カテゴリー「生物学・科学(biology/science)」の記事

2021年2月27日 (土)

続・生物学茶話131: ギャップ結合が召喚したゴルジの亡霊

カミッロ・ゴルジはイタリア人の医師で、神経組織の染色法を開発しました。例えば皮膚や肝臓の組織切片を色素で染色すると、組織を構成するそれぞれの細胞の形態がわかるのですが、脳神経系の場合細胞が樹状突起や軸索などを出して形態が複雑となり、それぞれが折り重なって何が何だかわかりません。ですからいくつかの細胞だけが染まって、他の細胞は染まらないという特殊な方法が求められていたのですが、ゴルジは硝酸銀で染色することによってそれが実現することを発見しました(1、2、図131-1)。

どうしてこのような染色が実現するのかは現在でも理由が解明されていないそうですが、これによって神経細胞の形態が明らかになったことは事実です。ゴルジはゴルジ体の発見でも有名な科学者です(1)。彼は神経細胞は多核細胞(シンシチウム)を形成して、全神経は分断されずに繋がっているといういわゆる「網状説」を唱えていました。一方ラモン・イ・カハール(図131-1)はニューロン説を唱え、神経細胞はそれぞれ独立しており、シナプスという接合部で連絡していると主張していました(3)。この二人は異なる主張をしたまま、1906年ノーベル生理学医学賞の受賞者となりました(4)。

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図131-1 ゴルジとラモン・イ・カハール

当時でも現在でも光学顕微鏡でシナプスの存在を証明することは解像度の限界から不可能であり、彼ら自身がどちらの学説が正しいか決着をつける観察を行うことはできませんでしたが(4)、後の電子顕微鏡を用いた研究によってシナプスの存在が明らかとなりました。シナプスはシナプス前細胞にあるシナプス小胞に蓄積された神経伝達物質が細胞間隙に放出され、それをシナプス後細胞の細胞膜にある受容体が受け取ることによって情報伝達が行われます(5-7、図131-2A)。このような機構が明らかになって、ニューロン説の正しさが証明され、神経全体がひとつの連続した細胞であるという考え方は否定されました。

しかしその後、神経細胞同士がシナプスのような20nm~30nmの間隙はなく、2~4nmという非常に狭い間隙で接近した状態で接続する場合もあることが明らかになってきました。その構造はギャップ結合(gap junction) というものです(8、9、図131-2B)。ギャップ結合部位ではピンポイントでタンパク質同士が結合していて、その部位だけは無間隙連結となっています(図131-3、4)。その後、中枢神経内には驚くほどの密度と広がりを持ってこのギャップ結合を基盤とするもうひとつのネットワークが存在していることがわかり(8)、現在ではゴルジの網状説もあながち誤りとも言えないということになりました。墓の中のゴルジもさぞ喜んでいることでしょう。

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図131-2 シナプスとギャップ結合

ギャップ結合という構造の存在は1950年代から濱清らによって報告されていましたが(10)、そう名付けられたのは1970年のようです(11)。ギャップ結合部位は通常の細胞膜と異なり、脂質が少なくタンパク質が多いことや、2枚の細胞膜が密着することなどから、密度勾配遠心などを利用した細胞分画法によって分離精製することが可能で(12)、これによって構成するタンパク質の情報などについての知識が得られて、研究は飛躍的に進展しました。

ギャップ結合はある種のチャネルではありますが、その構造と機能は極めて特殊です。図131-3および図131-4に示すように、6分子のコネキシンが集合してコネキシンヘミチャネル(コネクソン)を細胞膜に形成し、その対面の同様な構造と合体してギャップ結合チャネルを形成します。ギャップ結合チャネルは細胞外に開口することはないので、細胞間の連絡のみに用いられます。ウィキペディアの記載によると、開口した場合脊椎動物では485ダルトン、無脊椎動物のでは1100ダルトン以下の分子しか通過させないそうです(13)。当然タンパク質や核酸は通過することはできません。通過できる分子は低分子化合物、無機イオンなどです。ただコネキシンにも多くの種類があって(図131-5)、それらが構成するチャネルのコンダクタンス(電導性)は30pS(ピコジーメンス)から500pSまで様々です(14)。したがって通過できる分子にもバラエティーがあると思われます。

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図131-3 ギャップ結合を構成するコネクソンの構造

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図131-4 コネキシンの6量体が構成するコネクソンが対面結合してギャップ結合チャネルが完成する

ヒトとマウスは共に20種類のコネキシン遺伝子と対応するタンパク質を持っていて、そのうち18種はほぼ同じです(14、図131-5)。これだけアイソフォームが多いにもかかわらず、ほとんどのアイソフォームがヒトとマウスで保存されているということは、それぞれのアイソフォームの役割がきちんと決められていて、他のアイソフォームでは代替できないことが示唆されます。それだけコネキシンタンパク質群は細かく役割分担しているという意味でもあり、まだ解明しなければならない点が多いと思われます。

図131-5にもまだ混乱が見られます。たとえばほぼ同じGJA10という遺伝子の産物であるタンパク質がヒトではCX62なのに、マウスではCx57となっているなど、この図だけみてもまだ整理しなければならない点がいくつか残されています。

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図131-5 ヒトおよびマウスのギャップ結合を構成するコネキシンタンパク質群とそれぞれの遺伝子

無脊椎動にもギャップ結合がありますが、構成するタンパク質はイネキシンというコネキシンとは極めて相同性が低い別のグループです。脊椎動物はイネキシンと相同性が高いパネキシンというタンパク質も保有していて、パネキシンは哺乳類ではギャップ結合タンパク質としての性質を失い、別の機能を持っているようです(14、15)。この際外界に開口するヘミチャネルとして、むしろ通常のイオンチャネルのような形で機能しているようです(16)。イネキシンとコネキシンはアミノ酸配列が異なっていても、ほとんど同じ構造のギャップ結合をつくるという希有なタンパク質ですが、実は似ている部分もあるという報告もあります(16)。
コネキシンは図131-4に示したような4回膜貫通型のタンパク質で、N末・C末共に細胞質側にあります。コネキシンは6分子が集合してヘミチャネルであるコネクソンを形成します。コネクソンは細胞膜を自由に移動することができるので、相手となる他の細胞のコネクソンと出会ってギャップ結合を形成することができます。その出会いは偶然ではなく未知のメカニズムによってアシストされているようです(17)。

ギャップ結合を通る電流=イオンの移動によって多くの細胞を同調して動かすという方式は、心筋細胞のように多くの細胞が同調して収縮するような場合には好適です。また出産時の子宮平滑筋の収縮の際にも有用です。また脳においてはシナプスと両輪で神経細胞の制御を行っているようですし、この他細胞の極性を成立させるなど初期発生の際にも高度な役割を担っているようです(13)。

参照

1)ウィキペディア:カミッロ・ゴルジ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%AD%E3%83%BB%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%82%B8

2)脳科学辞典:ゴルジ染色
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%82%B8%E6%9F%93%E8%89%B2

3)ウィキペディア:サンティアゴ・ラモン・イ・カハール
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%82%B4%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%AB

4)福田孝一 もうひとつの神経細胞ネットワーク--ギャップ結合による大脳皮質GABAニューロン間の直接的コミュニケーション 福岡医学雑誌 97(6), 160-174, (2006)
https://ci.nii.ac.jp/naid/120002548747

5)Katharina Heupel et al., Loss of transforming growth factor-beta 2 leads to impairment of central synapse function., Neural Development 3, Article number: 25 (2008)
https://neuraldevelopment.biomedcentral.com/articles/10.1186/1749-8104-3-25

6)Taoufiq Z. & Sasaki T., シナプスとシナプス小胞の電子顕微鏡写真
https://www.oist.jp/ja/news-center/photos/35770

7)ウィキペディア:シナプス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%97%E3%82%B9

8)福田孝一 ギャップ結合による神経細胞ネットワーク
顕微鏡 vol.43, no.3, pp.188-197 (2008)
http://microscopy.or.jp/archive/magazine/43_3/pdf/43-3-188.pdf

9)Bryan Jones., A Most Beautiful Gap Junction
https://prometheus.med.utah.edu/~bwjones/2018/08/a-most-beautiful-gap-junction/

10)濱清 顕微鏡下の一期一会 (JT生命誌アーカイブ)
http://brh.co.jp/s_library/interview/15/

11)Uehara Y, Burnstock G (January 1970). "Demonstration of "gap junctions" between smooth muscle cells". J. Cell Biol. vol.44 (1), pp. 215–217 (1970)
doi:10.1083/jcb.44.1.215. PMC 2107775. PMID 5409458.

12) E L Hertzberg, D J Anderson , M Friedlander , and N B Gilula., Comparative analysis of the major polypeptides from liver gap junctions and lens fiber junctions., J Cell Biol, vol.92, no.1, pp.53-59 (1982)
https://rupress.org/jcb/article/92/1/53/19578/Comparative-analysis-of-the-major-polypeptides

13)Wikipedia: Gap junction
https://en.wikipedia.org/wiki/Gap_junction

14)Eric C. Beyer and Viviana M. Berthoud, Gap junction gene and protein families: Connexins, innexins, and pannexins., Biochim Biophys Acta. vol.1860(1): pp.5–8, (2018) doi:10.1016/j.bbamem.2017.05.016.

15)創薬:明らかになった死細胞処分機構 Nature news & views vol.507, no.7492, (2014)

16)大嶋篤典 ギャップ結合チャネルの構造と機能の研究
http://www.cespi.nagoya-u.ac.jp/BasicBiol/atsu/OshimaResearch.pdf

17)ウィキペディア: コネクシン(コネキシン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%B3

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2021年2月18日 (木)

続・生物学茶話130: クシクラゲ(有櫛動物)の衝撃

数年前に「クシクラゲには実は肛門があってうんちをする」という報告があって、生物学者が衝撃を受けるというちょっとした事件がありました(1、2)。どうしてこんな初歩的とも思われることがそれまでわかっていなかったかというと、クシクラゲを飼育する際に、あまり彼らが好む、あるいは適したエサを与えていなかったので口から吐き出したのを排泄したと勘違いしていたそうです。プレスネルらはエサの小魚のDNAに赤い色素の遺伝子を導入し、肛門から赤い排泄物が排出されるのを確認しました(1)。

クシクラゲはクラゲという名前がついていますが、いわゆる刺胞動物のクラゲ(ミズクラゲやカツオノエボシなど普通のクラゲ)とは全く異なるグループの生物であることは前から知られていました。ただそれまで口があって、消化管があって、肛門があるという一方通行の消化器系システムは、左右相称動物が誕生してからできたものだといわれてきましたが、プレスネルらの実験でクシクラゲはそのシステムをすでに装備していたということになりました。クシクラゲは有櫛動物門(ゆうしつどうぶつもん)というグループに分類されていて、この門に所属する生物はほとんどが海洋を浮遊して生活しています。刺胞を持たないので刺されることはありません。Wikipedia に代表的な種の形態が示してありましたので、図130-1にコピペしました(3)。

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図130-1 さまざまなクシクラゲ  a) ウリクラゲ b) コマクラゲ c) ネフェロクテナ d) チョウクラゲモドキ e) カブトクラゲ  f) チョウクラゲ

