カテゴリー「書籍(books)」の記事

2018年9月12日 (水)

失われた名前 by マリーナ・チャップマン

Imga

Imgb「サルとともに生きた」というタイトルは翻訳者による意図的な誤訳であり、本当のタイトルは、写真の英文タイトルからわかるように「サルに育てられた」です。

その本来のタイトルからは驚愕の内容が予想されますが、読んでみると非常に考えさせられる内容で、心に残る本でした。

「失われた名前 サルとともに生きた少女の真実の物語」
2013年 駒草出版     マリーナ・チャップマン (著), 宝木多紀 (翻訳)         

著者は5才から10才までの間、サルの教育を受けて、サルと共に行動し、ジャングルの中で生き延びました。

特に印象に残った一節を引用させてください:

「彼ら(サル)の感情はとても繊細で複雑だった。そのニュアンスの一つひとつに、私は人間の感情と同じものを感じた。謙虚や高慢、降伏や防御、嫉妬や賞賛、怒りや喜びといった、あらゆる感情を持ち合わせていた。彼らとの関わり方を会得すると、寂しいのか、孤独なのか、愛情に餓えていて抱きしめて欲しいのか、それとも挑発しているのか、干渉したいのか、彼らの気持ちが手に取るようにわかった」
引用終了 (  )内は管理人の註

私もイオンとコンサート以外はほとんど2匹のネコと生活しているので、著者の気持ちの何分の1かはわかります。

森林に人間が侵入してきたときに、森の生物が受ける圧倒的な恐怖感には震えました。やはり人間は最も凶暴な生物です。それでも著者は森から離れ、人の社会に復帰するという道を選びました。それは人間の脳に潜む強い好奇心なのでしょう。

それからの何年かは、人という生物がサル(ナキガオオマキザル)に比べていかに邪悪かということを、これでもかこれでもかと思い知らされる悲惨な生活でした。かてて加えて2度もの致命的危機を奇跡的に乗り越え、晩年になって多くの人々の協力でこのような書物を出版できました。

この本は自然から人への最後の警告のように思いますが、私はヒトのテンペラメントは結局変わることはなく(何しろ国家指導者がプーチン、トランプ、習近平、晋三などという連中ですから)、100年後には地球の支配者をAIに取って代わられるような気がします。またその方がよいのではないかと思うようになりました。

序文
プロローグ
第1部 ジャングル
第1章 誘拐
第2章 緑の地獄
第3章 無数の目
第4章 サルまね
第5章 生きる術
第6章 グランパ
第7章 群れの一員
第8章 鏡のかけら
第9章 生む女
第10章 人間の集落
第11章 心の家族
第12章 襲来
第13章 離別
第2部 人間の世界
第14章 後悔
第15章 悪夢の旅
第16章 カルメン
第17章 忍従の日々
第18章 人間の暮らし
第19章 警告と事故
第20章 逃走
第21章 路上生活
第22章 チャンス到来
第23章 ギャングリーダー
第24章 犯罪一家
第25章 秘密の友だち
第26章 脱出
第27章 修道院
第28章 壁の外へ
第29章 未来への試験
第30章 私の名前

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2017年10月 6日 (金)

「二重らせん」 by James D. Watson

Photo基礎科学研究の危機が叫ばれるなか(参照:最後の点線下のパラグラフ)、予算配分の問題もさることながら、大学や研究所の雰囲気も大事です。

ジェームス・D・ワトソンが書いた「二重らせん」(上の図、講談社文庫)を読むと、当時の英国の大学や研究所の雰囲気がビビッドに描かれていて、その自由でフレンドリーな雰囲気こそが、革命的な科学の進歩を生み出したとわかります。

研究者の方々も、研究室の雰囲気をどのように作り上げていけば良いかを考える上で、大いに参考になると思います。アングロサクソン民族や戦後のフランス人が作り上げた自由闊達な雰囲気の中でこそ、ユダヤ人達も実力を発揮できたのだと思います。ワトソンとクリックは例外的にユダヤ人ではありませんでしたが。

ここに書いてあるのは主にキングスカレッジとキャベンディッシュ研究所という英国の状況ですが、米国ではもっと自由な雰囲気だったのでしょう。日本でも昔は大学や研究所は自由な雰囲気がありました。夕方に出勤して夜明けに帰る人、学生との議論はかならず喫茶店で行う教授、学会でも会場には決して行かず、談話室でずっと話している人、スカートを翻して夜中に塀を乗り越えて帰る女性研究者、2日遅れで配達される新聞を読みながらこたつで構想を練る人里離れた研究所の面々、など様々でした。そんななかから多くの優れた研究者が出現しました。ワトソンも朝だけ仕事をして、昼からはテニスという日々もあったようです。

