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2023年2月 4日 (土)

続・生物学茶話201:意識があるということを示す基本的な要素

エディアカラ紀(6億3千500万年前~5億3千800万年前)の海は、弱肉強食という生物界の原理がまだ発生していない、平和で静かな海だったと考えられています(1、図201-1)。

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しかしエディアカラ紀には争いが全くなかったかというと、そうではなかったかもしれません。捕食者(肉食動物)がまだいなかったエディアカラ紀でも場合Aや場合Bは日常的に起こっていたかもしれません。濾過食の生物は消化できない物もできる物もまとめて飲み込むので記憶を参照しなくても問題はないのですが、藻類などを食べる生物はエサかそうでないかを記憶を参照して判定できる者の方が、さらにはエサとして好ましいかどうかを選ぶことができた者の方が、生存に有利であると思われます(図201-2 場合A)。バイオフィルムか藻類かは触感の記憶を参照することによって判断できたのではないでしょうか? また同じエサを食べるなら他者との競合に勝利する必要があります。そのような場合は、競合する者にどう対処するかを記憶を使って判断できる者は生存に有利だと思われます(図201-2 場合B)。

A、Bの場合は、カンブリア紀にはじまったCの場合のようにもたもたしているとすぐに捕食されるというわけではないので、記憶の参照に時間がかかっても大丈夫だったはずです(図201-2)。それは神経系の進化にとっては有利な条件だったと思われます。記憶を有用化するには、時間がかかってももとがとれるような条件が必要で、エディアカラ紀にはカンブリア紀よりむしろそのような条件が満たされていたと思われます。エディアカラ紀に確立した「記憶の参照」というメカニズムが、カンブリア紀になってから、高速に機能するような進化が進行したのでしょう。繰り返しますが、カンブリア紀という時代、特に初期の被捕食者が無防備だった時代は、「意識」の原点である記憶の参照というメカニズムが進化するには不適切で、少なくとも基本的なシステムはエディアカラ紀に進化しておかなければならないということです。

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A、B、Cいずれの場合も、記憶を参照して行動を決定するという高度な神経系の作用を伴っています。「意識」があるかないかは、記憶を参照できるかどうかがその根幹にあると思われます。記憶の内容は形態識別でも臭いの識別でも触感の相違でも何でも良いわけで、ともかくそれらを参照して次にとる行動を決めるというプロセスが「意識」のはじまりだと考えて良いと思います。海底歩行型の藻類食左右相称動物は口が下になければならないので、上下を判定するための平衡石をもっていたはずです。平衡石を利用するには触感が必要で、彼らは最低でも触感はもっていたと思われ、その記憶から意識の萌芽が生まれた可能性は高いと思われます。

人間の意識の中身は前の記事にでてきたようなクオリア、心的因果や、その他感性・感情のような要素が満載ですが、まあ哺乳類はそれに似たような要素をみんなもっているような感じはします。ひとつ留意したいのは鳥類、昆虫類、頭足類などにも「意識」がありそうとはいえ、私たちと同じ土俵で論じられるかどうかはわかりません。私たち自身も、たとえばムカデを見たときの嫌悪感とか、お皿をフォークでこすったときの気持ち悪さなどは普通の感情とは異なります。鳥類、昆虫類、頭足類なども同様に、ヒトには理解できない別種の感性や感情があるかもしれません。それこそハード・プロブレムでしょう。


Let's imagine an our ancestor "Tom" living in ediacaran era. Tom found an algae-like one. He may browse his memories and decide to eat or not. Sometime another creature may find the same food. Then Tom must decide compete, move, or continue to eat. To browse the memories may be useful for his decision. At that time browsing may require pretty long time. But no need to hurry, because no predators were present at that time. It is not the cambrian era. The ediacaran era is a good time to make evolution for the nerve system to browse memories. In cambrian era, the system evolved to operate faster, because the delay may be fatal.

参照

1)Wikipedia: Ediacaran biota
https://en.wikipedia.org/wiki/Ediacaran_biota

 

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