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2025年7月 8日 (火)

続・生物学茶話274:基底核 7.黒質

黒質はなにしろ色付きの神経細胞なので目立ちます。最初に報告したのは18世紀フランスの解剖学者フェリックス・ヴィック・ダジール(Felix Vicq d'Azyr)で1786年のことです(1)。なぜ黒いのかというと、黒質にはドーパミンを産生する細胞が集積しており、ドーパミンを素材としてこの集積した細胞に含まれるさまざまな酵素によってメラニン色素が合成されるからです。

三毛猫は黒いメラニン(ユーメラニン)と茶色のメラニン(フェオメラニン)を持っていますが、黒質のメラニンは両者の構造部分を持っているそうです(2)。これは既知の例えば皮膚のメラニンとは異なる特異な構造を持つメラニンで、ニューロメラニンと呼ばれています。現在ではニューロメラニン顆粒は分離可能で、顆粒に含まれる514種類のたんぱく質がこの種の顆粒に特異的なたんぱく質として同定されています(3)。

ドーパミンを産生するニューロンはみんなニューロメラニンをもっているかというと、そんなことはなくて、例えば腹側被蓋野は黒質とならぶドーパミン産生領域ですが黒くありません。つまりニューロメラニンを合成する酵素セットを持っていない細胞が一般的であり、黒質は特異であるわけです。皮膚の細胞がメラニンを合成するのは、紫外線によるダメージを防ぐという生理的意義がありますが、なぜ黒質の神経細胞がこのような酵素セットを持っていて、それがどのような意義を持つのかは不明です。

黒質は大脳基底核の構成要素とされていますが、それがある場所は中脳です(4)。ドーパミン系の神経伝達物質をもつニューロンが豊富で主に線条体に投射しています。トーパミン系のニューロンは近傍の腹側被蓋野にも多く存在しますが、こちらは主に前頭前野に投射しています(5、図274-1)。

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図274-1 ヒト脳におけるドーパミン系の神経細胞が集積する黒質および腹側被蓋野の位置

黒質は中脳室の腹外側に形成された網様体から発生します(6)。円口類にも相同と思われる神経核が存在するので、黒質は生命史のなかでは脊椎動物の共通祖先にも存在していた非常に古いタイプの組織と思われます(7、8)。赤核が円口類にはなく、ヒレや特に四肢の発達とともに進化してきた新規の組織であることとは対照的です(9)。赤核は四肢の運動に深くかかわっているのに対して、黒質のドーパミン系細胞はウィキペディアにも「当初考えられていたように運動制御に直接関わるものではない」と記されており、むしろ報酬予測にかかわるとされています(4)。おそらくこれは以前にあまりにも黒質=運動制御というドグマが強烈だったので、そればかりではないよという意味だと私は解釈しています。

脊索動物ですが脊椎動物ではないもっと古いタイプの生物に近いと思われるナメクジウオには黒質に相当する組織はないので、黒質は脊椎動物が誕生するとほぼ同時期に生まれたと考えられます。ただしナメクジウオやホヤにもドーパミン系ニューロンは存在するので、ドーパミンによる神経伝達はプレカンブリア紀に生きていた彼らの共通祖先にも存在したのでしょう(10‐12)。

ところで黒質はドーパミン系の細胞だけでできているのではありません。マウスでもヒトでも黒質ははっきりと緻密部(pars compacta) と網様部(pars reticulata)にわかれていて、網様部はGABA系の細胞がメインになっています。図274-2の(C)図をみると、緻密部がほとんどドーパミン系の細胞からなり、網様部はほとんどGABA系の細胞からなることがわかります(矢頭で少しだけ存在するドーパミン系の細胞が示されています)。網様部には緻密部から伸びたドーパミン系細胞の軸索や樹状突起の束が多数存在するので、染色した場合ドーパミン系の染色もはっきり出ます。

黒質緻密部が脳基底核の線条体に基底核内部投射するのに対して、黒質網様部は線条体などからの入力を受けて基底核外の視床・脳幹に投射します。黒質網様部は常時運動に対する抑制シグナルを出しており、このシグナルが抑制されることによって運動が開始されるとされています(4)。

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図274-2 マウス黒質の位置と構造 緻密部と網様部

ドーパミンの機能について、多くの実験によってはっきりとしていることがあります。たとえば石田らはラットの片側黒質から線条体に投射する神経線維を6-OHDAという薬剤で破壊する操作を行い、人工的なパーキンソン病動物を作成しました。この動物は興奮剤(メタンフェタミン)を投与すると、ぐるぐると一方向に回り続けます。しかしこの動物の線条体にドーパミン系の中脳神経細胞を移植すると、この病気は完治します(13、図274-3右側図1 ■が移植した動物 □は非移植コントロール)。

実際パーキンソン病の治療にはL-ドーパが有効です(14、図274-3左図)。ドーパミンそのものは脳血液関門を通過できないので、通過できる前駆体L-ドーパが使用されます。しかしそれですべて問題解決とはいきません。L-ドーパ服用は深刻な副作用をもたらすので、さらなる治療法の改善が必要とされています(15)。

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図274-3 ドーパミンの合成およびドーパミン産生細胞が行動に関与していることの証明

黒質ドーパミン系ニューロンから線条体・終脳への投射経路の解剖学論文が21世紀になってから出版されてるのには少し驚きましたが、プレンサらの論文の図を引用しておきます(16、図274-4)。この図をみて気付いたのは、ドーパミン系ニューロンは視床には全く投射していませんが、視床網様核には投射しているかもしれないということです。実際ごく最近視床網様核とドーパミンシグナルに関係した論文が出版されています。著者によると視床‐大脳皮質のリレー回路を介して、覚醒や注意喚起のプロセスに影響を与える可能性があるそうです(17)。

ドーパミンシグナルは成功体験の記憶と再現をになっていて(脳科学ではTD誤差情報の伝搬などという)、生物が生きていくための方策を学習によって蓄積していく際の重要なツールとなっているようです(18)。ただ四肢動物が生まれてから、四肢の活動は赤核がになうようになったとはいえ、赤核がないヤツメウナギもヒレはもっているわけで、そのような原始的脊椎動物から哺乳類まで黒質は存在するので、当然過去に獲得した手足の制御機構の一部は黒質の機能として残っているはずで、だからこそその機能低下によってパーキンソン病のような疾病を発症すると思われます。

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図274-4 ヒト脳におけるドーパミンの投射経路

実際ヤツメウナギのドーパミン系ニューロンに損傷を与えると、うまく泳げなくなりますし。嗅覚からの情報にしたがって餌の方向に泳ぎだすということもできなくなってしまいます(19)。すなわち初期脊椎動物の基本的行動についてはドーパミン系ニューロンがその責任を負っていたと思われ、それは進化の原則を考えると、哺乳類においてもそのシステムはリプレースはされないで、追加とつぎはぎによって引き継がれていると考えられます。

ペレス‐フェルナンデスらはヤツメウナギとラットの脳におけるドーパミン系ニューロンの位置を示してくれています(8、図274-5)。確かに哺乳類における黒質緻密部に相当する組織はヤツメウナギにも存在し、哺乳類と同様に上行性、すなわち線条体相当の組織への投射をおこなっています(緑の矢印)。

ここで一つ驚いたのは、ヤツメウナギでは間脳にあった黒質緻密部相当の組織が、ラットでは後ろにずれて中脳に移動していることです。これは発生生物学的な説明が必要ですし、そうなった生理学的・形態学的事情も説明されなければならないでしょう。

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図274-5 ヤツメウナギおよびラットにおけるドーパミンによる情報伝達経路

哺乳類ではドーパミン系ニューロンの情報は基底核のGタンパク質共役受容体であるD1およびD2で受け止められます。D1はGsと共役し、アデニルシクラーゼの活性化を起点とした情報カスケードを発動し、D2はGiと共役しフォスフォジエステラーゼの活性化を起点とした情報カスケードを発動します(20)。

D1とD2はヤツメウナギにも存在し、2種類のドーパミン受容体による脳基底核制御は、現生するすべての脊椎動物の祖先から受け継いだ共通のメカニズムであることが示唆されます(8、図274-6)。D1およびD2がどのような形で動物の行動にかかわっているかはまだ解明途上にありますが、興味深いテーマです(21)。

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図274-6 脊椎動物におけるドーパミン受容体の変遷 (Rは全ゲノム倍化イベントを示す)

 

参照文献

1)ウィキペディア:フェリックス・ヴィック・ダジール
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%80%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%83%AB

2)若松一雅 ヒト脳内に存在するニューロメラニン色素の構造とその生成過程の解明 平成24年科学研究費助成事業研究成果報告書
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-21500358/21500358seika.pdf

3)Maximilian Wulf et al., Laser Microdissection-Based Protocol for the LC-MS/MS Analysis of the Proteomic Profile of Neuromelanin Granules., J. Vis. Exp. (178), e63289, doi:10.3791/63289 (2021)
https://app.jove.com/t/63289/laser-microdissection-based-protocol-for-lc-msms-analysis-proteomic

4)ウィキペディア:黒質
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E8%B3%AA

5)ウィキペディア:腹側被蓋野
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%B9%E5%81%B4%E8%A2%AB%E8%93%8B%E9%87%8E

6)神戸学院大学講義資料
https://db.kobegakuin.ac.jp/kaibo/has_pp/txt/chu4.html

7)滋野修一・野村真・村上安則著 遺伝子から解き明かす脳の不思議な世界 一色出版(2020年刊)p.271

8)Pérez-Fernández J, Barandela M, Jiménez-López C. The Dopaminergic Control of Movement-Evolutionary Considerations. Int J Mol Sci., vol.22(20):11284 (2021) doi: 10.3390/ijms222011284.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34681941/

9)大屋知徹、関和彦 中脳赤核と運動機能 ―系統発生的観点から― Spinal Surgery vol.28(3)pp.258-263,(2014)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/28/3/28_258/_pdf

10)Elia Benito-Gutierrez, Giacomo Gattoni, Manuel Stemmer, Silvia D. Rohr, Laura N. Schuhmacher, Jocelyn Tang, Aleksandra Marconi, Gaspar Jekely and Detlev Arendt, The dorsoanterior brain of adult amphioxus shares similarities in expression profile and neuronal composition with the vertebrate telencephalon., BMC Biology vol.19: article no:110 (2021)
https://doi.org/10.1186/s12915-021-01045-w
https://bmcbiol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12915-021-01045-w

11)続・生物学茶話187: ナメクジウオ脳の部域化
https://morph.way-nifty.com/grey/2022/08/post-277eea.html

12)Horie T, Horie R, Chen K, Cao C, Nakagawa M, Kusakabe TG, Satoh N, Sasakura Y, Levine M. Regulatory cocktail for dopaminergic neurons in a protovertebrate identified by whole-embryo single-cell transcriptomics. Genes Dev. 2018 Oct 1;32(19-20):1297-1302. doi: 10.1101/gad.317669.118.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30228204/

13)石田康、上田勇人、三山吉夫 中枢ドーパミン系の破壊・移植に伴う線条体 L-DOPA・5-HTP およびカテコラミン・アミノ酸活性の変化:脳内微小透析法によるドーパミンおよびセロトニン生合成過程の同時測定を中心とした包括的研究 宮崎大学学術情報リポジトリ (2020)
http://hdl.handle.net/10458/2141

14)難病情報センター パーキンソン病(指定難病6)
https://www.nanbyou.or.jp/entry/169

15)パーキンソン病治療薬の長期服用で生じる副作用のメカニズムを解明
NIPS プレスリリース (2021)
https://www.nips.ac.jp/release/2021/03/post_433.html

16)Prensa L, Cossette M, Parent A, Dopaminergic innervation of human basal ganglia. J Chem Neuroanat., vol.20(3-4): pp.207-213. (2000)
doi: 10.1016/s0891-0618(00)00099-5.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11207419/

17)Mitchell J. Vaughn, Nandini Yellamelli, R. Michael Burger, and Julie S. Haas, Sensory ProcessingDopamine receptors D1, D2, and D4 modulate electrical synapses andexcitability in the thalamic reticular nucleus., J Neurophysiol vol.133: pp.374–387, (2025) doi:10.1152/jn.00260.2024
https://journals.physiology.org/doi/epdf/10.1152/jn.00260.2024

18)吉本潤一郎・伊藤真・銅谷賢治 脳の意思決定機構と強化学習 計測と制御 第 52 巻 第 8 号 2013 年 8 月号
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl/52/8/52_749/_pdf

19)R H Thompson, A Ménard, M Pombal, S Grillner, Forebrain dopamine depletion impairs motor behavior in lamprey., Eur J Neurosci vol.27(6): pp.1452-1460 (2008). DOI: 10.1111/j.1460-9568.2008.06125.x
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18336565/

20)ウィキペディア:ドーパミン受容体
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%91%E3%83%9F%E3%83%B3%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93

21)齋藤奈英ほか D1 および D2 ドーパミン受容体を介する神経伝達による
運動制御と学習記憶の仕組みの理解 日本生物学的精神医学会誌 33 巻 3 号 100-105ページ(2022)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbpjjpp/33/3/33_100/_pdf/-char/ja

 

 

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2025年7月 5日 (土)

Walk down the memory lane 16: The covers by Angels

Anri

Heap the plate with traditional japanese pops

シティーポップの女王といわれた杏里もいまや63才。彼女の名曲の数々をカバーする歌手が期待されますが、私が大好きな「Summer Candles」を圧倒的な歌唱力でカバーしてくれる Angels というユニットをみつけました。これは杏里の自作曲で歌詞は吉元由美さんの作品。夏になると聴きたくなる哀愁のバラードです。

Angelsは日本にもこんなに素晴らしい曲がたくさんあったのだということを思い出させてくれます。これは私の想像ですが、YouTubeの出どころから見てBBCと契約しているのかな?

Instagram: https://www.instagram.com/p/CvHSQyRx1Cw/?igsh=MXJ6cGM2aGVicW9mNg%3D%3D

まず私押しのバラード

杏里 SUMMER CANDLES(サマー・キャンドルズ)
こちら

古内東子 誰より好きなのに
こちら

高橋真梨子 for you...
こちら

徳永英明 レイニーブルー
こちら

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その他 名曲てんこもり

中森明菜 北ウィング
こちら

久保田早紀 異邦人
こちら

チューリップ 青春の影
こちら

ゴダイゴ 銀河鉄道999 (The Galaxy Express 999)
こちら

辛島美登里 サイレント・イヴ
こちら

ペドロ&カプリシャス ジョニィへの伝言
こちら

テレサ・テン 空港
こちら

 

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2025年7月 2日 (水)

海水温が上昇すると原発は使えなくなる

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(原発 シュテファン・キューン氏撮影-ウィキペディア)

欧州では熱波のため海水温が上昇し、原発の冷却不良で出力をカットし始めたそうです。
玉木雄一郎氏は原発を増やしたいそうですが、考え直した方が良いと思います。

現在:

France Cuts Nuclear Output Amid Mediterranean Heatwave ? Water 5°C Above Normal
こちら


過去:

アングル:北欧の原発にも熱波影響、海水温上昇で一時停止も
https://jp.reuters.com/article/world/-idUSKBN1KN0ZJ/

温暖化で使えなくなる? 原発
https://www.ccnejapan.com/documents/2019/20190320_CCNE_1-2.pdf

猛暑で米国の原発停止 海水温上昇、冷却に使えず(福島民報)
https://rief-jp.org/ct10/15376

1993年に冷夏によるコメ不足でタイ米を食べた記憶がありますが、今年はこんな猛暑でコメができるんだろうか・・・備蓄米も使ってしまった日本は大丈夫なんだろうかと心配になります。

そもそも備蓄米を放出したといっても、見たこともない人も多いのではないでしょうか。ということはいざコメが本格的に足りないということになったときに、みんなにゆきわたることなどありえないことが明らかになりました。備蓄量が全然足りないのです。その足りない量の備蓄も使ってしまって、またコメ不足になったらどうするのでしょう? カリフォルニアから輸入しても今年の有様をみると、なかなかみんなに行き渡るところまではいかないのではないかと強く危惧されます。

 

 

 

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2025年6月30日 (月)

ベティ なんだ君は留鳥なのかい?

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今日コミュニティバスに乗るため団地構内を歩いていると、なんとフェンスに餌を咥えたイソヒヨドリのベティがとまっているじゃないですか? 口笛であいさつすると、キョトンとした感じでこちらをじっとみていました。なんだ君はずっとここにいるのかい? うちのベランダにはすっかり来なくなったので、どこか別の場所で暮らしているのかと思ったよ・・・などと話しかけてみました。1分くらいの出会いでしたが、こちらもバスの時間があるので、お別れしました。カメラは持っていなかったので、写真は以前のものです。

オスのフィルは非常に目立つ色彩なので、団地にいればすぐにわかります。イソヒヨドリは繁殖期以外はオス・メスは別々に生活するそうなので、フィルはどこかに行ってしまったのでしょう。ベティもたまにはうちに遊びに来ればいいのにと思いますが、まあそれが習性なのでしょう。

 

 

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2025年6月29日 (日)

印旛日本医大

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印旛日本医大駅は写真のような三角屋根の展望台がある素晴らしいデザインの駅です。こんな駅は北総線には他にはありません。近隣には大きな工場や会社施設がいくつかあって、駅前にホテルもありますが、住宅はそれほど多くありません。ですから千葉ニュータウン中央駅や印西牧の原駅周辺に比べると、とても緑の濃い雰囲気が素晴らしいところです。5月にうちの団地を2~3日で通り過ぎて行ったイワツバメたちが、この駅周辺を乱舞するのがみられます。ここで繁殖しているのです。

最近ここで始発を待つ機会がありました。なんと平日も土日も始発は5時17分です。その20分前まで駅のシャッターが開きません。日の出からしばらくの間シャッターの前で待つことになりました。そしてシャッターがようやく開いたとき、最初に駅に入ったのは私ではなくイワツバメでした。イワツバメが駅の構内を乱舞しています。千葉ニュータウン中央駅のファミマは5時開店ですが、ここは6時でのんびりしています。

駅のパネルは印旛日本医大(松虫姫)となっています。これも何か牧歌的な雰囲気があります。

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この駅の周りにはわざわざほかの駅から買い物に来るような店はないので、近隣駅の住民が来るのは大学病院に用があるときくらいです。大学にはヘリポートも備えた立派な救命救急センターがありますが、なんと救急車は印西牧の原に1台、千葉ニュータウン中央に1台、白井に1台と駅間が4kmくらいあるような広大な地域で人口密集地であるにもかかわらず貧弱なものです。ですから数分で到着したら、他に利用者がいないラッキーなタイミングだったということになります。これも日本社会の衰退の表れなのでしょう。

(写真はウィキペディアと地域ニュースより)

 

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2025年6月26日 (木)

続・生物学茶話273:基底核 6.視床下核

視床下核(subthalamic nucleus)はGABA作動性の抑制性投射を主とする淡蒼球や線条体と異なり、グルタミン酸作動性の興奮性投射を主とする脳基底核のなかではユニークな特徴を持つ組織です(1)。

