国立大学の崩壊を阻止せよ
国立大学の財政状況が危機的に悪化しているようです。国立大学協会が声明(というより悲鳴のSOS)を出しています(1、2)。東大のような最も恵まれているはずの大学も金欠のため学費値上げを検討しているようです(3)。
安倍政権は国立大学の財政悪化を放置し、むしろ促進してきました。そして現政権も立て直そうとはしていません。おそらく研究費の重点配布で切り抜けようとしているのでしょうが、ある程度のベース的な配分がなければ学術の崩壊は免れないでしょう。上のグラフを見るとGDPの上昇にもかかわらず、大学いじめは続いているようです。
例を挙げましょう。近年の脳科学・神経生物学に革命をもたらしたチャネルロドプシンの発見は、何の実用的価値もないと思われていた緑藻の研究によるものです(4)。どうですか? 政治家や官僚は緑藻の研究がイノベーションをもたらすと予見できますか? 競争的研究費を配分できたと思いますか?
新しい医療への道を開きつつある遺伝子編集の技術は、元はと言えば細菌の免疫機構の借用であり、彼らがウィルスから身を守るために発明したメカニズムです(5)。どうですか? 政治家や官僚は細菌の免疫機構の研究がイノベーションをもたらすと予見できますか? 競争的研究費を配分できたと思いますか?
イノベーションは政治家・官僚・学会のボス達によっては予見できません。非競争的研究費のベースがあってこそ天才と幸運の女神が微笑みかけてくれるのです。このことは与野党を問わずわずかな政治家しかわかっていないし、多くの官僚もわかっていません。学者達のなかにはそれを百も承知で、政治家や官僚の受けを狙う輩がいるのは困りものです。
そういうことがわかっていなくても、大学における教育・研究を充実させなければ日本は終わるという認識をもっている政治家は野党の方に多いように思います。そういう意味では政権交代は大学の状況を改善するために役に立つかもしれません。これはあくまでも心細い期待ですが。
1)国立大学協会声明 ------我が国の輝ける未来のために------
https://www.janu.jp/wp/wp-content/uploads/2024/06/202406_PresidentsComment.pdf
2)「もう限界です」──国立大学協会が声明、財務悪化の現状を訴える 「教育・研究の質の低下が危惧される」
こちら
3)東大授業料2割値上げ検討、学生らが反対集会…教員3人も登壇し懸念を表明 (読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/kyoiku/daigakunyushi/20240606-OYT1T50156/
4)続・生物学茶話227: チャネルロドプシン
http://morph.way-nifty.com/grey/2024/01/post-871db8.html
5)クリスパー/キャス9 遺伝子編集への道
http://morph.way-nifty.com/grey/2019/04/post-095975.html
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