クシクラゲの名前は繊毛の集合体である櫛板を持っていることから名付けられたのでしょう。これを動かして遊泳します。ウリクラゲ以外のグループはテンタクル(触手)を持っていて、こちらは泳ぐためではなく、周囲の状況を認識したり餌を捕獲するために使います。刺胞動物門のクラゲのような刺胞はもっていません(3、図130-2)。排泄口=肛門の近傍に平衡胞(スタトシスト)があり、体を定位させることができます(3、図130-2)。体の大部分はほとんど水に近い間充ゲル(ハイドロスタティック・スケルトン)という非常に柔らかい構造になっています。これが生物学者にとっては大変困ることで、網ですくうと壊れてしまう脆弱な構造なのでサンプリングも大変です。マウスの組織に使うような固定液で固定しようとしても水分が多すぎてなかなかうまくいきません。組織標本を制作して観察するのもなかなか困難な生物です。

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図130-2 クシクラゲの構造

有櫛動物はつかめばすぐ壊れるような脆弱な生物なので、水に流されるままのおとなしい受動的な生物かというとそうでもなく、口や肛門周囲だけでなく、表皮直下には「のど側」にも「外界側」にもびっしり筋細胞が分布するほか(皮下筋細胞)、間充ゲル内部にも3次元的に筋肉が存在します(4、図130-3)。彼らは総じて肉食で、なかには同じクシクラゲの仲間を丸呑みしたり、体全体を使って高速で泳ぐ種類もあります。

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図130-3 クシクラゲの筋細胞(橙)と皮下の神経細胞

有櫛動物のひとつ Eoandromeda octobrachiata のエディアカラ紀の化石が2011年に報告され(5)、このグループは普通に動物と呼ばれるグループ(メタゾア)のルーツではないかという意味で一気に注目を集めることになりました。復元図も上記 Tang らの論文(5)に掲載されています(5、図130-4)。ルーツという意味は、ここからメタゾアが進化したという意味ではなく、このグループ(Ctenophora=有櫛動物)がメタゾアの系統の生物の中で最も早期に分岐し、有櫛動物とそれ以外のすべての動物という2つの系統の生物が生まれたという意味です。これはまだ確定したわけではなく、海綿動物(Porifera)が先に分岐したという可能性もまだ残されているようです(6)。

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図130-4 エディアカラ紀のクシクラゲの復元図

有櫛動物門の分類学的位置を決めるために、フロリダの Leonid L. Moroz(図130-6) を中心に世界各国の研究者が参加するコンソーシアムが結成され、研究成果が2014年に報告されました(7)。この結果、有櫛動物門の生物には他の動物の形態形成の基盤となっている Hox遺伝子がみつからない、免疫補体の種類が少ない、miRNAがみつからない、神経やシナプスがあるにもかかわらず(海綿動物や平板動物には神経細胞はありません)セロトニン・アセチルコリン・ドーパミン・ノルアドレナリン・アドレナリン・オクトパミン・ヒスタミン・グリシンなど他の生物が使用している神経伝達物質を使っていないなど、様々な観点から有櫛動物門は他のすべてのメタゾアの門から乖離しているという結論が得られました。

この結果推測される系統樹を Moroz が描いていますが(8)、それを私が簡略化したものが図130-5です。おそらくメタゾアの中で有櫛動物が最初に神経系(Neuron 2)を獲得し、そのほかの動物は海綿動物や平板動物を分岐した後、私たちの神経と同系統の神経(Neuron 1)を獲得したものと思われます。

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図130-5 有櫛動物門の分類学的位置 

クシクラゲの皮下神経細胞はまさしくニューラルネットと呼ばれるにふさわしいかご状神経系を形成しており、間充ゲルのものも含めると5000~7000個のニューロンが接続されています(9)。また2ダース以上の種類の筋細胞と少なくとも9タイプのニューロンが、この生物の食餌、遊泳などさまざまな活動をサポートしています。神経や筋肉以外にもさまざまな細胞があり、少なくとも80種類は識別できるそうです(9)。神経細胞は特に口の周りと肛門の周りに集積していて、いわば体の両極に脳があるとも考えられます。実際肛門の周りの神経系は櫛板の動きを調節しているそうです(8)。平衡胞による計測に応じて、姿勢の制御も担当しているのでしょう。Moroz らが明らかにした口の周りの神経を図130-6に示しました(8)。緑が神経ネットワーク、赤が筋線維を示します(図130-6)。テンタクル(触手)用には、ネットワークとは桁違いに太い軸索が用意されています(8)。

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図130-6 クシクラゲのかご状神経ネットワークとモロズ博士

シナプスについても研究されていて、私たちと同様にシナプス小胞を使って神経伝達が行われているようです(8)。またグルタミン酸は神経伝達物質として使われているようです(9、10)。パラレルエボリューションでそんな類似したメカニズムができるのだろうかという疑問がわいてきますが、それは今後の宿題です。

最近クシクラゲが生物発光の基質に使われるセレンテラジンを生合成できることが発見されました(11)。発光する海洋生物は多くはセレンテラジンを使っているようなのですが、実は餌からもらっていて、自力で合成できる生物は希なのだそうです。クシクラゲの発光は外からの光を反射しているだけだという通説は間違いで、自力で発光できるとはおみそれしましたと言わなければいけません。

参照

1)Jason S. Presnell, Lauren E. Vandepas, Kaitlyn J. Warren, Billie J. Swalla, Chris T. Amemiya, William E. Browne.,The Presence of a Functionally Tripartite Through-Gut in Ctenophora Has Implications for Metazoan Character Trait Evolution
Curr. Biol., Volume 26, Issue 20, p2814–2820, 24 October 2016
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0960982216309319

2)やぶにらみ生物論97: 体軸形成
http://morph.way-nifty.com/grey/2017/12/post-7bba.html

3)Wikipedia: Ctenophora
https://en.wikipedia.org/wiki/Ctenophora

4)M-L. Hernandez-Nicaise, G.O. Machie, and P.W. Meech., Giant Smooth Muscle Cells of Beroe
Ultrastructure, Innervation, and Electrical Properties., J. Gen. Physiol., vol.75, pp.79-105 (1980)

5)Feng Tang, Stefan Bengtson, Yue Wang, Xun‐lian Wang, and Chong‐yu Yin., Eoandromeda and the origin of Ctenophora., Evol.Develop., vol.13, issue 5, pp.408-414 (2011)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1525-142X.2011.00499.x

6)Claus Nielsen, Early animal evolution:a morphologist’s view., Royal Sciety Open Science., vol.6, no.190638 (2019) http://dx.doi.org/10.1098/rsos.190638
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6689584/pdf/rsos190638.pdf

7)Leonid L. Moroz et al., The Ctenophore Genome and the Evolutionary Origins of Neural Systems., Nature, vol.510(7503) pp.109–114. (2014) doi:10.1038/nature13400
https://www.nature.com/articles/nature13400

8)Leonid L. Moroz, Convergent evolution of neural systems in ctenophores., The Journal of Experimental Biology vol.218, pp.598-611 (2015) doi:10.1242/jeb.110692
https://jeb.biologists.org/content/218/4/598

9)Tigran P. Norekian Leonid L., Moroz, Neuromuscular organization of the Ctenophore Pleurobrachia bachei., J. Comp. Biol., vol.527, pp. 406-436 (2019)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30446994/

10)ナショナルジオグラフィック 有櫛動物ゲノム、進化史の書換え迫る?
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9263/

11)名古屋大学公開資料 暗い海に光をもたらす発光生物 クシクラゲが深海性発光物質の生産者であることを発見 
http://www.nagoya-u.ac.jp/about-nu/public-relations/researchinfo/upload_images/20201211_iar1%20.pdf

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2021年2月12日 (金)

続・生物学茶話129: ミエリン鞘(髄鞘)

FCバルセロナからヴィッセル神戸に来たイニエスタという選手がいます。彼は体格・筋力・走力などの身体能力はサッカー選手としてはごく普通なのですが、マルセイユ・ルーレットの技術と他の選手より一瞬早く行動できるという特技で頂点を極めました。生物にとって神経の伝達速度を上げるということは、敏捷性(アジリティー)を高め、他の生命体より早く知覚し早く行動することができるので、生存にとって明らかに有利です。

周囲からの干渉を遮断・絶縁することによって漏電を防ぐことも正確な伝達には必要なことでしょう。脊椎動物はそのためにミエリン鞘(髄鞘)という神経を被覆する組織を獲得しました(1、図129-1)。ミエリン鞘はここでのテーマである跳躍伝導という特殊なメカニズムをサポートしていて、神経伝達速度を上げることにも貢献しています。電流の流れやすさ、すなわちコンダクタンス=σA/L(σ:定数、A:断面積、L:長さ)なので、ミエリン鞘をつくる以外にも、神経の断面積Aを大きくしたり、体を小さくしてLを短くするという方法も生物にとってアジリティーを上昇させるための有効な方法です。

実際イカは直径1mmという破格に太い神経(ジャイアントアクソン)を持っています。これはヒトの太めの神経の10倍以上の太さです。このくらい太いと伝達速度は30m/秒という高速を実現できます。イカのジャイアントアクソンにはミエリン鞘はありません。不思議なことに、ミエリン鞘を使って伝達速度を上げるという方式はある特定系統の生物が進化の過程で育ててきたと言うより、さまざまな系統の生物が進化の過程で断続的に獲得してきたというめずらしい組織なのです。たとえばエビは持っているのにロブスターやカニは持っていないとか、ミミズは持っているのにヒルは持っていないなどという例があります(1)。

ほとんどの脊椎動物はミエリン鞘を持っています。ただし末梢神経にはミエリン鞘を持っていない神経(無髄神経)も多いことが知られています(2)。無髄神経では、たとえば皮膚の痛覚神経では伝達速度は1m/秒とかなり遅くなります。同じ皮膚でも有髄神経の触覚神経では50m/秒と著しくアドバンテージがあります。ではどうしてすべて有髄神経ではないのでしょうか? それはまあ有髄神経がラグジュアリーなものということもあるのでしょうが、どうも直径1μmというような細い神経線維の場合、ミエリン鞘があると却って伝達速度が遅くなるらしいのです(3)。詳しい研究が行われていないらしく私にはよくわかりません。

ミエリン鞘は軸索を完全に被っているわけではなく切れ目があって、その部分をランヴィエ絞輪とよびます(図129-1)。ミエリン鞘とランヴィエ絞輪はそれぞれルドルフ・フィルヒョウ(4)とルイ・ランヴィエ(5)によって19世紀に発見されました(図129-1)。

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図129-1 ミエリン鞘とランヴィエ絞輪

ミエリン鞘の実体は末梢神経系ではシュワン細胞、中枢神経系ではオリゴデンドロサイトです。シュワン細胞は外胚葉の神経堤に由来する毛布のような細胞で、軸索に巻き付いています(図129-2)。オリゴデンドロサイトについては後述します。これらの細胞が何重にもぐるぐる巻き付くことによってミエリン鞘が形成され、有髄神経ができあがります。ミエリン鞘の一番外側の部分を神経鞘ともいいます。断面をみればミエリン鞘の多層構造がよくわかりますが、これらの層はすべて同じ細胞で連続しています(図129-2)。

毛布がきちんとたたまれてはがれないようにするためには、高度に硫酸化された糖鎖を持つP0(ピーゼロ)というタンパク質が必要だとされています(6)。ミエリン鞘は単に電源コードのシールドのようなものではなく、神経細胞とさまざまな相互作用を行なって、神経細胞を健全に保つためにも有用であるようです(7)

