カテゴリー「毛髪・皮膚(hair/skin)」の記事

2015年3月27日 (金)

ヒトはなぜキスするのか?

便の成分は水分を除くと食物残渣が10~20%くらいで、あとは腸壁細胞の死骸と細菌からなっています。腸には未分化な幹細胞があり、一生の間ずっと腸上皮細胞を生み出し続けます。どんどん生み出し続けるのはいいのですが、どうしてそうしなければならないほど毎日大量の細胞が死ぬのかというのはよくわかりません。大量の細菌やウィルスと接触することが原因なのでしょうが、腸上皮細胞は寿命が1週間ほどしかありません。まあ文学的に表現すると、激務のために長生き出来ないということになりますが、人と同じくらい長生きの脳細胞はといえば、彼らがのんびりしているわけでもないので、激務というのはあまり良い表現とは言えません。

人は大腸菌と共生しているといわれます。大腸菌が人には作れないビタミンを生成したり、消化を助けたりするからですが、それが真実なら、また大量の腸細胞と大腸菌の死骸が毎日糞となって放出されているのも真実です。

ところで多くの動物はキスをしません。キスをしているところ(実際にはキスそのものではないことが多いと思いますが)を撮影出来れば自慢出来るくらいです。それにくらべて、人は日常的にキスをするめずらしい動物です。このことは人には体毛がほとんどないことと関係があるのではないでしょうか?

動物は日常的に毛繕いしますし、親しい個体はお互いに体毛をなめ合って親交を深めています。うちのサラとミーナもよくお互いをなめあっています。これは間接キスともいえるので、お互いが持っている細菌を交換することができます。人ではそうはいかないので、細菌を交換するにはキスなどが必要です。

なぜ細菌の交換が必要なのでしょうか? 細菌は紫外線や放射線による点突然変異や、プラスミド(DNAの別荘とでもいいましょうか)の移動などによって、DNAを新鮮化していますが、腸には紫外線が届かない上に閉鎖空間に近いので、外から全く異なるDNAが取り込まれることは大歓迎です。では同じく毛がないイルカはキスするのか?

するようです(http://blog.goo.ne.jp/junane0215/e/f3203ffd0a81e468b4bbf0e1d72ec1ee より拝借しました 有難うございます)

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2014年7月 4日 (金)

面皰(めんぽう)経験談

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「New皮膚科学」 飯塚・大塚・宮地編 南江堂 より


毛がなくなるという事以外の毛の病気はめずらしいのですが、私はそのめずらしい面皰(めんぽう)という病気(毛根に原因がある吹き出物の一種)にかかったことがあります。図1にあるように毛髪は必ず脂腺という脂質を分泌する組織を伴っており(毛には必ず油が必要ということでしょう)、面皰というのは-その脂腺から出てくる油の通路が角質化する-という皮膚の研究者にとっては興味深い病気です。

それにしてもほとんどまともな毛がない背中で毛の病気になるとは不思議です。

脂腺からの通路が閉塞するので、油と角質が皮膚の中に充満してぐちゃぐちゃになります。進行して図3のような状態になっていたので町医者にかかったのですが、2時間待って背中の患部を数回押しつぶすだけ(有力な治療法ではあるようです)という繰り返しで、数回通っても外見上は治癒した印象はなく、大病院にかかることにしました。

診察したのは若い肥満気味の女性皮膚科医で、「これなら切れますね。今日の午後は空いてますけど・・・」と言うので、「じゃあ今日の午後でお願いします」と答えると、しばらく困った顔をして逡巡しながら「じゃあやりましょう」と言ってくれました(私:どうして逡巡するのだろう? 半休とってデートでもする予定だったのだろうか?)。

午後に再度訪れると、まずカメラで数枚写真を撮影され、裸でうつぶせに寝かされて、その上に騎手のようにくだんの女医がまたがって乗り、手術がはじまりました。すごい景色です。看護師はいません。

女医がメスをふるうわけですが、「痛い?」-「まだまだ」-「じゃもう少し切るね」-「痛い?」-「少し」-「もう少しやろうか」-「痛っ」-「じゃ麻酔刺すね」-「うっ・・・」-「およ~ これは思ったより深い・・・・・で痛い?」-「まだまだ」--- などとSMプレイのような手術を経験しました。最後に女医はホルマリンを満たした瓶を持ってきて、切り取った患部をそっくりいれて見せてくれました。直径1.5cmくらいあったようです。あれは学会発表などに使われたのでしょうか? 現在まで連絡はありません。

