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2024年9月18日 (水)

本を読まない人

もうニュースでも報道されている話題ですが、このことを知って日本の未来に不安を感じるのは私だけではないでしょう。文化庁の調査によると、1ヶ月に1冊も本を読まない人の割合がここ数年で激増し60%を超えたそうです。

平成 25 年度「国語に関する世論調査」の結果の概要
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/pdf/h25_chosa_kekka.pdf

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電子書籍について (文化庁の発表)↓

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私は本を読まない人というのは文章を書けないと思います。おそらく大学生でもつじつまの合ったまともなレポートは書けないのではないかと思います。青木理が劣等民族という言葉を使って批判されていますが、知らず知らずのうちにそれが本当になってしまうという不安を感じます。

YouTube で知識を得るのは悪くありませんが、所詮動画は通り過ぎるものであり、ノートを取りながら動画を見るなんてことはめったにないでしょう。動画はその正確性や妥当性で評価されるものではなく見た人の数でだけ評価されるので、不正・大げさ・偏向・虚偽・宣伝などが跳梁跋扈する伏魔殿です。タイトルと中味が合っていないことなど日常茶飯事です。日本の安全保障を論じているのに、その一丁目Ⅰ番地であるサンフランシスコ平和条約の話が全く出てこないというのも普通です。

本が高価で買えないと言う人はSNSや動画ではない「静止画+文章 が主体のウェブサイト」を見るというのも良いと思います。例えば最新の科学の進歩は「Nature ダイジェスト」というサイトを見るとわかります。文章を読む練習にもなります。

https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/


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サラ・ミーナ「私たちには関係ない話ね」

私「まあそうだけど、それは君たちが飼い猫だからであって、野良猫だったら必死で情報収集しないと生きていけないところだよ。本は読めないにしてもね」

余談:小泉進次郎はその全く本を読まない60%に含まれるのだろうか?

 

 

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2024年9月15日 (日)

続・生物学茶話246: シナプス前細胞のアクティヴゾーン

電子顕微鏡でシナプスを見るとシナプス後細胞の細胞膜の電子密度が高いということは、20世紀の半ば頃から知られていました(1)。これは後に postsynaptic density と呼ばれるようになりますが、この日本語訳「シナプス後肥厚」というのは、どうして density を肥厚と訳したのかがわかりません。英語とは関係なく命名したのかもしれません。

確かに図246-1を見ても、シナプス後細胞の高密度領域は明らかにわかります。一方でそれに対面するシナプス前細胞の部分にも、後細胞ほど分厚くはありませんが確かに高密度領域は存在します。シナプス後細胞の場合神経伝達物質の受容体とそれを固定するタンパク質集合体が細胞骨格(スキャフォールド)で固定されているような構造が推測されますが、シナプス前細胞の場合、細胞膜は頻繁にエキソサイトーシスを行っているので流動的で、それでも高密度であるということは多くのタンパク質がここに集中して作業しているに違いありません。

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図246-1 シナプスの電子顕微鏡写真 (wikipedia: postsynaptic density より)

前回(245)の内容から考えて、カルシウムチャネル、SNARE複合体、MUNK、RIMなどがシナプス前細胞のアクティヴゾーンに集積すると思われますが、もう少し詳しく見ていきましょう。シナプス前細胞は電位変化の情報がくるとミリ秒単位の短時間で神経伝達物質を放出しなければなりません。そのためにはあらかじめ準備を万端整えておく必要があります。エンペラドール=メレロとケーザーはカルシウムチャネル、SNARE複合体以外の、あらかじめ準備されているタンパク質のセットを図246-2のようにまとめています(2)。

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図246-2 カルシウムチャネルとSNARE複合体以外のシナプス前細胞のアクティヴゾーンを構成するタンパク質複合体

ここには今まで言及していないタンパク質がいくつか登場しています。まず楽器の名前がつけられた Piccolo/Bassoon は類似した部分を持ち関連性がある非常に巨大なタンパク質で、Piccolo の分子量は約55万ダルトン、Bassoon は約42万ダルトンです。両者はアクティヴゾーンでスキャフォールドを形成する構造タンパク質ですが、それぞれ別の機能も持っており、特に Piccolo がアクチンと結合していることは重要だと思われます(3、4)。