Photo_2
「二重らせん」によれば近隣のレストランで議論を戦わせる場面も多くて、そういう雰囲気もいいなと思いました。パーティーなども頻繁に開かれていたようです。知り合いを増やす機会が多いというのは重要です。

他の研究者との風通しも良く、ワトソンがヌクレオチドの配位に正しい答えを得たのも、結晶学者であるジェリー・ドナヒューが、教科書に書いてあるチミンとグアニンの構造式(エノール型)が実は誤りで、両者ともケト型だと教えてくれたおかげで、それがなければワトソンとクリックは悪戦苦闘して誤った結論に達していたかもしれません(下の図)。

若手研究者に研究に打ち込める環境と雰囲気を作ってあげることは重要です。

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国立大学に所属する研究者には、毎年少額とは言え研究費が支給されてきました。そのお金で研究室の電気代や水道料を支払ったり、実験動物を維持したり、標本や資料の保存、調査費・旅費などに充当してきました。しかし、その状況が大きく変わろうとしています。

「古屋准教授(徳島大学)談:2018年度からは『重点クラスター』と呼ばれる学内の特定の研究グループにだけ配分することになった。残りの人はゼロです。重点クラスターの選択基準は端的に言って、医療技術や医薬品開発など直接役に立つかどうかです。恐れていた最悪の事態がついに来ました。」

これによって、これまで積み上げてきた貴重な実験動物の系統や標本・資料の維持ができなくなり、研究室は半廃墟と化します。人件費もなくなるため期限付き研究員や秘書を解雇しなければなりません。すべて自公政権=晋三の責任でしょう。

https://news.yahoo.co.jp/feature/766






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2017年9月18日 (月)

「バーバラ・マクリントックの生涯-動く遺伝子の発見-」

1「バーバラ・マクリントックの生涯-動く遺伝子の発見-」 Ray Spangenburg and Diane Kit Moser 著、大坪久子他訳 養賢堂 (2016)

読んで損したわけではなく、ほぼ私の目的は果たしたのですが、内容に非常に気になったところがあったので、ひと言述べたくなりました。

この本ではマクリントックの仕事の前奏曲として、メンデルやモーガンの仕事は詳しく解説しているのですが、メンデルの法則の裏付けをとったウォルター・サットンの仕事が全く無視されていて、ひと言も触れられていません。

サットンが遺伝の物理的実体が染色体であるという「染色体説」を発表した重要な論文を最初に出版したのは1902年で、これはマクリントックの生年でもありましが、巻末の年表にすらサットンの名前はありません。彼こそ方法論的にもマクリントックの研究の先駆者として記載すべきではないでしょうか?

こんなアンフェアーな本を書いた著者達がどんな人物なのか見てみようと思ったら、どこにも略歴すらありません。養賢堂はメールのひとつでも出して、本人に問い合わせる努力もしていないのでしょうか。あきれます。さらに訳者の大坪氏は5ページもの長文の訳者後書きを書いていますが、著者については何も書いていません。1987年に出版された「動く遺伝子-トウモロコシとノーベル賞」 エヴリン・フォックス・ケラー著 石館三枝子他訳(1987年)との関連についても言及していません。

理由は違いますが、科学の本でこんなに読んでいて不愉快な気分になったのは、アンドリュー・パーカーの「眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く」(草思社 2006)以来でした。

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2017年5月13日 (土)

スノーデン 日本への警告

Imgスノーデン氏については様々な報道がなされていますし、映画やDVDもあります。映画「スノーデン」はなかなかスリリングで面白い映画でしたし、記事を書いたこともあります。

http://morph.way-nifty.com/grey/2017/02/post-5ccb.html

スノーデン氏自身が登場するドキュメンタリーも大変興味深いものです。映画よりも厳しい緊迫を感じました。私たちが住んでいるこの世界を、「監視社会」という全く異なる凶悪な閉塞社会へと変質させようとする巨大な勢力に、ひとりで反旗を翻したヒーローは静かで控えめな青年でした。

監視社会に誘導しているのは既得権益者のグループです。なぜなら彼らと一般人の間に貧富の差が出来れば出来るほど刺されるのが心配になるからです。とはいえ彼らの「社会はどんどん危険になってきている。犯罪を防ぐには監視するしかない」というプロパガンダに乗って、監視社会を推進する政党に投票する私たち市民の心の中にも闇はあるのでしょう。