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2014年5月 1日 (木)

毛髪夜話4 毛の生長

Photo真核生物の細胞は、細胞周期というプロセスを経て、細胞分裂を行うことによって増殖します。「病気のバイオサイエンス by 野島博」によると「ヒトの細胞が細胞周期を1周するのに30時間はかかる。その時間配分はおよそ、G1(細胞の体積を2倍にするためタンパク質などをためこむ 6~12時間)、S(DNAを複製する 6~8時間)、G2(細胞分裂の準備 3~4時間)、M(実際に細胞がふたつなる 0.5 ~1時間)である。一般に癌細胞は細胞周期にかける時間が短く、20時間くらいで1回転するものもある。」ということになっています(カッコ内筆者註)。
http://www.biken.osaka-u.ac.jp/biken/BioScience/page20/index_20.html

しかし癌細胞ではなくても、腸上皮細胞や血液細胞などはよりはやく細胞分裂しているようですし、肝臓細胞などは1年かけてやっと1回細胞分裂するなどさまざまです。では毛髪細胞はどうでしょうか?

毛は1ヶ月にほぼ1cm伸びます。毛髪は単一の細胞からなっているのではなく、様々な種類の細胞が存在しますが、だいたいその高さ(毛が伸びる方向の長さ)は5~10μmです。毛は植物のように先端の細胞が分裂して伸びるのではなく、根元の細胞が分裂して上の細胞を押し上げるというかたちで伸長します。根元の親細胞(=幹細胞)が分裂したときに、できた娘細胞がどちらも毛の細胞になってしまうと、毛に分化した細胞は分裂出来ないので、すぐに親細胞が枯渇してしまいます。ですから2人の姉妹のうち片方はもとのまま、他方は毛の細胞となります(ただし親細胞→親細胞+親細胞と親細胞→毛細胞+毛細胞という分裂が同じ割合でおこるということがあってもよい)。

さて1ヶ月にどれだけ毛の細胞が生み出されるかは、毛が伸びる長さを細胞の長さで割れば計算できます。5μmの場合は200個、10μmの場合は100個ということになります。そうすると前者では1日に6~7個、後者でも3~4個の新しい毛髪細胞が生まれなければなりません。このためには、おそらくどんな癌細胞よりも高速に細胞周期をまわす必要があります。すなわち毛髪細胞はきわめて特殊な細胞といえるでしょう。

ではどうしてこんなに高速に増殖する細胞が癌化しないのでしょう? それは細胞内がすぐにケラチン繊維でびっしりと満たされ、細胞分裂が不可能になるうえに細胞の動きが制限されて、癌細胞の特性である無秩序な増殖や転移ができないからだと思われます。この意味で、上記の親細胞→親細胞+親細胞というかたちの細胞分裂が異常な高速度で進行するとすれば、癌化の可能性が高くなるので危険なやり方といえるでしょう。したがってこのような細胞分裂はあり得るとしてもルーティンではなく、親細胞が枯渇しそうなときの臨時的なことだと推測できます。

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2014年4月25日 (金)

毛髪夜話3 毛の起源

多くの恐竜が羽毛を持っていたことが最近明らかになってきていますが(1)、これは火山灰を一気に被ってそのまま保存されたなどの条件の良い化石が発見されたからで、私たち哺乳類の先祖である獣弓類が毛をもっていたという明白な証拠はありません。恐竜が6600万年前まで繁栄していたのに対し、獣弓類は多くの種が2億5千万年前に絶滅し、恐竜時代には細々と生き延びていたというのも、化石の研究には不利な条件です。

1

ただ下図(ウィキペディアより)のゴルゴノプスなど場合、頭蓋骨にヒゲの毛根を収容するためのくぼみが存在することが知られており、この復元図にはヒゲが描かれています。ヒゲを触角として使う場合、最低でも感覚神経が毛根に伸びてきていることが必要で、できれば動かすための随意筋も付着してほしいところです。ですからヒゲは体毛より進化した高級な毛であり、ヒゲが存在するからには体毛も存在する可能性が高いと思われます。