ELKS はPiccolo/Bassoon、Liprinα、Rim1αなどと結合するドメインを持っており(図246-2)、少なくともこれらのタンパク質の立体配置に重要な役割を果たしていると思われます。Liprinαは mDia の活性を抑制することを通じて、アクチン線維の形成に関与しているようです(5)。また RIM と RIM-BP は電位依存性カルシウムチャネルと共に疎水性で相分離を起こすような集合体を形成し、小胞体を細胞膜近辺にとどめる役割を果たしているようです(6、7、図246-3のBの部分)。この1つの相をコンデンセートと呼び、Bはすぐにエキソサイトーシスで神経伝達物質を放出できる状態にあるシナプス小胞が集合している状態とされています。ただ図246-3のようにはっきりしたA相、B相、それ以外の部分というような境界があるかというと、私にはまだ信じられません。

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図246-3 コンデンセート説

図246-4はウィキペディアの active zone という項目(8)に掲載されてあった図で、とりあえず報告されているタンパク質とそれらの関係をまとめたものです。このようなイメージで最終的に良いのか(正しいのか)どうかはわかりませんし、すべてが網羅されているわけでもありませんが、関係タンパク質を一覧するには便利かもしれないので貼っておきます。スペクトリンがVDCCと結合するという論文は、アンキリンを介してというもの以外はみつかりませんでした。

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図246-4 アクディヴゾーンのタンパク質複合体(ウィキペディアの模式図)

図246-5は参照文献2などを参考に調べた結果ですが、やはり哺乳類が保有するアクティヴゾーンのタンパク質とホモローガスなタンパク質を線虫(C.elegance)もショウジョウバエ(D.melanogaster)も保有しています。前回(245)のシンタキシンでもわかるように、アクティヴゾーンにおけるシナプス小胞の集積と高速で行われるエキソサイトーシスをサポートするメカニズムは、これらの生物が分岐する以前のエディアカラ紀あるいはそれ以前に確立されていて、今生きている生物はそれをわずかな適応と改良を重ねてはいるものの、数億年の間基本的に引き継いでいることは明らかです。

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図246-5 マウス、線虫、ショウジョウバエにおけるシナプス前細胞アクティヴゾーンタンパク質 名前は別々に命名されていますがホモロジーがあり、各グループ(RIM, Liprin, ELKS/CAST, Munk13)は同根のタンパク質とされています

 

参照

1)Sanford L. Palay, SYNAPSES IN THE CENTRAL NERVOUS SYSTEM, J Biophys Biochem Cytol. vol.2(4): pp.193-202. (1956)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2229686/

2)Javier Emperador-Melero and Pascal S Kaeser, Assembly of the presynaptic active zone., Current Opinion in Neurobiology vol.63: pp.95–103 (2020)
DOI: 10.1016/j.conb.2020.03.008
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32403081/

3)Fenster, Steven D.; Kessels, Michael M.; Qualmann, Britta; Chung, Wook J.; Nash, Joanne; Gundelfinger, Eckart D.; Garner, Craig C., Interactions between Piccolo and the actin/dynamin-binding protein Abp1 link vesicle endocytosis to presynaptic active zones. The Journal of Biological Chemistry. vol.278 (22): pp.20268-20277 (2003) doi:10.1074/jbc.M210792200
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12654920/

4)Eckart D. Gundelfinger, Carsten Reissner and Craig C. Garner,
Role of Bassoon and Piccolo in Assembly and Molecular Organization of the Active Zone., Frontiers in Synaptic Neuroscience., vol.7, article 19, (2016)
doi: 10.3389/fnsyn.2015.00019
https://www.frontiersin.org/journals/synaptic-neuroscience/articles/10.3389/fnsyn.2015.00019/full

5)Satoko Sakamoto, Shuh Narumiya & Toshimasa Ishizaki, A new role of multi scaffold protein Liprin-α. Liprin-α suppresses Rho-mDia mediated stress fiber formation., BioArchitecture vol.2, Issue 2 (2012)
https://doi.org/10.4161/bioa.20442
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.4161/bioa.20442

6)細川智永 シナプス伝達と可塑性を担うタンパク質の集合と区画化 
Journal of Japanese Biochemical Society vol.94(4): pp.523-528 (2022)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940523
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2022.940523/data/index.html