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図129-2 シュワン細胞にぐるぐる巻きにされる軸索

さて跳躍伝導を理解するためにはコンデンサというものを理解する必要があるようです。村田製作所のサイトによると、コンデンサは 1)電圧を安定させる、2)ノイズを取り除く、3)信号を取り出すなどの用途に用いられます(8)。セクション128の図128-2で解説しました。要するに充電式電池のようなものですが、電池が化学式で書けるような化学変化すなわち分子の変化を基盤としているのに対して、コンデンサは分子の整列や分子内での構造変化を基盤とするものです。生物はみずから体内にコンデンサの役割を果たす組織を制作・設置し、神経伝達に使っているようです。

神経細胞の軸索はミエリン鞘で被われており、その切れ目にランヴィエ絞輪があります。このどの部分がコンデンサかというと、それはミエリン鞘と軸索の細胞膜がそれに当たります(図129-3)。ランヴィエ絞輪には多数のナトリウムチャネルが集中していて、これが電池のような役割を果たしているわけです。ここに刺激がきて一時的にチャネルが解放されると、ナトリウムイオンが軸索に流れ込み、アクションポテンシャルが発生します。一方チャネルの外側はナトリウムイオンが減少するので、ミエリン鞘の外側からランヴィエ絞輪の方向に電流が流れます。神経標本の周囲の電解液が導線の役割を果たします(図129-3)。

アクションポテンシャルの裾野が次のランヴィエ絞輪に届くとその刺激でチャネルが解放され、次のアクションポテンシャルが発生します(3)。ランヴィエ絞輪につつまれた部分の軸索には、ほとんどナトリウムチャネルはありません。つまり、ランヴィエ絞輪単位でステップワイズに(飛び飛びに)神経伝達が行なわれます。これが跳躍伝導です。このシステムによって、有髄神経は前述のような桁違いの高速伝達を可能にしました。

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図129-3 跳躍伝導

慶應義塾大学の田崎一二らは第二次世界大戦前に、図129-4に記したような方法などで、実際にミエリン鞘というコンデンサから発生する電流を測定し、跳躍伝導を証明しました。杉晴夫によると(9)、第二次世界大戦中に彼らが論文をドイツの雑誌に投稿したところ、ベルリンが廃墟になっているにもかかわらず、ちゃんと雑誌に印刷発表されたそうです(10、11)。日本ではほとんどの学術雑誌は戦争で休刊せざるを得なくなりました。図129-4は簡略化したものなので、詳細を知りたい方は文献10、11をあたってください。田崎一二は戦後まもなく渡米し、米国に帰化して97才までNIHで働いていました。これはNIHの高齢レコードだそうです(12)。奥様も研究室に来て実験のお手伝いをなさっていたようです。

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図129-3 田崎一二夫妻と彼らの実験

ところが最近跳躍伝導について、新しい発見がありました。チャールズ・コーエンらによるとミエリン鞘と軸索の間に12.3nmの間隙(もうひとつの導線)があり、ここをイオンが移動し電流が流れているというのです(13、図129-5)。そうするとイオン(電流)はミエリン鞘の外をまわらなくても、このもうひとつの導線を流れればいいのでショートカットできます。しかしそうなるとミエリン鞘と軸索の細胞膜が一体となってコンデンサの役割を果たしているという考え方はとれなくなります。すなわちミエリン鞘は軸索を保護することと、軸索の周りにある円筒形のセカンドケーブルをつくるために存在することになります。これは注目すべき発見で、今後の進展を見守りたいと思います。

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図129-5 ミエリン鞘と細胞膜には広めの間隙が存在する

イカなどは巨大神経線維をつくって神経伝導の速度をはやめましたが、脊椎動物は有髄神経による跳躍伝導のシステムをつくることによって、細い神経線維でも高速な伝達速度を確保することに成功しました。このことは脳を発達させる上で非常に重要なエポックだったと思われます。なぜなら脳にそんな太い神経が鎮座すると、脳に多くの情報を詰め込むための容量が損なわれてしまいます。かといって神経を細くすれば伝達速度が遅くなります。タコやイカはイヌと同じくらいの数のニューロンを持っているにもかかわらず、そんなに知能が高くないのはそういう理由じゃないかと思われます。

脳ではシュワン細胞に代わって、神経管由来のオリゴデンドロサイトというグループのグリア細胞がミエリン鞘を形成します(1、14、図129-6)。ひとつのオリゴデンドロサイトがいくつもの軸索のミエリン鞘をかけもちするところが、末梢でのシュワン細胞とは違うところです。

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図129-6 脳のミエリン鞘

参照

1)脳科学辞典: 髄鞘
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%AB%84%E9%9E%98

2)ウィキペディア: 神経線維
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B9%8A%E7%B6%AD

3)酒井正樹 講義実況中継 その3:興奮はいかにして伝わるか
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/29/3/29_135/_pdf

4)Wikipedia: Rudolf Virchow
https://en.wikipedia.org/wiki/Rudolf_Virchow

5)Wikipedia: Louis-Antoine Ranvier
https://en.wikipedia.org/wiki/Louis-Antoine_Ranvier

6)T. Yoshimura et al., GlcNAc6ST-1 regulates sulfation of N-glycans and myelination in the peripheral nervous system., Scientific Reports vol. 7, Article number: 42257 (2017)
https://www.nature.com/articles/srep42257

7)ウィキペディア: シャルコー・マリー・トゥース病
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E7%97%85

8)続・生物学茶話128: パッチクランプ法
http://morph.way-nifty.com/grey/2021/02/post-9ad3a9.html

9)杉晴夫 「生体電気信号とはなにか」 講談社ブルーバックス (2006)

10)Ichiji Tasaki und Taiji Takeuchi, Der am Ranvierschen Knoten entstehende hktionsstrom und seine Bedeutung fiir die Erregungsleitung., Pflügers Archive vol.244, pp. 696- (1941)
https://link.springer.com/article/10.1007%2FBF01755414

11)Ichiji Tasaki und Taiji Takeuchi, Weitere Studien über den Aktionsstrom der markhaltigen Nervenfaser und über die elektrosaltatorisehe Übertragung des Nervenimpulses., Pflügers

12)NIH record - mile stones - Biophysicist Tasaki Leaves Extraordinary Scientific Legacy
https://nihrecord.nih.gov/newsletters/2009/02_20_2009/milestones.htm

13)Charles C.H. Cohen, Marko A. Popovic,Jan Klooster, Marie-Theres Weil,Wiebke Mo ̈bius, Klaus-Armin Nave,Maarten H.P. Kole., Saltatory conduction along myelinated axons involves a periaxonal nanocircuit., Cell vol.180, pp.311-322, (2020)
https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S0092-8674%2819%2931324-8

14)Wikipedia: Oligodendrocyte
https://en.wikipedia.org/wiki/Oligodendrocyte

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2021年2月 3日 (水)

続・生物学茶話128: パッチクランプ法

生体電気信号を勉強するためにオームの法則を復習しておきましょう。オームの法則によれば、ある物質の中を流れる電流I(単位:アンペア)は、電位差V(単位:ボルト)とその物質の電気伝導度G=コンダクタンス(単位:ジーメンス)の積になります。Gは物質の種類と温度などの環境条件で決まる定数なので、「ある物質の中を流れる電流は負荷された電位差に比例する」としてもいいわけです。これを数式で表現すると、I=GV ということになります。電気伝導度Gは電気抵抗R(単位:オーム)の逆数なので、この式はI=V/Rとも書けます。

ここで直列回路(1、図129-1A)の場合、回路上に置かれた2つの物質の電気抵抗をR1およびR2とすると、全抵抗はR1+R2です。すなわち Rtotal=R1+R2ということになります。したがってここに流れる電流は I=V/(R1+R2) です。

数値を代入すると、I=9V/(500Ω+500Ω)=9÷1000=9mA

一方並列回路(1、図129-1B)の場合、全体を流れる電流は個々の回路を流れる電流の和になります。
I=V/R1+V/R2 すなわち I=V(1/R1+1/R2)です。電気抵抗の逆数は電気伝導度なので I=V(G1+G2)とも書けます。

数値を代入すると I=9Vx(1/500Ω+1/500Ω)=9x 0.004=36mA

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図128-1 直列回路と並列回路

生体電気信号を理解するためにはもうひとつ、コンデンサについての知識が必要です。コンデンサは絶縁体の両側を2枚の金属板ではさんだような構造になっています(2、3、図128-2A)。ここに電池を使って電圧をかけると、2枚の金属板にはそれぞれ+および-の荷電が蓄積します(図128-2A、充電)。このとき絶縁体内部でも非通電時にはランダムだった分子の並びが整列した状態になり、各分子の内部でも電子密度が偏った状態になります(4、図128-2、絶縁体内部での構造変化)。この状態は電池をはずしても変わりません(図128-2B、蓄電)。ところが導線を電球につなぐと、ここに電流が発生し、電球は点灯します(図128-2、放電)。

電球が点灯してエネルギーが消費されると、コンデンサにおける金属板の帯電と絶縁体での分子の状態がもとのランダムな状態にもどります(図128-2A)。ここでまた電池をつなぐと再び充電されます(図128-2A、充電)。図128-2をよく見ていただくと、絶縁体があるにもかかわらず、あたかも充電時には電池プラス極→導線→金属板→絶縁体→金属板→導線→電池マイナス極、放電時には電球→導線→金属板→絶縁体→金属板→導線→電球と逆回りに電流が流れているような状況が生まれます。

細胞膜はある種のコンデンサのような役割も果たしています。では細胞内の電池とは何でしょうか? それはイオンチャネルやイオンポンプによるイオンの出し入れが相当します。これらによって電池の役割が実現されています。そのためのエネルギーは細胞内のATPによって供給されます。たとえばひとつの細胞に1000個のイオンチャネルがあるとすると、それらは並列に並べられた電池のようなものであり、その穴が解放されると電池1000個分の放電が起きます。またイオンポンプは常にコンデンサを充電するような働きを行っていることになります。

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図128-2 コンデンサのメカニズム

イオンチャネルの機能についての研究は、ネーアーとザクマンのパッチクランプ法(5、6)の開発によって著しく進展しました。電極が入った細くて精密に制作されたガラスピペットをマイクロマニピュレーター(7、8)で操作し、細胞に徐々に近づけていって細胞膜に接したところで少し吸い上げます(図128-3)。そうすると細胞膜が少しピペット内に引き込まれ、ピペットと膜の間から電流が漏れ出すことがない所謂ギガシールドの状態が確保できます。この方法ができる前は、細胞に電極を刺していたのでどうしても漏れがありましたし、小さな細胞ではそもそも実験が不可能でした(4)。図128-4はピペットを神経細胞につけてパッチクランプを実行しているところです(6)。

ピペットでトラップされたイオンチャネルが1個であれば、活動電位にともなうそのチャネルの電位変動が観察できますし、ピペット内の電極液の組成を変えることによって様々な実験もできます(9)。また膜の一部だけをピペットで吸い上げたり、膜に人為的な穴を開けて細胞質液を電極液に交換してしまうというようなことも可能です(6)。

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図128-3 パッチクランプ法

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図128-4 パッチクランプ法を実施している写真

ネーアーはミュンヘンのホッホシューレの出身で、これはウニベルジテートと違って技術実習を重視した大学だそうです。彼自身このことが後の自分の研究に大きな影響を与えたと述べています(9)。ネーアーは米国留学中に生物物理学者になることを決意し、帰国後マックスプランク研究所でザクマンと1967年に共同研究をはじめました。ザクマンはその後英国に留学しますが、帰国後またネーアーとの共同研究を再開します。その目的は1個のイオンチャネルの電位変化を測定することでした。幸いにして彼ら2人のための研究室を得て所期の目的を達成することができました。これによってホジキン-ハクスレイのイオンチャネル説、すなわちナトリウムおよびカリウムチャネルが実在することが証明されました(10、11)。

