カテゴリー「私的コラム(private)」の記事

2020年1月18日 (土)

フォード vs フェラーリ

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フォードvsフェラーリという映画を見てきました。1966年のル・マン24時間レースとその裏側を題材にしたドキュメンタリーに近い作品ですが、フォードのドライバー:ケン・マイルス役のクリスチャン・ベイルが素晴らしかった。彼は商売第一の会社組織の中でも、夢とロマンに生きる余地は必ずあるということを、実話だけに大きな説得力で示してくれました。

当時のル・マンのコースや観戦スタンドなどの雰囲気を実物を建設して忠実に再現するというのはさすがにハリウッド。監督(ジェームス・マンゴールド)はじめスタッフの心意気を感じる映画です。もちろん近代兵器のドローンなども使ってレースの迫力もたっぷり見せてくれます。しかしものすごい数のスタントマンを使って、実際のレースをドライバー目線でみせてくれるというのがこの映画の本当に凄いところです。この映画自体がスタッフの夢とロマンなのでしょう。CGなんてくそくらえ・・・かな?。

車デザイナー役のマット・デイモンはどちらかというと、ベイルの存在感をサポートする立場に徹している感じです。フォードの社長はレーシング・カーに乗せられたときの顔がすごくて、これは一見の価値があります。ヒール役の副社長もいいですね。この映画を一番盛り上げてくれたのは彼の演技かもしれません。ベイルの妻の暴走運転はわざとらしいエピソードで、ドキュメンタリータッチのこの映画で唯一の汚点でした。

マット・デイモンが最初に買った車はホンダ・アコードだそうで、いかにも彼らしいなという感じがしました。彼の出世作のボーン・アイデンティティーは深く印象に残った作品で、今でもよく冒頭の港町のシーンを思い出します。

映画館に行かないとル・マンの迫力は味わえないという意味で、この映画は小さな画面ではなく大スクリーンでの鑑賞をおすすめします。

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2020年1月17日 (金)

ゴーンの逃亡劇に思う

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日産のサニーはいい車でした。10年くらい乗りました。そのあとプリウスなども使いましたが、使い勝手はサニーが一番しっくりくる感じでした。人間の感覚に寄り添った設計になっていたからだと思います。プリウスは何か違和感があって車との一体感が生まれず、いつも乗せていただいているという感覚が断ち切れませんでした。

日本政府特に経産省が戦略的に関わってきた産業政策はことごとく失敗してきました。製鉄・造船・航空機・原発・携帯電話・半導体・液晶などすべて壊滅的な結果を招いています。カジノもどんどんミソがついて、利益は米国に吸い上げられ、結局博打脳の人間が増えただけで終わりそうです。

たとえばなかでもましな方の造船についても、エキサイトニュースによると「 1990年代半ばまで30年強にわたって日本が世界の造船市場の主役を務めた。まさに“造船王国ニッポン”だったが、韓国勢が追い上げてきた。日本勢が国の指導で設備を縮小するなか、韓国側は90年代後半から大々的に設備を拡張。安値受注で日本勢を駆逐し、一気に市場を奪っていった・・・中略・・・造船の花形は、1隻当たりの船価が200億円程度と高く技術的にも難しい液化天然ガス(LNG)運搬船だ。かつて日本勢の十八番だったが、16年以降は1隻も受注していない。韓国の業界関係者によると、日本勢が成長の柱に掲げる単価の高い液化天然ガス(LNG)運搬船は、19年年始の受注残が現代重工と大宇海洋の2社で世界の約6割(72隻)を占める」(1)ということになっています。

自動車産業は最後の砦的な位置にありますが、それも日本では斜陽産業で、イージスアショアをはじめとして恐ろしいほどの税金を貢いで米国に買ってもらおうとしているのが現状です。この政策も今までの例から考えれば失敗に終わるでしょう。

