ガラパゴス-殺戮の島
ガラパゴス諸島はエクアドルの西方900km、赤道直下の太平洋上に浮かぶ19の島で構成されています。ダーウィンが進化論の着想を得た場所として知られている島々です。大型の肉食獣がいないため、他ではみられない珍しい生物が生き延びている貴重な世界遺産です。
16世紀頃からスペインの海賊がここに食料用の山羊を持ち込み、またエクアドルが領有してからは入植者の家畜が放牧されました。特に1980年代からは、野生化した山羊が大繁殖し、草を食べ尽くして環境破壊が起こり始めました。おそらくこれはエル・ニーニョ現象による植生の変化によるものと考えられています。
最近5年間のうちに20億円以上を費やすプロジェクトで、約14万頭の山羊の大殺戮が行われ、今年の調査でほとんど死に絶えたことがわかりました。来年からはネズミとネコの毒物による絶滅作戦が実行されようとしています。
思うに絶滅作戦を開始するのが遅すぎます。ここまでくればイグアナを救済する方法を、たとえ人工飼育になったとしても別途研究して、山羊は放っておいた方がよかったのではないかとすら思います。ましてネズミとネコの絶滅とは何とも言えないくらい気分の重い作戦です。ここに至るまで放置していたエクアドル政府の責任は重いと言わざるを得ません。
もうひとつの危機は、西ナイル熱がいつこの島に伝播するかという問題です。鳥も感染するので、いつ発生しても不思議でない状況です。何れにしても、ガラパゴスゾウガメがもうロンサムジョージ1頭しか生き残っていないことに象徴されるように、ガラパゴスの自然は人間による環境破壊によって、いまや風前の灯火です。
参照: Science 313 no.5793 p.1567 (2006)
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