カテゴリー「心と体」の記事

2012年12月18日 (火)

総選挙のどさくさにまぎれて、政府が遺伝子改変作物を許可

総選挙のどさくさに紛れて、除草剤耐性作物(高い濃度の除草剤をかけても枯れないように遺伝子が改変された植物)が政府に承認されたようです。米国でも認可されていないような遺伝子改変作物を認めてしまう日本政府。自民党に対して、TPP参加を選挙翌日からせっつく財界。あきれた国です。一部の企業の利益のためには、国土の汚染、国民の健康を損なう可能性、そしてなにより農業の外国企業による支配を許しても平気なのです。そして自分たちの利益のためには、永年つちかってきた日本の医療制度や文化などを破壊しても気にしないのです。

http://blog.goo.ne.jp/jpnx05/e/0104a2ae007866bced30038166ffdf70

グルホシネート:
http://www.nihs.go.jp/hse/yakudoku/glufosinate.html

グリホサート:
http://www5.ocn.ne.jp/~kmatsu/kumikae510.htm
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1342509278

イソキサフルトール:
http://www5e.biglobe.ne.jp/~ladymine/qaxa/nr823.htm

健康被害:
http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=267336

http://news.livedoor.com/article/detail/7245588/

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121219-00000301-jisin-soci

怪しいメーカーの格安除草剤が蔓延すると、不純物がたくさん含まれている可能性があり、予測不可能な被害が出る可能性もありますね。

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2012年7月 2日 (月)

団地の草取りと放射能

日曜日は団地の「草取りデイ」だったので、せっせと作業していると、だれかが近寄ってきて「このあたりはやめといたほうがいいよ」と声をかけてきました。

「え どうして?」
「このあたりは放射線高いからね」
「あらら」
「道路の真ん中でも 0.5μSv くらいあるからね。側溝のあたりはすごいよ。」
「あらら」
「垣根の内側の団地の敷地はだいたい低いよ。所々高いところはあるけどね。そっちをやったら。このあたりは全部市役所の役人と一緒にきちんと計ってるから。だけど公表はしてないよ。」
「除染は?」
「除染なんてできないよ。置く場所無いからね。あんたの家の前に置かれるといやだろう。」
「それはまあ そうですが」
「ベランダは 0.2-0.3、家の中は 0.1-0.2 くらいだね。まあそんなに心配することないから」
「なるほど」

これが北総の現状です。声をかけてきた人は、自治会の環境担当理事でした。

生け垣は結構パーティクルが飛んでくるのを防いでくれるようです。
測定結果を公表しないのは、不動産の資産価値が下がるのを恐れているからと思われます。政府や自治体だけでなく、団地の自治会まで隠蔽とは愕然としました。

柏市は除染を始めていて、千葉県とつるんで放射性のゴミを印西市に押しつけようとしていますが、とんでもない話です。

現場から100km離れていてもこんな難題をもたらす原発事故。福井あたりで巨大地震がまた起こったら、日本はどうなってしまうのかと思いますね。

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2012年1月15日 (日)

