トリチウムの毒性
福島第一原発からのトリチウム海洋放出が秒読みに入っていますが、放射性のセシウム・炭素・ストロンチウムなどが混ざっているとすれば別問題として、トリチウム自体の安全性についてサウスカロライナ大学のムソー博士(写真)とトッド博士が大量の文献を調査して、現在までの知識を整理しました。結論として次のように述べています。
contrary to some popular notions that tritium is a relatively benign radiation source, the vast majority of published studies indicate that exposures, especially those related to internal exposures, can have significant biological consequences including damage to DNA, impaired physiology and development, reduced fertility and longevity, and can lead to elevated risks of diseases including cancer. Our principal message is that tritium is a highly underrated environmental toxin that deserves much greater scrutiny.
適当な訳(管理人) トリチウムは比較的安全な放射性物質という考え方が一般に流布していますが、圧倒的多数の研究はトリチウムの内部被曝によってDNAが損傷し、健康被害や発生異常、出生率の低下、癌を含む病気のリスク拡大などの可能性を示しています。トリチウムが環境に存在することの毒性は著しく過小評価されており、もっと綿密な調査を行う必要があります。
ソース:Biological Consequences of Exposure to Radioactive Hydrogen (Tritium):
A Comprehensive Survey of the Literature
Timothy A. Mousseau, Sarah A. Todd SSRN (april 11, 2023)
http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4416674
下記からダウンロードできます
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4416674
以下は私の過去記事の再掲です。
福島第一原発が事故処理で出たトリチウムを海に放出することが決まりました。このことが特段に危険なことかというと、そうではありません(トリチウム以外の核種がきちんと取り除ければの話ですが)。フランスのラ・アーグ核燃料再処理施設からは年間1京ベクレル以上のトリチウムが放出されており、こんな超弩級の放出に比べれば、兆レベルの福島の排出など可愛いものだという見方もできます。しかし日本は青森県の六ヶ所村にラ・アーグのような再処理施設を3兆円かけてほぼ完成させており、ここが稼働するとラ・アーグと同様な超弩級のトリチウム排出が行われると思われます。圧倒的に危険なボスキャラは六ヶ所村再処理工場です。
トリチウムは外部被曝はほぼないと言われていますが、内部被曝は確実にあります。核燃料の再処理は確実に地球を汚染し、人間も含めて地球上のあらゆる生物の遺伝子に悪影響を与えます。マスコミは風評被害という言葉を連呼しますが、これはとても危険なことです。トリチウムに実害はないという誤ったイメージを国民の脳に刷り込む効果があるからです。私は信心深い方じゃないので「神への冒涜」とは言いませんが、大量の放射性物質を垂れ流して自然を汚染すれば、当然癌は増えますし、生物相にも影響が出るでしょう。
だいたい外部被曝はないということになっていますが、本当にないのでしょうか? 確かにトリチウムが出すβ線は紙1枚で遮蔽できますが、じゃあ紙1枚がなかったらどうなるの? という話です。たとえば霧が出ると、霧は鼻粘膜とか気管支や食道に吸い込んでしまうので、外部被曝もありそうです。皮膚の表層の細胞や髪の毛の細胞は、ほぼ死んでいる細胞といってもいいのですが、メラノサイトなど一部生きている細胞も表層にあるので、これらがトリチウムのβ線に反応しても不思議ではありません。
6年前に私が書いた記事は、もうソースはリンク切れになっていますが再掲しておきます。
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週刊プレイボーイ編集部と菅直人元総理らは、福島第一原発の沖 1.5kmに船を出して、原発周辺の謎の霧観察や海水のサンプリングを行い、長崎大学大学院工学研究科の小川進教授らと共に分析しました。
少し記事を引用します。
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船上取材に同行した放射線知識が豊富な「南相馬特定避難推奨地域の会」小澤洋一氏も、後日、あれは気になる現象だったと話してくれた。「私は昔から海へ出る機会が多いのですが、フクイチだけに濃い霧がかかる現象は記憶にありません。凍土遮水壁の影響で部分的に地上気温が下がっているとも考えられますが、トリチウムが出ているのは事実なので、その作用で霧が発生する可能性は大いにあると思います。だとすれば、あの船上で起きた“気になる出来事”にも関係しているかもしれません」
その出来事とは、取材班全員が短時間のうちにひどく“日焼け”したことだ。フクイチ沖を離れた後、我々は楢葉町の沖合20㎞で実験稼働している大型風力発電設備「ふくしま未来」の視察に向かった。この時は薄日は差したが、取材班数名は船酔いでずっとキャビンにこもっていたにもかかわらず、久之浜に帰港した時には、菅氏とK秘書、取材スタッフ全員の顔と腕は妙に赤黒く変わっていた。つまり、曇り状態のフクイチ沖にいた時間にも“日焼け”したとしか考えられないのだ。
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トリチウムのβ崩壊
トリチウムはDNAに取り込まれたあと、上記のようにβ崩壊してヘリウムを生成するので、その部分のDNAが壊れ(水素がはいっているはずなのに、ヘリウムがはいっている分子に変わってしまう)、突然変異が誘起されます。実際はるか昔から実験的に突然変異が発生することはわかっていました。それ以外にも、分子レベルの距離ではトリチウムのβ線は分子を破壊するだけのパワーを持っています。トリチウムは水の水素にかわることができるので、体のあらゆる部分で破壊活動を行うことができます。
皮膚にβ線(電子)がぶつかることによって、紫外線(電磁波)と同様皮膚が焼けて日焼けになったのでしょう。トリチウム焼けが日焼けより始末が悪いのは、気管支や食道に霧などに含まれるトリチウムを吸い込むと、それらの臓器まで焼けてしまうことで、つまりクリームやファウンデーションでは防げないということです。気管支や食道が日焼けすると癌が発生する可能性が高まると思われます。ともかく福島第一原発には無防備では接近すべきではないでしょう。
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六ヶ所村の再処理をやめるには、原子力発電をやめなければいけないのですが(現在はラ・アーグまで運んで再処理してもらっている)、福島第一原発の事故処理水はどこかに置いておけば済むことなので、実はそんなに困難なことではありません。場所さえ見つければ良いのです。150年くらい保管すればすべて崩壊して無害になるので、プルトニウムのような気の遠くなるような話ではありません。山林を買うか、タンカーを買うかで解決することです。小出裕章氏は船で新潟まで輸送して、柏崎刈羽原発の敷地に保管すれば良いとおっしゃってました。
とめよう!六ヶ所再処理工場(原子力資料情報室)
https://cnic.jp/knowledgeidx/rokkasho
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