日産もそのなかに巻き込まれているわけですが、これも会社や政府がルノーにとりこまれるのを嫌がって策を弄したのがゴーン事件でしょう。政府が関わった重大事件の容疑者なのに、警察が監視していないというのも間抜けな話です。弁護団の責任追及なんて八つ当たりに過ぎません。

さっさとルノーに日産を取り込ませた方が結果は良い方に出たという気がしてしかたありません。それは最初に述べたように、政府は産業政策については常に失敗をくりかえしているので、日産の独立性を確保しようとした政策もおそらく失敗に終わるだろうと予想するからです。

(1)エキサイトニュース こちら
https://www.excite.co.jp/news/article/Bizjournal_mixi201905_post-15347/

 

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2020年1月13日 (月)

u23 サッカー 東京オリンピック

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私はJリーグの試合はたまにイニエスタがどうしているのかを見るくらいで、どんな選手がいるのかもよく知らないのですが、u23のオリンピック予選は2試合とも見ました。まあ日本は開催国枠で出場できるので本気度が足りなかったのでしょうが、科学だけでなくサッカーでも没落してきたのかと少し悲しくなりました。

代表の選手を見て、どうも特徴ある選手、例えばドリブルで1人は抜けるとか、足が速いとか、ヘディングが得意とか、ポストプレーが得意とか、そういう選手がいないんですね。あとペナルティーエリア内での守備が軽率とか、下がって守られたときの攻撃に決め手が無いとかも敗因なのでしょう。

特別な特徴ある選手がいないので、オーソドックスなフォーメーションでオーソドックスな作戦しかできません。ですが久保が加われば、彼は他の選手を使うという特技と足下の技術があるので、結構このチームでもそこそこいけるのではないかとは思います。上田のような選手は久保のようなラストパサーがいてこそ生きる選手でしょう。

ただシリア戦の2点目のように、ドリブルしている選手と「よーいどん」で、フリーに走るDFが振り切られてしまうというのはいただけません。これはなんとかしなくては・・・。

 

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2019年12月26日 (木)

シェルドン・アデルソンという男

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シェルドン・アデルソンという男がいます。彼はユダヤ系の貧困家庭に生まれ、若い頃からいろんな商売をして財をなした、たたき上げのビジネスマンです。ウィキペディアによるとトランプ大統領の有力なスポンサーのひとりです。

https://en.wikipedia.org/wiki/Sheldon_Adelson

アデルソンはシオニストなので、トランプがイスラエルに異常な肩入れをしているのはある意味当然でしょう。そのアデルソンが今何をやっているかというと、ラスベガスのカジノ・リゾートのCEOです。彼は世界各地のカジノ・リゾートを経営しており、日本でも統合型リゾート=インテグレイテッド・リゾート(IR)をやろうとしています。

ここからは私の想像です。

そこでトランプは恩義あるアデルソンのために安倍政権に圧力をかけ、IR建設をやらせることにしたわけです。トランプにはひとつ心配がありました。それは厳しく対立している中国が、大統領の資金源を断つためにちょっかいを出してくるのではないかということです。トランプとしては中国にカジノ利権を横取りされてはたまらないので、その可能性をつぶしておきたいところです。

特捜や文春がどのくらいトランプ政権と通じているかは知りませんが、中国とのブローカー役をやっている国会議員のルートを潰しておくと安心です。しかもこの件には野党まで協力してくれます。特捜は久しぶりに国会議員を逮捕できましたし、文春はもうかるし、トランプは恩義をかえせるしで万々歳ですか? そういう事情なので、IRは決してひっくりかえることはないでしょう。築地か豊洲が有力と言われています。

損したのは安倍政権で汚染イメージがつくというダメージを受けました。それを甘受しても、車を米国に売ることの方が重要なのでしょう。白須賀も歯医者をやっていれば良い人生が送れたろうに、ポスター剥がしからはじまって、どうしてこんな小悪党みたいな役回りになってしまったのか、自業自得なのでしょう。