視床と黒質の中間に位置し、間脳に所属します。サイズはヒトの場合よくトウモロコシの実一粒くらいといわれます。長径数ミリというところでしょうか(1、図273-1)。

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図273-1 視床下核の位置

視床下核は1865年にフランスの神経学者ジュール・ベルナール・リュイ(Jules Bernard Luys)が発見したとされていますが、20世紀末頃まではあまり注目されない組織でした。それが急激に着目されるようになった一因は、1978年にフランスの脳外科医ベナビド(図273-2)がこの組織に電極を埋め込こんでパルスを発生させることによってパーキンソン病患者の治療を行ったことにあります。この療法はかなり成果をあげ、現在ではDBS(deep brain stimulation)という一般的な治療法として普及するまでになりました(2、3)。また学術的には20世紀末に基底核の研究が進展し、視床下核の重要性が認識されるようになってきたことも見逃せません(4)。

それにしても、このような革命的な治療法を受け入れた最初の患者氏の勇気は見上げたものです。また患者との信頼感を築き上げた医師のパーソナリティや努力も素晴らしいと思います。

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図273-2 ベナビド博士

図273-3に脳科学辞典の図(1)をもとに、最近の成果もふくめた脳基底核ネットワークを示しました。視床下核には終脳皮質・辺縁系・淡蒼球外節・黒質緻密部(5)から入力があり、淡蒼球外節・淡蒼球内節・黒質網様部に出力しています(1)。出力の様式はグルタミン酸作動性の興奮性投射のみですが、入力にはグルタミン酸・GABA・ドーパミンの受容体が用意されています。

終脳皮質(大脳皮質)と視床(図には書いてありませんが一部脳幹にも淡蒼球内節・黒質網様部から出力があります)をつなぐ経路は3つありますが、次第にその重要性が認識されてきたハイパー直接路は必ず視床下核を経由します。また間接路も一部視床下核を経由します。したがってヒトが何らかの行動を行うときに、かなり多くの場合その情報は視床下核を経由すると考えられます。

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図273-3 脳基底核ネットワーク

施術の観点からいえば、視床下核のどの位置に電極を入れるかというのは非常に重要なテーマです。ですから視床下核機能の部域差についての知識は必要で、それにともなって関係する基礎研究も近年大きく進展しました。図273-4a に示されるように、部域によってどこから入力があるかについて差が認められました(6)。そして出力についても差があることがわかりました(図273-4a)。これにどのような意味があるのかはほとんどわかっていませんが、図273-4bc に見られるように、げっ歯類でも霊長類でも運動野からの入力が多い部分には Parvalbumin、辺縁系からの入力が多い部分には Calbindin2 が多いことがわかっています。これらはカルシウム結合タンパクなので、カルシウムが関与する情報伝達に差があると考えられています(6)。

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図273-4 視床下核の部域と入出力(入力については図273-6もみてください)

プラサドらはマウスを使って、さらに詳細にさまざまなmRNAの存否について視床下核の部域差を調べました。その結果先端部には Col24a1、Nxph4 が発現していないこと、後方部には Pvalb などが発現していないことがわかりました(6、図273-5)。Col24a1 はコラーゲンの一部を合成するためのmRNA、Nxph4 はNeurexophilin 4という分泌タンパク質を合成するためのmRNA、Pvalb はパルブアルブミンを合成するためのmRNAです。

パルブアルブミンは脳神経系にも多いカルシウム結合タンパク質で、情報伝達に関係し神経疾患や認知障害にもかかわっていることがわかっています(7)。Neurexophilin 4 はα-neurexin のリガンドで、シナプスの構築や活動にかかわっていると思われます(8)。Col24a1が視床下核の機能にどうかかわっているかは謎です。

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図273-5 視床下核各部域に発現するmRNA

最後に視床下核への入力、視床下核からの出力をまとめました(図273-6)。縫線核からのセロトニン性入力は初出ですが、脳科学辞典によると縫線核は脳のほぼ全域に投射しているそうです(9)。たとえば猫が歩いている間ずっと発火していて止まると発火も止まるそうなので(9)、運動に関与する視床下核もその影響を受けるのでしょう、

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図273-6 視床下核への入力・視床下核からの出力

参照文献

1)脳科学辞典:視床下核
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%A6%96%E5%BA%8A%E4%B8%8B%E6%A0%B8

2)谷口真 横地房子 脳深部刺激療法(DBS)は どんな症例に有効か
脳外誌 JpnJ Neurosurg (Tokyo )vol.19 : pp.24 −31 ( 2010)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcns/19/1/19_KJ00005931727/_pdf

3)Wikipedia: Alim Louis Benabid
https://en.wikipedia.org/wiki/Alim_Louis_Benabid

4)Wikipedia: Basal ganglia
https://en.wikipedia.org/wiki/Basal_ganglia

5)ウィキペディア:黒質
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E8%B3%AA#:~:text=%E9%BB%92%E8%B3%AA%E7%B7%BB%E5%AF%86%E9%83%A8%20%EF%BC%88%E3%81%93%E3%81%8F,%E3%81%AE%E9%87%8F%E3%81%8C%E6%B8%9B%E5%B0%91%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82

6)Asheeta A. Prasad & Åsa Wallén-Mackenzie, Architecture of the subthalamic nucleus., Communications Biology vol.7, article no.78, (2024)
https://doi.org/10.1038/s42003-023-05691-4
https://www.nature.com/articles/s42003-023-05691-4

7)ウィキペディア:パルブアルブミン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AB%E3%83%96%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%96%E3%83%9F%E3%83%B3

8)Xiangling Meng et al., Neurexophilin4 is a selectively expressed α-neurexin ligand that modulates specific cerebellar synapses and motor functions., eLife 2019 Sep 16;8:e46773. doi: 10.7554/eLife.46773
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6763262/

9)脳科学辞典:縫線核
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E7%B8%AB%E7%B7%9A%E6%A0%B8

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2025年6月22日 (日)

私の不思議ノート5: 洗顔

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現在背中の炎症は抗生物質で鎮静しましたが、今度は歯がエマージェンシイとなって、鋭意歯科通いをしております。今でも金づち(ハンマー)で歯をたたくという術式をやってることが、自分が経験してわかりました。怖いわ💢

ところで最近朝洗顔すると、何故か転倒しました。手で顔を上下にこすると、自動的に転倒します。どういう脳のメカニズムなのかわかりません。仕方ないので、足の間隔をひろげて踏ん張る姿勢で洗顔すると、安定して無事作業は終了します。というわけで実害はないのですが、気味が悪いことに変わりはありません。困ったものです。

 

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2025年6月21日 (土)

My Name is Buddy: Ry Cooder

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うちらの親はこの農場の周りの景色しか知らない。
一生ここを出なかったから当然だ。
だからアメリカがどんな国なのかも知らない。

でも俺は貨物列車に飛び乗って、アメリカ全土を放浪するんだ。
スーツケースがひとつあれば、その中で寝ればいいだろう。
そんな人生だってあっていいだろう。

古き良きアメリカ。だけど出版されたのは2007年。

それにしてもなんて素晴らしいジャケットなんだろう。
決然とした意思と未来への不安。持ち物はスーツケースひとつだ。

ライ・クーダーは今のアメリカをみて、どう思っているのだろうか?

 

Ry Cooder The Concert for New Orleans

https://www.youtube.com/watch?v=NvG5sWjmtts


ウィキペディア: マイ・ネーム・イズ・バディ

こちら

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2025年6月19日 (木)

グレン・グールドは誰に演奏を聴いてもらいたかったのか

Gould

私が住んでいた学生寮にクラシック好きの先輩がいて、あるとき凄いレコードがあるからということで部屋に誘われて聴かされた・・・それがグレン・グールドが弾くバッハのゴールドベルク変奏曲でした。バッハの音楽に抱いていた既成観念が破壊され、非常にインスパイアされた記憶があります。

当時の音楽大学では、彼の演奏は極端に低い椅子での演奏姿勢も含めて、語ることがタブーになっていたそうです。

彼はあまりショパンを弾きませんが、ピアノソナタ第3番ロ短調はCDがあって、私も所有しています。これを聴いていてふと思ったのですが、彼は自分が楽しむためとか聴衆やCD購入者のために演奏しているのではなくて、死んだ飼い犬のニック君のために演奏しているのではないかと思いました。特に第3楽章の優しく語り掛けるような演奏にはそれを強く感じました。

幸いにしてYouTubeで全曲聴けます。

Glenn Gould plays Chopin Piano Sonata No. 3 in B minor Op.58
https://www.youtube.com/watch?v=NAHE8PTR8tE&t=22s

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若き日のグールド このころは普通の姿勢で演奏していたようです

ニック君は楽譜を見て鍵盤をおさえています✨

参照

グールドのやさしい音 なりたピアノ教室
https://narita-piano-hapi.amebaownd.com/posts/4104527/

グールドのこと 坂本龍一
https://www.gggathering.com/aboutgould/

なぜ人はグレン・グールドに惹かれるのか。音楽家・原摩利彦が解説
https://brutus.jp/pianist_glenn/

 

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2025年6月15日 (日)

続・生物学茶話272:基底核 5. 線条体

線条体には行動を行うか行わないかのスイッチがあり、意思決定の中枢としての役割があります。情報の通路として生まれた神経細胞が時を経て行動の制御を行うツールとして進化するために、線条体はキーとなるパーツであったと言えます。

線条体は外側は終脳、内側は淡蒼球と接しています。終脳にも淡蒼球にもほとんどアセチルコリン作動性のニューロンはありませんが、線条体には少数ですがアセチルコリン作動性のニューロンがあります(1)。したがってチロシン水酸化酵素の免疫組織化学を利用して線条体を特異的に染色することができます(2、図272-1)。ただし側坐核(腹側線条体とよばれることもある)にはアセチルコリン作動性ニューロンがあるので(3)、この部分と識別することはできません。

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図272-1 免疫組織化学による線条体領域の同定

図272-2は蛍光イメージング法で線条体のアセチルコリン作動性の介在ニューロン(緑)と、GABA作動性の投射ニューロン(赤)とを染め分けた研究結果です(4)。線条体の投射ニューロンには、細胞1個当たり1万個程度のシナプスがあり、そのほとんどは大脳(終脳)と視床からの入力です。これらから総和として強力な入力があったときだけに線条体の投射ニューロンは興奮します(5)。線条体における投射ニューロンの存在は圧倒的で、特にげっ歯類では全細胞数の90~95%を占めています(6)。

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図272-2 蛍光イメージング法による線条体細胞の識別 緑:アセチルコリン作動性介在ニューロン 赤:GABA作動性投射ニューロン

線条体へは終脳皮質や視床から強力な投射がありますが、線条体からは基底核内の淡蒼球や黒質に投射されるだけで、基底核外には直接の投射は行われていないとされています(5-7、図272-3)。終脳皮質や視床以外では黒質緻密部から線条体へのドーパミン系投射があり、これは線条体の活性に大きな影響を与えるとされていますが、このブログでも黒質について述べるときにとりあげたいと考えています。あともうひとつ淡蒼球外節からのフィードバックがありますが、これは271で述べたものです(8)。

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図272-3 線条体への入出力

マウス脳基底核原基は胎生11日目頃にはその形態がはっきり認められるようになり、LGE(lateral ganglionic eminence, 外側基底核原基)、MGE(medial ganglionic eminence, 内側基底核原基)、CGE(cordal ganglionic eminence 尾側基底核原基)という3つの部分に分かれます。それぞれの部分で細胞は増殖するとともに将来の運命を定められ、出生数日前から移動を開始しして出生する頃までには順次あるべき場所に落ち着きます。出生後は周辺の細胞とシナプスを作り、アポトーシスによって整理も行われて、生後10日目くらいにはそれぞれ組織として機能するようになります(9、図272-4)。乳離れまでにネットワークが完成して、脳がとりあえず機能するようになります。

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図272-4 マウス脳基底核の発生スケジュール

線条体の投射ニューロンは前述のように組織の90~95%を占めますが、これらはすべてLGEに起源を持つGABAergicな細胞です(9、図272-5)。LGEはこのほかに嗅球の細胞も産生します(10)。線条体の介在ニューロンはさまざまな出自を持つ細胞の寄せ集めで、おそらくそれぞれの生まれ故郷に関係した役割分担があるものと思われます。

線条体のニューロンの一部はMGEに起源をもちますが、淡蒼球は基本的にMGEに起源をもつものの一部はLGEに起源をもっているということで、線条体とはレシプロカルな関係にあり、かつそれらの少数細胞が異なる機能を持つそれぞれの細胞群を形成するということを考えると(11)、生まれた場所がその後の細胞運命の決定について非常に重要な意味を持っていることがわかります。それはもちろん生まれた場所に存在する分化誘導因子の種類と濃度が重要であることを意味します。

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図272-5 線条体神経細胞の出自

最後に線条体を構成する細胞の種類をリストにしておきます。文献12の記述にしたがって記しました。詳細な機能については文献をご覧ください。

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参照文献

1)ウィキペディア: 線条体
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%9A%E6%9D%A1%E4%BD%93

2)Anton Reiner, Loreta Medina, C. Leo Veenman, Structural and functional evolution of the basal ganglia in vertebrates.,
Brain Research Reviews vol.28 pp.235?285 (1998) DOI: 10.1016/s0165-0173(98)00016-2
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9858740/

3)ウィキペディア: 側坐核
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%81%B4%E5%9D%90%E6%A0%B8

4)沖縄科学技術大学院大学プレスリリース 2018
https://www.oist.jp/ja/news-center/photos/32705

5)嘉戸直樹 大脳基底核の機能 関西理学 vol.5: pp.73–75 (2005)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkpt/5/0/5_0_73/_article/-char/ja/

6)青崎敏彦 線条体ニューロンの局所回路とその働き (2004)
https://jnns.org/wp-content/uploads/previouspages/By2013Oct/niss/2003/text/textAosaki.pdf

7)続・生物学茶話268:基底核 1:イントロダクション
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/05/post-56976e.html

8)続・生物学茶話271:基底核 4: 淡蒼球
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/06/post-cbc07c.html

9)Rhys Knowles, Nathalie Dehorter and Tommas Ellender, From Progenitors to Progeny: Shaping Striatal Circuit Development and Function., Journal of Neuroscience 17 N, 41 (46) 9483-9502 (2021)
https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.0620-21.2021
https://www.jneurosci.org/content/41/46/9483.abstract

10)Stenman J, Toresson H, Campbell K., Identification of two distinct pro-
genitor populations in the lateral ganglionic eminence: implications for
striatal and olfactory bulb neurogenesis. J Neurosci 23:167–174 (2003)
https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.23-01-00167.2003
https://www.jneurosci.org/content/23/1/167.short

11)続・生物学茶話271:基底核 4: 淡蒼球
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/06/post-cbc07c.html

12)青崎敏彦 線条体ニューロンの局所回路とその働き
file:///C:/Users/Owner/Desktop/272/%E7%B7%9A%E6%9D%A1%E4%BD%93%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%B1%80%E6%89%80%E5%9B%9E%E8%B7%AF%E3%81%A8%E3%81%9D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D.pdf

 

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2025年6月14日 (土)

都響 ハルサイ

雨模様の中洋酒会館に出かけました。銀座線の乗客にクリスチャン・ディオールのミディシャツドレスを着ている方がいて、それがまたとってもお似合いでびっくりしました。頭からつま先まで全くスキがないのですが、それがとても清楚な感じで統一されていたので心洗われる感じです。このタイプです(*)。柄はこんな派手なのではなく、小さな濃茶色のスクエアが散らしてある薄茶系の地味なものですが、それがいいのです。自分の替えられない顔にふさわしいファッションをみつけることは素晴らしいことです。別世界のお話ですが。

* こちら

都響コンマスは雨の日なのでやっぱり矢部様。「牧神」は松木さんのフルートが素晴らしく、感服しました。プーランクのダブル・コンチェルトは私にはよくわからない音楽でした。務川&ブラレイの師弟コンビは楽しそうにやっていましたが。結局プーランクの音楽はプロが楽しむための音楽であって、聴衆はいらないのだろうと思います。「ハルサイ」はプロ演奏家が必死のパッチでやる音楽のはずですが、沖澤‐都響はこの破壊的な音楽をまとまりよく聴かせてくれて、あまりにうますぎてとまどうくらいでした。なんかマエストロ大野の系譜みたいで嫌な予感がします。

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指揮者アンコールのマエストラ沖澤

 

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2025年6月12日 (木)

団地鳥事情 June 2025

フィルとベティはどうやら繁殖が終わると団地を離れたようです。彼らも生まれたはずの子供たちも全く見かけることはなくなりました。また冬が始まるころに来てくれることを期待します。

団地は3月ころからずっとシジュウカラがいてにぎやかです。5月にイワツバメがやってきましたが、すぐに移動してしまいました。

ここ十数年団地にはずっとキジバト(turtledove)がいて、昨年子供が2羽生まれてうろついていたのですが、冬に入るころにいなくなって、親も含めて数か月間全くキジバトをみかけないという日々が続きました。親は寿命だったのかもしれません。

キジバトのいない団地というのは、ここに来てから初めての経験です。デデポポーというお馴染みの声が聞こえないのは寂しいものです。それが春になってまた見かけるようになりました。多分ここで生まれた個体がメスを連れてUターンしてきたのではないかと想像します。

そのメスの写真を撮影しました。

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これは何の上にいるかというと、実は街灯です。

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オスと一緒にいるところの写真。とても親密な感じです。

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2025年6月 9日 (月)

オリーブ

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梅雨入り直前に、ベランダのオリーブの花が開花しました。自家受粉はしないそうなので、実はつけないでしょう。実を採取しようとは思っていません。地面に生えると1000年くらいは寿命があるそうです。国連のマークで世界を支えているのもオリーブです。

私は背中に炎症があって、病院で一週間分の抗生物質をもらってきました。抗生物質漬けになるのは気分良くありませんが、梅雨はとりあえず我慢の日々です。

猫は気圧が下がると眠くなるらしい。狩りができなくなるので理屈に合っています。

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足組んで眠るサラ

 

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2025年6月 7日 (土)

World music collection 27: Jack & Daisy

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Jack & Daisy はUKのフォークデュオです。ジャックの滋味深い声とデイジーのさわやかな美声のスリリングな組み合わせが魅力です。サイモンとガーファンクルの関係に似ていますが、実際カバーもしていて、これが素晴らしい。私は若い頃にサイモンとガーファンクルを結構聞いていたので懐かしくもあります。

ジャックの歌声は余人に代えがたい深みがあって引き込まれます。デイジーの美声をどう使うかがこのデュオのテーマ。サイモンとガーファンクルも同じ問題を抱えていました。

America - Simon & Garfunkel
https://www.youtube.com/watch?v=nq3SOK5-IQk

グレイハウンドに乗って二人で自分探しの旅に出ますが、結局何もみつからない。煙草も切れてしまった。歌詞に出てくるミセス・ワグナーのパイは1960年代までUSA東部で販売されていたそうです。グレイハウンドはUSA最大のバス会社ですが、ドイツの企業に買収されたそうでびっくり。日本でいえばJRが外国に買収されたようなものですから、そりゃトランプも怒るわ。

The Boxer - Simon & Garfunkel
https://www.youtube.com/watch?v=kLewCMNx268

田舎からニューヨークに出てきて苦闘するという歌。
日本にも井沢八郎の「あゝ上野駅」という歌がありますが、内容は真逆です。ポール・サイモンにはポジティブ=嘘という信念があったのかな

Mrs. Robinson - Simon & Garfunkel
https://www.youtube.com/watch?v=N6O81BLf2HI

ミセス・ロビンソンは一見良き妻であり、敬虔なクリスチャンのようにみえますが、実際には子供に知られてはいけない秘密や心の孤独を抱えている。 そしてUSAもそういった偽善やヒーローの喪失による寂しさにあふれた国である。

