目があります。一方HDLは血管壁などから余分なコレステロールを回収し、肝臓にもどす役割があります。従って、血管狭窄が招く動脈硬化、高血圧、心疾患を防止する効果があると考えられているわけです。

世界最大の製薬会社ファイザーは、コレステロールをHDLからLDLに移動させるタンパク質CETPに目をつけ、この作用を阻害する薬 Torcetrapib を開発して、1万5千人の患者を対象に18-20ヶ月にわたる治験を進めてきました。この薬の作用によって、LDLが減少し、HDLが増加する効果に期待したわけです。

しかし昨年の暮れに、この薬を処方しなかった対照では死亡者51名だったのに比べ、処方したグループでは82名の死亡者が出たため、この薬の治験を中止すると発表しました。

問題はこの薬自体の副作用がいけなかったのか、それともHDLが増加したことが死を招いたのかということですが、よくわかっていません。HDLにも善玉と悪玉があって、今回は悪玉が増えたという説もあります。いずれにせよ、これによって動脈硬化の治療薬の開発が大幅に遅れることになりました。

参照: When good cholesterol turns bad. Pfizer's heart drug fails clinical trial. H Pearson Nature 444, 794-795 (2006)

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