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2019年12月17日 (火)

東京芸術劇場はじめての方に

池袋駅の地下はかなり複雑ですが、要は東口と西口をつなぐ通路が北と南に2本あるというのが基本構造です。

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芸術劇場に行く場合南通路を西側に進み、地図で赤で示したA地点↓ に進みます。

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さらに進むと地図のB地点↓ 。

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右端にエスカレータが見えますが、この短いエスカレータに乗るとEchikaのパネルが見えC地点↓ に進みます。

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この先にPatio de Metro という喫茶店があり、その角を左折すると芸劇の地下に出ます。エスカレータで1Fに上がり、そこからエスカレータを2本乗り継いで6Fに上がれば東京芸術劇場コンサートホールの入り口に出ます。この経路でいけば寒さや風雨を回避できます。

副都心線で来たことはありませんが、最初の地図の連絡通路を使えば、最後の写真の場所に反対側から到達するはずです。やはり Patio de Metro を目標に来れば間違いありません。

時間が余ったときのコーヒーは地図5番通路の星乃珈琲店または亜麻亜亭、お食事なら芸術劇場1Fのベル・オーブがおすすめです。


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2019年11月16日 (土)

これはあかんやろ

例の桜を見る会

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これはさすがにあかんやろ(指に注意)

沢尻はワイドショーの視線をそらすためにハメられたのかも

解説 http://www.asyura2.com/19/senkyo267/msg/387.html

 

 

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2019年11月14日 (木)

ほんとに電話かけるのか?

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杉尾秀哉参院議員は「立憲・国民 新緑風会・社民」という会派の議員ですが、国会での質問中に安倍総理に「共産党!」というヤジを飛ばされました。ヤジを飛ばすのは印象操作・イメージ植え付けか、ただ品性下劣なだけなのか? いや、それだけではすまない深層がこの事件にはかくれています。これは安倍総理が会場を混乱させて質問時間を浪費し、都合の悪い質問を回避するためにわざとやったことだと思います。その都合が悪い質問とは・・・

質問時間が無くて、最後に杉尾氏が発した言葉が示唆しています
「報道機関の現場記者やデスクキャップに総理大臣が自ら電話をしてこのニュースを流せ、この論調はおかしい、どうして報道しなかったんだ、こういう電話をしています。はっきり申し上げておきます。」 最後になってしまったので、総理がやったかやってないかの答弁は聞けずじまいです。ヤジが功を奏したわけです。

あのトランプだってツイッターでわめくだけなのに、現場記者に電話をかけるなどと言うのは、やったとすればどうみても職権乱用です。かかってきた電話は録音しているでしょうから証拠はあるでしょう。ただ特定されるとひどい目にあう恐れがあるので、出し方は難しいと思いますが。

もうひとつ言わせてもらえば、安倍政権が決定的にダメなのは公文書・会議議事録の改ざんです。先日も経団連会長の発言を削除したというのが話題になっていましたが、私は団地管理組合の理事会議事録を作成するときに、官庁の議事録を参照したことがあります。数年前までの官庁議事録は発言者のことばを「おはようございます」からはじまって、一字一句きっちりとおそらく録音通り掲載してあり、1時間の議事でもA4で10ページくらいのきちんとしたものでした。でなければあとで自分の発言が記録されていないと抗議されるからだと思います。これならあとで文句をつけられません。

ところが最近は森友学園事件などで明らかになったように、政府に都合の悪い記述は削除する、改ざんする、などの決してやってはいけないことが日常的になりつつあるようです。そりゃあ実名が出て都合が悪いような内容は、情報公開時に黒塗りするようなことはあり得るとしても、削除や改ざんは決して許されるものではありません。官僚ももちろんやりたくてやっているわけではなく、官邸の指示があるからこそやっているはずです。忖度だけで削除や改ざんなど怖くてできるはずがありません。これだけでも完全にアウトです。政治をやる資格はありません。