Don't Think Twice It's All Right - Bob Dylan
https://www.youtube.com/watch?v=AHIU-ZJIx-k

俺はお前が眠っているうちに出ていくが、自分がした冷たい仕打ちのことを考えて、あきらめてくれ。俺はもう帰らない。デイジーって胡坐をかけるのね。

The Times They Are A-Changin’ - Bob Dylan
https://www.youtube.com/watch?v=XIJ-rPGhD1I

もし時間が大切だと思うなら泳ぎ始めたほうがいい、さもなければ石のように沈むことになるだろう。なぜなら、時代は変わりつつあるから。中島みゆきの「時代」はこれと正反対で、時代は変わっても結局同じことだと歌っています。ボブ・ディランを意識してディスったのでしょうか。

Harvest Moon - Neil Young
https://www.youtube.com/watch?v=_BaYzARtTtY

中年夫婦のラブソング リラックスする

Wicked Game - Chris Isaak
https://www.youtube.com/watch?v=e6E0gmekmqM

失恋ソング

Call it home
https://www.youtube.com/watch?v=8R7duCgkNMM

スペインのライブハウスでの演奏を収録

他にも YouTube に多数のアップロードあり

Landslide - Fleetwood Mac
https://www.youtube.com/watch?v=yZikHmHfvUs

Linger - The Cranberries
https://www.youtube.com/watch?v=8Kev_NwjA5E

Graceland - Paul Simon
https://www.youtube.com/watch?v=75ArbMXneT8

I’m On Fire - Bruce Springsteen
https://www.youtube.com/watch?v=MhQ6yM0IKXw

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Jack and Daisy HP:
https://jackanddaisymusic.com/

 

 

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2025年6月 5日 (木)

続・生物学茶話271:基底核 4. 淡蒼球

線条体や淡蒼球はおそらく脊椎動物が地球に出現したときから存在する組織で、脳全体の形が進化によって変化しても、ずっと保守的に存在して機能を保持してきたと思われます(1)。Stephenson-Jones らは円口類・肉鰭類・条鰭類・軟骨魚類のすべてに線条体と淡蒼球が存在することを示しました(2、3)。線条体と淡蒼球はともに背側は運動に、腹側はモチベーションにかかわっていると言われています。さらにそれらのサイズが変わったりアンバランスが発生したりすると脳の機能に重大な影響があり、統合失調症などを発生させると言われています(4)。ただ線条体・淡蒼球の機能はまだまだ未知な部分が多く、アプローチも難しい状況だと思います。

まずマウスでの基底核発生の状況をみていきましょう。胎生期13.5日目において、基底核原基は Islet1 をつくるLGE(外側基底核原基)と Nkx2.1/Lhx6 をつくるMGE(内側基底核原基)からなっていますが、線条体(尾状核・被殻)は主に前者、淡蒼球は主に後者から発生します(5、図271-1)。

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図271-1 出生前(a)と出生後(b)のマウス脳基底核周辺図(水平断面)

基底核の分化について述べる前に、基底核原基を形成するために必要なホメオボックス遺伝子について触れておくと、重要なのはLGEおよびMGEの両者に発現する DLX1/DLX2 で、これらがつくる転写因子は DLX5およびDLX6 両ホメオボックス遺伝子の中間の位置にあるエンハンサーに結合し、両遺伝子の発現をサポートすることによって基底核の分化を促進しているようです(図271-2)。DLX1/DLX2 のダブルノックアウトマウスは基底核の形成に失敗し致死となります(6)。これらの遺伝子は基底核原基が分化する以前のおおもとの細胞クラスターが形成されるために必要だと思われます。

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図271-2 Dlx遺伝子群について

LGEおよびMGEを特徴づける各遺伝子についてリストアップしたのが図271-3です。特徴づけるとはいっても、例えばPax6が線条体原基に発現しているからと言って、Pax6は眼や膵臓の発生にもかかわっているわけで、この遺伝子のプロダクトがどのように線条体の発生にかかわっているかというのはわかりません。

Parvalbumin や Enkephalin は転写因子ではないので、直接的にニューロンの機能にかかわっている物質です。ただ例えば Parvalbumin を発現しているニューロンがどのような機能を持つかということについては非常に多くの研究がありますが(7)、では Parvalbumin が機能にどうかかわっているかのプロセスについてはまだまだ不明な点が多いと思います。このたんぱく質にはカルシウムと結合する性質があるので、フリーなカルシウムの濃度を低下させ、ニューロンを発火させやすくするという効果はあるようです。

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図271-3 基底核原基に関する重要因子の一覧表

ここまではマウスの基底核原基について述べてきましたが、では他の動物ではどうなのでしょう。Medinaらはさまざまな脊椎動物の淡蒼球ついて総説でまとめています(5)。この一部を図271-4に示します。

図271-4からわかるように、どの生物も硬骨魚類を除き少なくとも Nkx2.1系とIslet1系(爬虫類はPax6)に導かれて分化した2系統の細胞群が混在する組織であることがわかります。硬骨魚類の場合もLxh7誘導ではありますが、他のグループと同様 Enkephakin を発現する細胞群を持っています。このリストから考えて、淡蒼球は少なくとも2~3種類の異なる細胞群がそれぞれ別の仕事をしていると思われます。そしてそれはおそらく先カンブリア時代から引き継がれて来たメカニズムなのでしょう。

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図271-4 様々な脊椎動物脳基底核淡蒼球に発現する転写因子とマーカーからみた淡蒼球 (参照文献5に基づくリスト)

Islet1系の細胞は淡蒼球全細胞の1/3位を占めますが、これはが一体何をやっているかというと Medina らによると線条体に投射しているそうです(5)。このことは彼らの実験から明らかですが、まだ多くの教科書にはかいてありませんし、私も基底核1の図には勉強不足で書きませんでした(8)。実際には図271-5のようになっているようです。

もし線条体から終脳皮質へ投射する経路がないのなら、淡蒼球から線条体への投射経路があることは、線条体が独自に行動するかしないかを決定する役割を持つことを意味するかもしれないので、線条体の脳における地位は今考えられているより高い可能性があります。

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図271-5 線条体と淡蒼球の関係

Medinaらがまとめたさまざまな脊椎動物の脳基底核原基の縦断面によるマップを図271-6に示します。脳基底核原基の基本的なボディプランは主な脊椎動物すべてにおいて大きな変化はないことが示されています。

彼らは視床下部の一部とされている視索前野(赤の部分)が、発生学的には淡蒼球と近縁であることを示しています。淡蒼球と視索前野の境界を終脳と間脳の境界とするのは議論があるように思います。淡蒼球と視索前野との関係についてはまだまだ研究が必要なのではないかと思います。

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図271ー6 様々な脊椎動物における脳基底核原基

私が驚いたのは、脳科学辞典に淡蒼球という項目がないことでした。業界の事情はよくわかりませんが、何を書いても反論が多く出そうで書きにくいということでしょうか? 困ったものです。

参照文献

1)続・生物学茶話270:基底核 3: 終脳と基底核 哺乳類・爬虫類・鳥類
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/05/post-0ecc28.html

2)Stephenson-Jones M, Ericsson J, Robertson B, Grillner S., Evolution of the basal ganglia: dual-output pathways conserved throughout vertebrate phylogeny. J Comp Neurol vol.520: pp.2957-2973 (2012) DOI: 10.1002/cne.23087
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22351244/

3)Stephenson-Jones M, Samuelsson E, Ericsson J, Robertson B, Grillner S., Evolutionary conservation of the basal ganglia as a common vertebrate mechanism for action selection. Curr Biol vol.21: pp.1081-1091 (2011)
https://doi.org/10.1016/j.cub.2011.05.001
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982211005288

4)日本医療研究開発機構 プレスリリース
統合失調症の大脳皮質下領域の特徴を発見―淡蒼球の体積に左右差がある―
https://www.amed.go.jp/news/release_20160119.html

5)Loreta Medina Antonio Abellán Alba Vicario Ester Desfilis, Evolutionary and Developmental Contributions for Understanding the Organization of the Basal Ganglia., Brain Behav Evol vol.83: pp.112–125 (2014)
DOI: 10.1159/000357832
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24776992/

6)Qing-Ping Zhou et al., IdentiÆcation of a direct Dlx homeodomain target in the developing mouse forebrain and retina by optimization of chromatin immunoprecipitation., Nucleic Acids Research, Vol. 32, No. 3, pp.884-892 (2004) DOI: 10.1093/nar/gkh233
https://europepmc.org/article/med/14769946

7)橋本隆紀,金田礼三,坪本真 大脳皮質パルブアルブミン陽性ニューロンと統合失調症の認知機能障害 Japanese Journal of Biological Psychiatry Vol.28, No.1, pp.32-40 (2017)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbpjjpp/28/1/28_32/_pdf

8)続・生物学茶話268:基底核 1:イントロダクション
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/05/post-56976e.html

 

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2025年6月 2日 (月)

サボテンの花 2025

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このサボテンは私ともう30年くらい共に過ごしています。主幹を切断したのですが支幹が生き残り今に至ります。ただ支幹だけになってからは満開になることはなく、ポツンポツンと咲きます。

「サボテンの花」という昔のチューリップのヒット曲がありますが、50年たった今でもびっくりするくらいの人がカバーしてウェブにアップしているのをみると、これはもうクラシック音楽ですね。

私のチョイス

オリジナル:サボテンの花(チューリップ)
https://www.youtube.com/watch?v=VaxbB-DBPPo
https://www.youtube.com/watch?v=Qqzt7U6lO3g

残念ながら昔の映像はみつかりませんでした

財津和夫のセルフカバー
https://www.youtube.com/watch?v=NQqzxcZxdPI

中澤卓也(感情たっぷり)
https://www.youtube.com/watch?v=KqwMtu2X3ck

山根かずきバンド(素朴な味わい)
https://www.youtube.com/watch?v=E4V2JYMd7RE

GOOD BYE APRIL(この時代にも受け入れられている)
https://www.youtube.com/watch?v=bS40XDlPKqE

Yukina 女性が歌う(ああこういう歌だったのかと納得)
https://www.youtube.com/watch?v=U891zmbqDFk

新宮由理 クラシック音楽としての「サボテンの花」
https://www.youtube.com/watch?v=n4MnVFrnp4k

あい混声合唱団
https://www.youtube.com/watch?v=-7MwSZWMkQ8

Ruby(中国人によるサックス演奏)
https://www.youtube.com/watch?v=iM7FesmcnCE


ところで、歌詞のサボテンはその後どうなったのか気になります

 

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2025年5月31日 (土)

まきちゃんぐ ニューアルバム「逆光」リリース

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6月1日に8年ぶりのアルバム「逆光」リリースされます。
私はアマゾンで予約しましたが、さていつ届くでしょうか?
http://makichang.info/newalbum-gyakkou/

コロナ騒ぎですっかり予定が狂ってしまったのでしょう。8年かかりました。
それでも期間限定のFCは結構楽しかったし、「愛が消えないように」は
コロナあっての曲ということで、悪いことばかりじゃありませんでした。

本日は王子ミュージックラウンジで発売記念のライブもあるようです。
(私は諸般の事情で不参加 (T‐T))

http://oji-music-lounge.tokyo/

曲目:

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愛が消えないように(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=-PJlrmWwOiw

ライブのリハーサル
https://x.com/makichang_info/status/1926612225571070386

ハレルヤ(cover)
https://www.youtube.com/watch?v=BGcAnyruops


HP: http://makichang.info/

X: https://x.com/makichang_info

 

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2025年5月28日 (水)

続・生物学茶話270:基底核 3. 終脳と基底核 哺乳類・爬虫類・鳥類

両生類のある種が羊膜を生み出し完全に陸上で生活できるようになって、しばらくすると単弓類と双弓類というグループに分かれて進化することになりました。ペルム紀になると酸素濃度が大幅に減少し、単弓類は横隔膜、双弓類は気嚢でこれに対応するように進化しました(1)。なぜ酸素濃度が減少したかは参照文献1および7をご覧ください。

ペルム紀末の大絶滅時代を経て、両系統ともわずかな種が生き残り、三畳紀から再出発することになりました。その後単弓類は単孔類・有袋類・哺乳類(学術的には単孔類・有袋類も哺乳類に含まれる)という現存グループを生み出し、双弓類は爬虫類・鳥類という現存グループを生み出しました(2、図270-1)。

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図270-1 有羊膜類における終脳の構造と進化 日本語はすべて管理人がつけたものです。図の哺乳類というのは便宜的で、正しくは有袋類も単孔類も哺乳類に含まれます。

現存する単弓類の子孫と双弓類の子孫の2つのグループの終脳における神経細胞の分布は、それぞれ大きく異なります。単弓類を祖先とする生物群では神経細胞の細胞体は脳の辺縁に層状の構造を形成して集積し(灰白質)、内側に向かって軸索を伸ばすような構造をとっています。これに対して、双弓類を祖先とする生物群ではそのような特殊な構造はありません(3、図270-2)。

哺乳類では層ごとに類似した神経細胞が集積し、爬虫類・鳥類では類似した神経細胞は集塊を形成しています(3、図270-2)。なぜこのような差異が発生したのかはわかりませんが、終脳-視床-脳基底核のネットワークがエディアカラ時代から保存されていることを考えると(4、5)、終脳の基本的な機能とは別の派生的な分化だと思われます。しかしそれによってヒトという異常に知能が高い生物が生み出されたという事実があります。

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図270-2 有羊膜類終脳における興奮性神経細胞の分布(野村ら 2020)

単弓類子孫の終脳皮質に特異的な層状構造が形成されるようになったのがいつからかは興味深い課題です。現存のこの系統の生物の中では単孔類が最も原始的な形態と考えられますが、彼らの終脳皮質は層状構造をとっています。しかし東工大(現東京科学大学)のプレスリリースによりますと、単孔類が分岐したのは1億8760万年前のジュラ紀となっています(6)。もっと古い時代三畳紀末のハドロコディウムが終脳皮質の層状構造を保有していたかもしれません(2、図270-3)。

三畳紀からジュラ紀にかけては特に酸素濃度が低く(12~15%、7)、効率的な呼吸補助器官である気嚢を持つ恐竜が台頭し、持たない生物たちはサイズや身体能力が劣るため、彼らから隠れてひっそりと生きなければならなくなりました。おそらくそのために知能を発達させなければ生き残れないような状況だったと推測されます。このための進化が終脳皮質の層状構造だったのではないでしょうか。

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図270-3 哺乳類独特の終脳皮質はいつの時代にはじまったのか? (野村ら 2014 とウィキペディアより)

図270-4は哺乳類(ラット)と鳥類(ハト)・爬虫類(カメ)の終脳領域垂直断面図です。相対的に線条体と淡蒼球が非常に大きく見えます。これらのまわりを新皮質(ヒトにおける大脳皮質に相当する)が取り囲んでいるような構造です。一方ハトやカメではDVR(背側脳室隆起)というふくらみが新皮質に相当する構造で層状にはなっていません。彼らの終脳は線条体と淡蒼球の上にDVRが乗っているような構造になっています(8、図270-4)。鳥類には特にWULSTという隆起がありますが、これもマウスの新皮質に相当するような機能を持っています。ただしやはり層状構造ではありません。

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図270-4 終脳における線条体と淡蒼球(ラット、ハト、カメ)

カエル・ハイギョ・硬骨魚類のような歴史の古い動物においても、終脳に線条体と淡蒼球は大きな存在感を持って存在します(図270-4)。ただ両生類は食物連鎖が確立していた海洋からドロップアウトに成功し、当初は捕食を免れるための運動機能はあまり必要ではなく、陸上という新環境に耐えることが生存の条件だったと考えられるので、淡蒼球はむしろ退化したのではないかと思われます。小脳も退化しています。彼らはその後おそらく舌での捕食と跳躍能力などの運動機能を集中単純化して、現代まで生き延びてきたのではないかと思います。

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図270-5 終脳における線条体と淡蒼球(カエル、ハイギョ、硬骨魚類)

新皮質あるいはDVR、線条体、淡蒼球を構成する神経細胞は先カンブリア時代からそれぞれ機能が定められており、発生過程での細胞移動も一定の規則性をもって行われていると考えられます。マリンとルビンシュタインはマウス終脳の発生過程での細胞移動を観察し、まず増殖によって必要な細胞が作られた後、新皮質へ向かう細胞は放射状に、線条体や嗅葉にむかう細胞は表層に平行に(tangential)移動することを示しました(9、図270-6)。このような移動を正しく行うことが、ここまで述べてきたような脳の構造を正常に構築する上で重要です。

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図270-6 胎生15.5日目マウス終脳における細胞の移動

 

参照文献

1)ウィキペディア:単弓類
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%98%E5%BC%93%E9%A1%9E

2)Tadashi Nomura, Yasunori Murakami, Hitoshi Gotoh, Katsuhiko Ono, Reconstruction of ancestral brains: Exploring the evolutionary process of encephalization in amniotes.,
Neuroscience Research vol.86, pp.25-36 (2014) DOI: 10.1016/j.neures.2014.03.004
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24671134/

3)野村真 羊膜類の脳進化機構の解明??遺伝子発現機構の可塑性と細胞型の相同性 J.Biochem., vol.92, pp.200-209 (2020)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2020.920200
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2020.920200/data/index.html

4)Marcus Stephenson-Jones, Ebba Samuelsson, Jesper Ericsson, Brita Robertson, and Sten Grillner, Evolutionary Conservation of the Basal Ganglia as a Common Vertebrate Mechanism for Action Selection., Current Biology vol.21, pp.1081?1091, (2011)
DOI 10.1016/j.cub.2011.05.001
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21700460/

5)続・生物学茶話269:基底核 2:進化
https://morph.way-nifty.com/grey/2025/05/post-246d6d.html

6)東工大ニュース(東工大は現在は東京科学大学になっています)
カモノハシとハリモグラの全ゲノム解読に成功!
https://www.titech.ac.jp/news/2021/048809

7)長谷川政美 進化の目で見る生き物たち 第14話 酸素濃度の極端な増減
https://kagakubar.com/creature/14.html

8)Anton Reiner, Loreta Medina, C. Leo Veenman, Structural and functional evolution of the basal ganglia in vertebrates.,Brain Research Reviews vol.28 pp.235–285 (1998)
DOI: 10.1016/s0165-0173(98)00016-2
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9858740/

9)Oscar Marín and John L. R. Rubenstein、A long remarkable journey : Tangential migration in the telencephalon., Nat Rev Neurosci 2, 780–790 (2001). https://doi.org/10.1038/35097509
https://www.nature.com/articles/35097509

 

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2025年5月25日 (日)

マンション管理の空洞化

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マンション管理が空洞化しています。
私たちの団地の管理人も1年くらいみつかりません。
管理会社との契約はあるので、アルバイト(派遣)の管理人がくるのですが
必要書類の発行すらできないような「ど素人」でまともな仕事ができません。

総会では文句の嵐で、管理会社の担当者がボコボコになって見るからに不快そうな顔になりますが、それだけで何か解決策があるかというと、それはありません。
ともかく人がいないのでどうしようもありません。
こんなボロボロの日本になるまで、政権交代すらままならないのですからあきれます。

だんだん世の中がディストピアしてくる足音が聞こえます。
市役所がアルバイトばかりになったら、もうそれはディストピアですよ。

マンションの管理人不足が深刻化、いないとどうなるの?
https://ielove-cloud.jp/blog/entry-03429/ 

ある日突然マンション管理員が消える!? 明日は我が身かもしれない問題とは?
https://uragawa-note.jpn.panasonic.com/n/n9d3f50861239 

