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2006年8月19日 (土)

哺乳類型爬虫類 その1

Honyuuhachuu われわれのご先祖様はどういう動物だったのでしょうか?

そりゃわれわれのDNAは、細菌のような生物だった頃から連綿と引き継がれているものではありますが、では哺乳類の起源はどこにあるのでしょうか?

実は哺乳類型爬虫類(獣弓類、テラプシダ)という、最近多くの古生物マニアの注目を集めている生物は、2億5千万年くらい前(ペルム紀後期)には地上で最もありふれた生物だったと考えられています。しかしその後、永い地球の歴史の中でも最悪の環境変動のため、96%の海産無脊椎動物の種が絶滅するという惨劇が勃発し、テラプシダもほとんどが死滅してしまいました。

この環境変動の原因が何かは、はっきりとはわかってはいません。すさまじい火山の噴火が続いて→大量の火山灰が地球を覆い→植物の生育が阻害され→大気中ひいては海水中の酸素が欠乏することよって、生物の大量絶滅を招いた、という説が有力です。このような厳しい環境の中でも、テラプシダの中でごく一部の、キノドンティア、ディキノドンティア、テロケファリアなどに属するいくつかの種が生き残り、キノドンティアから哺乳類が進化したと考えられています。

そして2億年前のジュラ紀初期には、キノドンティアよりずっと哺乳類に近い生物が出現しました。しかし残念なことに、この頃には別系統の爬虫類から進化した恐竜が全盛期を迎えようとしており、われわれのご先祖様は、ひっそりと森の木陰で夜活動する小さな生物として生き延びるしかなかったのです。

しかし、チャンスはやってきました。白亜紀に巨大な隕石が地球に衝突するなどが原因で、大きな環境変動が起こって、恐竜はその末裔の鳥類を残して、きれいさっぱり絶滅してしまったのです。哺乳類は息を吹き返し、以後ずっと地上の王者として君臨しています。

金子氏の著書「哺乳類型爬虫類」朝日選書は、この間の哺乳類の進化の軌跡を、主として骨格の変化を中心に、あまり論文のように堅苦しくなく、かといって全くジャーナリストの目で面白おかしくみるわけでもない、バランスのとれた記述で興味をもり立ててくれる類書のない名著です。ただしきちんと書いてある本なので、じっくりと取り組むことが必要です。

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