グスタフ・マーラーの交響曲第2番「復活」はその劇的な構成などから人を魅了してやみません。ベルリンフィルの総帥であるサイモン・ラトルは、12歳の時にこの曲を聴いて指揮者になりたいという志を抱いたそうです。ギルバート・キャプランはこの曲しか振らない指揮者として有名です。そして都響の最も得意とする曲のひとつでもあります。今日はマエストロエリアフ・インバル、コンマス矢部ちゃん、サブ四方恭子さん、ソプラノ澤畑恵美氏(矢部夫人)、メゾ竹本節子氏、二期会合唱団、パイプオルガン(演奏者の名前?)、そして都響メンバーでの演奏でした。
マーラーが若い頃、当時楽壇の大御所であったブラームスやブルックナーのシンフォニーでは、管楽器や打楽器は地味な扱いでしたが、マーラーはもっと管楽器・打楽器を前面に出して大活躍させる曲を書いてみたかったのでしょう。友人であり、その音楽を理解されないまま若死にしてしまったハンス・ロットの追悼という意味もあったのだろうと思います。ブラームスやブルックナーが書かなかった、独唱と合唱を含むシンフォニーを世に問うてみたいという野心もあったかもしれません。
しばらく東京芸術劇場が改装工事をしていたので、池袋に来ることもありませんでしたが、久しぶりで来ると名物の空中エスカレータが撤去され、壁寄りに移設されていました。確かに空中エスカレータが満員状態で地震が来たら、相当怖い感じがします。これはやむを得ない改築ですね。新しいお店も1Fにはいって、特に「でぶねこ」という小物のお店は面白くて、ネコのストラップを買ってしまいました。
このホールのオルガンはものすごいもので、何しろ180度回転してデザインを代えることができます。オーバーホール中ということで、どうするのだろうと思っていたら、普通に使って演奏していました。今日のデザインはモダンタイプの向きでした。このデザインは優美で素晴らしいと思います。しかしまあ日本が勢いのよかった頃に作られた贅沢品で、今となっては維持するのに苦労しているようです。今考えると他にはないモダンタイプのデザインのみでよかったのではないかと思います。
http://www.geigeki.jp/house/organ.html
今日もお客さんは満杯。マイクが林立し、あちこちにカメラが狙うという録音録画体制で、第1楽章は緊張状態で始まりましたが、すぐにほぐれてきてインバル都響のいつものペースになります。私が疑問なのは、この曲を実演で数回聴きましたが、マーラーが第1楽章終了後少なくとも5分は休憩するようにと指定しているのに、実際に休憩したことは一度もありません。たまたま私がそのような演奏会にしか遭遇しなかったからなのでしょうか? 私は勝手に作曲家の指示を無視して、休憩をとらず続けて演奏するのは納得できません。
今回は特に第3楽章の冒頭が印象に残りました。やっぱりマーラーという作曲家はすごいです。それをきっちり音にする都響もすごいです。竹本さんの声は深く透明で印象に残りました。第3・4楽章ははっきりハンス・ロットの影響が認められます。このあたりはインバルもあまりオケを引き回さず、自然な展開が心地よい感じです。
第5楽章の密やかに深くひびく合唱、パイプオルガンも加わった管弦楽の盛り上がりも素晴らしく、終了後はあちこちから感動の雄叫びが聞こえました。今回の「復活」ではとくにバンダも含めた管楽器の圧倒的な美音と迫力に感動しました。先日の交響曲第1番より完成度が高いと思いました。ただ張り裂ける感情の洪水というところまではいっていないと思います。そこが録音録画体制を整えた演奏会の限界でしょうかね。
こんな曲です(終楽章より)
http://www.youtube.com/watch?v=cIkCcJIqUeI
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