安心・安全な社会というのは、貧富の差が巨大であればあるほど実現しないものだと思いますが、なんとか徹底的な監視社会によって安心・安全を実現しようと思う人々はいるのです。秘密保護法や共謀罪はそのために便利なツールです。

この本「スノーデン 日本への警告」エドワード・スノーデン他著 集英社新書 2017年刊 は、2016年に公益社団法人自由人権協会がスノーデン氏を招いて、東京大学本郷キャンパスで開催したシンポジウムの記録です。

いろいろ面白い話が満載なのですが、決定的な話をひとつ紹介しますと、米国政府は「プログラムで国民を監視しているということは国家機密なので、ジャーナリストであれ市民団体であれ自らが監視の対象であるという事実を立証することは許されない」という立場で、最高裁判所も「政府の主張通り監視プログラムが現に実施されているか否かを立証することが禁止されている」と判断したそうです。これは日本でもそういうことになりそうです。

このような事態をひっくり返すには、最終的には憲法も最高裁も無力で、政権をひっくりかえすしかないということです。もし選挙結果がソフトで操作されているとすると革命しかないわけですが、それは監視と共謀罪でほぼ不可能でしょう。監視社会は永遠不滅になります。

1


監視システムの全貌を図にまとめましたが、私たちに直接関係があるのはマスサーベイランスです。スマホ・PC・電話・カード・監視カメラなどを使って監視されるのが監視社会です。特にスマホは危険で、ドキュメンタリーのなかでスノーデン氏がスマホで自室の特定や画像が撮影されるのを恐れて、使わないときは電子レンジの中にしまうというシーンは印象的でした。

誰か1人マークされている人がいたとして、同じ時間に同じ場所にいた人はすぐにわかるので、その人とコンサートで隣の席にいたというだけで、当局に追尾されるということもあり得ます。

ささやかな抵抗をするとすれば、この本に書いてあるように情報を暗号化することでしょうが、それもイタチごっこでしょう。あとはマスコミのふんばりでしょうが、政権側には逮捕や暗殺という手もあります。だいたい個人のプライバシーも無限に犯されているわけですから、ささいな違法行為や浮気などをネタに脅迫することもできます。それを作り出すことさえ可能でしょう。

監視システムを用いたメタデータは巨大なので、人力で検索するのはそのうち不可能になり、ロボットが検索して容疑者を自動的にしぼりこむということになるのでしょう。これは恐ろしい社会です。人為的に作り出された犯罪をロボットがとがめて起訴されてしまうという可能性もあります。

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2016年10月12日 (水)

「政府はもう嘘をつけない」 by 堤未果

Img「政府はもう嘘をつけない」 堤未果著 角川新書 2016年刊

ヒラリー・クリントンの言葉:「私は御社(ゴールドマン・サックス)からの支援を決して忘れません。そしてどんな時も、あなたがたの要望を他の何より最優先させていただきます」

彼女がこのように考える企業は金融だけではなく、保険・軍需・医療・エネルギー・食糧・農薬など多岐にわたっています。これらの企業の莫大な政治献金で大統領の地位を得たとしたら、ヒラリーがどういう政策をとるかは明らかでしょう。

堤氏は第1章で米国の金権腐敗政治を指摘した後、第2章では転じて議論を日本の政治の独裁化にフォーカスしています。現在でも晋三周辺による政治の独裁下は顕著ですが、それは憲法改正によって完成します。堤氏が特に注目しているのは「緊急事態条項」で、これがフランスの非常事態宣言よりもかなりひどいものであると指摘しています。

さらに「テロとの戦い」というのを錦の御旗にしますと、この戦いは(テロ組織とは交渉しないので)事実上終わりがないわけですから、好きなだけ緊急事態を延長できるわけで、これでは憲法も法律もないも同然で、独裁政権の思いのままとなります。日本にはドイツのような憲法裁判所もないので、歯止めがききません。第2章では学資ローンの問題も指摘されています。このことは自衛隊員の確保と密接に関連しているというお話です。

第3章はまず軍需産業から。米国の投資家達はパリのテロで何を考えたかというと、軍需産業の株を死にものぐるいで買いあさるということです。「テロとの戦い」は儲かりすぎてやめられないというのが軍需産業と投資家の本音です。こう考えると誰がISISをサポートしているかも想像がつきます。ISISがだめになったら、別のテロ組織を支援するでしょう。まさしくマッチポンプ式経営術です。

ギリシャはIMFへの借金が返済できなくて破綻しましたが、その真相を私たちは知らされていませんでした。NATO加盟国のなかで、米国を除くとギリシャの軍事支出は第1位だということを日本のニュースは教えてくれません。ドイツやフランスはギリシャに大量の武器を売ってボロ儲けしていたのです。ギリシャが1300両の戦車をもっているなんてこの本ではじめて知りました。

