カテゴリー「書籍(books)」の記事

2016年10月12日 (水)

「政府はもう嘘をつけない」 by 堤未果

Img「政府はもう嘘をつけない」 堤未果著 角川新書 2016年刊

ヒラリー・クリントンの言葉:「私は御社(ゴールドマン・サックス)からの支援を決して忘れません。そしてどんな時も、あなたがたの要望を他の何より最優先させていただきます」

彼女がこのように考える企業は金融だけではなく、保険・軍需・医療・エネルギー・食糧・農薬など多岐にわたっています。これらの企業の莫大な政治献金で大統領の地位を得たとしたら、ヒラリーがどういう政策をとるかは明らかでしょう。

堤氏は第1章で米国の金権腐敗政治を指摘した後、第2章では転じて議論を日本の政治の独裁化にフォーカスしています。現在でも晋三周辺による政治の独裁下は顕著ですが、それは憲法改正によって完成します。堤氏が特に注目しているのは「緊急事態条項」で、これがフランスの非常事態宣言よりもかなりひどいものであると指摘しています。

さらに「テロとの戦い」というのを錦の御旗にしますと、この戦いは(テロ組織とは交渉しないので)事実上終わりがないわけですから、好きなだけ緊急事態を延長できるわけで、これでは憲法も法律もないも同然で、独裁政権の思いのままとなります。日本にはドイツのような憲法裁判所もないので、歯止めがききません。第2章では学資ローンの問題も指摘されています。このことは自衛隊員の確保と密接に関連しているというお話です。

第3章はまず軍需産業から。米国の投資家達はパリのテロで何を考えたかというと、軍需産業の株を死にものぐるいで買いあさるということです。「テロとの戦い」は儲かりすぎてやめられないというのが軍需産業と投資家の本音です。こう考えると誰がISISをサポートしているかも想像がつきます。ISISがだめになったら、別のテロ組織を支援するでしょう。まさしくマッチポンプ式経営術です。

ギリシャはIMFへの借金が返済できなくて破綻しましたが、その真相を私たちは知らされていませんでした。NATO加盟国のなかで、米国を除くとギリシャの軍事支出は第1位だということを日本のニュースは教えてくれません。ドイツやフランスはギリシャに大量の武器を売ってボロ儲けしていたのです。ギリシャが1300両の戦車をもっているなんてこの本ではじめて知りました。

これからは一般市民・農民 vs グローバル企業の戦いの時代です。TPPはもろんですが、さらに留意すべきは公共事業の民営化です。保険・病院・教育・上下水道などをグローバル企業にゆだねるための国際交渉がジュネーヴで秘密裏に行われており、もちろん日本も参加しているという驚愕の事実をこの本ではじめて知りました。この協定はTiSA ( Trade in Services Agreement) という名前で、2030年に調印予定だそうです。これを暴露したのはウィキリークスで、いまや頼りになる報道機関はウィキリークスだけというのは嘆かわしい事実です。このようなことが実現すると、貧乏人の生活はますます苦しくなり、グローバル企業はボロ儲けということになるのは明白です。TiSA が秘密裏の交渉の結果締結されても大丈夫なように、自民党は新憲法草案にこっそり条文を忍び込ませているようです。

私たちはこのままグローバル企業のなすがままになってしまうのでしょうか? それを拒否した国アイスランドのお話が第4章にあります。是非この本を購入して、この章を読んで欲しいと思いますね。日本の野党統一組織はアイスランドの制度をモデルにして、政権をめざすべきだと思います。その際新自由主義者でかつTPPやTiSAを支持する人々だけは統一組織から排除すべきです。

米国もトランプはスキャンダルでつぶされると思いますが、ヒラリーの後は必ずサンダースの考え方を引き継ぐ革命家が現れて、コンセプトの異なる政権が成立することを期待したいと思います。

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2016年9月12日 (月)

「最悪の核施設 六ヶ所再処理工場」 集英社新書

Imga「最悪の核施設 六ヶ所再処理工場」 小出裕章・渡辺満久・明石昇二郎著 (2012) 集英社新書

世界中に放射性物質を垂れ流している悪名高いセラフィールド(英)とラ・アーグ(仏)の核燃料再処理工場。そして日本政府は六ヶ所再処理工場をこれに加えようとしています。

少し古い本になってしまいましたが、この本が指摘している問題は現在でも全く解決していません。

ウィキペディアによると、「(六ヶ所再処理工場の)試運転の終了は当初2009年2月を予定していたが、様々なトラブルが相次ぎ時期未定としたケースを含めて23回の延期をしている。2015年11月16日には竣工時期を、2018年度(平成30年度)上期に変更することが発表された。これら延期のため、当初発表されていた建設費用は7600億円だったものが、2011年2月現在で2兆1,930億円と約2.8倍以上にも膨らんでいる。」としています。現在ではさらに費用がふくらんでいることでしょう。