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図128-5 パッチクランプ法を開発したネーアーとザクマン

彼らの技術はさまざまな改良が行われ、現在でも神経生理学者にとっては米の飯のように大事な技術となっています。ネーアーとザクマンはこの功績によって1991年のノーベル生理学医学賞を受賞しました(9)。

参照

1)ウィキペディア: 直列回路と並列回路
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%B4%E5%88%97%E5%9B%9E%E8%B7%AF%E3%81%A8%E4%B8%A6%E5%88%97%E5%9B%9E%E8%B7%AF

2)ウィキペディア: コンデンサ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%B5

3)村田製作所 コンデンサとは?
https://article.murata.com/ja-jp/article/what-is-capacitor

4)杉晴夫「生体電気信号とはなにか」 講談社ブルーバックス (2006)

5)ウィキペディア: パッチクランプ法
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%81%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97%E6%B3%95

6)Wikipedia: Patch clamp
https://en.wikipedia.org/wiki/Patch_clamp

7)ナリシゲ マイクロマニピュレーター
https://www.narishige.co.jp/japanese/products/application/patch_clamp.html

8)室町機械
https://muromachi.com/index.php/archives/item_cat/06-05

9)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1991: Erwin Neher and Bert Sakmann
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1991/press-release/

10)Neher, E., & Sakmann, B.
Single-channel currents recorded from membrane of denervated frog muscle fibres. Nature, vol.260(5554), pp.799-802, (1976).
https://www.nature.com/articles/260799a0

11)Erwin Neher, Ion channels for communication between and within cells. Nobel lecture, December 9, 1991
https://www.nobelprize.org/uploads/2018/06/neher-lecture.pdf

 

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2021年1月29日 (金)

続・生物学茶話 127: 活動電位

すべての細胞はある意味電池であるとも言えますが、図127-1に示されるような活動電位を発生する細胞は、神経細胞や筋細胞などの限られた細胞です。これは通常は細胞外が高濃度で細胞内が低濃度に保たれているナトリウムイオンが、なんらかの刺激で細胞外から細胞内に流入するために起こります。

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図127-1 活動電位(一過性膜電位変化)


アラン・ホジキンはケンブリッジ大学のトリニティーカレッジ出身ですが、米国に留学してイカの巨大軸索の利用法などを学んで1938年に帰国し、アンドリュー・ハクスレイと共に活動電位の研究に取り組みました。しかし運悪く第二次世界大戦が勃発し、5年間も海軍でレーダーの研究に従事することになりました(1)。ハクスレイは開戦時医学生でしたが爆撃で学業を続けられなくなり、防空部隊や海軍で砲撃技術の研究をやっていたようです(2)。1946年になってようやくホジキンとハクスレイはトリニティーカレッジで共同研究を行うことになりました。

彼らはイカの巨大軸索の活動電位を測定し、図127-1のような電位の変動を数式で表現することに成功しました(3)。彼らが成功した要因として、ケネス・コールらが開発したボルテージクランプ法(4)を用いてコンダクタンスの測定を正確に行ったことがあげられています。またホジキンとハクスレイはナトリウムやカリウムの細胞への出入りに関してイオンチャネル仮説を提唱し、後にそれが正しいことがわかりました。彼らの肖像写真を図127-2として示しておきます。ホジキンとハクスレイは1963年のノーベル生理学医学賞を受賞しました。

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図127-2 活動電位研究のパイオニア達

 

活動電位について考察する前に、浸透圧・選択的半透膜とイオンの移動などについての基本的な知識を整理しておきたいと思います。まず塩素イオンは通過できないが、カリウムイオンは通過できる選択的半透膜を仮定しましょう。細胞には塩素イオンやカリウムイオンが通過する開閉可能な穴(チャネル)があり、このような状態を実現することは可能です。

図127-3の膜より左側にはカリウムイオンがあり、右側にはないわけですから拡散(浸透圧)によってカリウムイオンは右側に流入します。そうすると左側に単独の塩素イオンが発生し、そのマイナスチャージによって膜の右側に流入したカリウムイオンは膜の右側表層に引きつけられます。膜の左側には塩素イオンが整列します。これはまさしくセクション126で示した電池の一種であり、導線で左右をつなぐと電流が発生します。導線がない場合、カリウムイオンを膜の右側に流入させようとする浸透圧と、カリウムイオンを膜の左側に引き込もうとする電圧がつりあったところで平衡状態となります(図127-3)。

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図127-3 選択的半透膜の近傍で発生する電池のような現象

 

では私たちの細胞の外と内はどのようなイオン組成になっているのでしょうか? 日本緩和医療学会などの資料によると図127-4のようになっています(5、6)。mEq の単位は mmol に直してあります。それぞれのイオンによって、著しく細胞内外の濃度に差があることがわかります。細胞膜がただの半透膜ならこのようなことは起こりません。まさしく細胞膜を通過するイオンは図127-3で仮定した選択的半透膜のように選別されています。

カリウムイオンとナトリウムイオンに関して言えば、細胞膜にATP分解酵素活性を持つナトリウム・カリウムポンプが存在し、ATP分解のエネルギーを利用してナトリウムイオンを細胞外に排出し、カリウムイオンを細胞内にとりこむ作業を行っていることが、この濃度差の大きな要因になっています。他のイオンも生体内で重要な役割を果たしていますが、活動電位に関して言えば主役はナトリウムイオンとカリウムイオンです(7)。

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図127-4 細胞内外のイオン濃度

 

ナトリウム・カリウムポンプ(Na+・K+ポンプ)はエネルギーを消費してイオンを輸送する、いわゆる能動的イオン輸送を行っていますが、これとは別にナトリウムとカリウムはそれぞれ濃度差によってイオンを透過するチャネル(開閉可能な穴)を細胞膜に持っています。

Na+・K+ポンプは Na+/K+-ATPase の酵素活性を持ち、次式のような反応を行います。

3 N a + (細胞内) + 2 K + (細胞外) + A T P + H 2 O ⇄ 3 N a + (細胞外) + 2 K + (細胞内) + A D P + P i

したがって通常は細胞内ナトリウムイオンの濃度が低く(Na+・K+ポンプによって細胞外に排出されている)、カリウムイオンの濃度は高く(Na+・K+ポンプによって細胞内にとりこまれている)なっています。したがって細胞膜の外側はナトリウムイオンで覆われ、細胞内の塩素などのマイナスイオンは細胞膜のすぐ内側に引き寄せられて整列します(図127-5平常時)。このとき細胞膜の内外で電位差が発生します。細胞外の電位を0とすると細胞内の電位はマイナス70~80mVで、これがいわゆる静止電位です(図127-1)。注意すべきは、この電位は細胞内と細胞外のトータルなイオン濃度の差によって発生するのではなく、細胞膜内外の局部的なイオンの集積によって発生するということです。

細胞が刺激を受けるとナトリウムチャネルおよびカリウムチャネルが開き、細胞内外の濃度差に応じて、細胞外からナトリウムイオンが流入し、細胞内からカリウムイオンが流出します。流入と流出が同じになったところが図127-1の閾値 (threshold) です。これより少しでもナトリウムの流入が勝ると正のフィードバック機構が働いて一気に脱分極が進みます(4、図127-1)。

ナトリウムイオンが大量に流入すると、細胞膜の内壁にトラップされていたマイナスイオンはナトリウムイオンにひかれて散らばり、細胞膜の外側ではナトリウムイオンを失った塩素イオンにひかれてプラスイオンの集積も解消されます。この結果活動電位が発生します(図127-4)。これは細胞膜の近傍で形成されていた電池が一気に放電したとも解釈できます。活動電位は一過性のもので、ピークに達すると電位依存性のカリウムチャネルが開いてカリウムイオンを放出し、電位は静止電位にもどります(8)。とりこまれたナトリウムはNa+・K+ポンプによって細胞外に放出され、カリウムもとりこまれてもとの濃度に戻ります。

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図127-5 活動電位発生にともなうイオンの動向


参照

1)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1963  Alan Hodgikin Biographical
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1963/hodgkin/biographical/

2)The Nobel Prize in Physiology or Medicine 1963 Andrew Huxley
https://www.nobelprize.org/prizes/medicine/1963/huxley/facts/

3)脳科学辞典: Hodgkin-Huxley方程式
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/Hodgkin-Huxley%E6%96%B9%E7%A8%8B%E5%BC%8F

4)A Biographical Memoir by Sir Andrew Huxley. Kenneth Stewart Cole., Biographical Memoir, National Academy of Sciences., National Academies Press (1996)
http://www.nasonline.org/publications/biographical-memoirs/memoir-pdfs/cole-kenneth-s.pdf

5)日本緩和医療学会 輸液の生理作用
https://www.jspm.ne.jp/guidelines/glhyd/2013/pdf/02_03.pdf

6)大塚製薬 輸液の基礎知識
https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/knowledge/

7)ウィキペディア: 活動電位
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%BB%E5%8B%95%E9%9B%BB%E4%BD%8D

8)酒井正樹 講義実況中継 その2:細胞はいかにして興奮するか
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika/29/2/29_76/_article/-char/ja/

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2021年1月26日 (火)

続・生物学茶話 126: 電池の起源 

皆さんは海綿という動物をご覧になったことがあるでしょうか? 海底に固着し臓器らしい臓器もなくてまるで植物のようですが、実は立派な従属栄養の動物です。あらゆる多細胞生物のなかで最も「下等」なグループと思われていますが、カンブリア紀より前から現在に至るまで大繁栄している生物です。

2014年に、 Danielle Ludeman らがその海綿が化学物質や物理刺激に反応してくしゃみをするメカニズムについて報告したときには、ちょっとしたセンセーションを巻き起こしました。海綿には神経細胞がないのに、まるでそれが存在するかのような電気信号による情報伝達が起こったからです(1)。でもそれは驚くべきことではなく、細菌も電気信号によって連絡を取り合っていることが知られています(2)。単細胞の真核生物も電気信号を利用して行動することが報告されています(3)。ここで引用した文献はごく一部にすぎません。すなわち神経細胞が出現する以前から、生物は電気信号を利用して生きていたわけです。私たちの脳は電気信号を伝達する回路の巨大な集積体であり、電気信号について考察することは生物を理解する上で避けては通れません。

元素の水溶液中におけるイオン化しやすさ(イオン化傾向)は、元素の酸化されやすさの指標でもあり(4)、化学の一丁目一番地です。私は「金借るな、間借りあてにすな、水餡食い過ぎ銀ブラ禁」とおぼえましたが、最近では「リッチに貸そうかな まああてにすんな ひどすぎる借金」という語呂合わせが流布しているようです(5)。後者の方が正確かもしれません(図126-1)。最も酸化されやすい元素の一つであるリチウムは、海水中だけでも2300億トンあるそうですが(6)、人間が製造した物を除いてはすべて化合物となっており、単体では地球上に存在しません。意外なことに金も海水中に50億トンも存在するそうです(7)。金はほとんど単体で存在します。ともあれ私達生物も化学の法則に則って生きているので、このイオン化傾向のリスト(図126-1)は重要な意味を持っています。