どうしてこんな政権が長い間続いているのか、私には全く理解できません。

参照

https://www.excite.co.jp/news/article/Litera_litera_10099/
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191108-11080802-nksports-soci
https://togetter.com/li/1428540
http://www.asyura2.com/19/senkyo267/msg/321.html

https://www.asahi.com/articles/ASL317533L31UTIL060.html

http://www.tatsumi-kotaro-jump.com/parliament_question/%E6%94%B9%E3%81%96%E3%82%93%E5%87%A6%E5%88%86%E8%BB%BD%E3%81%99%E3%81%8E%E3%82%8B-%E3%80%8C%E6%A3%AE%E5%8F%8B%E3%80%8D%E6%96%87%E6%9B%B8%E3%80%80%E8%BE%B0%E5%B7%B3%E8%AD%B0%E5%93%A1%E3%81%8C%E8%BF%BD/

 

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2019年11月 9日 (土)

「大丈夫です」ってどういう意味?

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最近私もよく使うようになった日本語に「大丈夫です」というのがあります。でも何か違和感がつきまとっていて、この原因を解明したくなりました。

この言葉がよく使われるのは、相手の親切なオファーを断るときです。

例えば

「席を譲りましょうか?」「大丈夫です=No」
「クーポン出しましょうか?」「大丈夫です=No」
「スプーンつけましょうか?」「大丈夫です=No」
「お金を少し融通しましょうか?」「大丈夫です=No」

でも
「ちょっとお金が足りないから、払っておいてくれますか」「大丈夫です=Yes」
「明日の5時に有楽町でお会いしましょう」「大丈夫です=Yes」
「君はフルート奏者だけど、今度はピッコロを吹いてほしい」「大丈夫です=Yes」

つまりオファーした人が損をする場合はNo
得する場合やオファーした人の都合に合わせる場合はYesとなるようです。

状況によって意味が正反対になるというのは気持ち悪いですが、ですから状況が不明な場合は使ってはいけない言葉になります。

たとえば「結婚してくれませんか」というオファーは、微妙です。「大丈夫です」と答えるとYesなのかNoなのかよくわかりません。

日本語の「はい」は本来「あなたの意見に同意またはしたがいます」という意味であって、Yesではありません。

たとえばあなたが日本人だった場合、
「あなたは日本人じゃないですよね」と訊かれたら、「いいえ、日本人です」
「あなたは外国人じゃないですよね」と聞かれたら、「はい、外国人ではありません」

というのが正しい使い方です。英語の影響でだんだん「はい」「いいえ」が相手に関係なく、自分本位の「Yes」「No」になっていくのは残念です。

「大丈夫です」というのも、その場の状況で意味が変わるというのは日本的で奥ゆかしいと考えていいのかな?

 

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2019年11月 6日 (水)

プレビュー2 第4章 生命を構成する物質 61.酵素 I

現在このあたりまで進行中です。いろいろあって順調に進んでいるとはいえませんが、少しづつ進めています。

 

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図61-1
ルネ・レオミュール
(1687~1757)

 酵素を誰が発見したのかというのは、特定の人物を指定することがやや難しい問題です。歴史をたどっていくことにしましょう。
 1752年、フランスの科学者ルネ・レオミュール(René-Antoine Ferchault de Réaumur、図61-1)は、消化されなかった食べ物を吐き出す習性があるトンビに目を付け、金網で囲った肉を食べさせて、はき出した金網の中の肉が溶けていたことを確認ました。さらにスポンジ(当時のことですから海綿)を食べさせて、はき出したスポンジから胃液を集め、その胃液に肉片を浸すことで肉片が溶けることも観察しました(1-2)。この結果からレオミュールは、胃液には肉を分解する物質が含まれると考えました。
 レオミュールという人は偉大な昆虫学者で、全六巻からなる大著「昆虫誌」(3)を出版しました。もちろんフランス語ですが、オープンライブラリーで閲覧可能なようです。
 レオミュールの観察を受け継いだのは、イタリア人のラッザロ・スパランツァーニ(Lazzaro Spallanzani, 図61-2)というとてつもない科学者でした。彼はレオミュールの実験をさまざまな動物で追試し、吐き出した海綿中に消化を行う物質があることは間違いないという確信を持ちました。それからが彼の異常なところで、1776年に同じ実験を自分自身の体を使って追試してみようと考えたのです。といっても思いつきでやってみたのではなく、イヌやヘビに布袋を飲ませようとしてかみつかれるなどの困難に直面した後の苦渋の決断だったようです。