有害物質をまきちらす工場の建設に、目の玉が飛び出るような巨額の支出をする政府を支持するのかどうか、国民は真剣に考える時がきています。まだ手遅れではありません。そのきっかけになるのがこの本だと思います。

こと原発や再処理施設に関して、原子力村や政府が言っていることはほとんどウソと言って良いことは、福島第一原発の事故や後始末を見ていれば明らかですが、六ヶ所の施設についても、この本に良い例が示されています。

六ヶ所の施設は上記のラ・アーグの施設をお手本に作られたものです。様々な放射性同位元素をまき散らす施設ですが、たとえばラ・アーグで排出されているルテニウム106の量を六ヶ所の規模に換算すると1x10の13乗ベクレル/年となるはずです。ところが政府は2.4x10の10乗ベクレルと発表しています(本書37ページ)。同じフランスの技術を使っているのに、3桁も違うのではあまりにも見積もりが甘すぎるだろうと思います。政府・原燃がウソをついているとしか思えません。

これで思い出すのは晋三の国会答弁です。

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吉井英勝議員「海外では二重のバックアップ電源を喪失した事故もあるが日本は大丈夫なのか」
安倍首相「海外とは原発の構造が違う。日本の原発で同様の事態が発生するとは考えられない」

吉井議員「冷却系が完全に沈黙した場合の復旧シナリオは考えてあるのか」
安倍首相「そうならないよう万全の態勢を整えている」

吉井議員「冷却に失敗し各燃料棒が焼損した場合の想定をしているのか」
安倍首相「そうならないよう万全の態勢を整えている」

吉井議員「原子炉が破壊し放射性物質が拡散した場合の被害予測を教えて欲しい」
安倍首相「そうならないよう万全の態勢を整えている」
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六ヶ所の施設は海外の施設とは構造が違うなどとは言ってもらっては困ります。この本の言葉を借りれば「まるでフランスよりも高性能の技術が突如として開発されたかのようだ」ということです。そんなことあるわけないのです。

ともあれ六ヶ所施設は排出する放射性物質をフィルターにかけるでもなく、そのまま空気中と海に垂れ流すのであって、たとえばクリプトン85は33京ベクレル/年、トリチウムは1900兆ベクレル/年という目もくらむような大量の放射能を放出するのです。その空気を世界中の人が吸うわけです。

この本を読んでさらに驚いたのは、六ヶ所再処理工場近傍の地下には六ヶ所断層という活断層があるということです(1)。この断層を分岐する(親分にあたる)大陸棚外縁断層が活断層であると主張する池田安隆准教授(東大院)などの意見は、原子力安全委員会で無視されて議論が打ち切られたそうです。著者の明石氏がファックスで責任者に質問状を出したら、さっぱり返事がなく、後日「見たけど捨てた」と言われたそうです。

要するにどんなに巨額の税金を投入しても、どんなに大量の放射能を放出しても、何が何でもプルトニウムを濃縮して核武装したいというのが政府の方針であり(米国に禁止されているのであからさまには言えない)、そんな政府を支持しているのが日本国民だということです。このままで良いとは私は思いません。

1)渡辺満久他 「下北半島北西端周辺の地震性隆起海岸地形と海底活断層」 活断層研究 36 (2012)
http://danso.env.nagoya-u.ac.jp/jsafr/documents/AFR036_001_010.pdf

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2016年2月26日 (金)

「あの日」 by 小保方晴子

Imgaaa講談社から小保方晴子氏の「あの日」が出版されました。渦中の本人が書いたドキュメンタリーですから強烈なインパクトです。

STAP現象については、小保方氏の論文の前にヒトでミューズ細胞というSTAP細胞と同様な多能性成体幹細胞が報告されているので、特段驚くようなことではありません。小保方氏の論文が初期に掲載拒否されたのは、主にキメラマウスの制作ができないことによるもので、小保方さん自身ミューズ細胞の論文はヒトの細胞なので、キメラマウスの制作が求められず、掲載拒否されないように周到に準備された論文だったと完敗を認めています。

さらに最近似たような現象の論文も出版されているので、ATP処理によって多能性を示す遺伝子が発現し、培養液中でスフィアを形成する。ここまでが小保方氏ができることであって、このスフィアから細胞系を樹立したり、キメラマウスを作ったりしたのは若山照彦氏と配下の研究者でした。この点に関して興味深い記述がありました。

以下引用:

増殖が可能になったと報告された細胞培養に関しても、どうしても自分で確認がしたく、「培養を見せてください、手伝わせてください」と申し出たが、若山先生は「楽しいから」とおっしゃり1人で培養を続けて、増えた状態になって初めて細胞を見せてくれた。

若山研では私以外の全員が、「胚操作」と呼ばれる顕微鏡下でマウスの卵を使った実験を行える技術を持っており、顕微授精を行ったり、キメラマウスを作製したり、クローンマウスを作製したりする実験を行うことができた。若山先生のところに来た研究員は皆、胚操作を若山先生から直接指導を受け技術を習得していた。しかし、私だけは胚操作を教えてもらうことはできなかった。 (中略) キメラマウスの作製に成功した頃、「私にもキメラマウス作製の胚操作を教えて下さい」と若山先生に申し出ると、「小保方さんが自分でできるようになっちゃったら、もう僕のことを必要としてくれなくなって、どこかに行っちゃうかもしれないから、ヤダ」といたずらっぽくおっしゃった。