7)Xiandeng Wu, Qixu Cai, Zeyu Shen, Xudong Chen, Menglong Zeng, Shengwang Du, Mingjie Zhang, RIM and RIM-BP Form Presynaptic Active-Zone-like Condensates via Phase Separation., Mol Cell vol.73(5): pp.971-984.e5. (2019)
doi: 10.1016/j.molcel.2018.12.007
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30661983/

8)Wikipedia: active zone
https://en.wikipedia.org/wiki/Active_zone

 

 

 

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2024年9月14日 (土)

ブログを書こう

A-4

ここを探索しようと思ったら、ミーナに先を越されたんだよね。でもそこで強引に割り込んだりしないのがサラの良いところ。

ところで今日はブログのおすすめをしたいと思います。私の持論はSNSは社交、ブログは文化です。ChatGPTなどが出現して、人は文章を書くという能力を失ってしまうかもしれません。是非自分で文章を作ってブログを書きましょう。

私は@ニフティというプロバイダーのサ-ビスでブログ(ココログ)をやっています。こことは古くてニフティサーブという名前で電話回線を使って営業していた頃からの付き合いです。ニフティーサーブの頃はブログという概念は無く、全く趣味的な「言葉の社交サークル」という感じでした。

X・FB・インスタグラムや動画サイトなどが次々と出現する中で、@ニフティはブログ中心のサイトとして営業していますが、それだけではありません。サービスの中に「注目のニュース(速報)」というのがあって、たとえば「3連休 雷雨と猛烈残暑に警戒」とか「斎藤知事への贈答品を公開」などがタイトルに並んでいます。

岸田政権になる前は信じがたいことに、3日とおかず頻繁に同じ人が「注目のニュース(速報)」のタイトルリストにあがっていました。その人の名は「玉川徹」で、玉川徹が羽鳥慎一モーニングショーでこう言ったとかああ言ったというのが注目のタイトルにあがっているのです。もちろんたいていの場合ディスるためです。玉川徹の発言が日常的に注目のニュースとは驚きですが、それほど安倍・菅政権にはにらまれていたのでしょう。

そういう意味では岸田政権はそれまでの政権と基本政策は変わりませんが、マスコミを隅々まで支配しようという中国やロシアそして安倍・菅政権のような検閲とコントロールはなくなったようです。少なくとも@ニフティニュースなどというマイナーな報道にまで圧力を加えることはなくなったのではないでしょうか。@ニフティニュースの全体的な内容も、フジサンケイグループなのに、最近は決して右翼的とはいえないくらいニュートラルでフェアーなものになっています。

@ニフティー加入
https://setsuzoku.nifty.com/niftyhikari/

 

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2024年9月11日 (水)

頭角を現してきた エヴァ・オリカイネン 

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(アイスランド交響楽団のHPより)

SWR交響楽団(南西ドイツ放送交響楽団)は来シーズンからフランソワ=グザヴィエ・ロトが首席指揮者・芸術監督に就任することになっていましたが、セクハラ疑惑問題が未解決のため、ロトが振ることになっていた今シーズンの最後の定期演奏会をキャンセルし、代役を立てることになりました。

その代役がなんと私がずっと「いちおし」していたエヴァ・オリカイネンに決まったそうです。演目はソフィア・グバイドゥーリナの楽曲及びR.シュトラウスのヴァイオリン協奏曲とシベリウスの5番だそうです。彼女は2013年に来日して都響を指揮しており、そのときに「ひと聴き」惚れしてしまいました。その特徴は指揮者の存在を感じさせないくらい、作曲家とその音楽に没入させてくれることです。

しかし不可解なことに、それ1回だけで以降呼んでいません。そのうちにアイスランド交響楽団の音楽監督に就任し、BBCプロムスに出演するとか、ウィーンの音楽祭をプロデュース・指揮をするとか、着々とキャリアを重ねて、頭角を現してきました。

参照:クラシック音楽とアート
謹慎中のフランソワ=グザヴィエ・ロトの代役にエヴァ・オリカイネン|SWR交響楽団定期
https://a-delp.blog.jp/2024-06-19_SWR