これからは一般市民・農民 vs グローバル企業の戦いの時代です。TPPはもろんですが、さらに留意すべきは公共事業の民営化です。保険・病院・教育・上下水道などをグローバル企業にゆだねるための国際交渉がジュネーヴで秘密裏に行われており、もちろん日本も参加しているという驚愕の事実をこの本ではじめて知りました。この協定はTiSA ( Trade in Services Agreement) という名前で、2030年に調印予定だそうです。これを暴露したのはウィキリークスで、いまや頼りになる報道機関はウィキリークスだけというのは嘆かわしい事実です。このようなことが実現すると、貧乏人の生活はますます苦しくなり、グローバル企業はボロ儲けということになるのは明白です。TiSA が秘密裏の交渉の結果締結されても大丈夫なように、自民党は新憲法草案にこっそり条文を忍び込ませているようです。

私たちはこのままグローバル企業のなすがままになってしまうのでしょうか? それを拒否した国アイスランドのお話が第4章にあります。是非この本を購入して、この章を読んで欲しいと思いますね。日本の野党統一組織はアイスランドの制度をモデルにして、政権をめざすべきだと思います。その際新自由主義者でかつTPPやTiSAを支持する人々だけは統一組織から排除すべきです。

米国もトランプはスキャンダルでつぶされると思いますが、ヒラリーの後は必ずサンダースの考え方を引き継ぐ革命家が現れて、コンセプトの異なる政権が成立することを期待したいと思います。

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2016年9月12日 (月)

「最悪の核施設 六ヶ所再処理工場」 集英社新書

Imga「最悪の核施設 六ヶ所再処理工場」 小出裕章・渡辺満久・明石昇二郎著 (2012) 集英社新書

世界中に放射性物質を垂れ流している悪名高いセラフィールド(英)とラ・アーグ(仏)の核燃料再処理工場。そして日本政府は六ヶ所再処理工場をこれに加えようとしています。

少し古い本になってしまいましたが、この本が指摘している問題は現在でも全く解決していません。

ウィキペディアによると、「(六ヶ所再処理工場の)試運転の終了は当初2009年2月を予定していたが、様々なトラブルが相次ぎ時期未定としたケースを含めて23回の延期をしている。2015年11月16日には竣工時期を、2018年度(平成30年度)上期に変更することが発表された。これら延期のため、当初発表されていた建設費用は7600億円だったものが、2011年2月現在で2兆1,930億円と約2.8倍以上にも膨らんでいる。」としています。現在ではさらに費用がふくらんでいることでしょう。

有害物質をまきちらす工場の建設に、目の玉が飛び出るような巨額の支出をする政府を支持するのかどうか、国民は真剣に考える時がきています。まだ手遅れではありません。そのきっかけになるのがこの本だと思います。

こと原発や再処理施設に関して、原子力村や政府が言っていることはほとんどウソと言って良いことは、福島第一原発の事故や後始末を見ていれば明らかですが、六ヶ所の施設についても、この本に良い例が示されています。

六ヶ所の施設は上記のラ・アーグの施設をお手本に作られたものです。様々な放射性同位元素をまき散らす施設ですが、たとえばラ・アーグで排出されているルテニウム106の量を六ヶ所の規模に換算すると1x10の13乗ベクレル/年となるはずです。ところが政府は2.4x10の10乗ベクレルと発表しています(本書37ページ)。同じフランスの技術を使っているのに、3桁も違うのではあまりにも見積もりが甘すぎるだろうと思います。政府・原燃がウソをついているとしか思えません。

これで思い出すのは晋三の国会答弁です。

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吉井英勝議員「海外では二重のバックアップ電源を喪失した事故もあるが日本は大丈夫なのか」
安倍首相「海外とは原発の構造が違う。日本の原発で同様の事態が発生するとは考えられない」

吉井議員「冷却系が完全に沈黙した場合の復旧シナリオは考えてあるのか」
安倍首相「そうならないよう万全の態勢を整えている」

吉井議員「冷却に失敗し各燃料棒が焼損した場合の想定をしているのか」
安倍首相「そうならないよう万全の態勢を整えている」

吉井議員「原子炉が破壊し放射性物質が拡散した場合の被害予測を教えて欲しい」
安倍首相「そうならないよう万全の態勢を整えている」
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六ヶ所の施設は海外の施設とは構造が違うなどとは言ってもらっては困ります。この本の言葉を借りれば「まるでフランスよりも高性能の技術が突如として開発されたかのようだ」ということです。そんなことあるわけないのです。