引用終了

それ以外にも、若山氏はあらかじめストーリーに合った仮データをつくっておいて、それに合わない実験結果は棄却するという驚愕の研究法だったとか、コンプライアンスに関して多くの問題があったとかが指摘してあって、要するにこの本の肝は若山氏に対する疑念だということがわかります。この点については若山氏の反論が聞きたいと思います。ES細胞の混入はまだ解明されていない重要なポイントです。

小保方さんは、1)それまで生命科学についてズブの素人であった多くのマスコミ人がかなり勉強したこと、2)科学の世界とは無縁の国民にそのドロドロとした醜悪な内幕を暴露してくれたこと、3)理研は麗澤な研究費はあっても、その業績は多くの使い捨て研究者によってささえられていることなどを明らかにしてくれたことは、この本がベストセラーであるだけに高く評価したいと思います。ただNatureの論文はとても Erratum で修正して済むようなものではなく、論文作成のお粗末さは反省してもらわなくては困ります。

最後に醜悪だったのはマスコミで、彼らは笹井さんの死には幾ばくかの責任があることを自覚すべきだと思います。と同時に、これはマスコミの取材を法的に規制しなければ、何度でも繰り返されるであろう問題です。つまり国会議員の責任でもあります。この件とは少し離れますが、私は個人的には現行犯や、近隣住民に危険があるような場合を除いて、少なくとも地方裁判所で黒白がはっきりするまで、被疑者が特定されるような報道は一切禁止すべきだと思います。

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2016年1月 9日 (土)

「そして偽装経済の崩壊が仕組まれる」 by 塚澤健二

Imgx昨今世界中で無茶苦茶な経済運営・金融をやっていて、これではいつか世界的な経済崩壊がおきるのではないかという暗雲がただよっています。この本の著者である塚澤氏はJPモルガン証券などでアナリストをやっていた方で、投資コンサルタントが本業のようです。
http://tsukazawa.com/

「そして偽装経済の崩壊が仕組まれる」 塚澤健二著 ビジネス社2015年刊

宣伝臭がする部分も多少ありますが、そこはスキップして読みました。
まずこの本を読むための予備知識から。

Kabuzen サイトの定義によると名目GDPと実質GDPの違いは

#名目GDP … 単純に金額から算出したもの
#実質GDP … 物量から算出したもの

となっています。説明すれば仮に去年のGDPが100兆円だったとして、今年の名目GDPが110兆円なら単純計算では成長率は10%という事になりますが、今年物価が10%上昇したとすると金額的には10%上昇していても物やサービスの量は変わりませんから実質GDPは100兆円のままとなり成長率は0%ということになります。

インフレの時は上記のように、実質GDP<名目GDPとなりますが、デフレの時には逆に実質GDP>名目GDPとなります(100円で売っていたパンを90円に値下げすれば、同じ物量が売れたとしてもその価値は10%下がる。したがって実質GDPは同じで、名目GDPは10%下がります)。

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著者がまず述べているのは、株式時価総額を名目GDPで割った「バフェット指数」についてです。日本のバフェット指数の平均値は 0.71 なのに、昨年春にはこれが 1.25 という異常な数値を示し、当然調整のために株価は下落しないといけないはずだったのに、安倍政権は国民が営々と支払ってきた年金を、株価が下落しないよう株式購入のために大量投入することに決めたのです。

これは単に国民のお金を使って、安倍政権がギャンブルをやっているという話ではなく、あくまでも株価を高止まりさせるために株式を購入したのです。株を売るとその目的にそわないので、上がっても売れません。これがペテンであることをまず著者は指摘しています。なんでこんな無茶をやったかと言えば、自分たちが統一地方選挙で勝つために他なりません。まったく腹立たしい話です。

それでも政府は昨年夏の株価暴落を防ぐことはできませんでした。年金や日銀の株購入に限界が見えたので、安倍政権の次の一手は、株をゆうちょ銀行に買わせることです。まさしく誰のお金であれ、使えるものは総動員して株を買えということです。どうしてこんな無茶をやるかというと、自分たちの政策である「秘密保護法」「安保法制」「憲法改正」を実現するためには、株価下落による国民の不人気を避けたいというエゴイスティックな目的のためです。

彼らは自分たちの政策を実現するためには、国民のお金を勝手に使うだけでなく、憲法も無視して良いという考え方なので、当然言論の自由も弾圧します。国境なき記者団の発表では、2010年の民主党政権時代には11位だった報道の自由度が、現在ではなんと61位まで転落しました。この本は経済に関する本ですが、私と同様著者もこの点には憤慨しています。