2012年1月 茨城千葉等水産物(一部)の放射性セシウム汚染

マダラ  北海道 浦河町沖 *        1月6日 2.06 (財)日本分析センター
スケトウダラ 北海道 浦河町沖 *     1月6日 0.43 (財)日本分析センター
マダラ  北海道 室蘭市沖 *        1月6日 18.8 (財)日本分析センター
スケトウダラ 北海道 室蘭市沖 *     1月6日 0.59 (財)日本分析センター
マダラ  北海道 釧路市沖 北海道沖   1月10日 1.62 (財)日本冷凍食品検査協会
スケトウダラ 北海道 釧路市沖 北海道沖 1月10日 ND (財)日本冷凍食品検査協会
ワカサギ 天然 前橋市(赤城大沼)    1月10日
591 群馬県農業技術センター
ワカメ  横浜市 横浜市沖 -         1月6日 1.1 横浜市衛生研究所
アカシタビラメ 茨城県 北茨城市沖 茨城県沖 1月11日 45 茨城県環境放射線監視センター
ウスメバル 茨城県 日立市沖  茨城県沖 1月11日 34 茨城県環境放射線監視センター
クロソイ 茨城県 日立市沖  茨城県沖  1月11日 38 茨城県環境放射線監視センター
サヨリ  茨城県 日立市沖  茨城県沖   1月11日 ND 茨城県環境放射線監視センター
ショウサイフグ 茨城県 北茨城市沖 茨城県沖 1月11日 71 茨城県環境放射線監視センター
ヒラメ  茨城県 北茨城市沖 茨城県沖  1月11日
73 茨城県環境放射線監視センター
マコガレイ 茨城県 北茨城市沖 茨城県沖 1月11日
147 茨城県環境放射線監視センター
会津ユキマス 養殖 福島県 西郷村 -   1月11日 ND 福島県農業総合センター
イワナ  養殖 福島県 西郷村 -       1月11日 ND 福島県農業総合センター
イワナ  養殖 福島県 磐梯町 -       1月11日 30 福島県農業総合センター
コイ  養殖 福島県 郡山市 -        1月11日 77 福島県農業総合センター

マイワシ 千葉県 銚子沖 日立・鹿島沖   1月12日 3.7 民間分析機関
カタクチイワシ 千葉県 九十九里沖 房総沖 1月12日 0.51 民間分析機関
マサバ  太平洋沖(N35°39、E141°09) 1月12日 5 民間分析機関
メカジキ  宮城県 太平洋沖合              1月12日 1.66 (財)日本分析センター
ヨシキリザメ  宮城県 太平洋沖合         1月12日 0.44 (財)日本分析センター
メバチマグロ  宮城県 太平洋沖合        1月12日 2 民間分析機関
メバチマグロ  宮城県 太平洋沖合        1月12日 1 民間分析機関

*:北海道・青森県沖太平洋、単位:ベクレル/kg, ND:検出限界未満
ソース:水産庁 水産物の放射性物質調査の結果について~1月13日更新~

赤城大沼のワカサギの汚染がひどいですが、事故から10ヶ月たっても周辺の森林から汚染水が沼に流れ込んでいることがわかります(NHKでは底の泥が原因だと言っていました)。海ではカレイ・ヒラメなど海底付近に棲んでいる生物(ベントス)の汚染が進んでいるようです。福島の養殖魚では西郷村のものは汚染がなく、磐梯町や郡山のものは汚染しているようで、使用している水質が明暗を分けたのでしょうか。大型回遊魚は汚染していない水域を泳ぐうちに、汚染物質が排出されて濃厚汚染を免れるのでしょう。

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2011年10月12日 (水)

人類の退化?

Channelislandsca チュマッシュ族はアメリカ原住民で、ヨーロッパ人が渡来するまでは、カリフォルニア州に住んでいました。スペイン人の進入によって、感染症などの影響で絶滅寸前にまで追い込まれましたが、なんとか死を免れ人々の祖先がチャンネル諸島などに生き残っています。彼らは薬草などに独特の知識があり、貝殻で作ったビーズを貨幣にするなど伝統文化を守っています。

しかし彼らはチャンネル諸島に豊富に産出するタールをいろいろな用途に永年使用していたため、健康に被害があり、なんと頭蓋骨が縮小しているという報告がありました。タールにはベンゾピレンをはじめとする様々な多環芳香族発がん物質が含まれており、遺伝子に悪影響を及ぼすことは知られていましたが、頭蓋骨のサイズにまで影響を及ぼすとは衝撃的です。

記事:
http://eco.goo.ne.jp/news/nationalgeographic/detail.html?20111007002-ng

論文:Could the Health Decline of Prehistoric California Indians be Related to Exposure to Polycyclic Aromatic Hydrocarbons (PAHs) from Natural Bitumen?
by Sebastian K.T.S. et al
Environmental Health Perspectives 119, 9, Sep (2011)
http://ehp03.niehs.nih.gov/article/fetchArticle.action?articleURI=info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.1103478