こんなに人が少なくなったのは、女性も働くのが当たり前という風潮が蔓延することによって、専業主婦で結構という人まで世の中に引きずり出してしまったため子育てができなくなったという側面が大きい、と私は思います。子供は社会で育てるなどという政党もありますが、それは危険な社会実験です。哺乳類は母親が子供を育てるように遺伝子や脳が進化してきた動物ですから。

憲法に違反しても(国家の存立が危うくなるような状況では憲法に違反するような政治が行われても、それはやむを得ないと思います)、子だくさん家庭の消費税・所得税を免除するような政策が緊急に必要だと私は思います。

 

 

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2025年5月23日 (金)

ハーバード大学の弾圧に反対します

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管理人:私はトランプ政権によるハーバード大学の弾圧に反対します。

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ハーバード大学の衰亡は、米国の科学のみならず世界の科学の衰亡を招き、
世界はカルトと陰謀とSNS(=流言飛語)のるつぼとなってディストピア化するでしょう。

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アレクサンドリア・オカシオ=コルテスよ 今こそ立ち上がれ

JIJI.COM
ハーバード大への留学認めず トランプ米政権、圧力強化―日本人学生にも影響
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025052300181&g=int 

Courrier
サンダースとオカシオ・コルテスの反トランプ政治集会が全米各地で盛況
https://courrier.jp/news/archives/398175/ 

GQ japan
アレクサンドリア・オカシオ=コルテス 未来への戦い
https://www.gqjapan.jp/culture/article/20221101-alexandria-ocasio-cortez-october-cover-profile

 

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2025年5月22日 (木)

相貌失認(ショートショート)

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「人の顔が識別できなくなったということですが、専門的には相貌失認といいます。識別できなくなったのは最近ですか?」

私は「最近です」と答えた。

「では最近後頭部をどこかにぶつけたとか、たたかれたとかはありますか?」

「ないです」

「念のためMRI検査をしたいのですが いいですか」

「お願いします」

ということでMRI検査を受けることになった。

MRI検査は痛くもかゆくもないが、工事現場のような騒音の中で頭を固定されて しばらく同じ姿勢でがまんしなければならない。

結果はすぐにわかって、医師はMRIの写真を見せながら「ここに脳内の出血があって、脳が圧迫されて機能不全になったんですね」と診断結果を話した。「それで治療なんですが、出た血液をドレインして外に出します。1週間位の入院になりますがいいですか」

私は否応なくそのまま入院することになった。

私は妻に先立たれ子供も居ないので、もう勤めは辞めたし人の顔が識別できなくても特に不都合は無い・・・と思うのは早計だ。私の家はいわゆる団地なんだが、週に一度市と契約している見回り人が来て私の状態を確認することになっている。いわゆる孤独死のまま放置されるのを防ぐためだ。もちろん本人のためではなく、市や管理者の便宜のためだ。実際身寄りのない老人が孤独死したまま放置されると、市や管理人は大量の余計な仕事を抱え込むことになる。また週に2回家事手伝いの人を頼んでいるので、やはり人の顔を記憶できない識別できないということは、頼んでいる人の代わりに泥棒が来てもわからないということなので致命的だ。

私は早速頭蓋骨に穴をあけられ 血液のドレインをやることになった。しばらく病院生活を送らなければならない。毎日CT検査もやった。その間友人がひとりだけ見舞いに来てくれた。昔勤めていた会社の同僚だ。彼の顔を覚えていて本当に良かったと思う。

入院している間、担当の看護師とはいろいろな話をした。ハリウッド俳優のブラッド・ピットも相貌失認の病気を持っていることなども教えてくれた。彼女はまだ仕事をはじめて2年目だったが、なんでも手際よくやっていた。それに私と同じFCバルセロナ(スペインのプロサッカーチーム)のファンだったのでつい盛り上がってしまって、同室の患者の顰蹙を買ったこともあった。考えてみるとFCバルセロナのファンと親しくお話しするのは生まれてはじめてだったし、今後の私の人生でもありそうになかった。

ある意味自宅にいるより楽しい入院生活だったが それも終わる時が来た。症状は数日のうちに改善し、少なくとも医師や看護師の顔を忘れることはない状態となった。識別のテストをやって合格し、入院1週間で退院することになった。迎えに来る人はいないが、朝のさわやかな空気の中で、担当看護師が私を送り出してくれた。「長い間有り難うございました」と彼女に丁重にお礼を言って、私は自動ドアから外に出た。

ドアのそばの花壇には夏のバラが咲いていた。ガラス越しにまだこちらを見ていた看護師に手を振って、私はバス停に向かって歩き出した。両側に高く鬱蒼と成長した木々が並ぶ真っ直ぐな並木道だ。私は以前にこの近傍で仕事をしていたことがあったので土地勘があって、この並木道は良く知っている。昔よりも樹木は明らかに生長していた。セミがうるさく鳴いていた。

退院の開放感に浸りながら私はゆっくりと病院名のバス停まで歩いた。ちょうどバスがやってきたので何の疑問もなく乗り込んだ。ただ昔と違って小型のバスだった。人口が減ってこんなところにも影響が出ているのかと少し驚いた。駅は確か5つめの停留所のすぐ近くだ。ちょっと考え事をしていて、そろそろだなと窓からあたりの景色をみると、おやっ、知らない景色だ。私はあわてて電光掲示板を見た。全く記憶にない名前の停留所が並んでいた。

私は慌てて次で降りて、病院までもどらなくてはと道路を横断して道路の反対側にあるはずの停留所を探したが、どこにも停留所は見当たらなかった。どうも循環型のコミュニティーバスだったらしい。病院前の停留所に別経路のコミュニティーバスがくるようになったらしい。迂闊だった。

見知らぬ停留所の時刻表を見ると、次のバスは3時間後だ。夕方には見回り人が自宅に来る手はずになっていて退院の報告をしなければならないので、それでは間に合わない。

仕方がないのでスマホを取り出して、タクシーを呼ぼうとした。ところがなんとしたことかスマホをうまく操作できない。指の動きが不安定でなかなか思い通りにいかなくなっていた。病院では相貌失認のテストしかしていなかったので、まさかスマホの操作がうまくできなくなるなんて思ってもみなかった。全身から血が引いていくような感覚の中で、私は道路に座りこんだ。

私の病んだ脳はそれでも私を叱咤激励する機能は保持していた。私は立ち上がった。そう、頑張って道でタクシーを捕まえよう。タクシーを捕まえて駅に行かなければならない。しかし見知らぬ街でどこにいればタクシーを捕まえられるかわからない。最近はランダムに道でタクシーをつかまえるなんて奇跡に近い。10分くらい待ったが空タクシーは1台も通らなかった。少し周辺をうろうろして大通りがどこにあるか探したが、交通量の多い道はみつからなかった。

タクシー会社の電話番号を誰かに訊くしかないかもしれない。うろついているうちにようやくカフェ併設の洋菓子屋をみつけて一休みすることにした。窓際に席を取ると年配の婦人がすぐにやってきて「いらっしゃいませ。うちはモーニングはやってないけど、今の時間だとケーキをつけるとコーヒー半額になります」というので、私はチーズケーキとコーヒーを注文してやっと落ち着いた気分になった。

勘定をすませてから、ようやく私の本題を切り出した。「ところでこのあたりのタクシー会社の電話番号をご存じありませんか」と尋ねると、婦人は「タクシーはあまり使わないからわからないけど、調べてあげましょうか」と言ったので、私は渡りに舟でスマホを取り出し、「手が不自由でうまくつかえないので、お願いします」と彼女にスマホを手渡した。婦人は首尾良くタクシー会社と連絡ができたようだ。「5~6分で来るらしいから、席で待っててください」と元の席を指さした。有難い・・・助かった。

タクシーに乗り込んでほっとしたが、運転手に「どちらまで」と訊かれて、私はまた奈落の底に突き落とされた。駅の名前を思い出せないのだ。仕方なく「ここから一番近い電車の駅までお願いします」と言った。運転手は無言で5分くらい走って見知らぬ駅の前で私を降ろした。

幸いにして自宅の最寄りの駅の名前は覚えていたので、駅員にその駅までどうやって行ったらいいかを訊いた。駅員は事務室にいた別の駅員を呼んで、私はその別の駅員に事務室で説明してもらった。結局紙に書いてもらってそれを渡してもらうことになった。有難い。

看護師、ケーキ屋、駅員、生身の人間は少なくとも仕事にかかわることには親切なのだ。電車のなかで私はそんな人々の顔を思い出し、社会の一員として私を遇してくれた好意の人々に心から感謝して、ようやく帰途についた。

 

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2025年5月17日 (土)

幸福を感じる日

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暴風雨の日(もちろんコンマスは矢部) こんな日にはるばる溜池山王まででかける酔狂。しかし会場はビデオカメラとマイクが林立してオペレーターも待機していました。

ペンデレツキの音楽は酔狂。

しかしツィブレヴァが真っ赤なスカートで登場し、曲(ショスタコーヴィチ ピアノ協奏曲第2番)はチャーミングだけれどピアノはきれきれで瑞々しく、また第2楽章は深い情緒の音楽を聴かせてくれました。シューマンの子供の情景に突然世紀の名曲トロイメライが出現するような感じ。まあそこまではいきませんが。ドイツ音楽にはないリズムも感じました。

ショスタコーヴィチ交響曲第5番は第3楽章までは大変な名演だと思いましたが、ロシアの歴史を学びに来ているわけでもないので、ウルバンスキの意図が納得できなかった部分も第4楽章にはあります。

繰り返し聴くのはこちらかな ⤵

https://www.youtube.com/watch?v=34tCtfa9JIk 
https://www.youtube.com/watch?v=9UvhAL81yLg

Img_1152 

指揮者アンコールで歓呼にこたえるウルバンスキ

ウルバンスキの指揮には独特なエレガンスがあります 指をよく動かします。
ときどき左足だけ内股になります。

都響も彼の意図を実に忠実に表現していたように思います さすがです。

 

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2025年5月16日 (金)

続・生物学茶話269:基底核 2.進化

脳基底核のなかで黒質はそこに障害(黒質緻密部ニューロンの変性)がおきることによって、パーキンソン病などがひきおこされるとが昔から知られており、医師・医学者には深い関心を持たれています(1、2)。それでは黒質は脳のどの位置にあるのでしょうか? その存在位置を見て驚きます。図269-1(ウィキペディアの図をもとに作成)の断面図は左側の図のように、橋のすぐ上の中脳の断面を示したものです。大脳からはとても遠い位置にあります。にもかかわらず多くの教科書・文献には大脳基底核の主要構成要素と書かれています。神経連絡をみていくとそうなるということでしょう。

図269-1の白点線の上側が緻密部、下側が網様部になります。緻密部は主としてドーパミン作動性ニューロンからなり、網様部は主としてGABA作動性ニューロンからなります。268では単純化のため記してありませんが、緻密部のドーパミン作動性ニューロンは線条体のほか、黒質網様部、淡蒼球、視床下核などにも投射しています。またGABA作動性の入力を線条体や黒質網様部から受けています。網様部のGABA作動性ニューロンは脳基底核の主要な投射ニューロンであり、視床・脚橋被蓋核などに投射することによって運動が開始されると考えられています(1、3)。

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図269-1 ヒト脳における黒質の位置

脳基底核は魚類はもちろん、円口類であるヤツメウナギにも存在することが証明されています(4-6)。ヤツメウナギと魚類が分岐したのは5億6千万年前とされているので、この研究結果からみて脳基底核はそれ以前から存在していたと思われます(図269-2)。つまり脳基底核の進化についてはあまりにも古い時代の話なので研究は難しいですが、ただヌタウナギの脳基底核を調べることはできるので、もう少し知識は得られるかもしれません(7)。

諸般の状況を考慮して行動を開始するかどうか決める必要性は、弱肉強食の世界となったカンブリア紀には敵との遭遇や闘争を避けるために大いに必要だったとおもいますが。5億6千万年前といえばそれ以前の平和なエディアカラ紀です。円口類は脳基底核を持っていないナメクジウオなどとくらべると動きが活発でエレガントなので、もちろん姿勢制御などのために脳基底核が役立つのかもしれませんが、当時でも後に述べるように「諸般の状況」を考慮してから行動する個体に生存のアドバンテージがあったと思われます。「諸般の状況」についての情報が集まる場所が今も昔も脳基底核なのでしょう。黒質に相当する部分もおそらくエディアカラ紀から存在して、その後の時代になって脳が前方に進化発達するにつれて脳幹の近傍(中脳の最後部)に取り残されたのだと思います。

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図269-2 ヤツメウナギの進化上の位置

黒質のニューロンが変性するとパーキンソン病が発生することは定性的には昔からわかっていますが、これを定量化することはなかなか困難です。玉利らは3次元神経メラニン画からコンピュータプログラムを用いてその定量化を試み、2017年に発表しています(8、9)。もちろん彼らの独自基準に基づくものですが、結果は明快です(図269-3)。

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図269-3 パーキンソン病患者と健常人の黒質体積比較

哺乳類の行動に黒質が深くかかわっていることは明らかですが、では5億6千万年前に分岐したといわれるヤツメウナギの行動には脳基底核とりわけ黒質はどのようにかかわっているのでしょうか? カロリンスカ研究所のグループはこのことに関心を持って長らく研究を続け、現在では「ヤツメウナギと哺乳類の終脳・視床・基底核のネットワークは類似しており、全体的な構造、連絡網、伝達物質、受容体、ニューロペプチド、イオンチャネルの開閉などは共通である」という結論に達しました(10)。

脳基底核のシステム、あるいは終脳皮質-視床-脳基底核のシステムが5億6千万年より前から存在したということは、ひとつにはおそらく生物が餌に接近し食べようとしたときに、経験や状況を配慮していったんやめるという必要があったということだと思います。食物連鎖がない先カンブリア時代であっても、自分より強力なライバルが近傍にいる場合はいったんやめた方がアドバンテージがあったのでしょう。これは配偶者を争奪する場合にも言えます。ライバルとは関係なく、餌がそこに接近すると危険な場所にある場合、たとえば地形的に危険だったり、周りに生えている植物によって怪我をする恐れがあったりという場合などにも「やめる」ことにはメリットがあります。ですから先カンブリア時代から脳基底核のシステムがあることは、そんなに不思議なことではないと思います。ヤツメウナギにおける基底核の位置は図269-4に示しました(10)。

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図269-4 ヤツメウナギ脳基底核の位置 Figure 4-6 were made based on the figures of Suryanarayana et al (ref.10)

ヤツメウナギの終脳皮質-視床-脳基底核の信号伝達経路を示したのが図269-5です。哺乳類と同様直接路・間接路・ハイパー直接路が存在し、これらの信号伝達がグルタミン酸とGABAによって行われていることも含めて、全く哺乳類と同じです。

黒質の場合はドーパミンを用いた信号伝達を行っており、これを受け取る線条体にはD1系およびD2系の受容体があります。これらのシステムについても私たちとヤツメウナギは全く同じで、実に5億6千万年以上前に完成したものをほぼそのままの形で現在も使っていることを意味します。したがってあらゆる脊椎動物はパーキンソン病を患う可能性があります。

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図269-5 ヤツメウナギの終脳皮質・基底核・視床のネットワークシステム

黒質緻密部に着目して詳細にその作用を示したのが図269-6です。黒質緻密部からのドーパミンによる信号経路は、報酬が得られる場合には活発化し、得られなくなると不活化します。したがってそのアクティビティーは生物の活動全体に大きな影響を与えます。黒質緻密部はヤツメウナギにおいても、図269-6に示したように、終脳皮質・線条体・視床下核・感覚器官・外側手綱核・脚橋被蓋核・中脳蓋などから多くの情報を集めるとともに、線条体・視床下核・黒質網様部・間脳運動制御領域・中脳運動制御領域・中脳蓋など多くの運動制御領域に投射して、生物の運動プログラム全体に影響を及ぼしています(図269-6)。

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図269-6 ヤツメウナギにおける黒質緻密部の機能

 

参照文献

1)ウィキペディア:黒質
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E8%B3%AA

2)高草木薫 大脳基底核の機能;パーキンソン病との関連において
日本生理学会誌 Vol. 65,No. 4・5 pp.113-129 2003
http://physiology.jp/wp-content/uploads/2014/01/065040113.pdf

3)脳科学辞典:脚橋被蓋核
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E8%84%9A%E6%A9%8B%E8%A2%AB%E8%93%8B%E6%A0%B8

4)続・生物学茶話241:基底核の起源 ヤツメウナギの場合
https://morph.way-nifty.com/grey/2024/07/post-35ba6c.html

5)Yuki Tanimoto, Hisaya Kakinuma, Ryo Aoki, Toshiyuki Shiraki, Shin-ichi Higashijima, Hitoshi Okamoto, "Transgenic tools targeting the basal ganglia reveal both evolutionary conservation and specialization of neural circuits in zebrafish", Cell Reports 43, 113916 (2024)
https://doi.org/10.1016/j.celrep.2024.113916
https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S2211-1247%2824%2900244-4

6)Marcus Stephenson-Jones, Ebba Samuelsson, Jesper Ericsson, Brita Robertson, and Sten Grillner, Evolutionary Conservation of the Basal Ganglia as a Common Vertebrate Mechanism for Action Selection., Current Biology vol.21, pp.1081?1091, (2011)
DOI 10.1016/j.cub.2011.05.001
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21700460/

7)菅原文昭・倉谷滋 円口類から解き明かされる脳の領域化の進化的な起源
ライフサイエンス新着論文レビュー
DOI: 10.7875/first.author.2016.015
https://first.lifesciencedb.jp/archives/12168

8)玉利誠 国際医療福祉大学博士論文 神経メラニン画像を用いたパーキンソン病患者の黒質体積測定プログラムの開発と解析
file:///C:/Users/Owner/Downloads/32206AS262.pdf

9)玉利誠, 宇都宮英綱, 永良裕也 理学療法学 SupplementVol.44 Suppl. No.2 (2017)
MRI画像を用いたパーキンソン病患者の黒質緻密部の定量解析とHoehn & Yahr重症度との関係 
第52回日本理学療法学術大会 抄録集
https://doi.org/10.14900/cjpt.2016.1027
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2016/0/2016_1027/_article/-char/ja/

10)Shreyas M. Suryanarayana, Juan Pérez-Fernández, Brita Robertson, Sten Grillner, The Lamprey Forebrain – Evolutionary Implications., Brain Behav Evol., vol.96: pp.318–333 (2021)
DOI: 10.1159/000517492
https://karger.com/bbe/article/96/4-6/318/821601/The-Lamprey-Forebrain-Evolutionary-Implications

 

 

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2025年5月13日 (火)

2024-2025 シーズンのバルサ

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印西郵便局前のメタセコイヤ並木道

今年のFCバルセロナ(バルサ)はまれにみる強さでエル・クラシコを全勝し、スペイン国王杯のタイトルを獲得し、欧州チャンピオンズリーグはベスト4、そしてリーガ・エスパニョーラも優勝目前です。これはもちろんフリック監督、選手たち、フロントの努力によるものですが、私が感じたことはやはり素晴らしい選手達がいたことです。

GK:大黒柱のテア・シュテーゲンが長期故障欠場という危機の中で、いったん引退を決意していたシュチェスニーが代役を引き受けてくれたことは幸運でした。有難いことです。ラ・マシアから急遽引き上げられたイニャキ・ペーニャもきちんと重責を果たしていたと思います。