著者が注目するのは銅の価格で、これが実体経済の動向を判定するよい指標であるそうです。それは生産活動の広い分野で銅が使われているからだそうです。銅価格は2014年の7月から現在に至るまで次第に安くなってきていて、その間に中国で株の異常な高騰などがありましたが、すべて実体経済に基づかない、うたかたのバブルだったことがわかります。

著者によると商品相場に関する情報・予測についてはゴールドマンサックスおかかえアナリストの話しが最も信用できるそうです。彼らは多くのインサイダー情報を持っている上に、自社で商品の価格をコントロールする力もあるからのようです。彼らの予測では、2017年末には1ドル140円になっているはずだそうで、このことは覚えておきましょう。

著者は経済の専門家ですが、面白いのは20世紀から21世紀への価値観の転換について述べているところで、
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★20世紀:良いか悪いか、損か得か、正しいか正しくないか、疑似「幸せ」の洗脳社会、戦争の世紀
★21世紀:好きか嫌いか、信じるか信じないか、愛するか愛さないか、「幸せ」がなんだか正解のない社会、生命の世紀
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という指摘は面白く、私も良い線をいっていると思いました。特に21世紀を生命の世紀としたのは素晴らしい。そうなればいいですね。人の価値観というのは当然経済活動にも影響を及ぼすとはいえ、さすが経済の専門家はここまで考えているのかと感心しました。

これは私見ですが、安倍政権の問題点の一つは古い20世紀の価値観で政策を決めているところです。しかも大企業が栄えればみんな栄えるという発想ですね。とはいっても原発・船舶・家電・半導体・携帯電話・液晶など政府が推進してきたものはみんな敗退ですけどね。航空機・鉄道・宇宙開発もいずれ中国に敗退しなけりゃいいですが・・・。音楽やアニメなどは圧倒的に日本にアドヴァンテージがあるので、そのようなジャンルをもっと早くから中国で稼げるようにアシストする政治をやるべきだったと思います。さらに環境技術・海洋資源・水素・医薬品・コズメティックなどにも言えるかも知れません。

経済に戻ると、著者が心配しているのはオリンピックの年2020年から世帯数の減少がはじまるということです。人口が減少しても世帯数が増えている限りは、不動産・家具・家電などは売れるので経済をささえることができますが、これが減るということになると、経済に致命的な打撃を与えるおそれがあるという指摘です。

さらに著者がもっと緊急の懸念を抱いているのは、世界のデリバティヴ残高の異常さです。いま世界におけるその値は7京円(10の16乗円)=7000兆円の10倍という、実体経済からかけ離れた金融世界となっているそうです。ですから金利の上昇などちょっとしたことで(実際この本の出版後FRBは金利を上げました)銀行に支払い能力がなくなってバタバタ倒産という事態に至ることを著者は心配しています。

世界有数の投資家であるジム・ロジャースの言葉が引用してあります。
「安倍首相は投資家に対しては良い仕事をしてくれている。しかし、長期的な観点から見ると、日本の債務は多く、人口も減っており、彼のやっていることは日本を破滅させる方向に導いている」 私も同感です。ジムはもう米国と日本への投資は完全にやめて、2017年におこると言われている金融崩壊の終了を待ってから動けるよう待機しているそうです。

著者がもうひとつ指摘しているのは、日本には個人営業主が少なすぎる(サラリーマンが90%近い)ということで、これは私も同感です。私が住んでいる北総でも、商売に好適な土地はほとんどイオンなどの大資本が買い占めており、自分の土地で商売するのは不可能です。テナントで締め上げられるのがせいぜいで、町外れの一軒家で個人で商売する気にもなれないでしょう。それでもなんとかやっていけるのは医者と美容師くらいでしょうか。自分の人生や働き方を自分で決めてこそ生産性があがるというものです。

あとはどうやって人口を増やすかということですが、まずシリアの難民を受け入れるというところからはじめるべきでしょう。当初はいろいろトラブルがあっても2~3年もすれば、彼らもその地の習慣には慣れるものです。

もうひとつすぐにできることは、国籍法を変更して、日本で生まれた人はすべて日本国籍をもつことができるようにすることです。将来的に言えば、当用漢字を中国と同じにしたり、小学校から中国語を教えるようにしたりして、中国人が移住しやすい環境をつくることを私は推奨したいと思います。中国はいくら金満とはいっても独裁国家であり、より自由な国である日本に住みたいと思う人は少なくないでしょう。ともかく人口がどんどん減少していけば国家が消滅するということを肝に銘じて、日本人は考え方の転換を図らないとどうにもなりません。

http://tanakaryusaku.jp/2016/01/00012753

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2015年11月 3日 (火)

「チェルノブイリの祈り」 by スベトラーナ・アレクシエービッチ

Imgチェルノブイリの原発が爆発したとき、とても美しく光り輝いたそうです。みんなまさか原発が爆発したなんて思っていなかったので、ビルやマンションの高層階のベランダなどからみとれていたそうです。中には何十キロもの遠方から車や自転車で見物に来た人も多かったそうです。