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#ウィーンで行われた Fest der Freude をプロデュースし、ウィーン交響楽団を指揮するエヴァ・オリカイネン
https://www.youtube.com/watch?v=FVu82lAyFQc&t=896s

曲目は モーリス・ラヴェル「ラ・ヴァルス」、ショスタコーヴィチ交響曲第10番第2楽章、アルヴォ・ペルト「Fratres fur violine」、コルンゴルト「Marienttas Lied aus die tote stadt」、マーラー交響曲第5番第5楽章

#ベートーヴェン交響曲第5番「運命」 エヴァ・オリカイネン指揮 アイスランド交響楽団
https://www.youtube.com/watch?v=O8QlEH0QgOI

ベートーヴェンがウィーンの楽壇にさっそうと登場したときの雰囲気を感じさせる溌剌とした演奏 一方で独墺音楽のどっしりとした伝統も感じさせる

#ベートーヴェン交響曲第9番合唱付き
エヴァ・オリカイネン指揮 ヘルシンキフィルハーモニー管弦楽団
https://www.youtube.com/watch?v=KIDZj0vJffU&t=310s

フィンランドはきら星のごとく多くの指揮者を輩出していますが、そのなかでヘルシンキフィルで第9を演奏するというのはすごいことだと思います

#グスタフ・マーラー さすらう若人の歌
歌:ヨハン・クリスティンソン  これは名演だと思います
エヴァ・オリカイネン指揮 アイスランド交響楽団
https://www.youtube.com/watch?v=xGC324k7sf8

 

日本の事務所 Musica Chiara
https://www.musicachiara.com/eva-ollikainen

 

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2024年9月 8日 (日)

続・生物学茶話245:シナプスとSNARE複合体

神経伝達はシナプスを経由して行われますが、そのシナプスが機能を発揮するためのメカニズムについては、これまで学習してきたように「1.シナプス前細胞のシナプス小胞が細胞質から神経伝達物質をとりこみ、2.それをシナプスのアクティブゾーンからエキソサイトーシスでシナプス間隙に放出し、3.放出された神経伝達物質をシナプス後細胞が受け取る」という順序で行われることがわかっています。

そのためにはまずシナプス前細胞のバリコシティー(ふくらみ)が電位変化を察知し、それを生化学的プロセスに変換しなければなりません。これをおそらくすべての神経を持つ生物はカルシウムチャネル(1、2)を使ってやっていると思われますが、おそらくというのは有櫛動物だけはほかの門の生物とは非常に異なる神経システムを持っていてはっきりとしない点があるからです。そのため生物進化において神経のルーツがひとつであるのかふたつなのかという論争が続いているほどです(3、4)。ただ有櫛動物も筋収縮についてはカルシウムシグナリングに依存しているようですし(5)、神経細胞においても電位変動を最初に感知し、カルシウムの流入によって生化学的変化を起動しているのはおそらく有櫛動物の場合もカルシウムチャネルだと考えられています(6)。カルシウムチャネル自体の歴史は非常に古く、ルーツは細菌までたどることができます(2、7)。ですから神経伝達のためのツールとして使うのは多細胞生物による流用です(8)。

電位依存性カルシウムチャネル(voltage-dependent calcium channel: VDCC)についてはすでに参照文献2で詳しく述べましたが、この分野の研究は進んでおり、ここでは京都大学森研究室がHPに掲載している図を多少改変して貼っておきます(9、図245-1)。

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図245-1 電位依存性カルシウムチャネルの立体構造


森研究室の研究では、RIMファミリーのタンパク質が電位依存性カルシウムチャネルとシナプス小胞を繋ぐ役割を担っており、シナプス小胞のエキソサイトーシスにかかわっているとしています(9)。今回はそのシナプス小胞のエキソサイトーシスについて触れたいと思います。

シンタキシンは一般に細胞内小胞輸送において膜融合に関わるタンパク質のグループですが、シナプス小胞が細胞膜と融合し、エキソサイトーシスによってシナプスに神経伝達物質を放出するという神経細胞特有のプロセスにおいても主役の1つを担っています。シンタキシンについては脳科学辞典に詳しい解説があります(10)。そこにある図のひとつを図245-2とします。