3.11の地震が原因で、市原コスモ石油のタンクが爆発したことは記憶に新しいところです。東京で直下型地震が発生すると、東京湾周辺全域で多くのタンクが爆発するおそれがあります。そうすると東京湾全体にタールが流出する可能性があり、海が多環芳香族で汚染されて、魚介類に致命的な被害と汚染をもたらすことになります。タンクの免震化が必要と思われます。
http://www.youtube.com/watch?v=tz9OB42xAE8&feature=related

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2011年7月19日 (火)

放射線被曝によってなぜ癌になるのか

615pxdna_structure2bkey2blabelled_p私たちの体を構成するほとんどの細胞は、同じ量のDNA(左のような構造を持つ2重構鎖がからまりあったような分子)を持っています。言い換えれば、細胞を2倍に増やすときにはDNAも2倍に増やさなければいけません。DNAを増やすときに働くのがDNA複製酵素です。

DNAを増やさなければいけないのは細胞を増やすときだけではなく、DNAが損傷を受けたときにも、ダメージを受けたDNAを捨てて、新たにDNAを継ぎ足さなければなりません。この場合もDNA複製酵素が仕事をします。

DNA複製酵素は人の場合14種類前後のものがあり、他の動物でもほぼ同様で、何千万年も保存されてきた、すなわち多くの種類のDNA複製酵素の大部分が、進化の過程で失われなかった重要なものと思われます。このようにいろいろな酵素が必要なひとつの要因は、じっくりと校正しながら正確に複製するものと、精度は犠牲にしても迅速に複製するものとがあることにあります。

DNAは2重鎖ですが、片方の鎖が鋳型になって複製が行われます。その鋳型が損傷を受けている場合、通常の複製が困難で、急ぐか急がないかにかかわらず正確なコピーをつくることが不可能な場合もあります。このようなときにもいい加減に複製する酵素の出番となります。そうすると次に正常な複製が行われる場合、いい加減に作ったDNAの情報が正確にコピーされることになり、子孫の細胞すべてが異常なDNAを持つことになります。

さてDNAは普通タンパク質によって保護され、紫外線や放射線の影響を受けにくい形になっています。しかしDNAから必要な情報を取り出すときや、DNAを複製するときには必要な酵素がアクセスする必要があるので、DNAが裸になる必要があります。

裸になったDNAは紫外線や放射線のダメージを受けやすく、化学変化や鎖の切断などが頻発します。そうなると酵素がアクセスできなくなって、情報の取り出しや染色体の複製ひいては細胞分裂ができなくなるので、DNA修復システムが起動します。ここで上記の精度は犠牲にして迅速に処理するDNA複製酵素が働き、配列はいい加減だけれども断点がなく、とりあえず染色体の複製や細胞分裂などができる状態に修復されます。

こうしてできた細胞は、異常なDNAを持つことになり、場合によっては癌化することも考えられます。さらに癌化の方向に向かっている細胞は細胞分裂が盛んで、DNAが裸の確率が高いので、より異常なDNAに変化しやすいということになります。子供は大人よりDNAが活発に活動し、細胞分裂も頻繁に起きているので、DNAは紫外線や放射線による損傷を頻繁に受けやすく、異常なDNAができる確率が高くなります。

体細胞がダメージを受けて癌になった場合、傷害は1代で終わりますが、生殖細胞(つまり精子か卵子)がダメージを受けた場合、代々障害を持った家系が出現する可能性があります。

PS: そういうことなら海岸で水着で遊んでいたりしたら、たちまち紫外線による傷害で癌になってしまうじゃないかと思うかもしれませんが、皮膚の細胞は角質化してすでに死んでいる細胞が多いうえに、1~2週間くらいで垢になってはがれてしまうので、その間に癌化しなければどうということはありません。細胞分裂している細胞は角質化層の下にあって一応保護されていますし、色黒の方はメラニン色素によっても保護されています。

