カテゴリー「動物(animals)」の記事
2022年2月10日 (木)
2022年1月19日 (水)
ホタルとクラゲから発展した科学
マーク・ジマーの「光る遺伝子」という本を買いました。文章を読めばだいたいどんな人かはわかります。彼は天才にありがちな、思考があっちこっちに飛び回って、凡人がついていくのが大変というタイプの人です。個々の事実をひとつひとつじっくり検証していくということはしないので、細かいことにはあまりこだわらない方が良いと思います。
それでもちょっと気になるのは、「ホタルは日本では18世紀から詩歌に詠まれている」という記述で、そんなバカなことはないだろうと思って調べてみると、意外にも万葉集でホタルを歌った歌はひとつだけだそうです。
歌人・朝倉冴希の風花DIARY ~花と短歌のblog~
【万葉集】「蛍」を詠んだ唯一の長歌
https://dasaan.xsrv.jp/archives/15439
万葉集の時代には夜外を歩くのはあまりにも危険だったし、その様な習慣もなかったからと思われます。平安時代になると「夜這い」が習慣になって、夜も普通に人が出歩くようになり、ホタルもポピュラーになったのでしょう。源氏物語には光源氏が女性の姿を際立たせるためにホタルを放ったという話が出てきます。和歌も数多く、ひとつだけ選ぶと。
物思へば沢の蛍もわが身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る
和泉式部
ところでサイエンスの観点からちょっと面白いと思ったのは、1753年にマサチューセッツ州知事のジェームス・ボードンという人が、燐光を発する海水を布で漉すと光らなくなると手紙をベンジャミン・フランクリンに書いて、それでフランクリンは海水の発光は電気現象だという自説をひっこめて生物発光説に転換したという話です。
驚いたのは私が最も尊敬する科学者のひとりであるラッザロ・スパランツァーニがクラゲの発光について重要な記述をしていることでした。スパランツァーニは自分を実験動物にしてさまざまな実験を行った、18世紀の狂気の科学者として有名な人です。
http://morph.way-nifty.com/grey/2017/02/post-b151.html
彼は死んだクラゲが雨に当たると発光する、牛乳を垂らすとものすごく明るく発光すると記しているそうです。これはおそらくカルシウムのせいでしょう。
このあとは現代科学のお話になりますが、逸話満載で光生物学に関心がある向きにとってはとても面白い本だと思います。
2021年6月24日 (木)
シモフリスズメ
珍しい夜の訪問者。シモフリスズメ (Psilogramma increta ) というスズメガの一種のようです。10cmクラスの大型の蛾です。個人的には非常にかっこいい蛾だと思いました。特に珍しい種類ではないようですが、私は初めて見ました。どうしてうちの玄関前で休んでいたのでしょう? 手でつかめそうなくらいゆったりと休んでいました。
ウィキペディア:こちら
2021年4月30日 (金)
南西諸島で新種のゴキブリが発見されたそうです
この昆虫はなにでしょう?
これは Therea petiveriana というゴキブリです。インドにいるらしいです。日本には57種類のゴキブリがいるそうですが、最近新種が2種みつかって59種類になりました。ゴキブリと言えばキッチンをごそごそしているというイメージですが、実はヒトの眼にふれることもなく、深山幽谷でひっそり朽ち木などを食べて生きている者も多いようです。
今回発見されたのはウスオビルリゴキブリとアカボシルリゴキブリで下の記事に写真も出ています。
https://www.yomiuri.co.jp/science/20201227-OYT1T50024/?from=yartcl_outbrain1
色の基調はブルーメタリックだそうですが、それが記事の写真ではよくわかりませんでした。残念。実物はとても美しいものなのでしょう。35年ぶりの新種発見だそうでおめでとうございます。
原著論文は https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33639723/
Shizuma Yanagisawa et al., Zool.Sci., vol.38, pp.90-102 (2021)
(写真は wikipedia より)
2020年6月29日 (月)
オナガの長逗留
オナガというのは不思議な鳥です。東アジアとイベリア半島だけに棲息し、最近では西日本からいなくなり、日本では東日本だけに棲息するそうです。ウィキペディアには留鳥と書いてありますが、私は同じ場所に長くいるオナガを見たことはありません。せいぜい1ヶ月くらいで他の場所に移動する場合が多いです。
うちの団地にも毎年群れでやってきて1ヶ月くらいでいなくなるのですが、今年は5月初めに来てもう2ヶ月も長逗留しています。ガーガーうるさいのでうちの団地に住み着いている鳥たち(スズメ・カラス・キジバト・ムク・ヒヨ・ハクセキレイなど)にとっては大迷惑だと思います。他に夏だけいて子育てするのはイワツバメくらいでしょうか。旅の途中で短い期間だけ立ち寄る鳥はいろいろいます。毎年来るのはメジロ、ウグイス、シジュウカラあたり。たまにサンコウチョウも来ます。まだ開発途中の頃にはヒバリやハヤブサも来ていました。