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図61-2
ラッザロ・スパランツァーニ
(1729~1799)

 スパランツァーニはまず布袋にパンを入れて飲み込み、排泄された布袋の中からパンが無くなっていることを観察しました。次に竹を削って木筒をつくり、そのなかにパンや肉片を入れ、小さな穴を開けた木筒を布袋に入れて飲み込みました。出てきた木筒の中の食物はなくなっていました。
 これによって胃ですりつぶされて食物が粉々になったためになくなったわけではないことが証明されました。木筒に骨を入れた場合は、消化されずにそのまま出てきました。このような実験を多数繰り返して、スパランツァーニは胃には鳥類の砂嚢のように食べ物を粉々にする作用はなく、胃液に含まれる因子によって食べ物が消化されるのだという確信を持ちました。
 しかしもう一押し、胃液を取り出して、その中で食べ物が消化されるのを見たいと思うのは、科学者として必然のなりゆきでしょう。そこからがまた彼の凄いところで、指をノドに突っ込んで自分の胃液をはき出すトレーニングをして実行したのです。そして実際に自分の胃液の中で肉が消化されるのを観察しました。それは腐敗とは違うことも確認しました。さらに前記の肉片の入った木筒を飲み込み、しばらくして吐き出すという名人芸も会得し、中を調べてみると肉片が消化されかかっていました。

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図61-3
「自分の体で実験したい」Leslie Dendy and Mel Boring 著 梶山あゆみ訳、紀伊國屋書店(2007)

 スパランツァーニが一連の自分の体を使った人体実験から得た結論は、「消化は機械的粉砕や微生物による腐敗や発酵ではなく、胃液が促進する通常の化学反応だ」 というものでした。彼の功績は「自分の体で実験したい」という本に詳しく記してあります(4)。この本の表紙を図61-3に示しました。布袋を飲み込みつつあるスパランツァーニの姿が表紙になっています。
 私も購入して通読しましたが、この本にはスパランツァーニ以外にも、自分をモルモットにして命がけで実験をした大勢の科学者の業績が記されています。命を落とした人もいるということで合掌・・・・・。
 18世紀におけるレオミュールやスパランツァーニの偉大な実験にもかかわらず、多くの科学者が酵素の存在を確信するまでには、さらに1世紀もの長い時間が必要でした。19世紀に入ると、まずパヤン Anselme Payenとペルソ Jean Francois Persoz (図61-4) が、麦芽抽出液からデンプンをグルコースに分解する酵素を分離しジアスターゼと名付けました(1833年、5)。これは現在ではアミラーゼと呼ばれています。

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図61-4
アンセルム・パヤン
(1795~1871)とジャン・フランソワ・ペルソ(1805~1868)


 スパランツァーニの研究もいくつかの研究室で引き続き発展しました。1834年ヨハン・エベールは乾燥させた胃の粘膜から消化能力のある溶液を調製することに成功しました。その溶液で処理すると、卵白アルブミンは溶けてしまうだけではなく、検出できなくなりました。細胞説で有名なテオドール・シュワンはエベールの実験結果に注目し、1836年に胃液に含まれる成分がアルブミン以外のタンパク質も分解することを確認して、ペプシンと命名しました。しかしそのペプシンを精製することはできませんでした。19世紀の生化学で優勢だったのは、パスツールが証明した「生物は生物からしか生まれない、そして発酵や腐敗は微生物によって行われる」という考え方で、消化もやはり微生物の作用あるいは何らかの生命力によると思われていましたが、一方でパヤン&ペルソらの酵素の作用による有機物の化学変化もまた無視できないという隔靴掻痒の状況にありました。