近くの川で数時間釣りをしていた人は、夏でもないのに真っ黒に日焼けしてしまったそうです。
あまりにもみんな放射能の危険性について無知だったのです。

それは消防士も同様でした。まず最初に死者を出した外部の人間は消防士で、これは急性被曝のためです。中には水蒸気爆発を防ぐため原子炉の下にあるハッチをあけて水を放出するという作業をした人もいたそうです。しかも多大な報償をエサに志願したというのですから驚きです。もちろん急性被曝で死亡です。

ソ連政府は34万人の兵士を集めて(延べではない)事後処理を行わせました。なかには直近までアフガニスタンで人を撃っていた部隊が、近隣住人のペットを射殺するために動員されたこともあったそうです。全国の炭鉱夫を招集して原発の地下に穴を掘り、大量の液体窒素を注入するという作業を行いました。

この本は、実際に被曝した人々のインタビューで構成されています。誰にも話さなかったことを著者(スベトラーナ・アレクシエービッチ)に打ち明けて、出版を許可した人々もいます。生々しく、胸がつぶれそうな記載もあります。

福島第一原発事故は、このチェルノブイリの事故よりも大規模なものでしたが、被曝はチェルノブイリほどではなかったと思われます。これは大部分の放射性物質が太平洋方面に放出されたためで、風向きなどの運が良かっただけなのです。今年になってから、アラスカの紅鮭から65ベクレル/kgのストロンチウム90が検出されていますが、これは太平洋全体が汚染されたことを意味しています。本書は著者の主観や主張が排除されていることから、特に原発支持派の人々に読んで欲しい本ですね。

http://tanakaryusaku.jp/2011/08/0002744

https://www.vitalchoice.com/shop/pc/articlesView.asp?id=2231

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2015年8月19日 (水)

「死都日本」 石黒耀 (いしぐろあきら) 著

Imga桜島がレベル4で厳重警戒となっています。火山の小説をということで「死都日本」(石黒耀著 講談社刊)を購入し3日程かけて読了しました。石黒耀の作品は以前に「昼は雲の柱」という、富士山の噴火をテーマにした小説を読んだことがあります。

http://morph.way-nifty.com/grey/2007/03/post_6432.html

「死都日本」は「昼は雲の柱」より前の2002年に書かれたものですが、非常にスケールの大きい加久藤カルデラ破局噴火のお話ですし、火山神の話を長々と続けることがなく、適当に分散させているので、「昼は雲の柱」より読みやすい感じがしました。ストーリーは大変面白いもので素晴らしい作品です。そのままハリウッド映画としても成立すると思いました(私なら主役の黒木准教授はマット・デイモンで)。

政権交代したばかりの政府が、この未曾有の災難に対処するわけですが、総理の名前は菅原ということで、これは菅と前原を合わせたものなのでしょうかね。東日本大震災と原発爆発に遭遇した菅政権を先取りしたような話でゾクッとします。危機管理センターと総理執務室を行ったり来たりという話も出てきます。違うのは菅直人は何の準備もなく、突然の大地震から対策がはじまったのですが、菅原和則はあらかじめ破局噴火が近いという情報は得ており、最善の作戦を考えて着々と準備を整えていたということです。

考えてみれば日本の政治・経済・産業の大部分は、東京・横浜・名古屋・大阪など明日起きても不思議でない東海・東南海地震と、それにともなう津波で壊滅してしまうような場所に存在します。このような状況を全く改善しようとしない政府はあまりにも愚かです。それどころか、これからますます東京・横浜に人が集中しそうな勢いです。愚かと言えば、よりによってかなり大規模な噴火が予想される桜島の近くにある川内原発を再稼働して、噴火なんて関係ないとうそぶいている連中にはあきれます。この小説の中で、菅原首相が噴火の情報を得て最初にやったのは、川内原発を停止し、炉心と使用済み核燃料プールから燃料棒を引き上げて移動させることでした。石黒氏は医師でありながら、火山だけでなく原発にも詳しいことには感服します。

噴火と言えば私たちはすぐ雲仙普賢岳の火砕流や、御嶽山の噴石直撃などを思い浮かべますが、この小説を読むと、火山の本当の怖さはそんなものではなく、山に蓄積した火山灰が降雨によって土石流(正確にはラハール=火砕物重力流とよぶそうです)となり、川の下流にある都市を破壊するということです。九州には阿蘇・加久藤・姶良・阿多・鬼界という破局噴火を起こす可能性がある5つの火山がありますが、これが実際におこると広島も、大阪も、名古屋も、東京もラハールで壊滅します。

破局噴火は長期的にも大きな厄災を招きます。上空に巻き上げられた火山灰のため日照時間が減って植物の生育が妨げられ、多くの動物が餓死します。ペルム紀の地球では、地球上のほとんどの動物が絶滅したという悲惨な歴史が知られています。縄文時代の日本人は鬼界カルデラの破局噴火に遭遇しており、西日本の縄文文化はそのときに壊滅したと考えられています。