ともあれ六ヶ所施設は排出する放射性物質をフィルターにかけるでもなく、そのまま空気中と海に垂れ流すのであって、たとえばクリプトン85は33京ベクレル/年、トリチウムは1900兆ベクレル/年という目もくらむような大量の放射能を放出するのです。その空気を世界中の人が吸うわけです。

この本を読んでさらに驚いたのは、六ヶ所再処理工場近傍の地下には六ヶ所断層という活断層があるということです(1)。この断層を分岐する(親分にあたる)大陸棚外縁断層が活断層であると主張する池田安隆准教授(東大院)などの意見は、原子力安全委員会で無視されて議論が打ち切られたそうです。著者の明石氏がファックスで責任者に質問状を出したら、さっぱり返事がなく、後日「見たけど捨てた」と言われたそうです。

要するにどんなに巨額の税金を投入しても、どんなに大量の放射能を放出しても、何が何でもプルトニウムを濃縮して核武装したいというのが政府の方針であり(米国に禁止されているのであからさまには言えない)、そんな政府を支持しているのが日本国民だということです。このままで良いとは私は思いません。

1)渡辺満久他 「下北半島北西端周辺の地震性隆起海岸地形と海底活断層」 活断層研究 36 (2012)
http://danso.env.nagoya-u.ac.jp/jsafr/documents/AFR036_001_010.pdf

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2016年2月26日 (金)

「あの日」 by 小保方晴子

Imgaaa講談社から小保方晴子氏の「あの日」が出版されました。渦中の本人が書いたドキュメンタリーですから強烈なインパクトです。

STAP現象については、小保方氏の論文の前にヒトでミューズ細胞というSTAP細胞と同様な多能性成体幹細胞が報告されているので、特段驚くようなことではありません。小保方氏の論文が初期に掲載拒否されたのは、主にキメラマウスの制作ができないことによるもので、小保方さん自身ミューズ細胞の論文はヒトの細胞なので、キメラマウスの制作が求められず、掲載拒否されないように周到に準備された論文だったと完敗を認めています。

さらに最近似たような現象の論文も出版されているので、ATP処理によって多能性を示す遺伝子が発現し、培養液中でスフィアを形成する。ここまでが小保方氏ができることであって、このスフィアから細胞系を樹立したり、キメラマウスを作ったりしたのは若山照彦氏と配下の研究者でした。この点に関して興味深い記述がありました。

以下引用:

増殖が可能になったと報告された細胞培養に関しても、どうしても自分で確認がしたく、「培養を見せてください、手伝わせてください」と申し出たが、若山先生は「楽しいから」とおっしゃり1人で培養を続けて、増えた状態になって初めて細胞を見せてくれた。

若山研では私以外の全員が、「胚操作」と呼ばれる顕微鏡下でマウスの卵を使った実験を行える技術を持っており、顕微授精を行ったり、キメラマウスを作製したり、クローンマウスを作製したりする実験を行うことができた。若山先生のところに来た研究員は皆、胚操作を若山先生から直接指導を受け技術を習得していた。しかし、私だけは胚操作を教えてもらうことはできなかった。 (中略) キメラマウスの作製に成功した頃、「私にもキメラマウス作製の胚操作を教えて下さい」と若山先生に申し出ると、「小保方さんが自分でできるようになっちゃったら、もう僕のことを必要としてくれなくなって、どこかに行っちゃうかもしれないから、ヤダ」といたずらっぽくおっしゃった。

引用終了

それ以外にも、若山氏はあらかじめストーリーに合った仮データをつくっておいて、それに合わない実験結果は棄却するという驚愕の研究法だったとか、コンプライアンスに関して多くの問題があったとかが指摘してあって、要するにこの本の肝は若山氏に対する疑念だということがわかります。この点については若山氏の反論が聞きたいと思います。ES細胞の混入はまだ解明されていない重要なポイントです。

小保方さんは、1)それまで生命科学についてズブの素人であった多くのマスコミ人がかなり勉強したこと、2)科学の世界とは無縁の国民にそのドロドロとした醜悪な内幕を暴露してくれたこと、3)理研は麗澤な研究費はあっても、その業績は多くの使い捨て研究者によってささえられていることなどを明らかにしてくれたことは、この本がベストセラーであるだけに高く評価したいと思います。ただNatureの論文はとても Erratum で修正して済むようなものではなく、論文作成のお粗末さは反省してもらわなくては困ります。