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図126-1 元素のイオン化傾向

ここで少し電池の話に寄り道してみましょう。後述するように、私達の体を構成するひとつひとつの細胞もある種の電池です。電池は金属によってイオン化傾向が異なるということがその原理と深く関わっています。電池の発明によって、私達は電気を人工的に製造し使用することが可能になったのですが、ではその電池を発明したのは誰なのでしょうか? 一般的にはアレッサンドロ・ボルタが1800年に発表したボルタ電堆が最初と言われていますが、それはおそらく違います。

1936年にイラクの首都バグダッドの近郊で、鉄道の敷設を行なっていた作業員が奇妙な容器を発見しました(8)。調べてみるとそれは図126-2のような電池で、パルティア国またはサーサーン朝ペルシャで製造された物であることがわかりました(8、9)。パルティア国とは紀元前約250年から紀元後224年まで現在のイラン・イラクおよび周辺を支配していた国家で(10、図126-2)、サーサーン王朝はその領地を引き継ぎ、紀元後650年位まで続きました(11)。

この電池は1~2ボルトくらいのパワーがあり、おそらく金または銀メッキを行なうために使われたのではないかといわれています(8、9)。さらにもっと以前の時代の古代エジプトでも金メッキは行なわれており、おそらく電池が使われたのではないかと考えられています(12、13)。

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図126-2 古代イランの版図とそこで使用されていた電池

近代になってからは、ボルタの電堆(voltaic pile)が最初に発明された電池として有名です(14、図126-3)。これは[銅板-電解液(希硫酸または食塩水)に浸した紙-亜鉛板]のセットを1ユニットとして、多数このユニットを積み上げた物です。希硫酸電解液の中では、Zn → Zn2+ plus 2e- および 2H+ plus 2e- → H2 という反応が起きて、亜鉛イオン(Zn2+)は隣接する上方の銅板の方に、電子(2e-)は隣接する下方の電解液の方に流れるので、電流は下から上に流れることになります。

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図126ー3 アレッサンドロ・ボルタと彼が発明したボルタ電堆

ボルタが電堆を発表したのは1800年頃ですが、江戸時代の蘭学者宇田川榕菴は、1830年代から40年代にかけて出版されたその著書「舎密開宗(せいみかいそう」の中で、ボルタ電堆を紹介しています(図126-4)。これは電気分解を行なっているところの図のようです。

宇田川榕菴は岡山県最北部の津山藩に所属していましたが、そのような辺境の地にありながら、世界でも先進的な研究の勉強や実験をよくやっていたものだと驚かされます。このウィキペディアに掲載されていた肖像画に記してある名前は榕菴とはなっていないので、信じていいのかどうか私にはわかりません。

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図126-4 宇田川榕菴と彼が江戸時代に制作したと思われる電堆

希硫酸の中に銅板と亜鉛板を入れると、銅には何の変化もありませんが、亜鉛はイオン化してZn++の形で溶解し、亜鉛板には電子が取り残されます。両者は静電気で引きつけ合うので、亜鉛イオンは板の外側、電子は板の内側に集合して自由に動けない状態となります(図126-5)。これを電気的二重層といいます。

この状態は細胞と似ています。細胞は表層のイオンポンプで常にナトリウムをくみ出しているので、外側にNa+が集合し、内側に電子が集合するという状況になっています(図126-5)。このような状況では電流は流れませんが、電池の場合は導線などで銅板と亜鉛板をつなぐ、細胞の場合はイオンチャンネルの穴を開放するなどの操作によって、電気的二重層は崩壊し電流が発生します。

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図126-5 銅板・亜鉛板で形成される電気的二重層と細胞膜

ボルタ電池の銅板と亜鉛板を導線でつなぐと、亜鉛板の電子は陽極(銅板)に移動し、亜鉛イオンは電解質溶液中に解放されて、そこで硫酸と反応して硫酸亜鉛と水素イオンを生成します(図126-6)。水素イオンは陽極に集積した電子と反応して水素分子を形成し、泡となって空中に放出されます。これがボルタ電池の原理です。なのですが、ボルタ電池で起こっていることを科学的に正確に説明するのはなかなか困難なことらしく、歴史的に重要ではあっても、あまり教科書に使うのにはふさわしくないという考え方もあります(15)。

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図126-6 ボルタ電池の原理

確かにダニエル電池の場合、時間による反応の変動が少ないので実用的であるだけでなく、説明も容易でしょう(図126-7)。図の陽極・陰極で起こっている反応を足し合わせると Zn+Cu(2+)→Zn(2+)+Cuとなります。これは陽極では銅が析出し、陰極では亜鉛イオンが溶出するということを意味しています。図126-1に示したように、亜鉛はイオン化しやすい金属、銅はイオン化しにくい金属という性質を利用して電池がつくられているということがわかります。この電池を発明したジョン・フレデリック・ダニエルの本職は気象学者で、湿度計や温度計の開発にも大きな業績を残しました(16)。

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図126ー7 ジョン・ダニエルと彼が発明した電池(ダニエル電池)

 

参照

1)Danielle A Ludeman, Nathan Farrar, Ana Riesgo, Jordi Paps and Sally P Leys, Evolutionary origins of sensation in metazoans:functional evidence for a new
senosory organ in sponges., BMC Evol. Biol., vol.14(3), (2014)
http://www.biomedcentral.com/1471-2148/14/3
https://bmcecolevol.biomedcentral.com/articles/10.1186/1471-2148-14-3

2)細菌も電気通信で“会話” ~日経サイエンス2016年5月号より
https://www.nikkei-science.com/?p=49662

3)P Brehm, R Eckert., An electrophysiological study of the regulation of ciliary beating frequency in Paramecium., J Physiol, vol.283, pp.557-68, (1978)
doi: 10.1113/jphysiol.1978.sp012519.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/102769/

4)ウィキペディア: イオン化傾向
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3%E5%8C%96%E5%82%BE%E5%90%91

5)受験の味方 イオン化傾向とは?
https://juken-mikata.net/how-to/chemistry/ionization-tendency.html

6)ウィキペディア: リチウム
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%81%E3%82%A6%E3%83%A0

7)金のこれまでの採掘量と地球に残された埋蔵量
https://nanboya.com/gold-kaitori/post/amountof-gold-extraction/

8)Battery University: When Was the Battery Invented?
https://batteryuniversity.com/learn/article/when_was_the_battery_invented

9)バグダッド電池
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%82%B0%E3%83%80%E3%83%83%E3%83%89%E9%9B%BB%E6%B1%A0

10)ウィキペディア: パルティア国
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2

11)ウィキペディア: サーサーン朝
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%B3%E6%9C%9D

12)Xanado: オーパーツ!?電気はエジプトに存在した!?ハトホル神殿の電球レリーフ!バグダッドで発見されたパルティア壺電池・避雷針?画像付
http://xanadu.xyz/850/

13)金属加工の歴史
https://shizuokatekko.jp/metalworking-history/

14)Giuliano Pancaldi: Volta, Science and culture in the age of enlightment. Princeton Univ. Press. ISBN 978-0-691-12226-7 (2003)
https://books.google.co.jp/books?id=hGoYB1Twx4sC&pg=PA73&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q&f=false

15)坪村宏: ボルタ電池はもうやめよう 一 問題の多い電気化学分野の記述 化学と教育 vol.46, no.10, pp. 632-635 (1998)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/46/10/46_KJ00003520589/_pdf

16)ブリタニカ百科事典: John Frederic Daniell
https://www.britannica.com/biography/John-Frederic-Daniell

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2021年1月22日 (金)

続・生物学茶話 125: 背と腹 よみがえったジョフロワの亡霊

左右相称動物のなかで、私達もその一員である脊椎動物などの後口動物(deuterostome)では中枢神経系が背側にあるのに対して、昆虫などの前口動物(protostome)では中枢神経系が腹側にあります(図125-1)。始原的左右相称動物であるウルバイラテリアが生まれる前から地球上に存在した、たとえばクラゲ型の刺胞動物にも口はあったと思われるので、口のある方を腹側とすれば始原的左右相称動物であるウルバイラテリアにも背と腹は存在したはずです。当時の刺胞動物の神経系については、主なものは口を動かすための口周囲のリング状のものと、そこから放射状に伸びる触手(テンタクル)を動かすためのものがあったことが現在のクラゲなどから推測されます。

ウルバイラテリアは基本的に海底を前に進んで餌を探すという生物ですから、ここで前後という概念が生まれました。海綿動物や刺胞動物には前後の概念はありません。ウルバイラテリアでは後方より前方の情報(触覚・視覚・嗅覚)が圧倒的に重要であるというアンバランスが発生しました。ですから神経の中心が腹の中心付近にあった口の周辺から前方に移動し、脳は前方に誕生しました。もうひとつウルバイラテリアにとって重要なことは、腹側の筋肉を動かして前方に進むということです。このためには神経系は腹側にあるべきでしょう。実際、前口動物の神経は腹側にあります(図125-1)。

ところが後口動物では神経は背側にあります。前口動物の場合主要な神経索が消化管とクロスしているのが不自然な感じなので、後口動物のように消化管と主要神経索が平衡な生物が始原的な左右相称動物であり、前口動物はその基本形から派生的に生まれたと考えられがちで、図125-1の上段図で黒で描いた主要神経索が背側に描いてあります。しかし私は青で描いた腹側の主要神経索がもともとの形態だったと思います。口が下方にある上に、腹側の左右の筋肉を協調して動かし前進するというのは、ウルバイラテリアにとって本質的に重要なことであり、まず腹側の神経系が発達することは自然の理と考えます(図125-1上段図の青い神経索)。

口が下にある段階で腹背が逆転したら、ウルバイラテリアは生きていけません。消化管が貫通してからもしばらくはこの形態(図125-1上段図の青い神経索を持つ生物)は引き継がれたと思われます。ただ口が下方から前方に移動し、泳いで生活するようになったならば、主要な神経系が腹側にあるというメリットがなくなり、背側にある生物が出現するのも自然な感じではあります。前後の逆転については、より難しい問題で、また勉強不足のためここではコメントを控えます。

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図125-1 中枢神経が背側にあるか腹側にあるか

主要神経索が背側にあるか腹側にあるかという生物を2分する相違については、早くも19世紀からフランスでジョルジュ・キュヴィエとエティェンヌ・ジョフロワ・サンティレール(図125-2)の大論争があったそうです。キュヴィエは前口動物と後口動物のボディプランが根本的に異なると考えましたが、ジョフロワは裏返っただけで両者は同じボディープランだと主張しました。この論争は西欧ではかなり有名らしく、私は未読ですが本まで出版されています(1)。キュヴィエが優勢だったようですが、ゲーテは持論の「Urform=原型」からすべての動物が生まれたという思想からジョフロワを支持したそうです(2)。図125-1の上段の図はある種のUrformです。

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図125-2 キュビエとジョフロワ

長い空白期間の後に、キュビエ・ジョフロワ論争にとりあえずの決着をつけたのは、あのSTAP細胞の件で自殺した理研の笹井芳樹らでした(3)。デ・ロバーティスと笹井(図125-3)はマウスとショウジョウバエという系統的にかけ離れた種において、ボディープランを決定する遺伝子、特に前後軸を決定するHox遺伝子クラスターや背腹軸を決定するSog/Dpp遺伝子に共通点が多いことから、これらは進化的に保存されたものであるとし、後口動物と前口動物の共通祖先としてウルバイラテリア(urbilateria)を想定しました(3-5、図125-1上段図-左右相称動物の基本型)。キュヴィエ-ジョフロワ論争から言えば、彼らはジョフロワの亡霊をよみがえらせたというわけです。