細胞膜のタンパク質であるシンタキシンのH3ドメインとシナプス小胞膜のタンパク質であるシナプトプレビンがSNAP-25を介してつながる構造をSNARE複合体と呼び、この構造形成によって小胞と細胞膜が結合しエキソサイトーシスの契機となります(図245-2)。

小胞と細胞膜がのべつ幕なしに結合すると困るので、通常はHabcドメインがH3ドメインと結合していてSNARE複合体ができないOFFの状態になっています。カルシウムチャネルから情報がくると立体構造が変化して、SNARE複合体が形成されることになります(図245-2)。

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図245-2 シナプス小胞が開口放出を行う前に形成されるSNARE複合体の立体構造模式図

脳科学辞典によると「シンタキシンファミリーは少なくとも16種類のアイソフォームが存在し、そのうち多くが線虫から哺乳類に至るまで進化的に保存されている」と記載されています(10)。図245-3で各動物におけるそれらのアイソフォームの存否をまとめてみました。1A、4、5、6、7、16、17、18の8つのアイソフォームは各動物が保有しています。このことはカンブリア紀以前の段階でこれらのアイソフォームは確立され、各門の動物がその後引き継いだことを意味します。

頭索動物(ナメクジウオ)、尾索動物(ホヤ)、円口類(ヤツメウナギ)、棘皮動物(ウニ)、半索動物(ギボシムシ)などについても情報が得られると、より詳しく生物進化とシンタキシンの関係がわかると思いますが、この図でもヒトにしかないアイソフォーム(シンタキシン10)、後口動物だけ(あるいは哺乳類だけ)にみられるもの(シンタキシン1B、11、19)があることは注目されます。

小胞と細胞膜が結合するようなシステムは多くの細胞で必要なので、シンタキシンはほとんどの細胞に存在しますが、神経細胞と分泌細胞に特異的に存在するのはシンタキシン1A、1Bとされています。ただまだ局在がわからないもの、cDNAしか知られていないものなどがあり、シナプスで使われるシンタキシンのアイソフォームは完全には解明されていないようです(10)。

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図245-3 シンタキシンのアイソフォーム

すでに「小胞と細胞膜がのべつ幕なしに結合すると困るので、通常はHabcドメインがH3ドメインと結合していてSNARE複合体ができないOFFの状態になっています」と述べましたが、MUNK18はシンタキシン1の不活性なクローズドフォームを維持するために機能しています。これに対してカルシウム存在下でシナプトタグミンはシンタキシン1を活性化し、SNARE複合体を形成するためのコンフォメーション変化に寄与することにより膜融合を促進します。MUNK13もシンタキシン1の活性化に寄与します(11、12、図245-4)。

図254-4のQaは、シンタキシンのH3ドメインにあるSNAREモチーフです。SNARE複合体はこのQaのほか、SNAP-25AのQb・Qcモチーフおよびシナプトプレビン2のRモチーフによって構成されています(図245-4)。

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図245-4 シンタキシン1のコンフォメーション変化とSNARE複合体の形成  カルシウムイオンの流入によって、シンタキシン1はクローズドフォームからオープンフォームに変化しSNARE複合体を形成する

SNARE複合体による膜融合についてはさまざまなモデルがありますが、Shen Wang らが提出しているモデルは図245-5のようなものです。これによるといったんシナプトブレビン2-Munc18-Munc13-シンタキシンが複合体を形成することによって(b)シンタキシンが活性化し(c)、Muncが解離すると共にSNAP-25が結合してSNARE複合体が形成され、シナプス小胞と細胞膜が結合するとしています。

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図245-5 Shen Wang らの膜融合モデル

一方京都大学の森研究室HPのモデルでは、カルシウムチャネルがα-RIMを介してシナプス小胞を細胞膜につなぎ止めるということになっていて(9)、議論はつきないようです。ポイントはカルシウムチャネルが直接的に膜融合にかかわっているのか、それともカルシウムの流入を介してのみかかわっているのかということです。

 

参照

1)脳科学辞典 電位依存性カルシウムチャネル
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E9%9B%BB%E4%BD%8D%E4%BE%9D%E5%AD%98%E6%80%A7%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%8D%E3%83%AB

2)続・生物学茶話191: 電位依存性カルシウムチャネル
http://morph.way-nifty.com/grey/2022/10/post-d9a164.html