最後に醜悪だったのはマスコミで、彼らは笹井さんの死には幾ばくかの責任があることを自覚すべきだと思います。と同時に、これはマスコミの取材を法的に規制しなければ、何度でも繰り返されるであろう問題です。つまり国会議員の責任でもあります。この件とは少し離れますが、私は個人的には現行犯や、近隣住民に危険があるような場合を除いて、少なくとも地方裁判所で黒白がはっきりするまで、被疑者が特定されるような報道は一切禁止すべきだと思います。

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2016年1月 9日 (土)

「そして偽装経済の崩壊が仕組まれる」 by 塚澤健二

Imgx昨今世界中で無茶苦茶な経済運営・金融をやっていて、これではいつか世界的な経済崩壊がおきるのではないかという暗雲がただよっています。この本の著者である塚澤氏はJPモルガン証券などでアナリストをやっていた方で、投資コンサルタントが本業のようです。
http://tsukazawa.com/

「そして偽装経済の崩壊が仕組まれる」 塚澤健二著 ビジネス社2015年刊

宣伝臭がする部分も多少ありますが、そこはスキップして読みました。
まずこの本を読むための予備知識から。

Kabuzen サイトの定義によると名目GDPと実質GDPの違いは

#名目GDP … 単純に金額から算出したもの
#実質GDP … 物量から算出したもの

となっています。説明すれば仮に去年のGDPが100兆円だったとして、今年の名目GDPが110兆円なら単純計算では成長率は10%という事になりますが、今年物価が10%上昇したとすると金額的には10%上昇していても物やサービスの量は変わりませんから実質GDPは100兆円のままとなり成長率は0%ということになります。

インフレの時は上記のように、実質GDP<名目GDPとなりますが、デフレの時には逆に実質GDP>名目GDPとなります(100円で売っていたパンを90円に値下げすれば、同じ物量が売れたとしてもその価値は10%下がる。したがって実質GDPは同じで、名目GDPは10%下がります)。

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著者がまず述べているのは、株式時価総額を名目GDPで割った「バフェット指数」についてです。日本のバフェット指数の平均値は 0.71 なのに、昨年春にはこれが 1.25 という異常な数値を示し、当然調整のために株価は下落しないといけないはずだったのに、安倍政権は国民が営々と支払ってきた年金を、株価が下落しないよう株式購入のために大量投入することに決めたのです。

これは単に国民のお金を使って、安倍政権がギャンブルをやっているという話ではなく、あくまでも株価を高止まりさせるために株式を購入したのです。株を売るとその目的にそわないので、上がっても売れません。これがペテンであることをまず著者は指摘しています。なんでこんな無茶をやったかと言えば、自分たちが統一地方選挙で勝つために他なりません。まったく腹立たしい話です。

それでも政府は昨年夏の株価暴落を防ぐことはできませんでした。年金や日銀の株購入に限界が見えたので、安倍政権の次の一手は、株をゆうちょ銀行に買わせることです。まさしく誰のお金であれ、使えるものは総動員して株を買えということです。どうしてこんな無茶をやるかというと、自分たちの政策である「秘密保護法」「安保法制」「憲法改正」を実現するためには、株価下落による国民の不人気を避けたいというエゴイスティックな目的のためです。

彼らは自分たちの政策を実現するためには、国民のお金を勝手に使うだけでなく、憲法も無視して良いという考え方なので、当然言論の自由も弾圧します。国境なき記者団の発表では、2010年の民主党政権時代には11位だった報道の自由度が、現在ではなんと61位まで転落しました。この本は経済に関する本ですが、私と同様著者もこの点には憤慨しています。

著者が注目するのは銅の価格で、これが実体経済の動向を判定するよい指標であるそうです。それは生産活動の広い分野で銅が使われているからだそうです。銅価格は2014年の7月から現在に至るまで次第に安くなってきていて、その間に中国で株の異常な高騰などがありましたが、すべて実体経済に基づかない、うたかたのバブルだったことがわかります。

著者によると商品相場に関する情報・予測についてはゴールドマンサックスおかかえアナリストの話しが最も信用できるそうです。彼らは多くのインサイダー情報を持っている上に、自社で商品の価格をコントロールする力もあるからのようです。彼らの予測では、2017年末には1ドル140円になっているはずだそうで、このことは覚えておきましょう。

