村上安則著 「脳進化絵巻」
村上安則著 「脳進化絵巻」 共立出版 2021年刊
「脳進化絵巻」とはなんともレトロなタイトルです。しかも倉谷滋という知的モンスターが背後霊のようにくっついています。しかし私の最近の知的関心から言うと、読む以外に選択肢はありません。
著者の村上安則氏は理研の倉谷研究室出身で愛媛大学の教授になった方です。至って真面目に脳の進化について書いてある本ですが、ところどころ「ソウルライクな死にゲー」とか「厨二病的要素」とか「ザクとは違うのだよ、ザクとわあ」とか意味不明な言葉が出てきて本の品位を下げていますが、まあ生物学者とは世の中とピントがずれててダサいという精神構造が似合う人種なので、はまり感はあります。
私は気になると調べずにはいられない性格なので・・・
「ソウルライクな死にゲー」:ダークソウルというアクションゲームのことらしい。死にゲーというのは死を目的にするのではなく、途中で死にやすいゲームのことらしいです。
「厨二病的要素」:中学2年生頃の思春期特有の自意識過剰な状況を揶揄する言葉だそうです。当て字をつかうのは品がないと思います(と思われます)。
「ザクとは違うのだよ、ザクとわあ」:なんていわれても・・・。この本の読者がどれだけガンダムを知っているのかどうか大いに疑問です。
進化の本なのに、進化のタイムスケール、たとえばカンブリア紀が何年から何年までというような年代記の図表がなかなか現れてこない(109ページの肺魚のところでようやくデボン紀~三畳紀のスケールが登場する)のは、進化と銘打ってはいますが、実は著者はタイムスケールにあまり関心がないことを露骨にあわらしているような気がします。これはこの本の欠点です。
著者は 悪い記憶がよみがえる → 死にたくなる or 奇声をあげる という性癖の持ち主のようですが、「飼っているヤツメウナギがそのような言動をとるのは見たことがない」と述べています。ところでヤツメウナギは右に行くとエサがあり、左に行くと電気ショックという迷路で記憶力を試した実験はあるのでしょうか? 意外にそんな実験をやらせた研究者に恨みをいだくかもしれませんが。
竜弓類の脳について記載があるのは珍しいと思います。想像の部分が多いでしょうがじっくりと読ませていただくつもりです。菱脳から話が始まっているのも、生物学らしくて大変好感が持てます。ともあれ私の座右の書のひとつになるのは間違いありません。
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