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図125-3 背腹問題の手がかりをみつけた研究者たち

Hox遺伝子クラスターは左右相称動物の最も基本的なボディープランを規定する遺伝子群と思われ、マウス(後口動物)とショウジョウバエ(前口動物)という系統的にかけはなれた生物同士でも共通点が多く、ジョフロアの正しさを示しています。ゴーンの総説(5)から図125-4を引用しておきます。

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図125-4 前口動物(Drosophila)と後口動物(Mouse)におけるHox遺伝子クラスター とそこから類推されるウルバイラテリアの場合

Sog/Dppについてはショウジョウバエ(前口動物)とアフリカツメガエル(後口動物)のmRNAに互換性があることが証明されています(6)。動物が初期発生の頃、基本的な形態形成を行なうための場を形成する分子群は数百以上あるでしょうが、なかでも重要な役割を果たしているのはBMPとその関連因子です。Sog、chordin、Dpp、BMP4などもその中に含まれています。

BMPを最初に見つけたのはカリフォルニア大学の整形外科医だった Marshall R. Urist (7、図125-3)で1965年のことでした。もともとは骨の増殖促進因子として発見されたので、bone morphogenetic protein などという名前がつけられましたが、実はこの因子は生理的には骨形成と直接の関係はなく、もっと広汎な作用を持つ因子だということが後に判明しました(8)。

節足動物のSOGと脊椎動物の chordin はホモログであり、いずれも中枢神経を誘導する機能に互換性があることが証明されています(6)。ただ初期発生の頃に、節足動物のSOGは腹部に発現し、脊椎動物の chordin は背部に発現するという違いがあります。この発現位置を決める遺伝子の変異によって、位置が逆転したと思われます。このほかに腹背の特徴を制御するDPPとそのホモログBMP4の発現位置も節足動物と脊椎動物では逆転しています(図125-5)。

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図125-5 中枢神経系の配置逆転

Chordin はシュペーマンとマンゴルトのオーガナイザーの分子的実体だと注目されましたが(9)、それが本当かどうかは微妙です。初期発生における3軸(前後・腹背・左右)の決定には3次元的に多数の因子が関わっており、人間の知能ではごくおおざっぱにしか把握できなのではないかと思われます。おそらくスーパーコンピュータに数値を入れると、答えが返ってくるというような課題ではないでしょうか。 それはそれとして、chordin の作用機構についてはかなり解明されているようです。Chordin は分子量約12万ダルトンのかなり大きめのタンパク質で、分子内に4つのシステインリッチドメインを持っていることが特徴です(10、図125-6)。

Chordin はTsgというタンパク質と結合しているBMPをトラップし、本来細胞膜のBMP受容体に結合すべきBMPを隔離するという作用を持っています。つまり chordin 自体が背側誘導のカスケードを起動するのではなく、BMPが起動する腹側誘導カスケードを阻害することによって、結果的に背側を誘導するということです(11)。

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図125-6 コーディンと関連タンパク質

BMPは様々な形態形成過程で重要な役割を果たすので、いつまでもトラップされたままでは困ります。BMPを Chordin から解放するために、tolloid というメタロプロテアーゼが用意されています。このタンパク質分解酵素は chordin を切断してBMPを解放します(図125-6、図125-7)。

ここで crossveinless 2 というタンパク質が興味深い役割を果たします。これがないとショウジョウバエの翅脈がうまくできないというのが名前の由来です。このタンパク質は細胞膜から突き出した糖鎖に結合しており、システインリッチドメインを介して chordin-BMP-Tsg複合体に結合します(12、図125-7 のピンクで記してある cystein rich domein と CR1)。したがってCrossveinless2を特定領域に密集させておけば、Chordinが分解されたときに高濃度のBMPが放出されて、効率よくBMPカスケード(BMP→BMP受容体→Smad複合体→転写)を起動できることになります(12)。

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図125-7 Crossveinless 2 の役割

前にも述べたように、腹背軸の決定などの初期発生における3軸決定には多くの因子がからんでいるので、上記のような単純な理論はひとつの切り口に過ぎず、他の側面からも見る必要があります。たとえば三品はBMPシグナルとFGFシグナルが競合的に働くことで中胚葉誘導時の中胚葉の背腹パターンを制御しているというモデルを提唱しています(8)。

参照

1)Tobey A. Appel, The Cuvier-Geoffroy Debate. French Biology in the Decades Before Darwin., Oxford University Press (1987)
https://global.oup.com/academic/product/the-cuvier-geoffroy-debate-9780195041385?cc=jp&lang=en&

2)倉谷滋 「形づくりにみる動物進化のシナリオ」 丸善(2015)

3)De Robertis EM, Sasai Y., A common plan for dorsoventral patterning in Bilateria. Nature 380: 37–40. (1996)
https://www.nature.com/articles/380037a0

4)秋山(小田)康子、小田広樹: なぜ今、クモなのか?胚発生が描く進化の道すじ、生命誌ジャーナル 2004年秋号
http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/042/research_21.html

5)Stephen J. Gaunt, The significance of Hox gene collinearity. Int. J. Dev. Biol. 59: 159-170 (2015) doi: 10.1387/ijdb.150223sg
http://www.ijdb.ehu.es/web/paper/150223sg/the-significance-of-hox-gene-collinearity

6)Scott A. Holley, P. David Jackson, Yoshiki Sasai, Bin Lu, Eddy M. De Robertis, F. Michael Hoffman, Edwin L. Ferguson., A conserved system for dorsal-ventral patterning in insects and vertebrates involving sog and chordin. Nature volume 376, pages 249–253 (1995)
http://www.nature.com/articles/376249a0

7)Marshall R. Urist, Bone: Formation by Autoinduction., Science, Vol. 150, Issue 3698, pp. 893-899 (1965) DOI: 10.1126/science.150.3698.893
http://science.sciencemag.org/content/150/3698/893

8)三品 裕司 BMPシグナルの多彩な機能——初期発生から骨格形成まで Journal of Japanese Biochemical Society vol. 89(3): pp. 400-413 (2017) doi:10.14952/SEIKAGAKU.2017.890400
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890400/data/index.html

9)Edward M. De Robertis, Spemann's organizer and self-regulation in amphibian embryos., Nat Rev Mol Cell Biol., vol.7(4), pp.296–302. (2006)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2464568/

10)Juan Larraín, Daniel Bachiller, Bin Lu, Eric Agius, Stefano Piccolo, and E. M. De Robertis., BMP-binding modules in chordin: a model for signalling regulation in the extracellular space., Development. vol. 127(4): pp. 821–830 (2000)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2280033/

11)The chordin page.
http://www.hhmi.ucla.edu/derobertis/EDR_MS/chd_page/chordin.html

12)Catharine A. Conley, Ross Silburn, Matthew A. Singer, Amy Ralston, Dan Rohwer-Nutter, David J. Olson, William Gelbart and Seth S. Blair1, Crossveinless 2 contains cysteine-rich domains and is required for high levels of BMP-like activity during the formation of the cross veins in Drosophila., Development, vol. 127, pp. 3947-3959 (2000)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10952893

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2021年1月14日 (木)

続・生物学茶話 124: ウルバイラテリアをめぐって

扁形動物(プラナリアなど)は体腔・呼吸器・循環器・骨格・貫通する消化管などは持っていませんが、かなり立派な神経系を持っていて脳もあります。20世紀までは扁形動物は左右相称動物 (バイラテリアン Bilaterian) の最古の祖先(ウルバイラテリアン Urbilaterian) と最も近縁な生物と考えられていました(1、図124-1 伝統的分類)。しかし遺伝子の研究などの進歩によって、扁形動物は現在ではその生きた化石としての地位を剥奪され、前口(旧口)動物群に属する冠輪動物の1グループとみなされるようになりました(2、図124-1新分類)。

そして最近になって、扁形動物に含まれるか極めて近縁とされていた無腸動物は、なんと後口(新口)動物群の根元から分岐したと考えられている珍渦虫と同じグループに移動しました。両者をあわせて珍無腸動物門(xenacoelomorpha)を新設するべきだという考え方も有力なようです(3、図124-1)。これは非常にまずいネーミングだと思いますが、渦無腸動物とすると扁形動物みたいな感じになるので致し方ありません。

筑波大学のグループは無腸動物は棘皮動物に近い生物で、進化の過程で形態が単純化されたと主張しています(4)。この考え方には私は違和感があります。どうしてプロトタイプ的生物がいったん棘皮動物に進化した後、またプロトタイプ的生物にもどったのでしょうか?

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図124-1 左右相称動物の系統樹

Peterson らは扁形動物の祖先と無腸動物の祖先が分離したのは遅くてもエディアカラ紀だとしています(5)。すなわちウルバイラテリアン(始原的左右相称動物)が存在したのはエディアカラ紀以前ということです。無腸動物は寄生によって生き延びた生物ではなく、エディアカラ紀から今日まで、それぞれの時代の環境に適応して進化し、生き延びた結果を示していると考えられます。ですから一見単純な生物のように見えますが、その遺伝子や形態・生活史には5億年のさまざまな生存の知恵が隠されているかもしれません。私は棘皮動物が退化してできた生物とは考えたくありません。多くの扁形動物の仲間が寄生生活によって生き延びた中で、独自の自由な生き方を選んだプラナリアも同様です。すなわち無腸動物と自由生活型の扁形動物はそれぞれ後口動物と前口動物を代表するプロトタイプ的生物であるとの見方(1)を支持したいと思います。

実際扁形動物と無腸動物のボディプランにはかなり共通性があり、ウルバイラテリアンの特徴を両者とも時代を超えて保存してきた可能性があります。彼らは最初に記したようなさまざまな臓器は持っていませんが、餌を吸い込む口は持っていて、細胞や合胞体(細胞のシンシチウム)に取り込んで消化します。肛門はありません。口は体の下側にないと効率的に餌をとれないので、体を定位させる必要があり、そのために平衡胞という臓器を持っています。平衡胞の内壁には感覚毛があり、これで平衡石を感知して姿勢を定位させます(6、7)。ウィキペディアをはじめとして、いくつかのサイトに無腸動物は脳を持たないという記述がありますが、体を定位させるためには平衡胞の複数の感覚毛から得た情報を処理し、体の各所にある筋細胞に指示を出さなければならないので、かなり高度な神経系の働きが必要です。実際 Bery らは電子顕微鏡による詳細な研究から、脳・神経索・交連神経・ニューロパイルが存在するとしています(1、8、図124-2~図124-4)。

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図124-2 無腸動物の神経系

図124-3は扁形動物の神経系ですが、多岐腸目(ヒラムシなど)と三岐腸目(プラナリアなど)で少し違いがあります。前者は網目状で脳から放射状に神経が伸びていますが、後者ははしご状の構造です。ただし扁形動物では体節が明確でないので、専門用語としてのはしご状神経系という言葉は使わないことになっています。ただウィキペディアの「はしご状神経系」の項目を見ると「扁形動物の神経系はかご状神経系といわれるが、これをもはしご状という場合がある」という記載があり、使ってもいいのかもしれません(9)。多岐腸目と三岐腸目の神経系を比較すると似ている点もあります。まず脳が左右の葉(ローブ)にわかれていること、脳が体の前方にあること、概ね左右相称であることなどです(図124-3)。これはおそらく始原的左右相称動物であるウルバイラテリアンの特徴を引き継いでいるのではないかと思われます。