著者は経済の専門家ですが、面白いのは20世紀から21世紀への価値観の転換について述べているところで、
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★20世紀:良いか悪いか、損か得か、正しいか正しくないか、疑似「幸せ」の洗脳社会、戦争の世紀
★21世紀:好きか嫌いか、信じるか信じないか、愛するか愛さないか、「幸せ」がなんだか正解のない社会、生命の世紀
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という指摘は面白く、私も良い線をいっていると思いました。特に21世紀を生命の世紀としたのは素晴らしい。そうなればいいですね。人の価値観というのは当然経済活動にも影響を及ぼすとはいえ、さすが経済の専門家はここまで考えているのかと感心しました。

これは私見ですが、安倍政権の問題点の一つは古い20世紀の価値観で政策を決めているところです。しかも大企業が栄えればみんな栄えるという発想ですね。とはいっても原発・船舶・家電・半導体・携帯電話・液晶など政府が推進してきたものはみんな敗退ですけどね。航空機・鉄道・宇宙開発もいずれ中国に敗退しなけりゃいいですが・・・。音楽やアニメなどは圧倒的に日本にアドヴァンテージがあるので、そのようなジャンルをもっと早くから中国で稼げるようにアシストする政治をやるべきだったと思います。さらに環境技術・海洋資源・水素・医薬品・コズメティックなどにも言えるかも知れません。

経済に戻ると、著者が心配しているのはオリンピックの年2020年から世帯数の減少がはじまるということです。人口が減少しても世帯数が増えている限りは、不動産・家具・家電などは売れるので経済をささえることができますが、これが減るということになると、経済に致命的な打撃を与えるおそれがあるという指摘です。

さらに著者がもっと緊急の懸念を抱いているのは、世界のデリバティヴ残高の異常さです。いま世界におけるその値は7京円(10の16乗円)=7000兆円の10倍という、実体経済からかけ離れた金融世界となっているそうです。ですから金利の上昇などちょっとしたことで(実際この本の出版後FRBは金利を上げました)銀行に支払い能力がなくなってバタバタ倒産という事態に至ることを著者は心配しています。

世界有数の投資家であるジム・ロジャースの言葉が引用してあります。
「安倍首相は投資家に対しては良い仕事をしてくれている。しかし、長期的な観点から見ると、日本の債務は多く、人口も減っており、彼のやっていることは日本を破滅させる方向に導いている」 私も同感です。ジムはもう米国と日本への投資は完全にやめて、2017年におこると言われている金融崩壊の終了を待ってから動けるよう待機しているそうです。

著者がもうひとつ指摘しているのは、日本には個人営業主が少なすぎる(サラリーマンが90%近い)ということで、これは私も同感です。私が住んでいる北総でも、商売に好適な土地はほとんどイオンなどの大資本が買い占めており、自分の土地で商売するのは不可能です。テナントで締め上げられるのがせいぜいで、町外れの一軒家で個人で商売する気にもなれないでしょう。それでもなんとかやっていけるのは医者と美容師くらいでしょうか。自分の人生や働き方を自分で決めてこそ生産性があがるというものです。

あとはどうやって人口を増やすかということですが、まずシリアの難民を受け入れるというところからはじめるべきでしょう。当初はいろいろトラブルがあっても2~3年もすれば、彼らもその地の習慣には慣れるものです。

もうひとつすぐにできることは、国籍法を変更して、日本で生まれた人はすべて日本国籍をもつことができるようにすることです。将来的に言えば、当用漢字を中国と同じにしたり、小学校から中国語を教えるようにしたりして、中国人が移住しやすい環境をつくることを私は推奨したいと思います。中国はいくら金満とはいっても独裁国家であり、より自由な国である日本に住みたいと思う人は少なくないでしょう。ともかく人口がどんどん減少していけば国家が消滅するということを肝に銘じて、日本人は考え方の転換を図らないとどうにもなりません。

http://tanakaryusaku.jp/2016/01/00012753

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2015年11月 3日 (火)

「チェルノブイリの祈り」 by スベトラーナ・アレクシエービッチ

Imgチェルノブイリの原発が爆発したとき、とても美しく光り輝いたそうです。みんなまさか原発が爆発したなんて思っていなかったので、ビルやマンションの高層階のベランダなどからみとれていたそうです。中には何十キロもの遠方から車や自転車で見物に来た人も多かったそうです。

近くの川で数時間釣りをしていた人は、夏でもないのに真っ黒に日焼けしてしまったそうです。
あまりにもみんな放射能の危険性について無知だったのです。

それは消防士も同様でした。まず最初に死者を出した外部の人間は消防士で、これは急性被曝のためです。中には水蒸気爆発を防ぐため原子炉の下にあるハッチをあけて水を放出するという作業をした人もいたそうです。しかも多大な報償をエサに志願したというのですから驚きです。もちろん急性被曝で死亡です。