Gorgonops_head

化石研究の他に、現在生きている哺乳類の毛に関連した遺伝子と、原始的と思われる爬虫類の対応する遺伝子を比較してみるのもひとつの研究方法です。毛といえばとりあえずケラチンです。ケラチンというタンパク質には大きく分けてI型(酸性)とII型(塩基性)の2つのグループがあり、両者がペアとなってコイルをつくり、それがさらにからまりあってケーブルをつくるという構造になっています。ケラチンはI・II型それぞれ数十種類の分子が肝臓などさまざまな臓器に存在しますが、ハードケラチンは細胞を埋めつくして硬い組織、たとえば毛・爪・角・うろこ・くちばしなどをつくることができます。

ヒトのハードケラチン遺伝子は、I型については11個の毛型と17個の非毛型、II型については6個の毛型と20個の非毛型が知られています。ハードケラチン遺伝子は魚類・両生類にはありません。ウィーン医科大学のEckhart博士らは、2008年にニワトリとアメリカカメレオンについてヒトハードケラチンと類似する遺伝子を探索し(2)、ニワトリにおいてII型1個、アメリカカメレオンにおいてI型2個およびII型4個の遺伝子が相当することを発見しました。これらのアメリカカメレオンのハードケラチンは四肢の先端に発現することから、かぎ爪の形成にかかわる遺伝子だと思われます。

毛型および関連ハードケラチン遺伝子の数

ヒト ( I型 11、 II型 6)
マウス ( I型 9、 II型 6)

アメリカカメレオン ( I型 2、 II型 4)・・・ただし毛と関係ない独自なI型 4
ニワトリ ( I型 0、 II型 1)・・・だだし毛と関係ない独自なI型 2

カエル なし
サカナ なし

つまり獣弓類はこれらのかぎ爪遺伝子を利用して、目的が異なる毛 (hair) をつくる方法を発明したと思われます。この研究によって、従来考えられてきた爬虫類のうろこと哺乳類の毛の関連性が否定され、むしろ爬虫類のかぎ爪と哺乳類の毛が密接な関連をもつと考えられるようになりました。

下図はウィキペディアからひろってきたかぎ爪の帝王テリジノサウルスの復元図です。かぎ爪を鎌のように使って、植物を収穫して食事していたようです。

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1. http://morph.way-nifty.com/grey/2014/04/post-fcbc.html
2. http://www.pnas.org/content/105/47/18419.full.pdf+html?sid=9ee52545-4cb8-4e9d-bda9-e273afb05c39

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2014年4月12日 (土)

毛髪夜話2 羽毛の進化

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上図は以前にもこのブログに掲載したことがあります。哺乳類の毛 (Hair) も鳥類の毛 (Feather)も表皮から発生するものではありますが、できかたには大きな違いがあります。Hair は表皮の一部が落ち込みながら円筒状の組織を作り、皮膚の深い部分で円筒の底にある細胞の塊が増殖して上に伸び、毛を形成します。一方 Feather は表皮の一部が盛り上がって突起状の組織をつくり、毛を形成します。ただどちらもケラチンというタンパク質が主成分であることにはかわりがありません。

毛と羽毛:http://morph.way-nifty.com/grey/2008/06/post_5c4f.html

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皮膚から外に出ている部分の毛の構造を見ると、Hair よりも Feather の方が断然複雑な構造をもっています。Feather の進化の過程を模式的に示したのがこの図です。Feather の原型は恐竜がつくりだしました。1型は哺乳類の毛のようなシンプルなものです。2型に近いような毛は哺乳類にもみられます。しかしこちらの方向に進化した毛をもつ恐竜は鳥に進化することはできなかったと思われます。3型に見られる先端の枝分かれが重要な意味を持っており、ここから羽毛が進化し、ついには7型のような風切り羽を完成することができました。この非対称性が流体力学的に飛翔に適しているそうで、風切り羽によって恐竜は空を飛べるようになりました。現在も大繁栄している鳥類はこのように進化した恐竜の1グループです。

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Sinosauroputerikusu

現在では恐竜に毛があったことは認められていますが、それが判明したのはそう古いことではありません。1995年に羽毛らしきものが化石化したシノサウロプテリクスが中国で発見され(上図)、紆余曲折を経て現在では実際に羽毛に違いないという説が有力になってきました。シノサウロプテリクスは白亜紀に生きていた、歯を持つしっぽの長い小型恐竜です(イラストは川崎悟司氏のサイトより借用)。その後そういう目で見たせいか、続々と羽毛恐竜が発見され、次に示す分類表(カッコの中に羽毛の型番号を記載、S は羽毛を持たないとされているグループ)でも多くのグループに羽毛が認められています。