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図124-3 扁形動物の脳と神経系

つい最近まで無腸動物には脳はないと言われてきましたが、近年の電子顕微鏡による研究によって(1、8)次第に脳の存在が認められてきました。図124-4をみると、平衡胞の外側・表皮の内側にニューロパイル(np)と呼ばれる樹状突起・軸索・シナプスなどが集合した領域が観察されます。これは無腸動物が脳を持つことを強く示唆しています。扁形動物ではさらに広大な領域のニューロパイルがみられます。

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図124-4 無腸動物・扁形動物に見られるニューロパイルの電子顕微鏡写真

左右相称であることは生物の進化においては重要な意味があります。非相称あるいは放射相称の生物は、ある場所に体を固定して生きるか、水の流れのままに漂って生きるかです。左右相称であるということは、自分の意思で移動するということと深い関連があります。左右相称生物は餌を嗅覚・視覚・触覚などで感知し、そちらの“方向”に移動することに特徴があります。それによって進行方向が前であるという「前後という方向の概念」が生じ、その場所に正しく到達するために左右にハンドルを切る必要があるので、体の左右の筋肉を別々に制御する必要が生まれ。また「左右という概念」が生じます。

ウルバイラテリアンの2つのモデルがウィキペディアにあります(10、図124-5)。無腸動物や扁形動物の研究から想像できるのはそのどちらでもなく、右側のプラヌロイドモデルに中枢神経系を与えたような形が正解なのではないかと思われます。

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図124-5 ウルバイラテリアンの2つのモデル

参照

1)Xavier Bailly, Heinrich Reichert, and Volker Hartenstein., THE URBILATERIAN BRAIN REVISITED: NOVEL INSIGHTS INTO OLD QUESTIONS FROM NEW FLATWORM CLADES., Dev Genes Evol., vol. 223(3), 149-157 (2013). doi:10.1007/s00427-012-0423-7.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23143292/

2)Adoutte A, Balavoine G, Lartillot N, Lespinet O, Prud’homme B, De Rosa R. The new animal
phylogeny: reliability and implications. Proc Natl Acad Sci USA. vol.97, pp.4453–4456, (2000)

3)Philippe H, Brinkmann H, Copley RR, Moroz LL, Nakano H, Poustka AJ, Wallberg A, Peterson KJ,
Telford MJ. Acoelomorph flatworms are deuterostomes related to Xenoturbella. Nature, vol.470, pp.255–258, (2011)

4)つくばサイエンスニュース 動物の左右対称の体はどこから? (2019)
http://www.tsukuba-sci.com/?p=6457

5)Peterson KJ, Cotton JA, Gehling JG, Pisani D. The Ediacaran emergence of bilaterians: congruencebetween the genetic and the geological fossil records. Phil Trans Soc. B., vol. 363, pp.1435–1443, (2008)

6)ウィキペディア:扁形動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%81%E5%BD%A2%E5%8B%95%E7%89%A9

7)ウィキペディア:無腸動物
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E8%85%B8%E5%8B%95%E7%89%A9

8)Amandine Bery & Albert Cardona & Pedro Martinez, Volker Hartenstein., Structure of the central nervous system of a juvenile acoel, Symsagittifera roscoffensis., Dev Genes Evol vol.220, pp.61–76 (2010), DOI 10.1007/s00427-010-0328-2
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2929339/pdf/427_2010_Article_328.pdf

9)ウィキペディア:はしご状神経系
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E3%81%97%E3%81%94%E5%BD%A2%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B3%BB

10)Wikipedia: Urbilaterian
https://en.wikipedia.org/wiki/Urbilaterian

 

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2021年1月 4日 (月)

続・生物学茶話 123: 軸索誘導

神経細胞の仕事は情報伝達ですから、スタンドアローンでは何の意味もありません。仕事をするためには他の細胞とつながらなければなりません。そしてただランダムにつながればいいわけではなく、ある程度ターゲットを定めてつながる必要があります。実際神経回路が正しくつながっていないと、知的障害、自閉症、統合失調症などを発病する可能性があることがわかっています。また神経回路の退行はアルツハイマー病やパーキンソン病を発病することがあります。

ターゲットをさがしている神経細胞は図123-1のように細胞体が軸索を伸ばし、その先端には growth cone (成長円錐)という構造があって、軸索伸長を先導しています。Growth cone は中心部にチューブリンの組織体である微小管が丘のような形で存在し、そこからアクチン線維が放射状に伸びています。アクチンによる構造体には2種類がありスライム状の葉状仮足と、そこから針のような形で外に伸びている糸状仮足に分けられます(1、図123-1)。前進する方向に糸状仮足が突き出して、それに葉状仮足が追随し、さらに微小管の丘が追随する形で軸索が伸長します。

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図123-1 成長円錐(growth cone)

前々項・前項で述べてきたNGFファミリーは栄養因子としての役割が主たる機能なので、軸索誘導の方向を高精度で決めるというような芸当はできません。それにはアクチンの集散を制御して growth cone が進む方向を決める機能を持つ因子を探索する必要があります。Growth cone に突出する仮足の誘導因子が前方左側に存在すれば左側に仮足が出て、そちらの方向に軸索は進展します(2、図123-2)。右側に忌避因子(仮足退縮因子)が存在すればなおはっきりと growth cone は左にハンドルを切ります(図123-2)。

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図123-2 軸索伸展方向のハンドリング

当初は図123-3のようなシンプルなモデルで説明できると考えられていました。軸索誘導の実験材料としてもっともよく使われるのは、脊髄内で軸索を決まった方向に進展させる交連ニューロンです。交連ニューロンは細胞体は背側にありますが、発生の途中で軸索を腹側に伸ばしてフロアプレートに到達し、そこから中央裂を乗り越えて最終的には左右反対側の領域に進出します(図123-3)。Tessier-Lavigne の研究室の Serafini らは脊髄中央腹側に高濃度で存在するネトリン1の濃度勾配による走化性(化学向性)によって、軸索が腹側に伸展させられていると考えました。実際ネトリン1のノックアウトマウスでは軸索はフロアプレートには到達せず、一部は途中で中央裂方向に曲がったりしました(3、図123-3)。 これとは別にルーフプレート周辺には負の走化性をもたらす忌避因子(仮足退縮因子)が存在し、軸索がルーフ方向へ向かわないように制御しています(2)。

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図123-3 走化性による軸索誘導説

Samantha Butler は学生時代から Tessier-Lavigne 研究室の業績に感銘を受けていて、それでこの方面の研究にかかわろうとしていました。彼女の友人に Marya Postner という人がいて、その人がなんと Serafini と結婚することになって、Butler は直接 Sefafini から走化性の話を聞いたりしていました。しかし彼女が大学教師になって最初に研究室にやってきた学部学生の Joe Herrold と Anna Maglunog は走化性という考え方に疑念を持ちました。それはネトリン1がフロアプレート周辺だけでなく、VZ(Ventral zone、図123-4)という正中裂の両サイドにも発現していることに注目したからです(4)。実際 Serafini らのデータをよく見ると、VZにもそこそこネトリン1が発現しているように見えます(図123-3)。これを Serafini らは軽視していました。学生たちは軸索の一部はVZの方向に進まなければおかしいと考えました。しかし実際には軸索はすべてフロアプレート方向に進みます。それどころかネトリン1のミュータントマウスではVZ方向にも軸索が伸びていきます。

この難題にぶつかって Butler のプロジェクトは頓挫し、ポストドクも研究室を去って大ピンチに陥りました。そこに現れたのが Supraja Varadarajan という当時まだ学生だった救世主です(図123-4)。彼女は交連神経細胞の軸索はVZのネトリン発現細胞がつくる境界線の外側を正確にたどって伸びるということです。まるでツタは壁を伝って伸びるが決して壁の中には伸びないように(4)。

ここでネトリン1の受容体について述べましょう。ネトリン1の受容体にはDCC系とUNC-5系があって、DCC系の受容体でネトリンを受けると細胞は受け取った方向に軸索を伸ばし、UNC-5系で受け取るとその方向に反発するように軸索を伸ばすことが当時わかってきていました(5-7)。いかにもVZからのネトリン1を交連神経細胞はUNC-5で受け取り、反発する形で軸索を伸ばしているように見えました。この考えだと図123-4のようになります。すなわちネトリン1は忌避因子として機能し、ネトリン1の突然変異体ではネトリンが機能しないので軸索はVZの方向にも伸びます。

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図123-4 忌避因子を想定した「壁を這うツタ」説

これで説明できれば良かったのですが、軸索の受容体を調べてみると多くはDCC系だったので、この説によってもうまく説明できそうにもありませんでした。それでもまあここまでやったのだからということで Butler は Varadarajan にとりあえず学位を授けようとしたのですが、審査会で Larry Zipursky がいちゃもんをつけてきました。ネトリン1の発現はmRNAレベルで詳しく調べられていましたが、タンパク質レベルでの詳細な分布が調べられていないと言うのです。mRNAは正確に相補的なプローブで特異性が保証された検出ができるのですが、タンパク質は抗体で検出しなければならないので、こちらは偶然に依存する抗体の特異性次第でデータの信頼性が大きく変わるという方法で、あまりやりたい方法ではないのです(もちろんタンパク質の分布を直接検出するというのは非常に重要な実験なのですが)。私も何度も使えない抗体をつかまされて、研究費を捨てるハメになったことがあります。

でもともかくやらないと審査が通らないので、Varadarajan は追加実験をやってみました。そうすると驚くべきことに、ネトリン1はVZ以外の部分に散らばって観察されました。あまりにもそれまでの結果とは違っていたので、Varadarajan は特異的な検出ができなかったと判断し、抗原の賦活化(電子レンジなどの処理で抗原を露出させる)を行って再実験をしてみました。そうすると図123-5Bの緑色で示した部分のように、脊髄の外壁(pia)と軸索伸展領域に主要な分布がみられました。あまりにもmRNAの分布とは異なる結果です(図123-5)。これはVZ領域の神経細胞が外側に軸索を伸ばしてネトリン1を輸送し、ドンづまりの外壁に多くが蓄積されたと考えられます。この軸索に発現した、あるいはそこから放出されたネトリン1に交連神経細胞軸索のDCCが結合して、進行方向に伸展が誘導されたと考えるとうまく説明できます(8)。彼らはこれを haptotaxis(走触性)と呼んでいます(図123-5)。Varadarajan がある賞の受賞記念講演会で、このモデルを説明している動画を視聴することができます(9)。

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図123-5 走触性(ハプトタキシス)による軸索誘導説

走触性誘導というのは非常に魅力的な理論ですが、詰めるべき点は多々あります。普通受容体は細胞膜にあってリガンドが外から来て結合するわけですが、リガンドが細胞膜にあって受容体が外から細胞膜をまさぐってリガンドと結合するのでしょうか? それともネトリン1は軸索から外部に放出されてラミニンなどの細胞間線維にからまり、それをDCCがキャッチするのでしょうか? ネトリン1に濃度勾配がなくても、このモデルは成立するのでしょうか? ほかの神経誘導にもこの理論は適用できそうなのでしょうか?