参考:
(1)
http://ja.wikipedia.org/wiki/DNA%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%BC
(2)
http://www.youtube.com/watch?v=mxV8LTDMo50

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2011年7月17日 (日)

Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment (Annals of the New York Academy of Sciences)

Cherbnobylpowerplanttodayチェルノブイリの原発事故の生物に対する影響についての詳しい書籍が出版されています。Annals of the New York Academy of Sciences という雑誌は、ニューヨーク科学アカデミーが出版する権威ある純学術雑誌で、政治とは全く無関係です。これまで考えられていたよりも、事故の生物の健康への影響が甚大だったことが報告されています。

写真(チェルノブイリ原発)はウィキペディアより

Chernobyl: Consequences of the Catastrophe for People and the Environment (Annals of the New York Academy of Sciences)
by Alexey V. Yablokov , Vassily B. Nesterenko, Alexey V. Nesterenko, and Consulting editor Janette D. Sherman-Nevinger

Annals of the New York Academy of Sciences  Volume 1181 (2009)

編集者である Janette D. Sherman-Nevinger 博士へのインタビュー。これは日本語の字幕も出ますし、誰でも理解できる内容です。しかし博士が話している内容は、私にとって驚天動地のものでした。例えば・・・WHOはIAEAの同意がなければ論文を発表できない・・・という協定があるというのは信じられないお話でした。またこの事故による放射能の影響で亡くなった人の数が98万5千人というのも驚きです。
http://www.universalsubtitles.org/en/videos/zzyKyq4iiV3r/

本は現在取り扱われていないようですが(↓)、内容はダウンロードできます(↓↓)。
http://www.amazon.co.jp/Chernobyl-Consequences-Catastrophe-Environment-Sciences/dp/1573317578/ref=sr_1_2?s=english-books&ie=UTF8&qid=1310803834&sr=1-2

要旨ダウンロード
http://www.independentwho.info/Documents/Etudes/Resum_AnnalesNY2009_EN.pdf

全文ダウンロード
http://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf

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2011年6月27日 (月)

熱中症

290pxthe_sun_by_the_atmospheric_ima 厚生労働省によると、昨年熱中症で亡くなった人は史上最多で1718人となったそうです。しかし驚くべきは、そのうち東京都は272人なのに、沖縄は4人という結果です(6月27日の共同通信の記事)。

写真はウィキペディアより。

結論は「昨年は猛暑だったことが原因とみられる。原発事故の影響で節電が叫ばれているが、気温や湿度が高い日は無理に我慢せず、扇風機やエアコンを使い、熱中症を防いでほしい」ということですが、まあそうだろうとは思いますが・・・。

気象庁によると、東京の年平均気温は20℃・7月平均気温は25.8℃。沖縄は年平均気温23.1℃・7月平均気温は28.9℃。いくらヒートアイランド現象などがあると言っても、やはり沖縄の方が東京より暑いでしょう。

だとすると、この熱中症死亡者の極端な差はなんなのでしょう。沖縄居住者の話では、地元の人は昼間は外に出ないし、長袖・長ズボンで動くためではということだそうです。でも亡くなっているのは高齢者が多いわけで、あまりそれは関係ありそうにも思えません。

ひとつは東京では風通しの悪い家が多いからでしょうか。あとは沖縄はのんびりしていてストレスが少ないことも要因かもしれません。近所のケアがあるからという説もそれなりの説得力があります。こうしてみると熱中症もかなり人災ぽいですね。

対策は↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%B1%E4%B8%AD%E7%97%87

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2010年7月22日 (木)