ソ連政府は34万人の兵士を集めて(延べではない)事後処理を行わせました。なかには直近までアフガニスタンで人を撃っていた部隊が、近隣住人のペットを射殺するために動員されたこともあったそうです。全国の炭鉱夫を招集して原発の地下に穴を掘り、大量の液体窒素を注入するという作業を行いました。

この本は、実際に被曝した人々のインタビューで構成されています。誰にも話さなかったことを著者(スベトラーナ・アレクシエービッチ)に打ち明けて、出版を許可した人々もいます。生々しく、胸がつぶれそうな記載もあります。

福島第一原発事故は、このチェルノブイリの事故よりも大規模なものでしたが、被曝はチェルノブイリほどではなかったと思われます。これは大部分の放射性物質が太平洋方面に放出されたためで、風向きなどの運が良かっただけなのです。今年になってから、アラスカの紅鮭から65ベクレル/kgのストロンチウム90が検出されていますが、これは太平洋全体が汚染されたことを意味しています。本書は著者の主観や主張が排除されていることから、特に原発支持派の人々に読んで欲しい本ですね。

http://tanakaryusaku.jp/2011/08/0002744

https://www.vitalchoice.com/shop/pc/articlesView.asp?id=2231

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2015年8月19日 (水)

「死都日本」 石黒耀 (いしぐろあきら) 著

Imga桜島がレベル4で厳重警戒となっています。火山の小説をということで「死都日本」(石黒耀著 講談社刊)を購入し3日程かけて読了しました。石黒耀の作品は以前に「昼は雲の柱」という、富士山の噴火をテーマにした小説を読んだことがあります。

http://morph.way-nifty.com/grey/2007/03/post_6432.html

「死都日本」は「昼は雲の柱」より前の2002年に書かれたものですが、非常にスケールの大きい加久藤カルデラ破局噴火のお話ですし、火山神の話を長々と続けることがなく、適当に分散させているので、「昼は雲の柱」より読みやすい感じがしました。ストーリーは大変面白いもので素晴らしい作品です。そのままハリウッド映画としても成立すると思いました(私なら主役の黒木准教授はマット・デイモンで)。

政権交代したばかりの政府が、この未曾有の災難に対処するわけですが、総理の名前は菅原ということで、これは菅と前原を合わせたものなのでしょうかね。東日本大震災と原発爆発に遭遇した菅政権を先取りしたような話でゾクッとします。危機管理センターと総理執務室を行ったり来たりという話も出てきます。違うのは菅直人は何の準備もなく、突然の大地震から対策がはじまったのですが、菅原和則はあらかじめ破局噴火が近いという情報は得ており、最善の作戦を考えて着々と準備を整えていたということです。

考えてみれば日本の政治・経済・産業の大部分は、東京・横浜・名古屋・大阪など明日起きても不思議でない東海・東南海地震と、それにともなう津波で壊滅してしまうような場所に存在します。このような状況を全く改善しようとしない政府はあまりにも愚かです。それどころか、これからますます東京・横浜に人が集中しそうな勢いです。愚かと言えば、よりによってかなり大規模な噴火が予想される桜島の近くにある川内原発を再稼働して、噴火なんて関係ないとうそぶいている連中にはあきれます。この小説の中で、菅原首相が噴火の情報を得て最初にやったのは、川内原発を停止し、炉心と使用済み核燃料プールから燃料棒を引き上げて移動させることでした。石黒氏は医師でありながら、火山だけでなく原発にも詳しいことには感服します。

噴火と言えば私たちはすぐ雲仙普賢岳の火砕流や、御嶽山の噴石直撃などを思い浮かべますが、この小説を読むと、火山の本当の怖さはそんなものではなく、山に蓄積した火山灰が降雨によって土石流(正確にはラハール=火砕物重力流とよぶそうです)となり、川の下流にある都市を破壊するということです。九州には阿蘇・加久藤・姶良・阿多・鬼界という破局噴火を起こす可能性がある5つの火山がありますが、これが実際におこると広島も、大阪も、名古屋も、東京もラハールで壊滅します。

破局噴火は長期的にも大きな厄災を招きます。上空に巻き上げられた火山灰のため日照時間が減って植物の生育が妨げられ、多くの動物が餓死します。ペルム紀の地球では、地球上のほとんどの動物が絶滅したという悲惨な歴史が知られています。縄文時代の日本人は鬼界カルデラの破局噴火に遭遇しており、西日本の縄文文化はそのときに壊滅したと考えられています。

「昼は雲の柱」が御殿場市民必読の書とすれば、「死都日本」は日本国民必読の書と言えます。

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