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図61-5
エドゥアルト・ブブナー
(1860~1917)

 そうした中で、1897年エドゥアルト・ブフナー(Eduard Buchner, 図61-5)がすりつぶした酵母をろ過した抽出液(無細胞抽出液)の中で、糖が発酵してアルコールと二酸化炭素になることを発見したことは大きな衝撃でした(6)。すなわち生きた細胞がいなくてもアルコール発酵が行われることが証明されたことになります。
  これは大変重要な実験でした。なぜならこれで生気説は否定され、有機物の生成や分解も普通の化学変化にすぎないという考え方が勝利したからです。ブフナーは1907年にノーベル化学賞を受賞しました。しかしその10年後に第一次世界大戦で従軍し、戦死しました。

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図61-6
ジョン・ハワード・ノースロップ
(1891~1987)

 最終的に酵素がタンパク質であるということが証明されたのは20世紀も深まってからでした。1919年に米国の化学者ジョン・ノースロップ(John Howard Northrop, 図61-6)はペプシンを単離して結晶化し、それがタンパク質であることを証明しました(7-8)。ノースロップは1946年にノーベル化学賞を受賞しています。
  結論的に言えば、酵素の発見は誰がというより、ここで述べた科学者達を中心とした多くの科学者達が、200年近くの歳月をかけてなしとげた業績です。
 酵素の作用機構についてはすでに1894年からエミール・フィッシャーが「鍵と鍵穴」説を発表しており(9)、現在でも当たらずといえども遠からずという評価を受けていて、説明にはよく用いられます。すなわち酵素には基質(=鍵)を凸とすると凹の形態を持った鍵穴があり、そこに基質を収納すると基質がケミカルアタックを受けて生成物に変化するという考え方です(図61-7)。

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図67-7
エミール・フィッシャーの鍵と鍵穴説

 

 この過程を、レオノア・ミカエリスとモード・メンテン(図61-8)は次のような化学式で表現しました。

酵素 (E) + 基質 (S) ⇔  酵素基質複合体 (ES) → 酵素 (E) + 生成物 (P)
E: enzyme,  S: substrate,  ES: enzyme-substrate complex,  P: product

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図61-8
レオノア・ミカエリス
(1875~1949)とモード・メンテン
(1879~1960)


 ここで重要なのはE+S⇄ ESの1段階目の反応は可逆的なのに、2段階目のES→E+Pという反応は不可逆的だということです。もしそうでなければ、デンプンを分解してブドウ糖を生成しエネルギー源として利用しようとしても、ブドウ糖がある程度たまるとデンプンに逆戻りしてしまうという不都合が発生します。ただし生成物が少量で良い時などには、フィードバック制御という別プロセスで酵素に阻害がかかり、反応が停止するということはあります。
 酵素は触媒の1種ですが、金属触媒などを用いた無機化学反応と違って、基質濃度を上昇させてもあるところで頭打ちになってしまいます。基質濃度を横軸、反応速度を縦軸としてグラフを描くと図61-9のようになります。