3)Nature digest, Vol. 11 No. 8 News 深まるクシクラゲの謎
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v11/n8/%E6%B7%B1%E3%81%BE%E3%82%8B%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B2%E3%81%AE%E8%AC%8E/54610

4)Eisuke Hayakawa et al., Mass spectrometry of short peptides reveals common features of metazoan peptidergic neurons., Nature Ecology & Evolution, vol.6, pp 1438-1448 (2022)
https://www.nature.com/articles/s41559-022-01835-7

5)Robert W Meech, Andre Bilbaut Deceased, Mari-Luz Hernandez-Nicaise, Electrophysiology of Ctenophore Smooth Muscle. Methods Mol Biol., vol.2757, pp.315-359. (2024)
doi: 10.1007/978-1-0716-3642-8_15.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38668975/

6)Adriano Senatore, Hamad Raiss and Phuong Le, Physiology and Evolution of Voltage-Gated Calcium Channels in Early Diverging Animal Phyla: Cnidaria, Placozoa, Porifera and Ctenophora., Front. Physiol. vol.7: article 481.(2016)
doi: 10.3389/fphys.2016.00481
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27867359/

7)入江克雅 下村拓史 国立生理学研究所プレスリリース 細菌のセンサーから紐解く 神経刺激を伝えるタンパク質の太古の姿
https://www.nips.ac.jp/release/2020/02/post_409.html

8)ウィキペディア 流用(生物学)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%81%E7%94%A8_(%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6)

9)京都大学大学院工学研究科 森研究室HP
http://www.sbchem.kyoto-u.ac.jp/mori-lab/research-a.html

10)脳科学辞典 シンタキシン
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%B3

11)脳科学辞典 SNARE複合体
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/SNARE%E8%A4%87%E5%90%88%E4%BD%93

12)Shen Wang, Yun Li, Jihong Gong, Sheng Ye, Xiaofei Yang, Rongguang Zhang & Cong Ma, Munc18 and Munc13 serve as a functional template
to orchestrate neuronal SNARE complex assembly., Nature Commun., 10:69 (2019)
https://doi.org/10.1038/s41467-018-08028-6
https://www.nature.com/articles/s41467-018-08028-6

 

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2024年9月 7日 (土)

立憲民主党代表選挙

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枝野幸男

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泉健太

(写真はウィキメディアコモンズより)

おーい ミーナとサラ 目を覚ませ

ミーナとサラ「私たちには関係ないから寝てる」

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ミーナとサラと同様、私も自民党の総裁選挙には全く関心はありませんが、立憲民主党の代表選挙には少し関心があります。

野田氏と吉田氏は科学技術や大学についてあまり述べていませんが、枝野氏と泉氏は明確に政策を述べています。

枝野幸男:

国公立大学の授業料を半額にまで引き下げる 奨学金の拡充
一人暮らしの学生への家賃補助制度の創設
科研費の充実 ポスドク(博士研究員)や大学院生の処遇改善

泉健太:

科学技術予算の大幅増による基礎研究の重視と研究開発支援
省エネ、蓄電、再エネ技術の推進により原発・火力依存度を低減

結構なことです 是非実現のために努力して欲しい。

参考にしたサイト

野田佳彦 https://www.nodayoshi.gr.jp/

枝野幸男 https://edano.gr.jp/

泉健太 https://izumi-kenta.net/policy2022/

吉田はるみ https://yoshidaharumi.com/greeting

悪事を働いた自民党がまた何事も無かったかのように次回も政権を担当するのでしょうが、そうするとますます図に乗って世の中が悪い方向に回っていくことになりそうです。

 

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2024年9月 4日 (水)

Walk down the memory lane 10: ミヒャエル・ザンデルリンク ドレスデンフィル

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新宿文化センタ-はパイプオルガンも備えた第1級のコンサートホールですが、その割にはアマオケである新宿交響楽団が拠点としているだけで、プロオケの演奏会はたまにしかないという不思議なホールです。現在は改修のため長期閉館中です。