「昼は雲の柱」が御殿場市民必読の書とすれば、「死都日本」は日本国民必読の書と言えます。

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2015年8月10日 (月)

「生命のはじまり 古生代」 川崎悟司著

Img「生命の始まり 古生代」川崎悟司(かわさきさとし)著 ブックマン社 2015年刊

川崎悟司さんはウェブサイト「古世界の住人」の管理人で、昔から楽しませてもらっています。彼はもともと考古学の専門家ではなく、イラストレーターが本職であるにもかかわらず、深く古世界に関心を持ち、最新の研究もいちはやくイラストに反映するという好学の士です。

政府による大学の破壊が進む今日においては、アマチュアが基礎科学や人文学の中心となってしまい、大学は技術者の養成所という情けない状況がみえてきています。

それはさておき、この本は最新の知見に基づいているにもかかわらず、小中学生でも理解出来るような、イラスト中心の古生物学入門書となっています。すべての漢字にルビをふってあるのも小中学生が読むことを前提とすれば親切です。

この本に描かれた様々なイラストを見ていると、古生代の生物の多様性に目を見張ります。現代に生きる生物はその奇妙さ、すなわち多様性をかなり失っているように思います。現代は90%の生物が絶滅したといわれるペルム紀より、さらに激しい生物絶滅時代であり、その責任は主に人間にあります。

例えばうちの団地で言えば、犬が嫌い、猫が嫌い、牛馬が嫌い(近所の牧場のにおい)、ハチが嫌い、アリが嫌い、セミが嫌い(うるさい)、鳥が嫌い(ベランダに糞をする)、雑草が嫌い、樹木が嫌い(樹液が車に落ちる)とくるわけで、じゃあ砂漠で暮らせばと言いたくなります。

川崎悟司さんのウェブサイト「古世界の住人」
http://www.geocities.co.jp/NatureLand/5218/

生物多様性
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/

現代は大絶滅時代
http://scienceminestrone.blog.fc2.com/blog-entry-221.html

企業活動と生物多様性
http://agrinext.jp/archive/tayousei/chapter1/

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2015年6月28日 (日)

「福島第一原発事故 7つの謎」 by NHKスペシャル「メルトダウン」取材班

Imga籾井の会長就任以来、信頼感激減のNHKですが、ちょっと良い本を出版してくれました。「福島第一原発事故 7つの謎」(NHKスペシャル「メルトダウン」取材班著、講談社現代新書 2015年出版)というものです。

多数の現場関係者から東電の取締役まで、綿密なインタビューと調査により、福島第一原発事故を検証した労作で、読んでみて私もよく納得できる内容でした。

なぜベントがなかなかできなかったのかという疑問についても明快に記載があります。それは本書を読んでいただくことにして、私が特に興味を引かれたのは次の2点です。

ひとつめは、圧力容器(ボイラー)内の気圧が上昇したときに、外に蒸気を逃がすためのSR弁というのがあるのですが、その弁は中の圧力が高くなればなるほど開きにくくなって、それ以上の圧力を外からかけないと開かなくなるという構造になっていたということです。したがって、圧力容器の中でメルトダウンがおきたような場合には、役目を果たせなくなるという信じられない事態をまねいてしまう可能性が高まります。

ふたつめは、格納容器がたった550℃の熱で壊れてしまうということで、これでは何千度もある溶けた燃料が落ちてくるとひとたまりもありません。格納容器がかくも脆弱な構造になっているとは!! この執念のシミュレーションは、東電の幹部も否定出来ないくらいきちんとしたものだそうで驚きました。

これらはあきらかに設計上のミスであり、地震や津波とは別問題で、何もなくてもちゃんと改良しておくべき点でした。原子炉の設計というと優秀な技術者がやっていると素人は思うわけですが、実は原子炉関係の学術は数十年前から全く人気が無く、工学部の中でもローエンドの人材しか集まらないという現実があって、信頼性は非常に低いのです。

あらためて、4号機の使用済み核燃料プールが崩壊しなかったのは奇跡的な幸運だったとため息が出ます。これが崩壊していれば東京周辺に住んでいる私やあなたの人生は、例え生きていたとしても、現在とは全く異なる苦難に満ちたものになったことは間違いありません。

この本は新書というお手軽さもあり、日本国民必読の書だと思います。


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2015年3月22日 (日)

「捏造の科学者 STAP細胞事件」 by 須田桃子

Imgaaa毎日新聞の須田桃子記者が「捏造の科学者 STAP細胞事件」(文藝春秋社刊 2014年)を出版しました。この事件は生物学研究にたずさわる者にとっては、おぞましくも「痛い」事件でした。そして新聞記者にとっても、最初に思い切り賞賛していながら、次々おかしな話が出てきて誤報になってしまったわけですから、忸怩たる思いで忘れられない事件だったと思います。