DF:DFは一番大変でした。本来はアラウホがリーダーとなって統率しなければいけなかったのですが、故障欠場が多くてそれができませんでした。クリステンセンもほとんど故障のため出場できませんでした。イニゴ・マルティネスはずっとバスクのチームで活躍してきたバスク人で、ビルバオのリーダーだったベテラン選手です。そんな選手をバルサが採用したときには物議をかもしましたが、ちょうど契約満了だったのでタイミングよく獲得できたことが幸運でした。彼はセンターバックとして出場し続けバルサを救いました。2007年生まれのクバルシも破格の頑張りで、バルサのCBを、大きな故障もなくシーズン通して勤めきりました。サイドバックのバルデとクンデも同じく大きな故障もなく無事に勤め切りました。ふたりとも突破力と守備力を兼ね備えた素晴らしい選手だと思います。ベンチにはエリック・ガルシアとラ・マシア引き上げしかいないというなかで、猛烈なハードスケジュールをこなしたディフェンダーの功績はすごいものがあります。

MF:バルサの中核です。今シーズンはガビやデ・ヨングが故障であまり出場できなかった中で、ダニ・オルモを獲得したのが大きかったです。非常に攻撃的なMFで、その突破力は異常です。あとはもっと長い時間ピッチで頑張れる体力ですね。ペドリは往年のチャビをバージョンアップしたようなゲームコントローラーで、多くの評論家が褒めたたえます。カサドもガビのいない穴をきっちり埋める活躍でした。フェルミンとパブロ・トーレは来シーズンの成長に期待します。

FW:レバンドフスキーは年齢的に11月位までしか持つまいと思っていたのですが、なんとピチーチを争うような大活躍で春まで出場できたのはびっくり。やはりバルサ優勝の最大の貢献は彼でしょう。ヤマルは2007年生まれ次の時代のフットボル界をしょって立つ大物テクニシャンで、まだ高校生の年で本当に華のある選手です。一瞬のタイミングに放つ左足のミドルシュートはメッシを凌駕するものがあります。彼が観衆を魅了するのはその意外感です。とても心配な問題は、彼に支払うサラリーとリーガが定めたチーム上限との折り合いがつくかどうかです。フェラン・トーレスは昨シーズンまでは絶好のチャンスにGK正面にしかシュートを打たない??FWだったのですが、なんと今年は信じられない大変身で得点が取れるFWになりました。本人は精神的なものだと言っているようです。ラフィーニャはもともとすごい実力のある選手で、チャビ監督との相性がわるかった(右サイドで起用してもダメな選手)だけで、今シーズンの活躍は当然です。ファティはようやく故障が癒えましたが、今シーズンは活躍できませんでした。彼の独特のリズムのシュートに期待しているので、来シーズンもチームに残ってほしいと思います。

最後にフリック監督のドイツ人にもかかわらず、バルサ伝統の高い最終ラインのオフサイドトラップ、中盤の回収力、隙間の突破などを重視するなかで、特に縦パスからの切込みを徹底した戦略は素晴らしいと思いました。

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1.

声を あげよう

われら ブラウグラナ

地の涯からも 集いし友よ

掲げる旗のもと 拳(こぶし)を合わせよう

ブラウグラナは 嵐を呼ぶ

叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ


2.

嬉しい日 悲しい日

どんなときも

心ひとつに 合わせし友よ

掲げる旗のもと 勝利を信じよう

ブラウグラナは 嵐を呼ぶ

叫べ われらの名

バルサ バルサ バルサ

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Visca el Barca 🎀

Visca Catalunya 🎀

============

 

 

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2025年5月10日 (土)

フィルそして雨上がりの住吉

イソヒヨドリのベティが4月10日にオス(フィルと命名)をうちに連れてきて、翌日からしばらく姿を見せませんでしたが。5月6日にしばらくぶりでやってきました。ということは多分近所で抱卵して雛がかえったと思われます。そして5月10日にはフィルをみかけました。団地の自転車置き場で写真を撮らせてくれました。ベティとともに子育て中なのでしょうか。月末には子供を連れて遊びに来てくれるのでしょうか。それとも巣立った子供たちはすぐに遠くに行ってしまうのでしょうか。

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住吉に出かけました。地下鉄の出口にある美容室の看板が いいね! 評判の良い店らしい。

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住吉の猿江恩賜公園入口には薔薇が咲き誇っていました。私が好きなのはバラ色の薔薇です。品種は確認できませんでしたが、多分GDルイーズでしょうか。雨上がりで水滴が光っていました。

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それにしても多久和怜子氏のフルートはマニアックです。「管弦楽のためのラプソディ」では尺八風の音を出していました。ソアーレスさんの指揮はまるで糊がビシっと効いた真っ白なYシャツみたいで、ソリストの壺阪さんもラプソディー・イン・ブルーでそんな雰囲気の音を出していました。満場の拍手にこたえてのソリストアンコールは、デサフィナード(アントニオ・カルロス・ジョビン)。「新世界より」も清新で折り目正しく、かつ細部はやわらかい音楽をやっていました。シティフィルは大健闘、客席の興奮もすごかったです。

ビート・タケシが「これからの日本は何で飯を食っていくのか」と嘆いていましたが、音楽の実力は十分なので、あとは政府が世界に売り出すためにどんな手助けができるかにかかっています。

 

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2025年5月 9日 (金)

続・生物学茶話268:基底核 1.イントロダクション

ヒトの大脳に相当する脳のパートは魚類では主として臭いの判別に用いられていましたが、進化するにつれて大脳は多くの仕事を受け持つようになりました。なぜそうなったかはよくわかりませんが、脊椎動物は進化によって新しい仕事ができると、それを脳の前の方(ヒトの場合は上の方)の部分に細胞をつくってやらせるというのが標準となっています。魚類はヒトより高速で泳いだり、方向転換したり、転回したりできますが、餌を鰓でつかんで口に運んだり、寄生虫を鰓で払い落したりすることはできません。ヒトでは言葉を覚えたり、キーボードをたたいたり、編み物をしたりという複雑な作業を進化した脳にやらせています。

そういうわけでヒトでは大脳は巨大になり、その制御システムも複雑になりました。それを最も簡略に模式化した図で示すと図268-1のようになります。しかし言葉の定義にはいろいろ問題があります。大脳辺縁系というのは言葉のイメージとしては大脳の外側にあるような感じですが、なぜか内側にあります。英語では limbic system ですが、名詞の limbo は物事が決まらないこと、忘れられていた状況、どっちつかずの場所などを言いますが、天国と地獄の間の場所という意味もあり、誰かがこれを「辺獄」と訳したことに関係があるようです。本当は間脳と大脳の間のどっちつかずの組織という意味でしょう。

それを踏まえると、大脳基底核というのはあまりにも不適切な言葉になります。英語では basal gannglia であり、どこにも大脳という言葉はありません。中間(リンボ)より間脳寄りなのですから、大脳基底核というのは無理でしょう。脳基底核か単に基底核とするほうが妥当だと思います。さらに言えば「核」という言葉にも問題があります。普通、核=神経核は組織未満のニューロンの集合体を指しますが、たとえば線条体などは臓器と言ってもいいくらいのまとまりがあって、これを核と称するのは失礼でしょう。

視床という言葉も変です。まるで視覚だけに関係しているような印象を与えます。そもそも生物学の立場から言えば、大脳が大きいのは霊長類だけで、脊椎動物全体から見ればごくごくわずかな生物を基準にして言葉を決めるのはおかしいわけで、一般的な意味では終脳ということを生物学者達は推奨しています。ただ確かにヒトでは大脳は大きいので、ここでは大脳という言葉を使います。

どうしてこんなに脳科学の基本用語が不適切用語のオンパレードになっているのか不可解です。脳科学というのは医学・医療と深くかかわっているので用語を使う人の裾野が広大なために、一度決めるとなかなか変えられないという事情があるのかもしれません。前置きが長くなりました。御託はこの辺にして、図268-1は巨大化した大脳皮質を制御するための4層構造を示しています。実際の立体配置もこれに近い構造になっています。視床は間脳の一部ですが、特に大脳と深くかかわっています。この構造はヒエラルキーを意味しません。むしろネットワークです。

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図268-1 脳の最も簡略な模式図

図268-2も模式図ですが、図268-1よりずっと実際の配置に近く描かれています。今回の話題は基底核(脳基底核)ですので、その位置がわかるように描いてあります。基底核は見た目脳の中心周辺に位置しています。ただしこれは脳を左側から見た図で同じ構造が右側にもあります。全体の立体構造を把握するには図268-3のような水平断面図も合わせて把握することが必要です。

基底核は脊椎動物が地球上に出現した頃に近い形態のままのヤツメウナギにも存在します(1、2)。おそらく脊椎動物においては、進化の早い時期から大脳(終脳)+基底核+視床はセットで機能していたと思われます。ナメクジウオにはこのようなセットはありません。扁桃体は構造的に尾状核と連結していますが、現在の脳科学では基底核ではなく大脳辺縁系に含まれることになっています。

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図268-2 脳基底核の位置

図268-3はヒト脳を水平に切ってみた1断面ですが、これをみると脳の中心は視床で、そのまわりを基底核と脳室が取り囲む構造が見えます。模式図でなくMRIで実際に水平断面を見た構造は、例えば参照文献3に便利な画像が提供されています(3)。

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図268-3 脳の水平断面

大脳皮質と基底核、そして両者と深い関係にある視床がどのような神経回路でつながっているかは古くから研究されていて、大まかには解明されています。それをまとめたのが図268-4です。一つの神経細胞ができることは2つしかありません。それは連絡先の細胞を興奮させるか興奮を抑制するかです。そういう意味では神経系はデジタル的なシステムです。

基底核からの出力は黒質網様部と淡蒼球内節から行われますが、両者ともGABAによる抑制性の情報出力で、これは常時行われています。このことは私たちが手足を動かしていないなどのデフォルト状態のときには常に抑制性のシグナルが出ていて、その抑制性のシグナルが抑制されることによって行動が開始されるという私たちの体の基本的なメカニズムと深い関係があります(4)。

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図268-4 脳基底核・大脳皮質・視床のネットワーク

大脳皮質・基底核・視床にかかわる神経伝達については、直接路・関節路・ハイパー直接路という伝統的な分類が行われています。ウィキペディアの記述によれば(5)、下記のようになります。図268-4で赤のグルタミン酸が伝達物質となる経路は興奮、青のGABAが伝達物質となる経路は抑制行います。ピンクのドーパミンが伝達物質となる場合は受容体によって興奮・抑制の両者の場合があります。

1.直接路:
大脳皮質→線条体→淡蒼球内節・黒質網様部→運動性視床核→大脳皮質運動野

2.関接路:
大脳皮質→線条体→淡蒼球外節→視床下核→淡蒼球内節・黒質網様部→運動性視床核→大脳皮質運動野

3.ハイパー直接路:
大脳皮質→視床下核→淡蒼球内節・黒質網様部→運動性視床核→大脳皮質運動野

基底核から直接脳幹経由の運動指令が出されるケースは非常にマイナーですが、視床からは直接脳幹に投射する経路もあります(4)。多くの場合大脳皮質から脳幹に運動指令が出されます。ただ正しい運動指令を出すためには大脳皮質-基底核-視床のネットワークが必須です。

基底核は運動に関するいわば奥の院なので、ここに不具合が起こるとさまざまな病気が発生します。たとえば黒質緻密部のニューロンに不具合がおきると、線条体への興奮刺激が低下し、線条体からのGABAによる抑制シグナルが低下するため、黒質網様部や淡蒼球内節による視床への抑制シグナルをおさえられなくなり、常に運動を行わないような指示が出ている状態になります(図268-4)。このためパーキンソン病のような運動障害が発生してしまいます(6、図268-5)。逆に黒質網様部や淡蒼球内節のニューロンに不具合がおきると、視床への抑制が効かなくなり、不随意で持続的な筋収縮がおきてジストニアを発病します(7、図268-5)。またハンチントン病は尾状核のニューロンに不具合が起きた時に罹患する病気として知られています(8)。

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図268-5 脳基底核の不調によって発生する病気

ここでは運動に注目して述べてきましたが、基底核は認知機能、感情、動機づけ、学習など様々な機能に関わっているため(5)、その不具合は様々な症状を引き起こします。まだ十分に解明されていない部分も多いと思われます。

参照文献

1)Sten Grillner and Brita Robertson, The Basal Ganglia Over 500 Million Years., Current Biology 26, R1088–R1100, (2016) doi: 10.1016/j.cub.2016.06.041.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27780050/

2)続・生物学茶話241:基底核の起源 ヤツメウナギの場合
https://morph.way-nifty.com/grey/2024/07/post-35ba6c.html

3)病気が見える 7:脳・神経
https://www.byomie.com/gallery/vol7/mri_axial/index.html

4)国立生理学研究所 生体システム部門HP
https://www.nips.ac.jp/sysnp/ganglia.html

5)ウィキペディア:大脳基底核
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E8%84%B3%E5%9F%BA%E5%BA%95%E6%A0%B8

6)ウィキペディア:パーキンソン病
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3%E7%97%85

7)ウィキペディア:ジストニア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%A2

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2025年5月 5日 (月)

World music collection 26: Sohma Hiroko

Cd

CDs of Sohma Hiroko

Sohma Hiroko is a female singer of Japan born 1970 at Nagoya. She has published 12 albums. Among them, "Eve" and "Adam" are self-cover specials arranged acoustically and I recommend for you. Though they were published 2007 and 2006, uploaded to YouTube just recently.

She was deeply affected by the music of Mary Black and she visited Ireland in her young days and met her. Based on it, she constructed her original music.

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夕なぎ Yu-nagi means evening calm (in Adam)
https://www.youtube.com/watch?v=wNj65ADmiuQ 

An old photograph, put between the sheets of the address note, slipped off to the sand of the beech, that reminds me of my old boy friend and young days. Soon it gave me a shock while everything around me is not changed and calm. I pick up the photograph and sand off. I wait for a bus at the seaside bus stop in the evening calm, while I do not know when it comes.

The song starts by vocal and guitar, but soon an oboe joins impressively. I love this arrangement very much.

この曲を聴くと、学生の頃三浦半島の油壷に行くために引橋のバス停でぼーっと何時間もバスを待っていたことを思い出します。マリンパークが消滅して、油壷は寂しい場所になっているのでしょうね。

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リフレイン Refrain (in Adam)
https://www.youtube.com/watch?v=TGBLz1-0-Hs 

A pure and sincere love song.

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愛が教えてくれたもの  The love left me something reliable (in Adam)
https://www.youtube.com/watch?v=zSYLdTygb1k 

This is the garden that I played in my childhood. Now the house disappeared and it changed to the field of dandelion. The things and people I loved have disappeared now. But the love left me something reliable.

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永遠を探しに To explore the eternity (in Eve)
https://www.youtube.com/watch?v=Aj-YuUv53DE 

Let's jump out the home town, and aim for the horizon.

Live performance
https://www.youtube.com/watch?v=H4C4g_JIPOM 

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風の祭日 The day of wind festival
https://www.youtube.com/watch?v=8mqBGnRXLTM&list=PL_JPyZ1-dS7MwoXgbZpe12Py3ShxnP6cP 

You may become aware of the irish taste easily.

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Lion in the zoo
https://www.youtube.com/watch?v=efurnDrGkEI 

Zoo means the established society.

I love this music and lyrics.

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Live performances

The place where the sky encounters with the sea.
https://www.youtube.com/watch?v=4YHg_tjdWmM&t=401s 

1%
https://www.youtube.com/watch?v=uKXaHf4dEHg 

The sky of Tokyo
https://www.youtube.com/watch?v=Bfj7TvrOkKw 

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Promotion video

https://www.youtube.com/watch?v=64w74hRE2dw

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HP:

http://www.hirokosohma.com/

Her picture (Hiroko is also a painter) .

She loves cats (me too💕).

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2025年5月 4日 (日)

明日でブログ開設20年目になります 読者の皆様に深謝

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なんと明日でブログ開設20年目に突入します。

ご閲読賜りまして有難うございます。これが生きがいというより、私のなかではこのブログが私という存在の過半です。

最近はクローラーがよく来ていて、無生物に見て回られるというのも不気味ではあります。AIにとりこまれて利用されるのでしょうか? うーん なんだかなあ・・・。

それはそれとして、今年も例年通り記事を書くつもりなので何卒よろしくお願い申し上げます。人様に見ていただけるのが何よりの励みになります。

管理人 monchan より

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この19年間に耐えがたい困難な事態が何度かありましたが、なんとかまだ生き延びてこのブログを続けています。ただブログを開設した19年前は、いま改めて記事を見てみると、わりと平穏な年だったようです。

私の最初のブログ記事に添えられていた電子顕微鏡写真です。筋細胞がアクトミオシンを蓄積しつつある私が撮影した写真です。

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<ブログ開設の年に書いたお気に入りの記事>

19年前の南青山曼荼羅ライブの記録です ↓ 。
以下当時に書いたままをコピペしました。

2006.12.09 西島三重子
南青山マンダラライヴ

前半は70年代フォーク特集

1)愛と風のように(小出さん) --- スカイラインは高級車で手がでません。
2)サルビアの花
3)なごり雪
4)海を見ていた午後
5)22才の別れ
6)池上線
7)いちご白書をもう一度
8)酒と涙と男と女
9)異邦人
ユーミンの曲を2曲(4と7)やったのにはびっくりしました。
ユーミンには作曲家としてライバル心メラメラと思っていましたので。
(小声で)2曲ともホントいい曲ですねえ。
異邦人(オリジナルは久保田早紀)はなんかはまってましたね。
すっかり乗せられてしまいました。

Break

後半はオリジナル曲

1)ミッドナイトララバイ --- 今日この曲がきけるとは!
2)ジンライム
3)シベールの日曜日 --- 小生のリクエスト hime の好意に感謝します
4)青春のシュプレヒコール
5)DearMyFriend
6)おひさまのたね --- 仏日版って結構好きです
7)プレゼント
8)BonCourage(ボン・クラージュ)
9)星屑のララバイ

アンコール

1)やさしくなれる季節だから --- 今日のオリジナル曲のなかでは1番だと思う
2)ホワイトクリスマス

それにしても、リクエストした人間の面がみんな割れてしまうという仕掛けには
お手上げでした(ヤマガラのカレンダーいただきました 謝謝)

 

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2025年5月 2日 (金)

豪雨の南青山

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南青山曼荼羅・西島三重子ライブに行ってきました。青山通りと外苑西通りの交差点あたりは外資系の会社がいっぱいで、ここが日本かと思います。みーちゃんは昨年十二月に生死をさまようような交通事故にあって、なんとドクターヘリで病院に運ばれたそうです。すっかり回復し、お元気そうで何よりでした。

なんと今回は3曲も初めての曲がありました。古い曲ですがライブでは今までやったことがなかったみたいです。

セルフカバー曲

あざやかな微笑(石川ひとみ)
https://www.youtube.com/watch?v=_S7nODjPRVE 

風の中のさよなら(桜田淳子)
https://www.youtube.com/watch?v=a92HOv6B-go 

オリジナル曲

ムーン・リバー(西島三重子)

石川ひとみさんのために作曲した曲としては「にわか雨」がお気に入りだそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=IioJr7LqKVg

今年もまたバースデイライブ(8月17日)は開催されるようです。

今日は来場者に自家製はがきのプレゼントがありました ↓。 

有難うございます。

西島家のアビ子ちゃんはネズミの死体をプレゼントしてくれるそうです(爆)。

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最後に曼荼羅では曼荼羅弁当(名物)とカレーライスがメニューから消えていました。コメはあきらめたようです。政治のミスはこんなところにも影響を及ぼしています。

 

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2025年4月29日 (火)

ジャクリーヌ・デュプレが満開

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ちょっと早いでかもですが、バラの季節です
(地球温暖化のせいか?)
うちのジャクリーヌ・デュプレも開花しました
この品種の名は、往年の名チェリストにちなんで名付けられました
彼女は多発性硬化症を発症し、短い人生を終えた不運の天才です

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ジャクリーヌ・デュプレのトゲはすごいです(矢印)

怨念なのでしょうか?