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図61-9
基質濃度と反応速度

基質濃度を上げても、比例的に反応速度が上昇することはなく、頭打ちになる。

1913年にミカエリスとメンテンは、このグラフを数式で表現する、ミカエリス・メンテンの式を発表しました(10、図61-10)。

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図61-10
ミカエリス・メンテン式


 図61-9において、最大反応速度はVmax、その2分の1の反応速度で反応が進行しているときの基質濃度をKmとしています。ミカエリス・メンテン式において、[S] = Km とすると、v = 0.5 x Vmax となります。ミカエリス・メンテン式の導出のしかたについて興味がある方はサイト(11)を参照して下さい。
 本稿でもうひとつ触れておきたいのは、酵素が化学変化の過程において、活性化エネルギーを低下させるということです。物質Aは自然に自由エネルギーが低い物質Bに変化していくことは、熱力学の第2法則が示していますが、それでも物質Aが存在しているのは、物質Bに変化するために要する時間が無限大に近いことによります。酵素は物質A(基質=S)が物質B(生成物=P)に変化するために必要な、活性化エネルギーのレベルを下げる作用を持っています(図61-11、赤線)。このことによって変化に必要な時間を著しく短縮することができるので、生命現象に必要な化学変化を現実的な時間で実行することが可能になるわけです。

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図61-11
酵素はSがPに変化するために必要な中間段階の自由エネルギーレベルを引き下げる効果を持つ

酵素と基質が結合することによって(ES)、反応中間段階に到達するための活性化エネルギーが少なくなる(赤線)。


参照

1)ウィキペディア: ルネ・レオミュール
2)http://contest.japias.jp/tqj2005/80064/kousohakkenn.html
3)René-Antoine Ferchault de Réaumur, Memoires pour servir a l'histoire des insectes. A Paris : De l'imprimerie royale (1734) 
https://archive.org/details/memoirespourserv01ra
4)「自分の体で実験したい」 原題:Guinea Pig Scientists、 Leslie Dendy and Mel Boring 著 梶山あゆみ訳、紀伊國屋書店 (2007)
5)A. Payen and J.-F. Persoz, "Mémoire sur la diastase, les principaux produits de ses réactions et leurs applications aux arts industriels" (Memoir on diastase, the principal products of its reactions, and their applications to the industrial arts), Annales de chimie et de physique, 2nd series, vol. 53, pages 73–92 (1833)
6)Eduard Buchner, “Alkoholische Gärung ohne Hefezellen (Vorläufige Mitteilung)”. Berichte der Deutschen Chemischen Gesellschaft. vol. 30,  pp. 117–124 (1897)
7)Northrop J.H., Crystallin pepsin., Science vol. 69,  p. 580 (1929)
8)P. A. Levene, J. H. Helberger, CRYSTALLINE PEPSIN OF NORTHROP, Science Vol. 73, Issue 1897,  pp. 494 (1931) DOI: 10.1126/science.73.1897.494
https://science.sciencemag.org/content/73/1897/494.1.long
9)Emil Fischer, Einfluss der Configuration auf die Wirkung der Enzyme. Berichte der deutschen chemischen Gesellschaft, Volume 27, pp. 2985–2993 (1894)
10)Michaelis, L.,and Menten, M., Die kinetik der invertinwirkung, Biochemistry Zeitung vol. 49, pp. 333-369 (1913)
11)ウィキペディア: ミカエリス・メンテン式

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2019年10月22日 (火)

コーヒーの木 2年目

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このコーヒーの木を育てて2年目になります。今年は7月に非常に夏らしい日々が続いたのでよく育ちました。

いままで1年目で2回失敗したのは寒いのに外に出したままだったせいで、コーヒーの木は特に寒さに弱いことはわかっていたのですが、一方で直射日光が当たるのを好む植物でもあり、取り込むタイミングが遅れてしまいました。今回はなんとか1年目を乗り切って2年目となったので、豆を収穫できるまで育てたいと思います。

臼井の駅の近くにあるカフェのご主人に聞くと、3年目くらいから実をつけるだろうということでした。来年が楽しみです。

左側にあるのはシュウメイギクで、これは菊ではなくアネモネなのです。まったく紛らわしい名前をつけてくれたものです。

https://app.cocolog-nifty.com/cms/blogs/203765/entries/new

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