須田氏は自らの行為と理化学研究所で行われていた行為を検証し、事件の始まりから今日に至るまでをこの本にきちんとまとめておきたかったのでしょう。内容は丁寧に事件を追って、理工系の大学院修士課程を修了している須田氏ならではの手堅い調査と記述でまとめられています。それは私たち研究者にとっては大変わかりやすいものでしたが、はたしてこれで一般市民が理解出来るかというと、図表も少なくなかなか根気が続かないのではないだろうかと心配になります。私の想像ですが、須田氏はそれは承知の上で、この事件について何か発信したい人、研究者、マスコミ関係者、事件の関係者や親族のために正確な情報を残しておこうと考えていたのではないかと思います。

笹井氏の研究室も若山氏の研究室も、小保方さんがかかわるまではうまく運営されていてよい研究室だったと思いますが、それがひとりのビッチのために、人間も研究室もボロボロになってしまったというのは恐ろしいことです。もちろん笹井氏や若山氏もうまく乗せられてしまったという罪は逃れることはできないでしょう。特に笹井氏はまるで彼女にマインドコントロールされているかのような状態になっていたと思われます。・・・合掌。

ただ須田さんも言っているように、この事件に小保方氏以外の何者かがかかわっている可能性も完全には否定出来ないわけで、まだ完全に解明されてはいないことは確かです。

須田氏は今の日本の科学界がかかえている問題も、この事件に関連してえぐり出し、提示しています。例えば理研CDBは日本では「発生・再生科学総合研究センター」となっていますが、英語では「Center for Developmental Biology」です。英語をそのまま訳すと「発生生物学センター」になりますが、どうしてそういう名前にならなかったのかといえば、発生生物学という言葉がお金を投入して研究すべき対象として日本人に認知されていないからです。日本では基礎科学(それが医学的応用につなげるためには必須のものであっても)に多額の研究費を投入するとバッシングを受けるのではないかという怖さで、外国と国内で別の顔にしているのです。つまり日本は科学の認知という意味では、まだまだ後進国なのです。なにしろ理研の上にいるのは、あの下村某というウソまみれの大臣ですから(泣)。彼が捏造の処断をするというのはまさしくブラックジョークです。

個人的に思うのは、発生生物学というジャンルにおいても、理研CDBに極端に資金が集中しすぎて(例えば笹井研は年間6億円とか)、細々やっている人たちとの研究費の差が100~1000倍にもなっていて、これでは学会で発表しても貧民と富者では別世界で、まともな議論も成り立たないような状況になってしまうわけす。CDBの不幸を喜ぶ向きも多いことは想像出来ます。事件発生から時を経ずして、ウェブサイトでの雨あられのバッシングが行われたのも、このような事情があることがバックグラウンドにあります。資金を集中させれば良い研究がうまれるだろうというのは、ありがちな素人のサル知恵で、ひとつのほころびから全体がガタガタになってしまうというリスクもありますし、大事な芽が育ちにくいという問題もあります。たとえば日本の芸能事務所がジャニーズと吉本だけになったら、どんな芸能界になるのか予想してみてください。

この本は手堅くまとめられていて私は高く評価しますが、一つ残念なのはタイムテーブルがないということです。これは画竜点睛を欠きましたね。特許とインサイダー取引の件もつっこみ不足でした。最後にひとつ感じたのは、須田さんもNHKに抜かれて残念だったことを何度も書いていますが、NHKというテレビ局が特ダネスクープ競争に狂奔するというのはかなり違和感があります。彼らは国民から搾り取った資金を豊富にかかえており、取材費も給料も破格の集団なのですから、もっと上品で堅実な報道に徹するべきだと思います。同じ土俵で戦うのでは民間放送局がかわいそうです。もちろん籾井のような政府の傀儡がトップというのはあってはならないことです。

笹井氏の輝かしい業績
http://www.cdb.riken.jp/news/2014/topics/0829_4980.html

文科大臣の発言
http://www.sankei.com/life/news/140617/lif1406170012-n1.html

解雇しなかった理研
http://www.j-cast.com/tv/2014/08/14213144.html

笹井氏の自殺には裏がある
http://ameblo.jp/usinawaretatoki/entry-11905403872.html

週刊誌の記事
http://matome.naver.jp/odai/2139526990336476601
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40262

遺書のリーク
http://critic20.exblog.jp/22443744/

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2014年4月22日 (火)

資本主義の終焉

Imga地球はひとつしかない有限の星です。ですから人間が経済活動を拡大していけば、いつかどこかで限界が生じ破綻します。現在おそらく太陽の活動が低下し、地球は氷河期に入ろうとしていますが、それにも勝る速度で、人間の経済活動拡大にともなうアマゾン川流域の開発・家畜の増加などの影響で二酸化炭素とメタンガスの濃度が上昇し、気候変動による飢餓がせまりつつあります。

