熊木杏里のニューアルバム「風色のしおり」
熊木杏里がニューアルバム「風色のしおり」をリリースしました。今時の流行音楽とは一聴全く無縁なような密やかなサウンドと歌ですが、それが逆に時代の空気に驚くほどフィットしていると思います。
最初に聴いたときには戸惑いました。なにか音楽ごと別の世界にひっこしたような感覚。ウィスパーに近い曲が多いし、バックの楽器はとても控えめです。追い詰められているという感覚がアルバム全体を支配しています。そして歌いたいことを押し出すのではなく、耳打ちするような内向き感が強いですね。さらに共感できる人だけ聴いてくれればいいというさっぱりと割り切った感じもします。
「いのち輝く」や「あなたと共に」は私のフェイバリット。生物学を愛する者としては「根」の歌詞を絶賛したいところですが、実はこのような思想が地球環境を破壊してきたのです。そのくらい人という種スピーシーズは凶悪なんです。「はなむけの歌」はこのアルバムでは例外的に大きな声で歌い上げています。「同じ景色を見て欲しいと思うでしょう それが愛だって言うことが分かるでしょう」という歌詞がこの曲にあります。私もこのことは考えてきましたが、そうなのだろうか なにか違うような気もするのですがどうなんだろう。「もうすぐ春なのに」というラストナンバーは、この時代ならではの情感があふれた佳作。
個人的評価ではアルバム「人と時」を100とすると、このアルバムは80くらいだと思います。この時代の閉塞感が音楽まで閉塞させてしまわないように祈りたい。
あなたと共に
https://www.youtube.com/watch?v=LX2nkSClN_E
根
https://www.youtube.com/watch?v=Tmzzh79PpCo
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