交連神経細胞の軸索誘導についてはルーフプレート周辺に存在する仮足退縮因子をはじめとして、ネトリン1以外の因子も関わっていることは明らかで(10)、図123-6にそれらが列記されています。このなかには、正中裂を横断するための因子②や、横断した後少し上行するための因子③も含まれています。このほかエクソサイトーシスを調節するシンタキシンが深く関わっているという論文もあります(11)。

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図123-6 軸索誘導にかかわることが示唆されている諸因子 赤矢印:仮足退縮因子が働く方向

参照

1)脳科学辞典 成長円錐
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E6%88%90%E9%95%B7%E5%86%86%E9%8C%90

2)Xiyue Ye, Yan Qiu, Yuqing Gao, Dong Wan, and Huifeng Zhu, A Subtle Network Mediating Axon Guidance: Intrinsic DynamicStructure of Growth Cone, Attractive and Repulsive MolecularCues, and the Intermediate Role of Signaling Pathways., Neural Plasticity, Article ID 1719829, 26 pages (2019)
https://doi.org/10.1155/2019/1719829

3)Tito Serafini, Sophia A. Colamarino, E. David Leonardo, Hao Wang, Rosa Beddington, William C. Skarnes and Marc Tessier-Lavigne., Netrin-1 Is Required for CommissuralAxon Guidance in the DevelopingVertebrate Nervous System., Cell, vol.87, pp.1001-1014 (1996)
https://www.cell.com/action/showPdf?pii=S0092-8674%2800%2981795-X

4)Samantha Butler, The evolution of an axon guidance model: from chemotaxis to haptotaxis., (2017)
https://thenode.biologists.com/evolution-axon-guidance-model-chemotaxis-haptotaxis/research/

5)Fazeli A, Dickinson SL, Hermiston ML, Tighe RV, Steen RG, Small CG, Stoeckli ET, Keino-Masu K, Masu M, Rayburn H, Simons J, Bronson RT, Gordon JI, Tessier-Lavigne M, Weinberg RA. Phenotype of mice lacking functional Deleted in colorectal cancer (Dcc) gene. Nature. vol.386, no.6627 pp.796-804,(1997)  PubMed PMID: 9126737.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9126737/

6)Leonardo ED, Hinck L, Masu M, Keino-Masu K, Ackerman SL, Tessier-Lavigne M. Vertebrate homologues of C. elegans UNC-5 are candidate netrin receptors. Nature. vol.386 no.6627, pp.833-838,(1997) PubMed PMID: 9126742.
https://www.nature.com/articles/386833a0

7)脳科学辞典 ネトリン
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%8D%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%B3

8)Supraja G. Varadarajan and Samantha J. Butler., Netrin1 establishes multiple boundaries for axon growth in the developing spinal cord., Dev Biol., vol.430(1) pp.177–187 (2017) doi:10.1016/j.ydbio.2017.08.001.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28780049/

9)Supraja Varadarajan, The 25th Annual Samuel Eiduson Student Lecture Award 2017
https://www.youtube.com/watch?v=E_aIi7tM2U4

10)Esther T. Stoeckli, Understanding axon guidance: are we nearly there yet? Development vol.145, pp.1-10, (2018) dev151415. doi:10.1242/dev.151415
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29759980/

11)Oriol Ros et al., A conserved role for Syntaxin-1 in pre- and post-commissural midline axonal guidance in fly, chick, and mouse., PLoS Genet vol.14(6), (2018) e1007432.
https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1007432

 

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2020年12月17日 (木)

続・生物学茶話 122: ニューロトロフィンファミリーとその受容体

コーエン、モンタルチーニ、ハンバーガーによるNGF発見の論文が出版されたのが1956年ですが(1)、それから四半世紀経過した1982年になってバルデらが類似した因子であるBDNF(brain-derived neurotrophic factor)をブタの脳から単離精製しました(2)。これはマウス顎下腺のNGFと分子構造もよく似ていて、3つのSS結合を構成するシステインの位置なども含めてアミノ酸配列のホモロジーが認められました。さらにNT-3(neutotrophin-3)、NT-4も次々と報告されて、20世紀の終盤にはこれらの因子はニューロトロフィンファミリーを構成することが明らかになりました(3)。

その後これらのリガンドに対応するレセプター、TrkA、TrkB、TrkC、も1986年頃から次々と報告されました(4、5)。Mariano Barbacid (図122-4)は オンコジーン(H-Ras)の発見者として非常に有名な研究者で、そのためか英語版のウィキペディアではTrkの発見については全く言及されていませんが(6)、実はこれらのレセプター群も彼のグループで発見されました。また Trk ファミリーとは別系統のレセプター p75 は Dan Johnson らによって報告されました(7)。

Trk はトロポミオシンレセプターキナーゼの略であり、これは突然変異によってトロポミオシンの一部とフュージョンを起こした Trk(当時は何者か知られていませんでした) が大腸癌の細胞からみつかったためにつけられた名前です(8)。NGFのレセプターであることが判明した段階で改名すれば良かったのですが、いまだにこの名前が使われています。p75 はTNF受容体スーパーファミリーの一員ですが、ちゃんと p75ニューロトロフィンレセプターと呼ばれています。3種類の Trk と p75 はすべて細胞膜1回貫通タンパク質で、細胞外でそれぞれのリガンドと結合しますが、細胞内ドメインは Trk がチロシンキナーゼ活性を持つのに対して、p75 はデスドメインを持っています(図122-1)。

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図122-1 ニューロトロフィンファミリーとその受容体

Trk ファミリーの受容体はそれぞれAがNGF、BがBDNF・NT-4、CがNT-3と高親和性(Kd=10の-11乗M)で結合しますが、NT-3はAまたはBとも低親和性(Kd=10の-9乗M)で結合します(9)。NT-3の低親和性結合に意味があるかどうかはわかりません。p75 は低親和性(Kd=10の-9乗M)ですべてのニューロトロフィンと結合します。p75の低親和性結合に意味があることは証明されています。すなわち高濃度のニューロトロフィンの存在下では p75 が活性化され、細胞死の誘導や軸索伸長の停止などを実行します(10、11)。これらの因子が胎生期の神経ネットワークの形成に何らかの形でかかわっていると思われます。

Trk はニューロトロフィンのダイマーが接近すると、自身もダイマーを形成して結合するのでリガンド:受容体=2:2の形で複合体を形成し、受容体は細胞内部位で図122-2に示すように、パートナー分子の酵素活性によるトランスリン酸化がおこり活性化されます。おそらく Trk が密な状態でないとこのようなことは起こりにくいと思われるので、リガンドの濃度が上昇するだけでなく、受容体の密度も高くならないと受容体の活性化が起こりにくいという形で情報伝達が制御されているのでしょう。

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図122-2 Trk ダイマー結合による受容体の活性化

Trk 受容体ダイマーの活性化されたチロシンキナーゼはPKCシグナル伝達経路(12)、MAPKシグナル伝達経路(13)、AKTシグナル伝達経路(14)などを活性化し、この結果ERK1/2、AKT、NFκBなどの情報伝達因子が核に侵入して各種の転写因子が活性化され、細胞の生存・分化・増殖などに必要な因子が転写されます(15、図122-3)。

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図122-3 ニューロトロフィン受容体が活性化するシグナル伝達経路

Trk ファミリーの受容体はニューロトロフィンと高親和性の結合を、それぞれのリガンドと特異的に2分子対2分子の形で行いますが、p75 はすべてのリガンドと受容体1分子対リガンド2分子の形で非特異的に低親和性で結合します(図122-4)。これはリガンドの濃度が非常に濃くなってきたときに抑制的に作用して制御するためと思われます。リガンドまたはプロリガンドと結合した p75 はJNKシグナル伝達経路を活性化し、図122-4に示したように一般的な細胞死誘導のための反応カスケードを起動します。軸索の伸長を停止する作用もあるようです(10)。プロリガンドと結合するのは、リガンドになる前にトラップして迅速に反応を止めようという方式で合理的ではあります。p75 は Trk 受容体と結合してダイマーを形成することもあるようですが、そうするとトランスリン酸化がおこらないので Trk 受容体は無力化されます。

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図122-4 Trk ファミリーと p75

NGF、BDNF、NT-3をノックアウトしたマウスでは神経形成に大きな障害が生ずることがわかっているので、ニューロトロフィンの重要性は明らかですが、NT-4のノックアウトマウスが軽微な障害で済むのはBDNFが役割を代替しているからでしょう(16)。

参照

1)Stanley Cohen, Rita Levi-Montalcini, and Viktor Hamburger, A nerve growth-stimulating factor isolated from sarcomas 37 and 180., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.42, pp.571-574 (1956).
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC534215/pdf/pnas00737-0144.pdf

2)Y-A Barde, D Edgar, and H Thoenen, Purification of a new neurotrophic factor from mammalian brain., EMBO J., vol.1, no.5, pp. 549–553. (1982)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC553086/

3)伊藤久則 ニューロトロフィンによる神経分化の制御機構に関する研究 岐阜薬科大学紀要 vol.53, no.23-24, pp.23-34 (2004)
https://gifu-pu.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=12764&item_no=1&page_id=13&block_id=51

4)Mariano Barbacid, Fabienne Lamballe, Diego Pulido, Rüdiger Klein., The trk family of tyrosine protein kinase receptors., Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Reviews on Cancer, vol.1072, Issues 2–3, pp.115-127 (1991)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0304419X9190010I

5)Rudiger Klein, Shuqian Jing, Venkata Nanduri, Edward O'Rourke, and Mariano Barbacid., The trk Proto-Oncogene Encodes a Receptor
for Nerve Growth Factor., Cell, vol.65, pp.189-197, (1991)
https://www.cell.com/cell/pdf/0092-8674(91)90419-Y.pdf

6)Wikipedia: Mariano Barbacid
https://en.wikipedia.org/wiki/Mariano_Barbacid

7)Dan Johnson et al., Expression and structure of the human NGF receptor., Cell vol.47, issue 4, pp.545-554, (1986)
https://www.cell.com/cell/pdf/0092-8674(86)90619-7.pdf?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2F0092867486906197%3Fshowall%3Dtrue#

8)Wikipedia: Trk receptor
https://en.wikipedia.org/wiki/Trk_receptor

9)脳科学辞典 高親和性ニューロトロフィン受容体
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%AB%98%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93

10)脳科学辞典 低親和性ニューロトロフィン受容体
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E4%BD%8E%E8%A6%AA%E5%92%8C%E6%80%A7%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E6%88%90%E9%95%B7%E5%9B%A0%E5%AD%90%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93

11)Maria L. Florez-McClure et al., The p75 Neurotrophin Receptor Can Induce Autophagy and Death of Cerebellar Purkinje Neurons., The Journal of Neuroscience, vol.24, no.19, pp.4498–4509 (2004)

12)Abcam PKC シグナル・パスウェイ
https://www.abcam.co.jp/cancer/signaling-pathways-involving-pkc-1

13)Thermo Fischer Scientific いまさら聞けないがんの基礎 9Ras/Raf/MEK/ERK (MAPK)シグナル伝達経路とは?
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/cancer9/

14)Sino Biological AKTシグナル伝達経路
https://jp.sinobiological.com/pathways/akt-signaling-pathway

15)Educational portal for Oncologists. Oncology Pro., Neutrophin Signalling
https://oncologypro.esmo.org/oncology-in-practice/anti-cancer-agents-and-biological-therapy/targeting-ntrk-gene-fusions/overview-of-cancers-with-ntrk-gene-fusion/what-are-trk-receptors/neutrophin-signalling

16)Squire, Larry R., Berg, Darwin, Bloom, Floyd E., du Lac, Sascha, Ghosh, Anirvan Spitzer, Nicholas C., Fundamental Neuroscience 4th edn., Academic Press., pp.405–435, (2013) ISBN 978-0-12-385870-2.

 

 

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