巨大製薬会社

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最近子宮頸がんの予防ワクチンのCMが目に付きますが、これはグラクソ・スミスクラインという英国の製薬会社が販売しているものです。お値段は約5万円。病人ではなく健康人に接種するものなので、例えば世界で10億人の女性が接種するとすれば50兆円の売り上げということになります。これは日本の国家予算の一般歳出に匹敵します。グラクソ・スミスクラインは毎年3兆円以上の売り上げがある世界4位(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%BD%E8%96%AC)の製薬会社ですが、これでトップに踊り出るかも知れません(他社の競合製品もあるらしい)。ただし、このワクチンについてはいろいろ問題点もあるようです↓。

http://www.thinker-japan.com/PDF/a4_thinker_mini_book_vol2.pdf

http://wakuchin-iran.jugem.jp/?cid=12

製薬業界は開発競争に勝つためには巨額の研究費が必要なので、合併・買収を繰り返して現在のようなモンスター企業のオンパレードになりました。日本は立ち後れていて、最大の武田でも十数位です。薬学関係の学術研究はこのようなモンスター企業の研究所を中心に推進されており、大学や公的研究所などとは桁違いの予算ですすめられているにもかかわらず、表に出ないものが多いようです。私の知っているある中規模な製薬会社の研究所ですらも、大学などとは比べものにならないようなよい研究環境でした。研究テーマも研究者が自由にグループを作って企画し、上で審査して許可するというシステムですので、むしろ大学などより風通しがいいかもしれません。大学や研究所では研究者は互いにライバルですが、会社では昇進のスピードの上ではライバルですが、基本的に個人プレーではありませんし、仲間意識があって(誰かが一発あてれば自分の給料も上がる)、雰囲気はとげとげしくないようです。

もちろん学会で名を上げノーベル賞をめざすのもいいですが、日本の国家予算の厳しさを考えると(米国もそうです)、これから研究者をめざす若い人は、企業の研究所に採用してもらって、その中で勢いのあるグループにくっつくというのがベターな選択かも知れません。

グラクソ・スミスクラインのHP:
http://glaxosmithkline.co.jp/

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2010年5月29日 (土)

「知られざるヒポクラテス」 by 二宮陸雄

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源氏物語を読んでいると、当時の貴族や天皇家の人々にとっても、病気治療についての認識が、「もののけ」がとりついているので加持祈祷でお祓いをするなどというものであることがわかります。病気の治療は主に僧侶が行っていたのでしょう。しかし西欧では源氏物語の時代より1500年も前から、科学的合理性に基づいた医療が行われていたという事実には驚かされます。日本で人体解剖図が導入されるのは、江戸時代の杉田玄白まで待たなければなりません。

古代ギリシャでも、もともとは医学は哲学者や怪しい詐欺師らの領域でしたが、ヒポクラテスは宗教・呪術、詐欺、僅かな経験や伝承迷信に基づく医療から、科学的な医療へ転換する道を切り開きました。ヒポクラテスはギリシャと言っても、トルコと目と鼻の先にあるコス島で紀元前460年頃に生まれたと伝えられています。しかし彼は遠くアテネやマケドニアなどギリシャ各地に出かけて多くの患者を診察し、学術研究を行い、コス島の医学校で講義を行いました。すでに当時のギリシャの各島には医学校があったというのも驚きです。

現在のコス島は大変人気がある観光地だそうです。ヒポクラテスがその下で講義したというプラタナスの木がある公園が保存されています(写真 木は植え替えられたものとは思いますが)。ヒポクラテスの講義録をもとに死後編集されたヒポクラテス全集が現在も保存されていて、彼の業績を知ることができます。たとえば、今で言う「てんかん」について、当時は神聖病と呼ばれ神のなせる業病と考えられていましたが、ヒポクラテスによれば「私の考えでは、ほかの病気に比べて特に神的でも聖なるものでもなく、自然的な原因を有している病気である。・・・実はこの病気の原因は脳である」と喝破しています。