そのたまにしかない演奏会をドレスデンフィルがやり、かつその料金が格安のめったにないチャンスということで(新宿区からかなり補助金が出ていたのでしょう)、大変久しぶりに新宿文化センターを訪れた記憶があります。いつもの習慣で軽食を取るために近所の喫茶店に入ったのですが、私の席のとなりに座った2人がすごかったので、これは忘れられない思い出となりました。

その二人をAとBとすると、BがAから2000万円ほど借りて返済が滞っており、AがBを叱責するというシーンが延々と繰り広げられ、それが全部聞こえてくる、そして喫茶店は満席で移動不可というシチュエーションです。Aは借金返さないのにBが女と遊んでいるところを目撃したということで激怒しており、お前を絶対に潰してやるという話を死ぬほどリピートするのです。Bもなかなかしぶとくて、のらりくらり交わしながらどうも返す気がないようです。重苦しい殺気があたりにただよっていました。同行者と完全沈黙のまま、なんとか食べ終わったので私たちは席を立ち、事件にならなければ良いがと思いながら、かなりデプレスした状態でホールに向かいました。

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ミヒャエル・ザンデルリンクの実力は都響への客演で知っていたのですが、ドレスデンフィルとの演奏は、手勢ということもあり素晴らしいものでした。デプレスしていた精神状態も一気に回復しました。強奏時でもオケの音に深みと柔らかさがあり、それをミヒャエルが最大の緊張感を持って指揮するのですから、私にとっては初めて経験するドイツ音楽の神髄感がありました。

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2019 ドレスデンフィル来日公演の記録

富士通コンサートシリーズ
ミヒャエル・ザンデルリンク指揮 ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
広告宣伝 - 富士通
https://www.fujitsu.com/jp/about/resources/advertising/event/dresdenphil/

6月30日(日曜日) 13時30分   大阪 ザ・シンフォニーホール
7月1日(月曜日) 19時 福岡 アクロス福岡シンフォニホール
7月3日(水曜日) 19時 東京 サントリーホール

新宿文化センター主催公演
2019年6月28日(金)19:00開演
出演:指揮 /ミヒャエル・ザンデルリンク、管弦楽/ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
全席指定 S席10,000円 A席7,000円

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ミヒャエル・ザンデルリンクとドレスデンフィルのPR動画
https://www.youtube.com/watch?v=TKsc5fG_3qY

ショスタコーヴィチ交響曲第7番
https://www.youtube.com/watch?v=r-1x8SoDopw

ミヒャエルとドレスデンフィルは1枚のCDにベートーヴェンとショスタコーヴィチの交響曲を同居させるという珍奇なアイデアをほんとに実行するという企画を進めています。

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でもオーケストラは生で聴かないと、その本当の良さはわかりません。

 

 

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2024年9月 1日 (日)

World music collection 18: Nakajima Miyuki (covers)

Imgmiyuki

Nakajima Miyuki, a legend of japanese music scene in 20th and 21th centuries, is a medicine for your heart, but at the same time is a poison to your mental sensors. Sometines, my mental sensors are able to endure only for several munites for her songs. I think, it is not due to her melody or lyrics, but is rather due to her way of performance.

So the covers of her songs have special significance for me. I carefully chose the covers diluting the poison of the originals, while they still preserve it to some extent.

中島みゆきの音楽はリスナーに慰めを与え、また毒を注入します。その毒は強烈で、私のメンタルセンサーは1曲に耐えるのがやっとです。それは音楽そのものではなく、彼女のパフォーマンスによるものです。つまりカバーはいくらでもOKです。ここでは毒が薄まってはいるが、きちんと保持しているカバーを慎重に選びました。

lyrics:

中文
https://note.com/kanshikanbun/n/n00725f05ae3d

English and other european langages
https://lyricstranslate.com/ja/miyuki-nakajima-lyrics.html

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ホームにて ぷりん
https://www.youtube.com/watch?v=gSo4CfOItA4

かなり若い頃のぷりんさん。もっと前にはハードロックをやっていたらしい。
年末になると聴きたくなる曲ですが、いまや夜行列車なんてほぼないので、そのうち誰もこの情緒を感じられなくなってしまうでしょうか。

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夢だもの まきちゃんぐ
https://www.youtube.com/watch?v=hgpeMBRxbdU