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この図(恐竜王国2012@幕張メッセより)の一番下に記されている真鳥類が今見られる鳥が属するグループなのですが、このグループは白亜紀前期にすでに出現していました。そしてこのグループだけが白亜紀末の大絶滅を免れました。他に注目したいのは上の方に記載してある鳥盤類(鳥とは非常に縁遠いグループ)にも毛を持つものがいたということで、このことから恐竜は鳥盤類と竜盤類が分岐する以前の非常に古い段階の祖先動物の時代から毛を持つ種がいたのではないかと想像させられます。

http://morph.way-nifty.com/grey/2012/09/post-2502.html

最後に毛のあるティラノサウルスの図が描かれているサイトを紹介します。

こちら


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2014年4月 5日 (土)

毛髪夜話1 毛髪科学のスタート

Hitsujiヒトは進化の過程で体毛をほとんど失ってしまいました。その理由はいろいろ推測されていますが(1)、本当のところはわかりません。クジラやイルカに体毛がないのは、水中では毛の保温機能と紫外線からの保護機能が無意味になることから納得できます。水は比熱が大きいのでそれ自体で高度の保温機能がありますし、紫外線を吸収することもできます。クジラやイルカは一生をほとんど水中で過ごすので体毛が必要ないわけですが、さらに音波や超音波で周辺の状況を把握できるので、感覚毛(=ヒゲ)も不要になったのでしょう。しかし地上で生きている哺乳類や、エサは水中で採るが地上でも生活する海獣タイプの哺乳類についてみると、毛が退化している種はきわめて少ないですし、霊長類ではヒトだけです。

私は(1)のジャブロンスキー教授の説:ライフスタイルの変化による体温上昇を防ぐため毛が失われた・・・には納得できません。草原で狩りをするために走ることが必要で体温上昇が困るというなら、チーターに毛があるのはおかしいと思いますし、狩りをするのは男性だけと思われるので、体毛形成の遺伝子が壊滅するというのは考えにくいと思います。紫外線によるダメージについても、森林より草原の方が大きいでしょう。むしろ衣服をまとうことが日常化したため、大きなエネルギーが必要な体毛形成をサボタージュすることになったのだと思います。

毛が退化してきたヒトは衣服の材料をいろいろ探したと思いますが、少なくとも紀元前3000年頃には一般的に羊の毛を利用することをはじめたようです(2)。ウィキペディアのヒツジの記事をみると、紀元前6000~7000年前にはメソポタミアでヒツジが家畜化されていたという記載があります。ただこれは食料として用いられていた可能性が高いと思われます。ヒトは体毛を持たないが故に、衣服に用いる毛については昔から大きな関心を持っていました。サイエンスの観点から見ると、1836年に Gurlt が毛は表皮から生じたものだということを報告しています(3)。さらに1850年には Koellinker が、表皮の一部が皮膚の内側に伸びて分化することによって毛ができることを報告しています(4)。

ヒトはよりよい衣服用の毛を求めてメリノ羊を作り出しました。メリノ羊は最初トルコのアナトリアで作られたとされていますが(5)、その後スペインに持ち込まれて14世紀以降大量に生産されました(2、ただしメリノ羊はスペイン王家が管理し、18世紀に至るまで国外持ち出しは禁止されていた)。ヨーロッパ全体にメリノ羊が普及すると、その品質改良のための研究のひとつとして、毛の構造解析が進みました(6)。一般にラテン系の人々は学術研究にはあまり関心がなく、ゲルマン系・ユダヤ系の人々は研究が好きなようです。

毛には普通独自の寿命があって、一定期間が過ぎると抜け落ちて生え替わるという性質があります。例えばヒトの場合数年のサイクルで抜けて生え替わります(7)。毛が抜け落ちるというのは、異常に毛が長くなって動きにくくなるとか、気温が上がったときに暑苦しいとかの不都合を防ぐためのメカニズムと考えられます。ところがメリノ羊の場合、毛はどんどん伸びるばかりで抜け落ちることがないのです。このような性質は生存には不都合ですが、ヒトが毛を生産して利用するには便利な性質です。