ジャクリーヌ・デュプレ(チェロ)
ドヴォルザークのチェロ協奏曲の名演奏
後に離婚する夫ダニエル・バレンボイム指揮ロンドン交響楽団と共に
https://www.youtube.com/watch?v=U_yxtaeFuEQ&t=1245s 

映画も制作されました
「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」
https://filmarks.com/movies/26759 

 

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2025年4月27日 (日)

バルサ 激闘のスペイン国王杯を制す

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バルサが120分延長戦の激闘の末、コパ・デル・レイ優勝を決めました。

試合の前から戦いは始まっていて、首都系のテレビでレフェリーを罵倒する放送があって騒然とする中でのキックオフ。昔はレフェリーはマドリーサイドと決まっていたのですが、あらためてマドリーが審判にプレッシャーをかけに来るとは時代も変わったものです。そういえば最近の放送(U-NEXT)では解説者がバルサファンであることを隠そうともしないのも驚きです。

決勝点はあの遅刻常習者ジュール・クンデのミドルシュート。バルサは守備陣のわずかな隙間にパスを通して点を取るのが定番のチームでしたが、最近は豪快なミドルシュートでの得点もありです。先制ゴールもペドリのミドルシュートでした。

延長戦になると、もうチャンピオンズリーグのことなど考えていられません。全力プレーであまりの激戦で両陣営ヘトヘト。なんとヴィニシウスの足がつるというのもびっくり。エムバペが途中から出てきましたが、フリーキックをバルサゴールにつきさしたとはいえ、ヴィニシウスがいないと彼も真の実力を発揮できません。

最後によほど悔しかったのか、マドリーの3選手(リュディガー、バスケス、ベリンガム)が物をピッチに投げ込んで全員レッドカードとは爆笑。

https://www.youtube.com/watch?v=H0hU93OHfts

https://www.youtube.com/watch?v=dGLDzZLceNk

https://www.youtube.com/watch?v=MklS04nfjxk

https://www.youtube.com/watch?v=S6_bu0-Gj-w

 

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2025年4月26日 (土)

続・生物学茶話267:視床と大脳皮質2

Edward G. Jones は2007年に出版した「The Thalamus」という本(私は未読)の中で 「All cortical areas receive thalamocortical projections from specific thalamic nuclei」(大脳皮質のすべての領域は、それぞれ特異的な視床の神経核からの投射を受けている)と書いているそうです(1)。 視床から大脳皮質への投射が意識そのものなのかどうかはわかりません。もしそうならコンピュータだって意識を持っているということになるので、それは違うのではないでしょうか。意識を持つということは記憶との照合などもう少し高次のメカニズムが必要なのでしょう。また視床と大脳皮質の連絡は一方通行ではなく相互的なものであり、意識に基づく行動は大脳皮質から視床への投射によります。このネットワークがどのように成立するのかは意識を持つ生命体にとっては核心的に重要です。

どのような細胞、どのような因子が軸索の伸長とターゲットへの接近をサポートしているかという問題は、無脊椎動物では案内する細胞を個別に破壊するという手法で確かめられていますが(2)、哺乳類の胚でそのような実験を行うことは技術的に困難です。哺乳類では発生過程で脳のネットワークを形成する段階で、大脳皮質領域から視床に向かって伸びるニューロンが、視床から大脳皮質へ延びるニューロンの道案内細胞となるという仮説(ハンドシェイク仮説)は古くからありました(3、4、図267-1)。これは大脳皮質から伸びる軸索と視床から伸びる軸索が、例えばマウスの場合胎生13~14日目に中間点で邂逅するという解剖学的・形態学的な知見に基づいています。これに失敗した場合正常なマウスは生まれません。

PC・テレビ・無線通信・有線電話などでネットワーク通信を行う場合、情報が片方向にしか流れない場合と双方向に流れる場合があります。ケーブルにも片方向用と双方向用があります。私たちの場合、腸神経系以外では多分ほとんどの神経は片方向用にできています。しかし視床と大脳皮質のように起床時には常時大容量の双方向通信を行っているネットワークでは、ハンドシェイクによって形成された双方向ケーブルによって、事実上有線電話のような常時性双方向通信ができることは合理的です。

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図267-1 ハンドシェイク仮説

ハンドシェイク仮説は興味深い仮説ですが、それを証明したのは提唱者であるオックスフォード大学のグループではなく、エジンバラ大学のグループでした。Chen らはAPCというニューロンが分化する際に必要な因子のコンディショナル・ノックアウトマウスを用いて、視床から伸びる軸索が大脳皮質に到達するためには、大脳皮質のニューロンの助力が必要だということを証明しました(5)。

彼らは大脳皮質のニューロンだけが軸索進展に必要なAPC遺伝子を失うというノックアウトマウスでは、胎生15.5日目においても視床ニューロンの軸索がPSPB(pallial-subpallial boundary=外套‐外套下部境界、すなわち将来大脳皮質などになる部分と基底核などになる部分との境界)を乗り越えることができないことを見出しました(5、図267-2B、D)。大脳皮質周辺から遠隔の細胞に届くような誘導物質は放出されていないことも証明していたので、視床ニューロンの軸索がPSPBを乗り越えるためには大脳皮質からのびてくるニューロン軸索の助力が必要であることが示唆されています(5)。

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ノックアウトマウスの予定大脳皮質領域を取り除き、正常マウスの予定大脳皮質領域を移植すると、視床ニューロンの軸索はPSPBを乗り越えられることもわかりました(5、図267-3)。大脳皮質および視床由来の軸索が伸びる領域には多くの誘導物質がそれぞれの濃度勾配を持って配置されており、基本的にそれらに導かれて軸索は伸びるものと思われますが、PSPBを乗り越えるメカニズムについてMolnarらは誘導物質というより、大脳皮質由来のニューロンが視床由来の軸索のバンドリング(束を作る)に必要な物質を供給するのだろうと述べています(6)。PSPB付近は胎生2週間にはグリア細胞が緻密に存在しており、これらをかき分けて伸びるにはバンドリングが必要なのかもしれません。

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図267-3 ミュータント大脳皮質に正常大脳皮質を移植すると、視床神経軸索はPSPBを突破できる

Molnar と Kwan は最近の総説(6)で大脳皮質‐視床ネットワーク構築に関する知見のリニューアルをおこなっています。彼らのまとめによると誘導因子のなかには欠損すると、Tbr1, Mash1, Pax6, Gbx2:大脳皮質→視床、視床→大脳皮質の双方向に伸びる軸索がともに迷子になって進めなくなる、Nkx2.1:視床→大脳皮質は到達するが大脳皮質→視床は迷子になるものがある、Ebf1:大脳皮質→視床は到達するが視床→大脳皮質は迷子になるものがある、Emx2:到達できるが経路が異なる、Dix1:到達できないばかりか大脳皮質からの軸索は消失してしまう、などさまざまな場合が示されています(図267-4、図267-5)。

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図267-4 誘導因子の影響1

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図267-5 誘導因子の影響2

特に興味深いのは Doyle らの研究結果(7)で、彼らはArid1aというクロマチンモデリング複合体の構成成分であるタンパク質の遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスを作成し、大脳皮質-視床のネットワーク構築過程を調べたところ、この遺伝子の欠損によって特に視床→大脳皮質の軸索のバンドリングができなくなり、ハンドシェイクが成立しなくなることがわかりました。そしてハンドシェイクが成立しないと、特に視床から伸びてきた軸索はPSPBを乗り越えることがほとんどできません(図267-6)。

この動物は視床の細胞の Arid1a は正常なのですから、正常な視床ニューロン軸索の動向が、別の細胞である大脳皮質ニューロンだけに現れるクロマチン構造の変異の影響を強く受けるということになります。

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図267-6 Arid1a のコンディショナルノックアウトマウス(大脳皮質ニューロンでの変異)ではハンドシェイクが成立しない

 

参照

1)Edward G. Jones「The Thalamus」2nd Ed., (2007) Cambridge University Press

2)Bentley D, Caudy M (1983) Pioneer axons lose directed growth after selective
killing of guidepost cells. Nature vol.304: pp.62-65 (1983)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6866090/

3)Molnar Z, Blakemore C, Lack of regional specificity for connections formed between thalamus and cortex in coculture. Nature vol.351: pp.475–477. (1991)
https://www.nature.com/articles/351475a0

4)Zoltan Molnar, Richard Adams, Andre M. Goffinet, and Colin Blakemore, The Role of the First Postmitotic Cortical Cells in the Development of Thalamocortical Innervation in the Reeler Mouse., The Journal of Neuroscience, vol.18(15): pp.5746–5765 (1998)
doi: 10.1523/JNEUROSCI.18-15-05746.1998
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6793036/

5)Yijing Chen, Dario Magnani, Thomas Theil, Thomas Pratt, David J. Price, Evidence That Descending Cortical Axons Are Essential for Thalamocortical Axons to Cross the Pallial-Subpallial Boundary in the Embryonic Forebrain, PLoS ONE 7(3): e33105. (2012)
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0033105
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0033105

6)Zoltán Molnár and Kenneth Y. Kwan, Development and Evolution of Thalamocortical Connectivity, Cold Spring Harb Perspect Biol, vol.16, no.1, a041503.
DOI: 10.1101/cshperspect.a041503
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38167425/

7)Doyle DZ, Lam MM, Qalieh A, Qalieh Y, Sorel A, Funk OH, Kwan KY., Chromatin remodeler Arid1a regulates subplate neuron identity and wiring of cortical connectivity.,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol. 118 | No. 21 e2100686118 (2021)
https://doi.org/10.1073/pnas.2100686118
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2100686118

 

 

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2025年4月24日 (木)

米国はデフォルトしたのじゃないのか?

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私は経済学は全く知らないので(大学で公文俊平という男の講義を1年間聴いただけ・・・一応単位は取った記憶があります、もうすべて忘れました)、米国で何が起こっているのかはよくわかりません。しかし、貿易赤字や金利の上昇を極端に恐れたり、政府職員を大量解雇したり、さまざまな補助金をカットしたり、ウクライナに金を出し渋ったりしているのをみると、トランプがなんだかんだ理由はつけていますが、結局のところ米国は実はデフォルトじゃないかという疑念がわいてきます。だとすると米国が今やっている一見メチャクチャな政治がすっきり理解できるように思います。

一部の政治家や経済学者は、自国通貨でお金を借りている場合は紙幣を印刷すればいいのだからデフォルトはあり得ないと言っていて、だから米国や日本がデフォルトするなどありえないなどというわけですが、実はそう単純ではなくて実際には紙幣を赤字の分だけ印刷して補填するなどということはできないんじゃないか・・・という疑いを持たざるを得ない今日この頃です。

 

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2025年4月22日 (火)

ボードゲーム AI恐るべし

ボードゲームは囲碁・将棋・麻雀・コントラクトブリッジあたりは、超弱とはいえなんでもやりますが、最近驚いたのはAIvsAIの将棋です。人間同士がやっているのを見るより面白いです。

例えばポンタマンvs水匠10(beta)3
https://www.youtube.com/watch?v=GDr_m5BUtGY&t=1667s 

最初は矢倉風にはじまりますが、そのうち仰天手が満載。
たとえばここで後手どう指すか?

20250421-235306

 

 

 

 

 

なんと9八香です(つぎは9九飛車うちのねらい)。
まあこれは序の口で、一見意味不明に見えてもしばらく指してみると納得できる・・・という妙手連発で驚愕します。

これならひょっとすると政治もAIにまかせたほうがいいのか?

 

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2025年4月19日 (土)

まきちゃんぐ 本と音楽

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今日は神保町ブックセンター(岩波書店)の企画で、ライブセレクト「本と音楽」vol.3として、まきちゃんぐさんのお話と音楽を楽しむ会が開催されました。

神保町ブックセンターは飲食店と図書館が合体したような場所で、こんな場所で時間が過ごせる近隣の方々がうらやましくなるような素晴らしい空間です。

このお店の奥にライヴができるスペースがあって、ライブハウスにはないような座り心地の良い椅子で、音響も文句なく、大変リラックスして楽しめる会場でした。読書家であるちゃんぐさんの本に関する蘊蓄を拝聴しながらのライブ、なかなかない経験でした。

セットリストはすべて覚えているわけではありませんが、少なくとも下記の曲は歌いました。日本一のソウルシンガーであるまきちゃんぐさんは絶好調でした。ただ「愛が消えないように」は歌と演奏のキーがずれる感じで最後にやりなおしましたが、これがけがの功名といいますか本日最高のパフォーマンスで圧倒的でした。

さなぎ

木造アパート

名前

2020

鋼の心

ハニー

愛が消えないように

私のサイトに YouTube へのリンクがあります
https://morph.way-nifty.com/grey/2023/11/post-6f6350.html 

まきちゃんぐオフィシャル
https://x.com/makichang_info 

 

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2025年4月17日 (木)

素晴らしいCDジャケット

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マッケラスさんは米国生まれですが、子供のころからオーストラリアに住み、シドニー交響楽団のオーボエ奏者を務めていたそうです。指揮者としての活躍は主として英国で、特にスコティッシュ室内管弦楽団とのモーツァルト録音や、ヤナーチェクのオペラの録音で著名な方です。2010年に亡くなっています。

この霧の中で光が差し込む墓地のジャケットは、なんとも素晴らしいタイミングで撮影されたものと思います。モーツァルトのレクイエムにどんぴしゃの映像、そして演奏も清潔で引き締まった集中力の高い名演だと思います。

Mozart - Requiem K.626 (Mackerras) 2002
https://www.youtube.com/watch?v=Pl4oZg1J4xs

YouTube にも多く演奏がアップされていますが、ロンドンフィルを指揮したときはソフトな感じになるのがちょっと彼らしくない感じがします。

モーツァルト 交響曲第38番第1楽章 マッケラス指揮スコットランド室内管弦楽団
https://www.youtube.com/watch?v=iA_zRbA2LQI 

モーツァルト 交響曲第40番第4楽章 マッケラス指揮スコットランド室内管弦楽団
https://www.youtube.com/watch?v=JGO3Hr3_00M 

モーツァルト 交響曲第41番第1楽章 マッケラス指揮スコットランド室内管弦楽団
https://www.youtube.com/watch?v=1afrf5HaFLc 

JBL K2 S5500 + UT505 with SANSUI B-2102 MOS VINTAGE - モーツァルト 交響曲第25番 第1楽章 / チャールズ・マッケラス
https://www.youtube.com/watch?v=GEXGESkQl4I 

アマゾンで見ると、同じ曲のCDはありましたがジャケットが変わっているようでした。

 

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2025年4月14日 (月)

続・生物学茶話266:視床と大脳皮質1

「意識」という現象は昔は哲学や心理学で取り扱われていましたが、今では自然科学の研究対象でもあります。医学では意識レベルという段階が定義されています(Japan Coma Scale, Glasgow Coma Scale, 1)。視床という脳の領域は「意識」と深いかかわりがあり、この部分の損傷によって「意識」は障害されます(2-4)。

「意識」といっても救急医学で定義されているレベルとは違った意味で、動物によって異なるレベルがあり、それは視床や関連領域の発達の程度によって異なると思われます。また「意識」は視床という脳のパートが単独で担うものではなく、視床と大脳皮質との神経連絡を中心としたネットワークが担っていると思われます。この意味で視床と大脳皮質をつなぐ中間地点に位置する尾状核被殻領域も「意識」とは深いかかわりがあると思われます。

今回登場する関連部域(マウス脳のパーツ)の一覧を図266-1に示します。一次とか二次とかがありますが、二次というのは脳の他の領域で得た情報と照合するとか、より複雑で高級な処理をする脳の領域です。たとえば予測に基づいて環境の変化に対応する行動をとるとか(5)、音の高さや強さだけでなくハーモニー・メロディ・リズムのパターン処理をするとか(6)を受け持つ部分です。まあ実際にはそんなに単純ではないと思いますが。

視床と大脳皮質一次体性感覚野・一次視覚野は相互に投射するニューロンによって密接なネットワークを構築しています(図266-1c、7)。

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図266-1 マウス大脳皮質と視床

視床から大脳皮質への軸索の伸長、逆に大脳皮質から視床への軸索の伸長は、意識の成立のためにも非常に重要なことなので胎生期に行われます。マウスなら胎生13.5日目にはそのネットワーク構築は開始されています。軸索は大脳皮質と基底核の境界や間脳と終脳との境界を乗り越え、方向転換したのち、相互にすれ違うという形をとって進行します。

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図266-2 胎生13.5日目のマウス脳縦断面

そして胎生18.5日目には、それぞれターゲットである大脳皮質と背側視床に到達します。

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図266-3 胎生18.5日目のマウス脳縦断面

背側視床のニューロンから出発する軸索は、間脳終脳境界に至るとそれまで視床下部に向かっていた進行方向を
転換して間脳終脳境界を乗り越え、線条体方向に延びていきます。このような方向転換を実現するために視床下部領域に負の誘導因子が存在するというのが脳発生生物学が到達した結論です(8、図266-4)。

終脳領域に侵入した軸索はさらに、終脳腹側の負の誘導因子、背側の正の誘導因子に導かれて pallial–subpallial boundary を乗り越え、ようやく大脳皮質に到達します。大脳皮質から出発した軸索も同様な誘導因子に導かれて背側視床に到達します(図266-4)。

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図266-4 神経軸索ガイダンス

誘導因子の実体は遺伝子ノックアウトマウスを使った実験によって次々と明らかになってきましたが、ここではロペス=ベンディトらの論文の一部を紹介します(7)。

まずEmx2-KOマウスでは大脳皮質からの軸索、背側視床からの軸索共に遠回りしています。なかにはターゲットに到達できなかった軸索もあります。これは本来終脳間脳境界の腹側にあるはずの負の誘導因子がなかったことによるものと思われます。Tbr1-KOマウスの場合、大脳皮質からおよび背側視床からの軸索共に途中で伸長が止まっています。これは正の誘導因子が欠損していたためと思われます(図266-5)。Gbx2やMash1についても同様と思われます。Pax6も細胞移動に関わる因子とされていますが、ここでどのようにかかわっているかは図266-5からは判断できません。

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図266-5 遺伝子ノックアウトマウスによる誘導物質の探索

ニューロンのネットワークはもちろん正負の誘導因子だけで決まるものではなく、細胞接着、シナプス形成、刈込みなどそのほか多くの要因がかかわって形成されるもので、総合的な見方が必要です。

 

参照文献

1)【意識レベル評価】JCS・GCSとは?意識障害時の対応は?
https://motoyawata.clinic/blog/jcs-gcs/

2)管るみ 失語症,そして復職─私の闘病経験─
高次脳機能研究 vol.42(2):pp.207 ~ 211 (2022)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/42/2/42_207/_article/-char/ja

3)日坂ゆかり、柿田さおり 意識障害と高次脳機能障害や片麻痺のある脳出血患者の
発症時からの意識障害の回復に伴う自己の障害に対する認識の変化
日本救急看護学会雑誌 vol.23, pp.1-8 (2020)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaen/23/0/23_1/_article/-char/ja/

4)田上雄大 他 もやもや病に合併した穿通枝動脈瘤に対して塞栓術を施行した 1 例
脳卒中 vol.45: pp.270-276, (2023)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/45/3/45_11115/_article/-char/ja/

5)Kosuke Hamaguchi, Hiromi Takahashi-Aoki and Dai Watanabe, Prospective and retrospective values integrated in frontal cortex drive predictive choice., Proc. Natl. Acad, Sci. USA, vol.119 (48) e2206067119 (2022)
https://www.pnas.org/doi/epub/10.1073/pnas.2206067119

6)ウィキペディア:1次聴覚野
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E6%AC%A1%E8%81%B4%E8%A6%9A%E9%87%8E

7)Guillermina Lopez-Bendito and Zoltan Molnar, Thalamocortical development: how are we going to get there? Nature Rev Neuroscience vol.4, pp.276-289 (2003)
https://doi.org/10.1038/nrn1075
https://www.nature.com/articles/nrn1075

8)新明洋平 軸索ガイダンス分子 Draxin が担う脳神経回路形成機構 金沢大学十全医学会雑誌 第125 巻 第 2 号 55 -59(2016)
https://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/records/16615

 

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2025年4月12日 (土)

私の不思議ノート4: 忘れるということ

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忘れるということは、限られたメモリー量で仕事をしている脳にとっては必要なことだと思います。ハードディスクを整理していないと、そのうちどうにもならなくなってしまうのと同じでしょう。しかしよりによってこれだけは忘れちゃいけないってことを忘れるのは困ります。

山本裕康教授は「冷蔵庫」という言葉を思い出せなくて困ったそうですが(1)、私はもっと困ったことがあります。一生に一度だけですが、数年前に自分のPCのパスワードをなぜか思い出せなくなってしまったことがあります。さすがにこれは、まさか忘れるなんて思っていないのでどこにも書いてありません。誰にも聞けません。呆然として1日過ごしたのですが、幸いにして翌日に思い出しました。一体脳に何が起こっていたのでしょうか?