ちゃんぐさんは中島みゆきと同じ事務所にいて、後継者と見なされていたこともありましたが、彼女は彼女の音楽をやっています。

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ミルク32 満島ひかり
https://www.youtube.com/watch?v=95thSZDHAvo

ミルクは札幌北18条にある喫茶店で、中島みゆきが無名時代によく通っていたそうです。
https://mainichi.jp/articles/20220129/k00/00m/040/239000c

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愛から遠く離れて 伽藍琳(りん・がらん)
https://www.youtube.com/watch?v=OwmEBrrF-6U

伽藍琳さんは本職は舞台のプロデューサーだそうですが、自然にはいってくる歌もなかなかのもの。

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エレーン 
Naru & ぷりん
https://www.youtube.com/watch?v=ODnvm4znMNk

病気や怪我を乗り越えて。 最近の Naru & ぷりん

まろりさんの解説によれば、エレーンのモデル「ヘレン」は、中島みゆきと同じマンションに住んでいた外国人を相手にする娼婦で、いつも安物のドレスを身に着けていました。そのヘレンが客とのトラブルと見られる事件で殺され、マンションのゴミ捨て場に死体が遺棄されるという事件が発生しました。外国人娼婦の殺人事件に警察も捜査に本腰を入れようとしなかったのか、そのまま事件は迷宮入り。というようなことがあったようです。
こちら

The model of this song "Helen" was a street girl lived in the same apartment with Miyuki. One day she was killed by a "customer" and found in the garbage box. She left only some worn-out dresses, no one want to ware.

歌詞:こちら

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歌姫 シンガー不明
https://www.youtube.com/watch?v=gEke-OfsjJE

集団就職のことなのかと、この映像を見てはじめて気がつきました。シンガーの顔も名前もわかりませんがリアルな歌。

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ひとり上手 YO-EN
https://www.youtube.com/watch?v=MDiKhvilnt0

体調不良から回復して活動を再開したそうです。ご健康を祈ります。

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地上の星 魚高ミチル
https://www.youtube.com/watch?v=NyrBtEcY5UE

最近BeBeから改名したそうです。

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世情 Ai Ninomiya
https://www.youtube.com/watch?v=b7d6QtCTZZ4

真摯な歌唱。彼女は英語のキャプションもつけています。

What’s right and what’s wrong.
I guess we’re programmed to be in a confrontation no matter what year it is.

A huge confrontation in between those who want changes to this world, and the ones who want to stop the time to live a life in a way they used to.
It’s everywhere.

Thank you so much for checking my channel!
I hope you enjoyed my videos!!!

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誕生 ドリアン・ロロブリジーダ
https://www.youtube.com/watch?v=EmzmNjUQGBI

ドリアンさん、素顔は二枚目。

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糸 冨田麗香
https://www.youtube.com/watch?v=FN_jXIXOlVw

地べたに座って歌うというのが、なんともいえない雰囲気を醸成します。

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ヘッドライト・テールライト 宮苑晶子
https://www.youtube.com/watch?v=oqVQYxAhE5c

シンガーになる前はシステムエンジニアだったそうです。

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有名人によるカバー

雪 坂本冬美
https://www.youtube.com/watch?v=Bs6Hb-G8QpA

銀の龍の背に乗って 槇原敬之
https://www.youtube.com/watch?v=d5eiDfHjfCc

空と君のあいだに 森恵
https://www.youtube.com/watch?v=eVAZuqMyyGo

時代 夏川りみ
https://www.youtube.com/watch?v=Z6gOpDP7KYA

ファイト! 竹原ピストル
https://www.youtube.com/watch?v=2lzP8f3kDns

しかし竹原ピストルがNHKの紅白歌合戦に出場するとは、誰が想像しただろうか!

悪女 中森明菜
https://www.youtube.com/watch?v=J0NgOMSvf9s
https://www.youtube.com/watch?v=xsqQWTqGwaM

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最後にすごいのを。中島みゆき公認のオープン映像のようです。
毒殺されないように!

This is the performance of Nakajima Miyuki by herself.
I felt Edith Piaf.

愛だけを残せ 中島みゆき
https://www.youtube.com/watch?v=gUDikbjabaw

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ではおやすみなさい  Good night everyone🌙

夜曲(Nocturne) Soko
https://www.youtube.com/watch?v=X9_OikoLMSU

 

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