1)http://www.nikkei-science.com/page/magazine/1005/201005_030.html
2)http://www.numei.com/aboutmerinowool.htm
3)Gurlt EF: Untersuchungen ueber die hornigen Gebilde des Menschen und der Haussaeugethiere, Magazin fuer die gesammte Thierheilkunde, Berlin, II, 201-216 (1836)
4)Koellinker A.: Ueber den Haarwechsel und den Bau der Haare, Zeits. wiss. Zool. II 71-84 (1850)
5)http://www.ansi.okstate.edu/breeds/sheep/karacabeymerino/
6)Sticker A.: Ueber die Entwicklung und den Bau des Wollhaares, nebst einem Anhang ueber das Wollfett, Landw. Jb. XVI 625-657 (1887)
7)http://www.kao.com/jp/haircare/thining_01.html

(写真はフリーフォトサイト足成より拝借)

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2013年3月16日 (土)

アザラシに奇妙な皮膚病が蔓延

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アラスカディスパッチの3月13日号によると、アラスカのアザラシ(上の写真はウィキペディアのゴマフアザラシ)に奇病が蔓延していて、原因はまだ解明されていないそうです。

http://www.alaskadispatch.com/article/20130313/could-alaskas-mystery-seal-illness-be-arctic-sunburn

内容を大まかに紹介すると

「2011年の6月に、アラスカでアザラシの奇妙な皮膚病が発見されました。皮膚がじくじくしてただれ、体毛が抜けるという症状がみられます。結局200頭以上のアザラシがこの病気にかかっていることがわかりました。さらに、アザラシほどひどくはないが、セイウチやホッキョクグマにも同様な症状がみられました。

アメリカ連邦政府は「原因不明の致死性のイベント」と指定し、研究費を支出することを決めて、科学者にこのミステリーを解明するよう促しました。今月の時点で国際的な研究者グループの協力にもかかわらず、この病気の原因は解明されていません。

ある研究者はオゾンホールが原因だという説をとなえていますが、あまり支持されてはいません。紫外線照射が直撃する背中や頭に特に発症部位が集中しているわけではないのがその理由です。重篤な肝炎の場合、紫外線の影響をうけやすいということはあるようですが、検死の結果それは否定されました。そのほかの関係がありそうなウィルスも発見されていません。

2011年に日本で起こった福島原発事故による放射性物質の影響についても研究が続けられていますが、まだ結論を出せる段階ではありません。」

といったところです。福島からのプルームが直撃した結果だとすると、一時的な線量の増加の影響である可能性が強いので、そのうちおさまってくると思いますが、ウィルスがかかわっているとするとやっかいです。さらにオゾンホールも含めてこれらの複合的な原因によるものであった場合、さらに解明は困難になると思われます。

私の推測としては、北極地方の氷上生物は、特に皮膚においてオゾンホールの影響で非校正型のDNA修復系が活性化していて、そこに原発事故で放出された放射性物質によるDNA損傷が急増したので、多数の修復エラーが発生して皮膚疾患に至ったのではないでしょうか。

Could Alaska's mystery seal illness be arctic sunburn?

Jill Burke, Alaska Dispatch, March 13, 2013

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2012年9月27日 (木)

恐竜王国2012

幕張メッセで開催されていた恐竜王国2012に、閉幕直前に行ってきました。日中友好協会主催でしたので、昨今の日中関係から中止が危惧されましたが、よく最後までやり遂げました。関係者の努力に感謝します。

最近中国の熱河で発掘された恐竜の化石は、すっかり昔の恐竜のイメージを変えてしまいました。火山灰で埋まったものだそうで、大変保存がよく、羽毛の跡が残っているとのことです。

恐竜の全盛はジュラ紀から白亜紀にかけてですが、その前の三畳紀の化石からも羽毛の痕跡が発見され、二次的に退化したものを除いて、すべての恐竜が羽毛あるいはその進化途中の構造体を持っていたのであろうという考えが、最近の風潮のようです。

ヘレラサウルスは三畳期に生息していた非常に原始的な恐竜ですが、それさえも模型は羽毛で覆われていました。

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おなじみのティラノサウルス類ユティランヌスも羽毛でデコレーションされていて、大きなイメージチェンジです。

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これが羽毛の化石です。矢印の下2カ所のかなり広い場所に多くの羽毛跡が見えます。