この話とは全く別なのですが、言葉を全く話せなくなって脳外科にかけこんだことがあります。これは理由がはっきりしていて、MRIとCTをとって硬膜下血腫という病名が付きました。外傷が全くなくてもこの病気になる人はいるようです。脳の硬膜の下側で出血が起こって脳が圧迫され、言語中枢が機能を失ったわけです。出血した血液が脳の浄化システムで徐々にリンパに吸収されていくと回復します。現在はほぼ回復しています。

全く話せなくなるというのは簡単にイメージできますが、ある言葉だけ忘れるというのはなぜなのでしょうか? シナプスが一つなくなるとか細胞が一つ死ぬとかはイメージしやすいですが、それではなぜ1日で回復したのかというのが説明できません。もっと複雑なダメージなのでしょう。

ある時突然帰り道がわからなくなるということだってあるかもしれません。これは「見当識障害」という病名があるようです。住所・電話番号・帰りの道順・PCのパスワードくらい書いたメモは持っていた方がいいみたいです。私は「言葉が話せません、救急車を呼んでください」というメモはいつも持ち歩いています。

1)山本裕康教授のすべらない話Vol,8【春休み特大号】
https://www.youtube.com/watch?v=ivGfK50SfaE 

山本裕康教授のすべらない話・増刊号
https://www.youtube.com/watch?v=DnvsqRp7Seo&t=822s

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2025年4月10日 (木)

ベティがオスをつれてやってきた

ベティはしばらく繁殖でうちを離れるのかと思っていましたが、来なかったのは数日間だけでまた現れました。

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と思ったら、なんと ♂ を連れてきました。私に紹介してくれたのね。

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イソヒヨドリらしく、パートナーとはいえある程度距離をとって行動するようです。

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向かいの建物の一番上のひさしの下にベティが降りていきました(↓)。

オス(♂)は周りをみています。

確認したわけではありませんが、ここに営巣するつもりなのかもしれません。

うーん ここはカラスにみつかって荒らされる危険があるかも・・・。

オスにもフィルという名前をつけてあげましょう。

 

 

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2025年4月 9日 (水)

World music collection 25: Tommy feburuary6 (Kawase Tomoko)

川瀬智子が思い出したように動画をリニューアルしてウェブにアップしたら、大変な人気になっているそうです。私は The brilliant green 時代から favorite だったので、ようやく世界に認められるような world wide な人気者になったんだと大納得です。

Tommy2

Tommya

Tommy feburuary6 以外に Tommy heavenly6 というプロジェクトもやっていますが、こちらの方は個人的に好みではないので下記にはありません。

-----------------

Tommy feburuary6

Bloomin’!
https://www.youtube.com/watch?v=u14KDsYeSxk 

?KISS? ONE MORE TIME
https://www.youtube.com/watch?v=LAwg7-vYYfE 

MaGic in youR Eyes
https://www.youtube.com/watch?v=y2R3do1J4jY 

EVERYDAY AT THE BUS STOP
https://www.youtube.com/watch?v=xY5yazcNpCI 

Love is forever
https://www.youtube.com/watch?v=QszNwa2DOYw 

je t'aime ★ je t'aime
https://www.youtube.com/watch?v=I4JrXQrvidw 

-----------------

the brilliant green -

(Previously she was a member of a band "The brilliant green")

Hello Another Way -それぞれの場所-
https://www.youtube.com/watch?v=uLvfxh7YZys 

There will be love there -愛のある場所-(SUPER TERRA2000)
https://www.youtube.com/watch?v=JHmP1rQ3eqY 

angel song -イヴの鐘-
https://www.youtube.com/watch?v=moAX32HsMy8 

長いため息のように
https://www.youtube.com/watch?v=5CAutqKGnM4 

Forever to me ~終わりなき悲しみ~
https://www.youtube.com/watch?v=T0JcS5uPJEo 

 

 

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2025年4月 6日 (日)

ATOKとの訣別

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純丘曜彰氏の話(引用)
https://www.insightnow.jp/article/11507 

だが、じつは、ここのところ、それ以上の問題が生じている。たとえば、一太郎。多少の改善が進んでいることを期待して、なんとなく二年ごとくらいにはバージョンアップを当ててきたが、今回はやばい。カナ漢字変換のATOKがかってにサブスクになって、前のATOKが自動で消されてしまい、毎年、サブスク更新料を払わないといけなくなる。これは、実質的には一太郎のバージョンアップを毎年、強制されるのと同じ。

それも、良くなっているのならいいのだが、もの書きには使いにくくなる一方。スマホ向けなのか、ATOKが通俗化して、話し言葉、さらには方言や略語などが得意になったせいで、書き言葉、文語、単漢字が後に追いやられ、必要な漢字がすぐに出てこない。それどころか、差別語っぽいものは、辞書そのものから消されてしまっていて、ふつうの変換では出せない。一太郎も、やたら装飾だらけになっていくが、段組やレイアウト枠のリンクなどだらけだと、あいかわらず入力ごとに「応答無し」で待たされ、仕事にならない。

(引用終了)

------------

全くその通りです。ATOKはたくさんの専門用語を覚えさせて賢くなっていたのですが、なんとある日突然使えなくなってしまいました。ジャストシステムは唯一大手の日本土着ソフト企業として期待していたのですががっかりです。日本語入力システムについては、結局みんな米国の会社であるマイクロソフトが開発したプログラムを利用することになるなんて、あきれるしかありません。

私は日本国憲法を尊重し日本の法律を遵守するなら、いくら大勢の外国ルーツの人々が日本で生活しても結構だと思っていますが、トランプと同様日本人が使う日用品はなるべく日本で生産してほしいと思っていますし、日本で育った文化はそれなりに保存発展してほしいと思っています。ジャストシステムはパーソナルメディアを買収してOSを開発し、マイクロソフトを日本から駆逐するくらいのことをやってほしいと思っていましたが、今の状態だと没落一直線でしょう。

石破政権はトランプから日本がEUより高い関税をくらっても、報復関税すらやらないと公言しています。これははいったいどういうことなのでしょうか? 最初からカードを放棄するんじゃディールにもならないんじゃないの?

 

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2025年4月 5日 (土)

2025 北総の桜

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今年は長く寒い冬でしたが、ようやく桜の季節になりました。
昨年は全く咲かなかった近隣のしだれ桜の老木が、管理組合が手入れしたのでしょうか、見事に花をつけました。まだまだ頑張ってほしい。

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ソメイヨシノはまだ全体的には5~7分咲きですが、この木は満開に近いです。

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春の花は桜だけではありません。近隣の空地に咲く利休梅、本当に可憐で美しい花です。

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うちに毎日やってきていたベティちゃんも、ついに繁殖のための旅に出たようです。

がんばれとエールをおくりたい。子育てが終わったらまたおいで💕

 

 

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2025年4月 3日 (木)

続・生物学茶話265: 活動電位にまつわる話

生物が生まれた非常に初期のころから、外界と細胞との境界膜にNa・Kポンプは設置されていたと思われます。実際細菌や古細菌もこれを保有しています。このポンプは次のような反応を触媒します(1)。

3Na(in)+2K(out)+水1分子+ATP=3Na(out)+2K(in)+ADP+Pi

これはATP1分子と水1分子を消費して、ナトリウムイオン3つを細胞から放出し、同時にカリウムイオン2つを細胞に取り込むという意味です。この結果外界と細胞に電位差が発生し、それを使って糖・アミノ酸、リン酸などの栄養物質のとりこみ、様々なイオンの出し入れ、細胞のpHや体積の調節などが行われます(2)。Na・Kポンプはまさに細胞を電池化する革命的なアイテムでした。

神経細胞もこの電位差を使って作業することになりました。その作業の肝は活動電位の発生です。Na・Kポンプによって細胞内は常にNaイオンの濃度が外界より低く保たれているので、細胞膜に穴をあけるチャネル分子=電位依存性ナトリウムチャネル(3)があれば細胞膜からNaイオンが細胞内に流入し、電流を発生させることができます(4、図265-1)。

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図265-1 活動電位(アクションポテンシャル)

図265-1は高校の教科書などにでてくるアクションポテンシャル(活動電位)のグラフです。このグラフを見ているといろいろ疑問がわいてきます。まずその活動電位を発生させるためのチャネル=電位依存性ナトリウムチャネルの最初の活動は誰が指示しているのでしょうか? 隣のチャネルが活動すればナトリウムが細胞内に流れ込みそれが刺激となってチャネルが開き、それがまた隣に伝搬するわけですが最初はどうなのでしょう。 

通常軸索末端のシナプスから放出された神経伝達物質はシナプス後細胞表層のレセプターと結合して情報は伝達されます。レセプターがリガンド依存性イオンチャネルであった場合、リガンドが結合することによってチャネルが開き、イオンが細胞内に流入します(5、図265-2)。代表的なリガンド依存性イオンチャネルの例として、ニコチン性アセチルコリン受容体などがあげられます(6)。この受容体がリガンドと結合しナトリウムイオンが流入した結果、一定の閾値に達すると電位依存性ナトリウムチャネルが開いてアクションポテンシャルが発生するというわけです。

しかし実際にはそれほど単純ではなく、リガンド依存性チャネルの分布なども影響して、まだ知られていないメカニズムも関与しているようです。脳科学辞典の「閾値」という項目をみると「樹状突起の比較的近い部位の興奮性シナプスが一定数以上同時に活性化すると、各々による脱分極の線形和を越えた脱分極が起こり、それが細胞体に伝わる」という報告がとりあげられています(7、8)。シナプスには抑制性のものもあるので、それぞれの数やクラスター化の程度、軸索起始部との距離など複数のパラメータが関与してアクションポテンシャルの起動が決定されるものと想像できます。

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図265-2 リガンド依存性イオンチャネル 実際に通過するのはカチオン

リガンド結合型チャネルのはたらきによってナトリウムイオンが流入し、ある程度神経細胞の電位が上昇すると、電位依存型のチャネルが開口し、さらにナトリウムイオンが流入してアクションポテンシャルが発生します。リガンド結合型チャネルによるナトリウムイオンの流入は加算的である―すなわちリガンドが結合したチャネルだけが開口し二つ開口すれば流入量が2倍になるという様式なのに対して、ナトリウムイオンの細胞内濃度が閾値を超えるとそれを感知した電位依存型チャネルは原則的にはすべてが一気に開口しアクションポテンシャルを発生させます(図265-3)。

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図265-3 シナプスにおける情報伝達から活動電位発生まで

しかしここでひとつ不思議なことがあります。活動電位(アクションポテンシャル)が発生すると細胞内のナトリウムイオン濃度が爆上がりするので、電位依存型チャネルは開きっぱなしになってしまい、電位を生理的レベルに落とすことができなくなるのではないかと思うのですが、実際にはそんなことはありません。なぜなのでしょうか?

図265-4は故意に膜電位を50mⅤに維持して電位依存型ナトリウムチャネルが開放したままになるかどうか試した実験ですが、そうはならないことがわかりました(9)。電位依存型ナトリウムチャネルが開口するのはわずか10mSという短い時間だけで、すぐ自動的に閉じてしまうのです(図265-4)。この閉じたチャネルのコンフォメーションは膜電位が生理的レベルだった最初とは違った状態(不活化状態)なのですが、ナトリウムイオンが通過できないことに変わりはありません。膜電位を正常レベルに戻すとコンフォメーションも元に戻ります。つまり膜電位が上昇したときの本来のコンフォメーションは不活化状態に相当するものであり、ナトリウムイオンが通過できるのは途中の遷移段階に相当する間だけということです(図265-4)。

一方電位依存型カリウムチャネルは、ナトリウムチャネルが電位変化に素早く反応して開口するのに対して、開口まで10mS前後の時間がかかります。なので活動電位の発生を妨害することはありません。このカリウムチャネルは電位が高い間は開きっぱなしで、電位が生理的レベルに下がれば閉じるというシンプルなメカニズムで活動します。つまりナトリウムチャネルの特殊な活動と、カリウムチャネルのシンプルな活動の組み合わせによってアクションポテンシャルが発生するわけです。

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図265-4 電位依存型ナトリウムチャネルと電位依存型カリウムチャネルの作動様式

電位依存型ナトリウムチャネルのメインサブユニットはαでそれを2次元に広げた模式図が図265-5です(10)。他のサブユニットがない状態でも電位依存型ナトリウムチャネルとして機能します。前記したようにこのチャネルは膜電位が上昇すると自動的にチャネルを閉じますが、それはウィキペディアを引用すると、「ナトリウムチャネルは不活性化ゲート(inactivation gate)を閉じることで自身を不活性化する。不活性化ゲートは、αサブユニットのドメインIIIとIVをつなぐ細胞内の領域が「プラグ」のように機能することで開閉が行われていると考えられている。不活性化ゲートが閉じるとNa+の流れが止まり、膜電位の上昇は止まってチャネルは不活性化状態となる」(10)ということです。図265-5のIの部分が不活性化に関与する領域です(11)。

詳しくは不活性化はⅢ-Ⅳリンカー領域中に存在する疎水性アミノ酸配列 Ile-Phe-Met (IFMモチーフ)が IFM モチーフのレセプターである2つのリンカー(ドメインⅢのセグメント4とセグメント5を結ぶリンカー(ⅢS4-S5)及びドメインⅣのセグメント4とセグメント5を結ぶリンカー(ⅣS4-S5)と疎水性相互作用すること
により生ずると考えられているそうです(12)。

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図265-5 電位依存型ナトリウムチャネルαサブユニットの模式図

不活性化を含む電位依存型ナトリウムチャネルの立体構造に関する最新のデータについては参照文献13をご覧ください。

 

参照文献

1)ウィキペディア:Na+/K+-ATPアーゼ
https://ja.wikipedia.org/wiki/Na%2B/K%2B-ATP%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BC

2)上野晋、泉太、川村越 ナトリウムポンプの構造と機能―βサブユニットの役割―
膜 (MEMBRANE), 20 (2), 115-125 (1995)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/membrane1976/20/2/20_2_115/_pdf/-char/ja

3)続・生物学茶話190: 電位依存性ナトリウムチャネル
https://morph.way-nifty.com/grey/2022/09/post-b7024f.html

4)やぶにらみ生物論118: 活動電位
https://morph.way-nifty.com/grey/2018/12/post-cf21.html

5)Wikipedia: Ligand-gated ion channel
https://en.wikipedia.org/wiki/Ligand-gated_ion_channel#:~:text=Ligand%2Dgated%20ion%20channels%20(LICs,a%20ligand)%2C%20such%20as%20a%E8%84%B3%E7%A7%91%E5%AD%A6%E8%BE%9E%E5%85%B8%E3%80%80:%E9%96%BE%E5%80%A4

6)続・生物学茶話135: アセチルコリンによる情報伝達
https://morph.way-nifty.com/grey/2021/03/post-5df6c6.html

7)脳科学辞典:閾値
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%96%BE%E5%80%A4

8)Schiller, J., Major, G., Koester, H.J., & Schiller, Y. , NMDA spikes in basal dendrites of cortical pyramidal neurons. Nature, 404(6775), pp.285-289 (2000)

9)岡良隆 基礎から学ぶ神経生物学 オーム社 (2012) p.56

10)ウィキペディア:ナトリウムチャネル
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%8D%E3%83%AB

11)上坂伸宏 電位依存性Na+チャネルの生理機能と構造
膜(MEBRANE), vol.20(6), pp.398-405(1995)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/membrane1976/20/6/20_6_398/_pdf/-char/ja

12)宮本和英 ナトリウムチャネルの不活性化ゲート関連ペプチドの立体構造
YAKUGAKU ZASSHI vol.122(12) pp.1123―1131 (2002)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakushi/122/12/122_12_1123/_pdf

13)Daohua Jiang, Jiangtao Zhang and Zhanyi Xia, Structural advances in voltage-gated sodium channels., Frontiers in Pharmacology., 13:908867. doi: 10.3389/fphar.2022.908867. (2022)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9204039/

 

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2025年3月31日 (月)

ベティ(イソヒヨドリ)の動向

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ヒヨドリは桜の花が大好物なので、この時期になるとうちのベランダには来なくなるのですが、イソヒヨドリのベティちゃんは相変わらず巡回コースのひとつにしているようです。メスはずっとこのような生活をしていて、船乗りの女房のようにオスが1年に一度帰ってくるのを待っているのでしょうか? そろそろ繁殖期ですが、抱卵するときにはオスはメスに食物を運ぶのでしょうか?