「知られざるヒポクラテス」の著者、二宮陸雄先生は内科の医師で2003年に亡くなられています。この本以外に「古事記の事実」、「医者と侍」、「インスリン物語」、「職業としての医師」、「サンスクリット語の構文と語法」「ラテン語構文と語法の研究」など、医学の世界にとどまらない多方面の著書があります。この本の中で彼はヒポクラテスの業績について概観するだけでなく、アリストテレス・プラトンなど同時代のギリシャの学者達との比較や、ローマ時代の医学者ケルススやガレヌスへのつながりなどについて記しており、医学のはじまりについて知ることができます。

「医学史探訪 知られざるヒポクラテス -ギリシャ医学の潮流-」二宮陸夫著 篠原出版(1983)  絶版だと思いますが、中古本は豊富に流通しています。

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2009年11月14日 (土)

ミトコンドリアを入れ替える

350pxmitochondria_mammalian_lung__t 私たちの細胞には、必ずミトコンドリアが含まれています。ひとつの細胞に数個の場合もあり、また数千個の場合もあります。ミトコンドリアはもともとは自由生活をしていた細菌で、大昔に真核生物が細胞内にとりこんで、細胞の一部にしてしまったといわれています。しかし昔の名残はあって、ミトコンドリアは細菌のように独自の環状DNAを持っています。しかも1本だけでなく多数のコピーを持っている場合もあります。すなわちDNAの本数だけから言えば、真核生物は自分の核ゲノムより圧倒的多数のミトコンドリアゲノムを所持していることになります。写真はミトコンドリアの断面で、ウィキペディアからお借りしました。

ミトコンドリアは酸素を使ってエネルギーを生み出す、いわば車で言えばエンジンにあたる役割を果たしています。この機能が低下すると、特にエネルギーが大量に必要な筋肉や脳をはじめ、多くの組織に不具合が生じる可能性があります。筋力低下、知能障害、心臓肥大、てんかん、まぶたが上がらないなどの症状が出ます。また糖尿病や貧血をもたらすこともあります。

さて話は変わりますが、精子は活発に動かなくてはいけないのでミトコンドリアを多く持っていますが、このミトコンドリアは精子の中で「死の標識」をつけられ、受精した後受精卵の中で殺されます。したがって、受精後生き残るミトコンドリアはすべて母親由来のものということになります(母性遺伝)。

母親のミトコンドリアのDNAが損傷を受けた場合、この異常ミトコンドリアは子供に受け継がれます。女の子がいた場合、またその子に受け継がれます。つまりミトコンドリア病の家系が生まれることになります。いまのところこの病気を完治させる方法はありません。

そこでこの家系から病原性のミトコンドリアを除去する方法が考えられました。実験はまだサルの段階ですが、成熟未受精卵から「染色体+紡錘体」を細い硝子管で吸い出し、健康なミトコンドリアを持つ、「染色体+紡錘体」を抜き取った他のサルの成熟未受精卵にレーザー手術で埋め込むというという技術です。手術した未受精卵は、人工授精処理を行い、「染色体+紡錘体」を提供したドナーの母親に戻します。

ここでひとつ問題があります。「染色体+紡錘体」を吸い出すときに、どうしてもミトコンドリアを一緒に吸い出してしまうのは避けられません。しかしこの病的ミトコンドリアは、手術した卵から発生した個体には認められませんでした。これはこの技術を開発した立花博士らの業績です。これによって患者の治療はできませんが、病気の家系から病因の異常ミトコンドリアを除去できる可能性が生まれました。

この方法だと、第3者から未受精卵をもらう必要がありますが、核ゲノムの遺伝子はすべて父母のものなので、子供のゲノム遺伝子は基本的に通常通り父母から受け継ぎ、ミトコンドリアだけ第3者から受け継ぐことになります。使用する未受精卵はすでに成熟しているものなので、手術後すぐに母体にもどすことができるというのが大きなメリットです。試験管の中で長い間卵を維持していると、異常が発生する確率が高くなります。

Tachibana et al: Nature 461, 367-372 (2009)

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