どうして今年はオナガが長逗留しているのか、理由はわかりません。ただコロナのせいで市や団地の行事がほとんど中止になっているので、例年に比べて静かな感じはします。
2020年2月 1日 (土)
新型コロナウィルス
中国疾病対策センターの研究者は29日、英医学誌ランセットに論文を発表し、これまでに得られたデータはコウモリを最初の宿主とするウイルス(bat-SL-CoVZC45 および bat-SL-CoVZXC21) と酷似していると指摘しました。
原著論文
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30251-8/fulltext
ニュース:https://www.cnn.co.jp/world/35148686.html
中国疾病対策センターの研究者は、データを分析した結果、コウモリから別の野生動物を介してウイルスが人間に広がった可能性が示されたと指摘しました。しかし感染が広がった海鮮市場でコウモリが見つかったり販売されたりしていた事実はないそうです。
実際コウモリは冬眠しますし、直接コウモリからヒトに感染したとは考えにくいと思われます。では中間宿主は何か? 2003年のSARSの場合はジャコウネコ、その後発生したMERSの場合はラクダがウイルスを媒介したと言われています。
コウモリとヒトという分類学的にかけ離れた種を共通の宿主とするなら、当然野犬や野良猫、あるいはペット・家畜にも感染する可能性があると思われますが、このことを研究または指摘している記述は見当たりません。中国でも話題になっていないようで不可思議です。誰か説明してほしい。
(写真はウィキペディアより)
2019年7月29日 (月)
予期せぬ訪問者
団地に思わぬ来訪者がやってきました。夜中に郵便物を回収しようとして階段を降りていくと、壁際でカミキリムシがごそごそやっているではありませんか。あわててカメラを持ち出して撮影。2枚目は羽をひろげて逃げるのかと思いきや、再度たたんでしまいました。何が気に入ってこんなところにいるのかわかりません。
体長が5cmくらいあるシロスジカミキリはベランダで見かけたことがありますが、これは体長がその半分くらいのゴマダラカミキリ(Anoplophora malasiaca)です。この団地では、はじめてみかけました。普通種だそうですが、実に美しくうっとりしてしまいます。
この個体は左の触角が途中で無くなっています。不幸はいろいろです。階段でごそごそしていてもしょうがないので、つかまえて近所の植え込みに放しました。
2019年7月28日 (日)
異常気象と団地鳥事情
オナガ(Cyanopica cyanus )の写真はウィキペディアにあったので借用しました。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%8A%E3%82%AC
毎年初夏の季節オナガの群れが団地を訪れます。ウィキペディアには留鳥と書いてありますが、オナガの群れが同じ地域に1年中居座っているのをみたことはありません。うちの団地でもせいぜい2~3週間滞在したら、どこかに行ってしまい、次の年までみかけることはありません。
ところが今年は5月下旬から7月上旬まで2ヶ月近く長逗留していました。これで迷惑したのがカラスです。しばらくバトルが続いていましたが、ついにオナガに追い払われてしまいました。私も夫婦とおぼしき2羽のオナガにカラスがつつかれて逃げ惑う姿をみました。体はカラスの方がずっと大きいので情けない話です。ちなみにオナガはカラス科なので、テリトリーが競合するのかもしれません。
気候変動のせいでしょうか、オナガ自身も最近西日本からすっかり姿を消したそうです。ウィキペディアによると神奈川県より東でしかみられないようです。非常に鳴き声(ギェー、グァーなど)がうるさいので、人間にとっても迷惑なのですが、写真のように姿はカラスに比べると優雅な感じです。
7月下旬になってようやくどこかに去り、カラスも戻ってきました。普段通りカラス、キジバト、ムク、ヒヨ、スズメが暮らす平和な団地となりました。ただセミの声は昨年の100分の1くらいです。こんなに静かだと却って気になります。
夏蝉(熊木杏里)
https://www.youtube.com/watch?v=INu-PqINm6U
2019年5月11日 (土)
パナソニックがやるべきこと
パナソニックの津賀一宏社長が日経新聞のインタビューで「現在の危機感はもう200%、深海の深さだ。今のままでは次の100年どころか10年も持たない」と言ったそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190501-00060239-gendaibiz-bus_all