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ミクロラプトルに至っては、見た目鳥ですね。

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このような図からも想像されるように、現代の鳥類は恐竜直系の子孫です。生物学的には恐竜と呼んでもいいわけですが、混乱を招く可能性があるので通常そうは言いません。

巨大な竜脚類の首を4つ並べたのは、豪華ですばらしいディスプレイでした。このような草食性の恐竜たちも、少なくとも子供の頃は羽毛を持っていたであろうというのが現在の考え方のようです。彼らは立ち上がって首を伸ばすと、あの高い幕張メッセの天井にも届きそうなくらい巨大だったと思われます。

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2012年6月21日 (木)

毛髪と免疫特権

250pxhair_follicleen_svg新しい毛穴は通常大人になると形成されません。ですから毛穴に住み着いている毛のもとになる幹細胞が老化したり死んだりすると、もはや毛は生えてきません。

しかしこの概念を打ち破る研究を、昔ヤホダ博士の研究室でやっていて、今でも印象深く思い出すことがあります。ヤホダ博士が来日したときの講演によると、自分の頭髪の毛根を取り出して、そこから毛の部分を取り除き、毛の周りの真皮の細胞(ダーマルシースという 図のシースと書いてある部分)を取り出して奥様の腕に移植したそうです。

そうすると数ヶ月後には、奥様の腕にまわりの透明ななよなよした短毛とは明らかに異なる、黒々とした長い大変立派な毛が生えてきたそうで、その写真に聴衆は受けまくっていました。その1本の毛の毛根の最深部にある毛乳頭(パピラ)という部分のDNAを分析すると、確かにヤホダ博士のもので、一方その他の毛の細胞は奥様のものだったそうです。

このことはヤホダ博士の移植細胞がシグナルを出して、奥様の皮膚の細胞に毛髪形成を促したということを意味します。つまり大人になっても適切なシグナルによって、毛穴全体を再構築して新しい毛髪を生やすことができるということがわかりました。

ここでひとつ不思議なことは、博士と奥様は免疫学的に不適合であるにもかかわらず、移植が成功したと言うことです。皮膚の移植は通常免疫学的な適合性がないと、拒否反応がおきて失敗しますが、毛根の周囲にあるダーマルシースおよび最深部の毛乳頭という皮膚(真皮)の一部については免疫特権があって、拒否反応が起きないことが明らかになりました。

免疫特権をもつ組織というのはいくつか知られていて、最も有名なのは角膜です。といっても全く拒否反応が起きないわけではなくて、比較的軽微だということですが。そのほかハムスターの頬袋などもよく知られています。母親の子宮と胎児の関係も免疫特権によって可能となります。

テキスト
http://www.bernsteinmedical.com/downloads/TransGenderInductionofHairFollicules1999.pdf


http://www.nature.com/nature/journal/v402/n6757/fig_tab/402033a0_F1.html#figure-title

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2012年6月 8日 (金)

毛髪研究者と会う

A名古屋から私の話を聞きにわざわざ来てくださるという奇特な方とお会いしました。久しぶりで毛髪の専門家(しかも若くて美人)とお話しできて、なかなか楽しいひとときでした。毎日電子顕微鏡で毛髪の写真を撮影していた頃がなつかしく、当時撮影した写真を1枚アップします。ラットの毛の横断面です。まだ角質化途上にある部分を撮影したものですが、a では内毛根鞘小皮細胞の内側(右側)にケラチン繊維が蓄積して角質化しつつあります。一方キューティクル細胞(3層)は外側から角質化していきます(b 黒っぽい部分 は特に顕著)。コーテックスは外側からでも内側からでもなく、ランダムに角質化します。段取りはいろいろなのですが、どの細胞も最終的にはケラチン繊維でパンパンに満たされてしまいます。

キューティクルとコーテックスは毛になり、内毛根鞘小皮はフケになります。電子顕微鏡じゃないと見えないような微細なところでも、一定のルールにしたがってきちんと毛髪が形成されていくというのは驚異です。まあ毛に関心のない方にはどうでもいいことですが。

頑張って働いていた電子顕微鏡も、リストラでスクラップとなり残念でした。私の写真は彼の遺書の一節だと思っています。

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おみやげに赤福餅をいただきました。帰宅して早速試食しましたが、昔と変わらぬ美味でした。有難うございました。またどこかでお会いして、お話を伺うのを楽しみにしております。

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