大阪市自然史博物館によると、以前はイソヒヨドリの繁殖は海岸に近い場所に限られていたそうですが、最近では内陸でも繁殖しているようです(1)。ただ団地の中に繁殖に適した場所があるかどうか心配になります。

1)https://www.omnh.jp/wada/Breed/Monticola.html

 

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2025年3月28日 (金)

ウィンドウズ11へのアップグレード windows 11 upgrade TPM2.0の有効化

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今年の秋にはウィンドウズ10のサポートが終了するということで、非常にやりたくないのですが11へのアップグレードをやらざるを得ません。私のPCはTPM2.0が搭載されていることはわかっていましたが、テストではアップグレードできないということで、これが disable の状態になっていると思われます。これを enable の状態にするにはBIOSをいじらなくてはいけません。これをしくじると再起動不可になるおそれがあるので、非常にやりたくないのですが、勇をふるってやってみることにしました。

まず一般的な要件を確認

一般的な要件
https://www.iodata.jp/column/storage/058/index.htm 

これはOK

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TPM2.0を有効化すればウィンドウズ11にアップグレイドが可能な機種の場合
下記のサイトにやり方がアップされています

TPM2.0を有効にする手順について
こちら 

・インテル Coreシリーズ8000番台以降
  (Core i7-8700Kなど8000番台以上の数字が付くシリーズ)
・AMD Ryzenシリーズ2000番台以降
  (Ryzen 7 2700など2000番台以上の数字が付くシリーズ)
に適用できます

私のPCのCPUはインテルCoreシリーズの8000番台なのでこれもOK

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PC起動直後にDEL連打あるいはメーカー指定の方法でBIOS画面を表示させ
上記のサイトで指定されている方法でBIOSを書き換えます。

マザーボードとCPUの組み合わせでBIOSの書き換え方が異なります。
マザーボードはASUS,ASRock、MSIの3種類、CPUはインテルかAMDの2種類
なので3x2=6種類のBIOSがあり、それぞれTPM2.0有効化の方法は違います。

わかっていれば問題ないのですが、わからなくても表示されるボタンをみて
上記のパソコンショップ-セブンのサイトと照合すれば6種類のうちどれなのかはわかります。

私の場合は ASRock製マザーボード+インテルCPUだったので
Security → intel(R) Platform Trust Technology を Enabled に変更
→ Exit → Save and Exit で終了しました。
ただし最初にページがadvanced mode になっているかどうか確認します(最初のページの右上隅)

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準備が整ったので、マイクロソフトのウィンドウズ11ダウンロードサイトから11をダウンロードし、インストールしようとしたのですが、90%以上進行したところでインスト―ル不可のエラーメッセージが出て終了。

しかたなく、これも非常にやりたくなかったのですがセキュリティーソフトをアンインストールして、再度マイクロソフトのサイトからダウンロードしやっと成功しました。そしてセキュリティーソフトを再インストール。

結局5時間くらいの長い時間を要して、個人的にはむしろ好ましくないウィンドウズ11にアップグレードしました。

やれやれ

 

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2025年3月27日 (木)

Walk down the memory lane 16: Mina

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ミーナは私を客観的に見ることは無かったと思います。それは猫としてはとてもめずらしいことでしょう。犬に近い関係かもしれませんが、ミーナは私の部下という感覚はないのでそれもちょっと違うかもしれません。多分ミーナにとって私は母親だったのでしょう。

昔イタリアにミーナというシンガーがいました。ご存じの方は少ないかもしれませんが、ウィキペディアを引用すると・・・日本では森山加代子、ザ・ピーナッツらによって「Tintarella di luna」が「月影のナポリ」として、弘田三枝子、伊東ゆかり、ザ・ピーナッツ、矢沢永吉、桑田佳祐らにより「Un Buco Nella Sabbia」が「砂に消えた涙」として、園まり、コレット・テンピア楽団らにより「Eclisse Twist」が「太陽はひとりぼっち」としてカヴァーされている・・・ということで、それぞれの日本歌手のファンの方はご存じかもしれません。1940年生まれで存命だそうです。日本語で歌っている曲も聴いたことがあります。

当時 イタリアのサンレモ音楽祭は日本でも盛り上がっていて、たくさんのヒット曲を生みました。米国や日本のシンガーも多数参加していました。

Nessuno (英語では none という意味) 日本語にはない言葉
https://www.youtube.com/watch?v=4nHEqcRjVm8 

Amor mio 私の愛
https://www.youtube.com/watch?v=26AL1MimpsE 

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Tintarella Di Luna 月影のナポリ

オリジナル
https://www.youtube.com/watch?v=ccK1FifbczE 

森山加代子
https://www.youtube.com/watch?v=iWH6PCE02S8 

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Un Buco Nella Sabbia 砂に消えた涙

オリジナル
https://www.youtube.com/watch?v=3MqjsF6VRvk 

弘田三枝子
https://www.youtube.com/watch?v=BspPgnu39bk 

竹内まりや & 南こうせつ
https://www.youtube.com/watch?v=w9PXoBS-R10 

na Relo
https://www.youtube.com/watch?v=W37E-sR6JME

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wikipedia: ミーナ・マッツィーニ

こちら

 

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2025年3月24日 (月)

Walk down the memory lane 15: サイモンとガーファンクル 「水曜の朝、午前3時」

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Simon and Garfunkel
Wednesday Morning 3 AM (Live)

https://www.youtube.com/watch?v=PHiDVTk_8FY
https://www.youtube.com/watch?v=Mx-DPwKHbJw 

日本語訳

https://www.youtube.com/watch?v=A8cKMMpaQwM

サイモンとガーファンクルは1964~1970年に活躍したデュオですが、現在でもとても大勢の方々がカバーして Youtube などにアップしています。「Wednesday Morning 3 AM」は彼らのデビュー曲ですが、多くの人に愛されているとはいえ、サウンドオブサイレンス、明日にかける橋などにくらべると、それほど有名ではありません。なにしろさっき強盗してきた男の歌ですから。

サイモンとガーファンクルはやわらかくソフィスティケートされた美しいハーモニーで歌っていますが、ワイルドなブルーグラス風のアレンジで歌っている人たちもいて、歌詞の内容からしてそれもありだなと思います。

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ふたりで

Wednesday Morning, 3 A.M. 
Erik Benjaminsson
https://www.youtube.com/watch?v=z3fB5pmS8QQ 

Wednesday Morning, 3 A.M.
Bookends Minack Theatre
https://www.youtube.com/watch?v=oC07huLOpJY

Wednesday Morning, 3 A.M.
Moon Rambler & Johnny Parker
https://www.youtube.com/watch?v=orMXpL5Yjc4

Wednesday Morning, 3 A.M.
Agnes Eriksson Felicia Bellstrom
https://www.youtube.com/watch?v=dGv5oYYgpVs

Wednesday Morning, 3 A.M.
Jake and Dana Rohlfs
https://www.youtube.com/watch?v=lJak0I3l5S4

Wednesday Morning, 3 A.M.
Charlie Miller and Haley Seda
https://www.youtube.com/watch?v=pRwezV0xaXU

Wednesday Morning, 3 A.M.
Amelia Street
https://www.youtube.com/watch?v=4vt6J6lekJE

Wednesday Morning, 3 A.M.
Casey Wickstrom and Taylor Rae
https://www.youtube.com/watch?v=tQQ1y7A_Scg

Wednesday Morning, 3 A.M.
Anabela and Pedro Flynn
https://www.youtube.com/watch?v=RVBvolFt48A

Wednesday Morning, 3 A.M.
checkpoint:soul
https://www.youtube.com/watch?v=R_TALA62ha8

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ひとり二役

Wednesday Morning, 3 A.M.
Laura Currie
https://www.youtube.com/watch?v=MEzN9EVZypQ

Wednesday Morning, 3 A.M.
Jon Michael Swift
https://www.youtube.com/watch?v=sSZmYpvXFfA

Wednesday Morning, 3 A.M.
Yan Yansen
https://www.youtube.com/watch?v=N6P4yFcJRUc

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ひとりで

Wednesday Morning, 3 A.M.
Ivo Penders
https://www.youtube.com/watch?v=ogBimw4J8LM

Wednesday Morning, 3 A.M. *
an imaginary boy
https://www.youtube.com/watch?v=NgssQI4uEeg 

Wednesday Morning, 3 A.M.
Andrew Poirier
https://www.youtube.com/watch?v=81stlI7nM5k

Wednesday Morning, 3 A.M.
Scott Penick
https://www.youtube.com/watch?v=_WFc2aHcXJo

*I think it's nice

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Extra

April come she will 
Clémentine Dubost
https://www.youtube.com/watch?v=65e4ar1Rgtc 

April come she will
Chris Ulep
https://www.youtube.com/watch?v=c8dx4eLEc54

Kathy's song (Paul Simon)
Clémentine Dubost
https://www.youtube.com/watch?v=ONnpqVV1qc4 

 

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2025年3月22日 (土)

私の不思議ノート 3: 季節の異常

私の異常ではありませんが、地球の異常というのも困ります。地球が温暖化しているという説に異論はありませんが、なぜ北極が極端に温暖化しているのかがわかりません。しかも日本の冬は寒冷化しています。これもなぜだかわかりません。寒い冬がことさら嫌いな私のような人間はどうすればよいのでしょうか?

今年の冬ははじめての経験がかなりありました。ひとつはこんなこともあろうかと買っておいた湯たんぽを初めて使用。使いだすと手放せなくなりました。耳とボブテイルだけがついているシンプルなものです。この中身の充電ゲルを発明した人に感謝。

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このほか薄手のキルティングブルゾンを就寝専用として着て寝るというというのもはじめてでしたが、おかげで寒くて眠れない日はありませんでした。また夜に暖房器具は使わなくて済みました。とはいってもこんなにコンベクターを使ったのもはじめてです。もう20年位使っていますが故障はしません。ただコネクターは非常に脆弱で着脱には覚悟がいります。とても気まぐれで暖かい時もあれば、寒いのにいっこうに動かなくて忘れた頃に起動したりします。スイッチオン後、忘れたころに起動するのは新品の頃からです。

冬の間(昨日まで)、ヒヨドリやイソヒヨドリはベランダに来てよくパンくずを食べたり、物干しに留まって景色を眺めたり、仲良かったり悪かったりいろいろありましたが、そろそろモードが変わって行動範囲を拡大し、あまりベランダには来なくなる季節が近づいています。イソヒヨドリのオスは常にひとりで放浪しているそうですが、春にはまた数日間団地を訪問してくれるでしょうか?

 

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2025年3月20日 (木)

東京シティフィル演奏会(指揮高関xソリスト阪田)@ティアラ江東 

東京シティフィルはリハーサルを一部開放しているので、雷鳴と雪のなか昨日出かけた人もおられたそうで、彼らは本物のファンだと思います。本日は穏やかな天気で、久しぶりの住吉駅はA4のエスカレーターもピカピカの新品となって復活していてうれしい。途中に草野球場があって、そこのベンチでおにぎりを食べていると、カラスが一生懸命鳩を追っ払っていました、鳩は数が多いのでうざいのだと思います。お疲れさんと声をかけてティアラへ。

会場は今日も★完売★で盛り上がっています。

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高関さんはプレトークでベートーヴェン「皇帝協奏曲」は幸福感が肝だというお話をされて、まあそういわれるとソリストの名人阪田も心得ましたということで、そういう音楽をサラっとできてしまうのが名人たる所以です。特に第2楽章など柔らかいタッチでマシュマロみたいな演奏を聴かせてくれました。そしてさらにフルートの多久和さんが実に柔らかい音色でサポート。フルートでこんな音が出せるんだと驚きました。万雷の拍手で阪田さんのソリストアンコールもあり(ラフマニノフ)。

休憩後のくるみ割り人形がこれまた素晴らしい演奏。マエストロ高関の秘密のひとつはリズム感覚だと思います。たとえば「花のワルツ」で彼の手はぐるぐると円運動をするんです。これはブンチャッチャにならないように配慮しているのだと思います。チェレスタやハープも含めて、すべての楽器が生き生きと音を出していて大変感動しました。

終演後、外に出るとオケトラが待機していました。

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>斎藤健太君 奥様のお顔が欠けている写真をXにアップしてはいけません

 

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2025年3月18日 (火)

続・生物学茶話264:マウス脳のアトラス

私たちは左右相称動物ですが、ひとつしかない臓器もあります。代表的なのは消化管・消化管から派生した臓器・心臓・膀胱・ペニス・膣です。消化管は左右相称動物に進化する前からひとつだったと思われますが、それ以外はよくわかりません。では脳はどうでしょうか? 実はほとんど2つあると言っていいと思います。たとえば一つの出来事について記憶はひとつで良いのですが、海馬はきっちり2つあります。尾状核・被殻・淡蒼球・偏桃体・視床なども2つあります。大脳や小脳も構造を見ると実質2つあるといっていいと思います。大脳は脳梁、小脳は虫部という組織で左右がつながっている構造になっています。脳が2つあるという構造は魚類でも円口類でもはっきりしていて、さらに昆虫でも同様です。左右相称動物進化の最初期から脳があったわけではないので、なぜだかわかりませんが、この種の動物の行動様式にかかわる必然つまり収斂の結果かと思われます。

ですから脳の前後垂直断面(sagittal section)を正中線で制作すると、ほとんど空洞で主要なパーツはないということになります(図264-1、点線)。しかし困ったことに脳にはひとつしかないパーツ、たとえば脳下垂体、松果体、第3脳室などもあって、これらはすべて当然というか不都合というか真ん中にあります。このような問題があるので、説明用の脳の断面は一部パーツをずらして編集する必要があります。でなければ数枚の断面を表示しないといけません。

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図264-1 脳水平断面の正中線付近はほとんど空洞(リンパ液)

そういうわけで図264-2などは、実際とは少しずれがあるかもしれません。これはマウスの脳ですが、同じ哺乳類なのにヒトとは著しく見た目に違いがあります。しかし短い進化の期間に著しい変化も可能というのが脳という臓器の特性なのです。たとえば Gnothonemus petersii という魚は脳の体積の半分以上を小脳が占めるという、通常の魚類とはかけ離れた形態の脳を持っています(1)。一見して違うのはマウスの場合嗅覚に関係した部分が大きいことです。これはヒトの嗅覚受容体遺伝子が400種くらいなのに対して、マウスの遺伝子は1130種もあるということで(2)、においをかぐことに関してはマウスの方が圧倒的に優れていて、脳でも嗅覚関連領域が大きな部分を占めています。そのかわりヒトでは大脳皮質が巨大になっています。

嗅覚は得意ではないジャンルだといってもヒトにも嗅球が小さいながらも存在しますし、図264-2に示したすべてのマウス脳のパーツはヒトの脳にもあるので、サイズ(量)という点を除けば、それほど質的にはフレキシブルではないとも言えます。魚類の脳も延髄・橋・小脳・中脳・間脳・終脳で構成されており、嗅葉・海馬・偏桃体・大脳辺縁系も存在することがわかっていて(3)、脊椎動物の始まりの頃に主要な構成は完成されていて、あとはどのパーツが強化されたり、弱体化したりというバラエティーが生じたに過ぎないという考え方もできます。とりあえず脳は「嗅球・大脳皮質・脳梁・基底核群・海馬・視床・視床下部・中脳・小脳・橋・延髄」という11のパーツ(図264-2)に分けることができます。

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図264-2 マウス脳の垂直断面(sagittal section)

マイクロソフトの設立者のひとりでもあるポール・アレンは、2003年に1億ドルを寄付してシアトルにアレン脳科学研究所を設立し、マウスや人間の脳の切片画像を集めたアレン脳地図(Allen Brain Atlas)を制作して無料で公開しています(4)。これによって世界の脳科学者はとてつもない恩恵を受けています。

アレン脳地図は無数の切片にひとつひとつキャプションをつけた膨大なものですが、その1枚に日本語を付けたマウス脳のひとつの縦断面を図264-3に示します。ヒトの脳アトラスでは、あまりにも新皮質(大脳皮質)が巨大なために気づかないのですが、マウスのアトラス、たとえば図264-3をみると尾状核被殻・側坐核・淡蒼球・嗅結節が大きな存在感を示しています。またここでは一部しか見えていませんが、線条体も実は大きなスペースを占めています。これらの大脳基底核群はハウスキーピングな脳の機能にかかわるだけでなく、高度な機能を付加する上で重要な役割を果たしていると思われます。

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図264-3 アレンの脳アトラス(マウス脳のひとつの垂直断面)

図264-4は嗅葉から小脳にかけて少し斜め上に切った切片の模式図です。なので側坐核とか視床下部は見えていません。マウスの脳の中心が視床と中脳であることがよくわかります。また脳全体のサイズに比べて小脳のサイズが大きいことがわかります。彼らは豊かな嗅覚と優れた運動能力を武器にして生きているのでしょう。脳のどの部分が発達しているかによって、動物はそれぞれの世界観や生き方・感じ方が全く異なります。ジャネット・ジョーンズは「脳の仕組みを理解すれば、馬が思い通りに動いてくれないのも、まるで自分の心を察しているかのように動いてくれるのも、すべて脳の原則通りなのだと実感できるでしょう」と述べています(5)。

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図264-4 マウス脳の水平断面(模式図)

脳科学において核というのは中枢神経系における神経細胞の集合体を指します。図264-5はアレンのマウス脳地図(6)の1断面から視床をとりあげて、各部位の名前を付けた図ですが、ここで困るのは多くが背腹・前後・外内に「側」という接尾語をつけて名付けられていることです。どの順番になるかはわかりませんし、側をつけない場合もあります。すなわち順不同ということで、それぞれの教科書や文献によって名前がバラバラで略号も統一されていません。学術用語がこんなにいい加減なのは珍しいことです。その場その場で文献の定義にしたがって判断するしかありません。また図263-5についていえば、これは1断面なので見えていない部分もあります。

視床は感覚器官・大脳基底核・大脳皮質などをつなぐ中継部位であり、脳が高度の機能を持つにしたがってその配電盤としての機能は複雑になり重要さは増すことになります。視床各部位の機能は種によっても大きく異なります。たとえば前頭前野を持たない馬のような生物では前頭前野へ投射する、および前頭前野から投射する部位は無いはずです。

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図264-5 アレンのマウス脳アトラスから視床付近の垂直断面

ヒトの脳は言語・科学・芸術を行う上で圧倒的に秀でていますが(残念ながら政治を行うにはまだまだです)、道を歩いていて周りに何があるかには鈍感で気が付かないことが多いですし(5)、嗅覚は貧弱、身体能力も貧弱、視野は前方のみ、磁場感覚もありません(多くの哺乳類も磁場感覚を持っていることが分かっています、7)。ジャネット・ジョーンズによると、ヒトは道を歩くときその目的にとらわれて、周囲に何があるか見逃すことが多いそうですが、私もその経験があります。笛吹川の東沢を歩いて西沢渓谷へ行く道を探していたところ、はっと気が付くと周りで多数のマムシが河原の石の上で休んでいました。噛みつかれたら死んでいたかもしれません。これが人間の脳の弱点の一つです。

動物はそれぞれ特徴のある脳を持っていて、それぞれの感覚でそれぞれの脳世界で生きています。それをよく理解しながら共存していく道をさぐるのも科学そして政治の役割だと思います。

参照

1)続・生物学茶話214: 弱電魚の小脳
https://morph.way-nifty.com/grey/2023/06/post-2c8c8e.html

2)生命科学DOKIDOKI研究室 第13話 味覚の進化を探る
https://www.terumozaidan.or.jp/labo/manga/13/report.html

3)m's Academe 魚の脳
http://m-ac.jp/living_being/animal/chordates/vertebrates/fish/brain/index_j.phtml

4)ALLEN BRAIN MAP Accelerating progress toward understanding the brain.
https://portal.brain-map.org/#

5)島田明宏 熱視線 馬と人間の脳の違いが面白い
https://news.sp.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=50756

6)ALLEN BRAIN MAP
https://atlas.brain-map.org/atlas?atlas=2#atlas=2&structure=596&resolution=9.31&x=7767.999945746527&y=4023.9999728732637&zoom=-3&plate=100883869

7)「渡り鳥」の磁場感覚、哺乳類にも存在すると判明
https://wired.jp/2016/02/26/magnetic-field-perception-dog-eyes/

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