私はパナソニックの売り上げの3割が自動車部品だというのに驚いたのですが、パナソニックが製造すべきものは他にあるんじゃないかと思います。
それはズバリ人工臓器です。実はすでにパナソニックヘルスケアなど傘下の会社があって、血糖測定器、補聴器、バイオ機器などを製造していますが、まだまだの感じです。
そもそも人には人権があるので、環境に不適応な者にも生存権があることになり、ダーウィン的な進化ができません。したがって人は生物の定義から外れてしまっているので、いずれ生物であることをやめてサイボーグ化しても問題はなく、むしろサイボーグ化するか遺伝子をいじらなければ進化はあり得ません。また人以外の生物にとっては人がサイボーグ化して、個体数をコントロールできるようになるのは、極めて望ましいことでもあります。人の個体数が異常に増加することによって、いま地球は、地球がはじまって以来最大級の生物大絶滅時代のまっただ中にあります。
研究者が遺伝子をいじって人の進化を謀るというのは、非常に難しいことだとおもいます。生物は数万の遺伝子のバランスで生きているので、ひとつだけ遺伝子をいじるというのは、一部の遺伝病の治療を除いてはかなり危険なことだと思います。
実はすでに、人はかなりサイボーグ化しています。メガネ・コンタクト・補聴器・入れ歯・インプラント・人工関節・骨固定ボルト・人工食道・血管用コイル・ペースメーカー・人工心肺・人工肛門・マッスルスーツなど枚挙に暇がありません。
危機感200%なら、パナソニックもこのような人工臓器をつくってはどうでしょうかね。血糖値を自動で測定しつつインシュリンを放出するアイテムなどはできるんじゃないでしょうか? ついでに言えば、最も核心的な研究は、脳と人工臓器のインターフェイスの開発であり、パナソニックのような優良企業が取り組むべき課題だと思います。
(写真はウィキペディアより)
2019年4月11日 (木)
アグーチ (agouti) 遺伝子の機能
猫の縞模様を発現する遺伝子はいろいろ知られています。いわゆる縞模様を形成するマックレル遺伝子、アメショーのようなクラシックタビーの形成に関与する遺伝子、スポット(斑点)をつくる遺伝子、アビシニアンやソマリのような縞模様を部分化するティックド遺伝子、そして様々な縞模様に関与するアグーチ遺伝子などがあります。
アグーチの語源はアグーチという天竺ネズミの種の名前で、写真のようにフェオメラニン(橙)とユーメラニン(黒)のまだら模様の生物です。この動物の体毛は写真の右下の挿入図のように、1本の毛の一部ではフェオメラニン優勢、一部はユーメラニン優勢となっており、1本の毛がまだら模様になっています。猫を含む他の動物でも、アグーチ遺伝子型がAAまたはAaとなっている個体はこのような毛を持っています。うちのサラとミーナも持っています。
ところがこの写真の動物を見ても、ヒゲ(Vibrissa)はアグーチになっておらず黒一色です。これが不思議です。私はヒゲがアグーチになっている生物をみたことがありません。サラとミーナもヒゲは白一色でアグーチにはなっていません。猫はすべて白ヒゲかというとそんなことはなくて、私はペットショップで黒ヒゲの猫を見たことがあります。
確かにヒゲの毛根は、ヒトのようにその感覚毛としての機能を失っている種を除いて、すべて血液のプールのような個室に収納されていて、そこに神経が伸びてきて動きを感知するようにできているので、普通の毛根とは異なります。しかしその構造の違いとアグーチになるかならないかはさっぱり結びつきません。
アグーチ遺伝子は毛と脳で発現していることが知られていて、毛ではアグーチカラーを誘導する作用があることがわかっていますが、脳では何をしているのでしょうか? ヒトでは体毛ではアグーチ遺伝子の発現がなく、したがって縞模様のヒトは存在しませんが、脳では発現しているようで遺伝子がないわけではありません。
最近理研では野生に近いマウスを使って、クリスパー/キャス9という技術でアグーチ遺伝子を無効化すると、性格がおとなしくなり、まるで実験用マウスのようにヒトを避けないようになったという研究結果を得たそうです。さらに調べると、このマウスの中脳でドーパミントランスポーター遺伝子の発現が上昇していることがわかりました。これが性格の変化に関係しているようです。
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170214_3/
ただ猫の場合、アグーチ遺伝子が発現していない(aa)黒猫などが特に人なつこいという結果は得られていません。
https://sippo.asahi.com/article/11928822
アグーチ遺伝子がつくるタンパク質は研究用に販売されています。脳に注入すると食欲が増進するようです。
https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/339-43661.html
より以前の記事一覧
- オオミズアオ 予期せぬ訪問者 2018.05.27
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