しかしサルでもわかるような上記の事実を念仏のように唱えていても、現に資本を投下して稼いでいる人々、その人々に雇用されて生計を立てている人々、彼らに支持されている政治家達は決して経済拡張をやめようとはしません。ところがどうにかして経済を拡張しようとしても、どうしてもうまくいかないという時代がついにやってきたようです。資本主義は地球が無限の広さであるということを前提にして成立しているので、限界が見えてきてもそれを乗り越える方策は提供してくれません。

米国は限界が迫り来る事態を、情報収集力や軍事力を背景としたグローバル投資によって切り抜けてきました。国家は膨大な借金をかかえたままなのですが、エリート達は金融によって国家の富を独占して太りました。このやり方は中間階級の没落と、特権階級への極端な富の集中を招きます。

例えば、かわら版 No.934 によると「所得格差はオバマ大統領が再選された2012年に顕著に現れました。年間所得額でトップ10%に入る富裕層の所得総額が米国全体の50%に達しました(1979年には30%でした)。トップ1%の所得は総所得額の19.2%で、この割合は1927年以来最高です。」
http://www.nodayoshi.gr.jp/leaflet/detail/49.html

日本はどうか? 日本は2008年から7年間金利がほぼゼロです。金利がゼロということは、銀行がどこに投資してももうからないということでしょう。著者の水野氏はこのことが資本主義卒業の証であるととらえています。水野氏は「もう地球上のどこにもフロンティアは残されていない」と述べています。資本主義はフロンティア(未開発の周辺地域)に投資して経済活動を拡大し、資本家(中心地域)が利潤を得るというシステムですから、フロンティアがなくなれば終わらざるを得ません。実際BRICSがフロンティアから資本主義の中心に昇格してきた現在、アフリカの一部くらいしかフロンティアは残されていないでしょう。水野氏が言うように、資本主義の死期は近いと思われます。アフリカがグローバル資本主義に飲み込まれる時が最後の線香花火です。おそらくそれを一番実感しているのは、特権階級の中心にいるジム・ロジャースやジョージ・ソロスでしょう。

日本だけではなく、米国でもEUでも政策金利はほぼゼロで、いわゆる先進国では経済発展ができていません。それでも「現に資本を投下して稼いでいる人々、その人々に雇用されて生計を立てている人々、彼らに支持されている政治家達」は、必死にもがいて利潤を確保しようと狂奔するでしょう。それが何をもたらしたか、米国では極端な富の特権階級への集中、EUでは10%を越える失業率、日本でも非正規雇用者が30%を越えるという社会の崩壊を招いています。水野氏は「(経済)成長を求めれば求めるほど、資本主義が本来持つ矛盾が露呈し、システム転換にともなうダメージや犠牲も大きくなります」と述べています。全くその通りだと思います。

では資本主義に代わるどのようなシステムが可能なのか? それは水野氏も提供出来ないと述べています。彼が考えているのは、資本主義の崩壊過程でなるべくダメージと犠牲を少なくするためにはどうすればよいかということです。彼は「G20が連帯してグローバル資本主義と対決せよ」と提言しています。具体的には1.法人税の引き下げに歯止めをかける、2.国際的金融取引に課税する ということです。

日本については 1.国債を1000兆円より増加させない、2.国債を外国人投資家に売らない、3.エネルギー自給をめざす というような提言をしています。私はさらに食糧の自給をめざすべきだと思います。そうすればグローバル資本主義から決別することができるでしょう。TPPは米国のグローバル資本が、残されたアジアのフロンティアを絞り尽くそうという意図を持つもので、マスコミでは豚肉・牛肉がどうのとか言っていますが、そればかりではなく、ISD条項や医療保険などもっと凶悪な部分にも注目すべきでしょう。

水野氏はもうひとつ重要な指摘をしています。グローバル資本主義は一部の特権階級に富を集中させ、中間階級を没落させるので、真の民主主義は成立しません。普通にやると政権は国民の支持が得られないので、手っ取り早いのは仮想敵国をつくって愛国思想で支持をとりつけたり、そのほかマスコミのコントロールとか幻想を振りまくとか、年金資金を投入して株価を維持するとか、手練手管で国民をだまして政権を維持しようとします。それでも本質がバレてしまったら、全体主義に傾かざるを得ません。

特権階級が資本主義を延命させようとあがけばあがくほど犠牲は大きくなります。これを防ぐには国民が立ち上がって、新しい政治・経済システムを模索する政党を育てなければなりません。投資と利潤・経済の拡大によって維持される社会から、経済が拡大しなくても定常状態を保ってみんなが生活していける社会をめざすことが必要です。しかし水野氏が危惧するように、私も資本主義の終末はハードランディングになるのではないかと予想します。それは国民の安倍政権に対する評価から判断できるでしょう。

水野和夫氏はもちろんマルキストなどではなく、永年三菱UFJモルガンスタンレー証券に勤務して、執行役員・理事まで上り詰めた証券マンで、民主党政権では内閣府大臣官房審議官などを歴任し、現在は日大教授です。

「資本主義の終焉と歴史の危機」 水野和夫著 集英社新書 (2014年刊)

 

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