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2006年7月 8日 (土)

さらば文明人 その2

さて本題の文明人未接触の食人種族ですが、彼らは大パプア高原に住んでいます。 かなりの部落には、すでにオーストラリア政府の役人が入っていて接触済みだったようですが、西丸氏が行った頃にはまだ完全ではなく、いくつかの部落にはまだ手が届いてなかった時代でした。どうしてこんなに遅れたかというと、それは彼の地の気候があまりにも悪かったからだということです。

つまり一日のうち18-20時間は年中土砂降りなので、隣の部落に行くには泥のような地面の土地を走っていかなければならないのです。4時間くらい走ってたどり着かなければ、野営ができないほどの土砂降りになり、体力を著しく消耗してしまいます。さらにそこらじゅうヒルだらけなので、眠ろうものならたちまち体中からヒルに血を吸われて、体がそれこそひからびてしまいます。また踏み跡のような蛮路しかないので、迷えば即死を意味します。

人を食べると言っても、むやみに殺すわけではなく、彼の地では人の心を傷つけることが大きな罪なので、他人の心を傷つければ殺されても仕方がないという感覚なのだそうです。こういうルールなら、ある意味文明社会でも、思慮深く平和な社会が築けるかもしれません。それでも人間の性といいますか、女をめぐる争いは後を絶たず、不倫した女を殺してしまう(確かに不倫は著しく人の心を傷つける行為とは言えましょう)というようなこともままあるようです。

こうした殺人や事故で死人が出た場合などに、食人が行われるようで(病死した人の肉は食わない)、常時栄養失調状態にある彼らにとっては希有のごちそうではあるのでしょう。彼らには死体や骨を神聖なものとしてみる宗教的な心情はないようです。すべての人間は本来宗教的な心情を持つという概念は間違っているということです。

私が特に興味を持ったのは、彼らには酋長というようなリーダーを選んだり、人に序列をつけたりという習慣がないということです。類人猿や文明社会の人間は、きちんと社長、部長、課長などという序列をつけなければ何事も進まないという習性がありますが、 もともと人間にはそんな決めごとはなかったのかと、ある意味少し人間という種を好きになったかもという気分になりました。

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